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2009/08/15

海老沢泰久氏

海老沢泰久氏のご冥福をお祈りします。

以下敬称略。

海老沢泰久は好きな作家のひとりだった。いちばん好きな作家と言ってもいいかもしれない。

とはいえ、海老沢泰久に言及した記事はあまり書いていなかった。

2004-08-14 最高を知ること -- 「美味礼賛」
2004-08-21 おいしゅうございます -- 「美味礼賛」レビュー
豊かな時代のモチベーション -- 井上陽水のことを描いた「満月 空に満月」に言及。

あまりなかったね。それに彼の得意分野であるスポーツ、その美学に関するものはなかった

「F1 地上の夢」とか、もう一回読んでみるか。

2004/08/15

最高を知ること

山村社長のブログ 「ウインザーホテル洞爺湖 完全レストランガイド 8月11日」からのトラックバックです。

その前の記事「二期倶楽部での週末 8月3日」に続いて、最高峰のサービスを堪能されているようで、うらやましい限りです。

なにかのビジネスをする上で、最高を知ることは重要と思います。自分が提供するものが最高でないものを狙うとしても、です。自分がどの位置にあるのかを知らなければ次の発展を考えられないし、小さい物差ししか持たなければ、その長さが最高にみえてしまう。

確かにITサービスのエキサイトとホテルにおいては業界は異なるが、現在発展中でまだ最高が見えないITサービス業界においては、成熟の進んだ他の業界の最高を知ることは重要と思います。声優のことしか知らないと声優の中で一番美人を探してしまう(って違うか)。

こういうことを考えるきっかけになったのは、海老沢泰久の「美味礼讃」。辻調理師専門学校の辻静雄の伝記的な小説なのですが、その中に、フォンドボーの作り方を教えるシーンがある。

副校長が生徒の一人に、できたスープのスプーン1杯の原価を訊く。生徒は1円くらいと答えるのだが、実際は約50円である。これで料理を作ると、スープの分だけで原価500円、売り値はその3倍くらいに設定する必要があり、1500円となる。一品料理全体では8000円から1万円になる。高卒の初任給が15000円くらいの時代の話である。一方、学校に来ている生徒は全てが一流レストランのシェフになる訳ではない。副校長は生徒に問う。
「じゃあ、きみがコックだったらどうする?」
「もっと安く作ります」
「どうやって?」
「わかりません」
「手を抜くんだよ」

「... もしきみたちが、将来これ以上ないという料理をを作ったとしても、それを食べてくれる客がいなかったら、商売として成立しないからだ。その場合、きみたちは店の立地条件や客層を考えて、それに合った限界で料理を作らなければならない。しかし、どういう場合でも、こうあらねばならぬという本物の料理は知っておかなければならない。それを知らなかったら、どれくらい手を抜くかということも分からないからだ。」
海老沢泰久は、広岡達朗を描いた「監督」でデビューして、「F2グランプリ」、「F1地上の夢」などスポーツ小説、スポーツノンフィクションで有名な人ですが、こういう著作もあります。しかし、その根底に流れているのは「一流とは何か」、「仕事とは何か」ということだと理解しています。その点に私は惹かれているのだと思います。

「美味礼讃」はライフログ使って紹介すれば良かったですね。それはまた別の機会に。 → 追加しました。