2017/12/31

shiseido art egg 公開審査会

shiseido art egg 審査会が今年から一般公開されることになり、抽選にあたったので8月25日の対話型審査会に参加してきました。

shiseido art egg とは
https://www.shiseidogroup.jp/gallery/artegg/
シセイドウ アートエッグは、新進アーティストの活動を応援する公募展です。
  • 毎年3名が選ばれる。
  • 資生堂ギャラリーをどう使うかも審査の基準になる。
  • 選ばれた人は資生堂ギャラリーで3週間の個展ができる
今回の受賞者は以下の三人 (第11回 shiseido art egg/審査結果) で、ここから一人を選ぶことになります。
  • 吉田志穂 
  • 沖潤子
  • 菅亮平
「第11回 shiseido art egg」展 でそれぞれ約3週間ずつ個展が開かれました。

最初に資生堂ギャラリーの沿革の説明がありました。資生堂は1915年に薬局から化粧品への事業転換を測ったそうです。1919年には資生堂ギャラリーを始めました。「芸術を通して価値を会社に取り込む」ことを狙いにしたとのことでした。

shiseido art egg 審査の説明です。新人ということで、「新しい価値観」を重視しているということでした。また、ジャンルにとらわれないということも意識しているとのことで、今回は写真、刺繍のアーティストが入っていますし、菅亮平氏も純粋な絵画の作品ではありません。

吉田志穂さんは、インターネットの世界での写真のあり方を探ります。ネットで見つけた写真の現地へ自ら赴き自分の写真を撮影します。

展示では、「寄り」と「引き」を意識したものにしたとのことでした。引いて全体をみてもらう、寄って細部をみてもらう、両方あって初めて全体を理解してもらえるようにとのことです。

沖潤子さんは刺繍作家です。一旦会社勤めを行なったあと、刺繍で美術の世界に入りました。このため3人の中では一番の年長さんです。

扱う材料は、何か物語のある古布です。入手した布をずっと部屋に置いておき、熟成させるというのでしょうか、何かを感じた時に制作を開始します。

最初はよくわからない作品と思っていましたが、お話を聞いているうちに、自分の内部にある思いや衝動が表出したものになっているのだなと理解できました。

ただ、そういう作風の人だけに、展示方法も審査基準に入っていることは辛いかなと感じました。
菅亮平さんは、「ホワイトキューブ」にこだわった展示です。「ホワイトキューブ」は現代の美術館やギャラリーで多く使われる展示空間。観客に美術館の立地や環境を忘れさせ、アートに没頭してもらうための装置です。しかし菅亮平さんの作品は、そのアート作品がなくなったホワイトキューブ。観客は何もない美術館を歩き回る感覚になります。

審査員は『美術手帖』編集長の岩渕貞哉氏、アーティストの宮永愛子氏、建築家の中村竜治氏の3名。それぞれの候補者に感想を語り、質問もしていきます。

審査は意見が割れました。というよりも審査員の皆さんも悩んでいるようです。

審査基準の「ギャラリーをどう使うか」で言えば、そのような経験も豊富な菅亮平さんが一歩抜きん出ているように見えます。一方、新進アーティストの発掘の場ということを考えると、そういう経験を持った人は本来はあまりいないはずです。

沖潤子さんは年齢的に新人賞を取るのは最後のチャンスだからというのもちらと聞こえてきたような気もしますが、そんなことで決めてはいけない、ちゃんと内容で判断しなければという揺り戻しも感じました。

以前、「アートの評価ってなんだろうね」と書いたのを思い出しました。

結局この日は決まらず (最初からそれも織り込み済みだったのかもしれません)、後日発表ということになりました。

私としては、年齢に関係なく、自己の内面の表出が作品になっている沖潤子さんに決まって欲しいと思いました。
→ 2017/10/6 「第11回shiseido art egg賞」審査結果が発表されました。沖潤子さんが受賞されました。おめでとうございます。

後日3年分のshiseido art egg 展覧会カタログをいただきました。ありがとうございます。川久保ジョイも昨年入賞していたんですね。

2017年にいった展覧会とアートイベント

今年は横浜トリエンナーレの年でした。忙しかったので、あまりそれ以外の美術展にいけていないかもと思いましたが、そうでもないかな。

日付順はやめて展覧会、アートイベントで分類します。

美術展

  • 森美術館
  • 原美術館
  • 国立新美術館
    • Domani・明日展 (2017/1/21) → ブログ 国立新美術館10周年ということで…
    • 5美大卒業制作展 (2017/2/26)
    • ミュシャ展  (2017/4/28)
    • 草間彌生展「わが永遠の魂」 (2017/5/1)
    • ジャコメッティ展 (2017/8/27)
    • サンシャワー展 (2017/8/27)
  • 三菱一号館美術館
  • 横浜美術館
    • 篠山紀信「写真力」(2017/2/12)
    • 和田淳展 | 私の沼 (2017/2/12)
    • ファッションとアート 麗しき東西交流 (横浜美術館) (2017/05/17) 
    • ヨコハマトリエンナーレ2017
  • Bunkamura
  • そごう美術館
    • 院展 (2017/2/16)
    • マリー・アントワネットとナポレオン皇妃ジョゼフィーヌが愛した宮廷画家 ルドゥーテの「バラ図譜」展 (2017/5/16)
  • パナソニック汐留ミュージアム
    • マティスとルオー展 (2017/3/11)
  • 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
  • 三井記念美術館
    • 「驚異の超絶技巧」展 (2017/11/18)
  • 21_21 Design Sight
    • デザインの解剖展 (2017/1/21) 
    • アスリート展 (2017/2/25, 2017/4/8)
    • そこまでやるか 壮大なプロジェクト展 (2017/10/1)
  • 東京ステーションギャラリー
    • パロディ展 (2017/3/18)
  • NTT-ICC 
    • ART+COM  . RHIZOMATIKS RESEARCH  (2017/3/18)
  • デザインハブ
    • 地域×デザイン2017 -まちが魅えるプロジェクト- (2017/2/26)
  • TOTOギャラリー「 間」
    • 堀部安嗣展 (2017/1/21)
  • 泉屋博古館分館
  • Fuji Xerox Art Space
    • 富士ゼロックス版画コレクションと印刷物展 (2017/2/8)
    • 河口龍夫展  (2017/6/16)
    • ハンネ・ダルボーフェン展 (2017/9/25)
  • FUJI FILM SQUARE
    • 鬼海弘雄写真展「India 1979-2016」(2017/5/29)
    • 高橋修悦写真展「走れ、小海線」(2017/5/29)
    • 「幕末明治の写真家が見た富士山 この世の桃源郷を求めて」(2017/5/29)
    • 二十世紀の巨匠 美と崇高の風景写真家 アンセル・アダムス (2017/11/27)
  • 3331 Arts Chiyoda
    • ソーシャリー・エンゲージド・アート展 (2017/3/5)
  • 岡本太郎記念館
  • 資生堂ギャラリー
    • 吉岡徳仁 スペクトル − プリズムから放たれる虹の光線 (2017/3/11)
  • ポーラミュージアムアネックス
    • Alan Chan「HELLO GINZA!」 (2017/5/1)
  • エスパス ルイ・ヴィトン東京
    • DAN FLAVIN展 (2017/5/1)
  • 銀座メゾンエルメス フォーラム
    • 「水の三部作 2」アブラハム・クルズヴィエイガス展 (2017/5/1)
  • BankART NYK
    • BankART LIfe 「観光」(2017/9/1) 
  • ソニービル

                                      ギャラリー

                                      • うらあやか個展  "The body dances freely" @ Art Center Ongoing  (2017/2/12) 
                                      • LITTLETOPIA - 森洋史個展  @ Art Lab Tokyo (2017/2/25) 
                                      • 多摩美術大学 日本画専攻卒業制作有志展澪標 (miotsukushi) @ 3331 Arts Chiyoda (2017/3/5)
                                      • 写真分離派展 @ NADIFF apart  (2017/3/4)
                                      • アンスティチュ・フランセ東京 (2017/3/18)
                                      • 木下佳通代展 @ ユミコ チバ アソシエイツ (2017/3/18)
                                      • アートラボ・グループ・アート・ショー ムスタングラーズ @ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
                                      • ベンモリ・ジャングルワールド x シロクマ親子 @ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
                                      • 山本桂輔展「地底の雲」@ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
                                      • Gari Gari Girly展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/21) 
                                      • わらおびびし個展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/21) 
                                      • Hanabi展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/29)
                                      • パオラ・ピヴィ《全部みんな同じに見える》@ ペロタン (2017/9/17)
                                      • 岩清水さやか @ Art Lab Tokyo (2017/9/17)
                                      • 黄金町バザール2017
                                      • Possessions Jomi Kim solo exhibition @ Art Lab Tokyo (2017/12/9)

                                      イベント

                                      • 2017/1/14 現代芸術アーカイヴの構築に向けて―保存・発信・活性化 @ 慶応義塾大学三田キャンパス
                                      • 2017/1/21ヨコハマラウンド ラウンド1 <0と1の間にあるアート> @ 横浜美術館
                                      • 2017/1/25 トリエンナーレ学校2017 vol.9 アートで地域をつなぐ活動にみる創造性 @ 横浜美術館
                                      • 2017/1/28 国立新美術館20周年シンポジウム「アーカイヴ」再考 - 現代美術と美術館の新たな動向
                                      • 2017/2/4 「MAMプロジェクト023:アガサ・ゴス=スネイプ」 アーティストトーク @ 森美術館
                                      • 2017/2/12 横浜美術館サポーター勉強会「美術館に収まりきれない彫刻の魅力」@ 横浜美術館
                                      • 2017/2/13 森美術館国際シンポジウム「現代美術館は、新しい『学び』の場となり得るか?―エデュケーションからラーニングへ」@ アカデミーヒルズ
                                      • 2017/2/22 トリエンナーレ学校2017 vol.10 建築家としてまちを刺激する試み
                                         @ 横浜美術館
                                      • 2017/2/26 DOOR to ASIA -アジアデザイナーと東北事業者が未来の扉をひらく- @ デザインハブ
                                      • 2017/3/22 トリエンナーレ学校2017 vol.11 法と市民活動 
                                      • 2017/3/25 ヨコハマラウンド ラウンド2 <創造と汚染>
                                      • 2017/4/8 アスリート展トーク@ 21_21 Design Sight → ブログ Analogy Learning
                                      • 2017/4/18 森美術館アージェント・トーク031:崩れゆく絆―アルフレド・ジャーが見る世界のいま → ブログ アルフレド・ジャーの講演を聞いてきた
                                      • 2017/4/19 N・S・ハルシャ展キュレータートーク「ハルシャ、マイスール、インド」
                                      • 2017/5/28 ヨコハマラウンド ラウンド3 <島とオルタナティブ: 歴史・社会、医療、アート>
                                      • 2017/6/6 森美術館 アージェント・トーク032: 選択の重要性―アーティストと美術館は制作、収集、展示、保管そして保存においていかに選択をするのか?
                                      • 2017/6/28 横浜美術館 トリエンナーレ学校2017 vol.12  【ヨコハマトリエンナーレ2017】アーティスト 宇治野宗輝と語らう
                                      • 2017/7/8 国立新美術館 シンポジウム「現代美術は東南アジア地域をどのように表象してきたか」
                                      • 2017/7/9 森美術館 アーティスト・リレー・トーク「MY WORK」
                                      • 2017/7/29 トークセッション 「写真の現場から世界へ:三影堂と中国現代写真の歩み」@ 森美術館
                                      • 2017/8/4, 5 ヨコハマラウンド ラウンド4<繋がる世界と孤立する世界>
                                      • 2017/8/20 ヨコハマラウンド ラウンドbis <K.T.O.と横浜・インド>
                                      • 2017/8/25 ヨコハマラウンド ラウンドbis パオラ・ピヴィ アーティストトーク
                                      • 2017/8/25 第11回shiseido art egg賞 対話型審査会 → ブログ shiseido art egg 公開審査会
                                      • 2017/8/26 「ヨコハマラウンド」 ラウンド5<ガラパゴス考察>
                                      • 2017/9/8 寺子屋サンシャワー 【第5回】建築|東南アジアの近現代建築 @ 国立新美術館
                                      • 2017/9/16 トークセッション「私の東南アジアを話し尽くす」@ 森美術館
                                      • 2017/9/18 ヨコハマラウンド ラウンド6 <新しい公共とアート>
                                      • 2017/9/19 トーク「写真の見方―記録か芸術か」@ 森美術館
                                      • 2017/10/8 ICC20周年記念シンポジウム「メディア・アートの源流とその変遷 メディア・アートとICCの20年」(NTT-ICC)
                                      • 2017/10/1 レクチャー「比較の難しさ 東南アジア地域をキュレーションするための調査、テーマ、その他の方法」@ 森美術館
                                      • 2017/10/15 ヨコトリしゅみせん!「有頂天の余韻を遺す〜図録ってどうやってつくるの?〜」@ 横浜美術館
                                      • 2017/10/21 ヨコハマラウンド ラウンド7 <我々はどこから来てどこへ行くのか?>
                                      • 2017/11/2 グッドデザイン賞審査レビュー ユニット16 仕組み取り組みのデザイン @ 東京ミッドタウン デザインハブ 
                                      • 2017/11/3 ヨコハマラウンド ラウンド8 <より美しい星座を描くために: アートの可能性とは?> → ブログ アートとAI
                                      • 2017/12/9 現代アートと哲学対話―新しい学びの可能性 @ 森美術館
                                      今年はヨコハマトリエンナーレ2107以外で言えば、国立新美術館と森美術館で行われたサンシャワー展が良かった。昨年からシンポジウムなど行われ、期間中もトークやレクチャーに参加しました。


                                      今年最も印象に残っているのが、森美術館で行われた「崩れゆく絆―アルフレド・ジャーが見る世界のいま」です。