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2016/03/27

9次元からきた男

日本科学未来館が、4月20日にリニューアルされるという。それと同時に、3Dドームシアターで新しいプログラム「9次元からきた男」が始まる。3月26日にその先行試写会とレクチャーがあったので参加してきた。

『9次元からきた男」 4月20日、日本科学未来館で公開!
日本科学未来館
「9次元からきた男」特設サイト

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©  Miraikan

予告編

この日のイベントは、2つのグループに分けられていて、第1グループは先に試写を見てその後レクチャーを聴く、第2グループは同じレクチャーを一緒に聴いた後に試写を見る形式だった。私は第1グループだったので、予備知識なく試写を見ることになった。

映画の内容は、物理学の教授とその弟子2名が「万物の理論」を追う物語。「万物の理論」とは相対性理論と量子力学を統一する究極の目標で、この映画ではその理論が "T.o.E." (Theory of Everything) / トーエという名前の擬人化されたキャラクターで出てくる。これが「9次元から来た男」で、次元を超えていることを示すためだろう、博士たちと同じところにいたのを自分だけ画面の外に出て行ったり、2次元の本の中に博士と一緒に動いていたのに本から3次元に出て本を閉じて閉じ込めちゃうというシーンが出てくる。

擬人化されたT.o.E.を教授たちが追ってかわされる部分と、物理学の説明の部分が交互に現れる。物理学パートの中で、素粒子の説明がある。物質が分子、原子からできていて、原子はさらに電子と原子核からなり、原子核を構成する陽子・中性子はさらに小さい素粒子 (クオークなど) などからできているのだが、まだ終わりではない。それらを説明する理論として「ひも」が出てくる。「ひも」は9次元の空間にあって、その振動の違いが3次元世界では素粒子の違いになってでているということだ。残りの6次元は折りたたまれていて、これを「カラビヤウ空間」ということらしいのだが、映画を見ているときは「絡み合う空間?」と思っていた。折りたたまれているということだし。

私の理解は、3次元のものを写真に撮ると2次元になる際に、対象物の向いている向きで違った側面になるみたいなことかと思った。ただ、こういう風に簡単に理解してはいけない (= 理解した気になってはいけない)、理解していないことを残しておくのが発展の原動力だという  (あれ?どこで聴いた話だっけ)。

レクチャーは、この映画を監修した大栗博司先生 (カリフォルニア工科大学 教授 かつ 理論物理学研究所 所長. 東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 主任研究員) (ブログ、Twitter @planckscale) によるもの。難しい話のはずなのだが、分かりやすい (いや分かった気になってはいけないのだが)。アインシュタインの失敗のエピソードを入れたり、時々冗談として著書の宣伝を入れたりして、お話が上手な人でした。

背景の物理学の説明だけでなく、映像に関しても言及があった。出てくる宇宙の映像は、天体物理学の可視化プロジェクト・イラストリス (名前が可愛い) によるシミュレーションで、科学的にしっかりしたものであるという。


監修として、清水崇監督、山本信一ビジュアルディレクターには、いろいろ要求を出したようで、彼らはそれに答えてくれたとのこと。ニュートリノが、飛んでいる途中で種類が変わるのを色の変化で示す、「0.00 ...  (11個ならぶ) ...1 秒後」など時間を示すカウンターが表示されてるなどの工夫が随所に見られるそうだが、そういうお話を聞かないと見逃すよね。大栗教授は「また別の日に見に来てください」と言っていた。

R. Yoshihiro Uedaさん(@ryokan)が投稿した写真 -

特に感心したのは裏付がとれた事実と仮説をちゃんと分けること。超弦理論は有力な仮説ではあるけれども、まだ仮説であるので、「真理を追求している科学者」を描くようにしたということだ。NHKや民放も見習ってほしい。

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©  Miraikan

そういう映画ですのでオススメです。対極にある「ジョギング渡り鳥」同様に、頭脳が強制的に働かされます。