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2021/07/18

三菱の至宝展

 7月8日、三菱一号館美術館で、「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」のブロガー内覧会に招待され参加してきました。

三菱創業150周年記念 三菱の至宝展 https://mimt.jp/kokuhou12/
会期:2021年6月30日(水)〜2021年9月12日(日)
会場:三菱一号館美術館 (東京都千代田区丸の内2-6-2)
時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30) 祝日を除く金曜、第2水曜は21:00まで開館
休館日:月曜日 ※但し、祝日の場合は開館
観覧料:一般 1,900円 / 高校・大学生 1,000円 / 小・中学生 無料

三菱財閥由来の静嘉堂と東洋文庫の所蔵品をメインに、三菱経済研究所などの所蔵作品を加えたものになります。静嘉堂からは美術品が、東洋文庫からは古典籍が出品されています。静嘉堂の美術品は、岩崎彌太郎の弟で三菱第二代社長の岩﨑彌之助と、その子で三菱第四代社長の岩﨑小彌太によって収集されたものというのは知っていたのですが (過去の投稿「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」)、創業者岩崎彌之助とその子で第三代社長岩崎久彌による古典籍のコレクション、学術貢献のことは今回初めて知りました。2組の親子で指向性が異なるのが興味深いです。

今回12点の国宝が出品されているというのが売りな訳ですが、やはり曜変天目茶碗が一番の目玉だと思います (写真は特別の許可を得て撮影しています)。

曜変天目は、藤田美術館と静嘉堂にそれぞれ所属されているもの、「なんでも鑑定団」で発見 (?) されたものの3つがあると言われていいます。藤田美術館のものは2015年にサントリ―美術館と、2019年に奈良国立博物館で見たのですが、静嘉堂のものは「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」を見ると「今回は出品されていません」とあって、見たことがあったような気がしていましたが、もしかして初めてかもしれません。

ブロガー内覧会だからとはいえ、誰も周囲にいない状況で鑑賞できるのは不思議な気持ちです。

この展示は最後の方にあるのですが、途中にある写真撮影コーナーでこんなアトラクションがありました。

フラッシュを焚いて写真をとると、曜変天目の模様が浮かび上がる仕掛けです。写真をとるまで左のパネルがかかっているだけなので、見逃しやすいと思います。私も最初「何これ?」と思い、説明を読んで初めて気づきました。

私はあまり古文書とかに興味はないので、静嘉堂の出品物の方にばかり目が行きます。下は俵屋宗達の≪源氏物語関屋澪標図屏風≫の澪標図 (前期のみの展示 / 後期は関屋図)。奥には橋本雅邦の≪龍虎図屏風≫が写っています。


そういう観点からいくと、以前見た「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」のほうが私に向いていたと思います。

そういえば静嘉堂文庫美術館は2022年に東京・丸の内に移転するのですね (静嘉堂文庫美術館の移転について)。所蔵物の保管は世田谷で行われるということで、展示するものだけが東京に行くようですが、どれだけの規模になるのか、曜変天目は常設展示になるのか、今から気になります。


2020/03/03

画家が見たこども展

3月15日から三菱一号館美術館で始まった「画家が見たこども展」、現在は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため臨時休館になっているのですが、その直前の2月26日にブロガー内覧会が行われ、参加してきました。ギリギリのタイミングでしたね。

ブロガー内覧会自体も感染予防のため、高橋明也館長 (左) とTakさん (右) によるギャラリートークは取りやめということになっていたのですが、館長の挨拶だけは行うことになり、最初の部屋モーリス・ブーテ・ド・モンジェル《ブレのベルナールとロジェ》の前でお話がありました。

挨拶だけではなく、この展覧会の位置づけなどもお話いただきました。

三菱一号館美術館では、これまでもナビ派の展覧会を行ってきて、ナビ派をプッシュしてきたと言っても良いでしょう。19世紀頃から聖母子像など以外も子どもは題材として扱われるようになりましたが、特に日常の生活、家族を扱うナビ派では、子どもは重要な対象になります。そこで、ナビ派を中心として子ども

そして今回は南フランス ル・カネにあるボナール美術館の協力を得て、ボナール作品が多く集まっています。三菱一号館美術館所有もヴァロットンも多く出展されていました。

ただちょっと可愛い子どもの絵を期待している人にとっては物足りないかもしれません。以前森アーツセンターで行われた「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」(→ ブログ記事「こども展」) では、「難しいことを考えず、かわいいと楽しんでもらえば良い」ということだったので、その点に主催者側のこだわりの差が出ているものと思います。

その中から、可愛い子どもの絵を選ぶと、左のドニ《サクランボを持つノエルの肖像》 があります。ドニはポスターに使われている《赤いエプロンドレスを着た子ども》も可愛いです。

ほとんどが絵画作品でしたが、彫刻作品もあります。左はジョルジュ・ラコンプの《シルヴィの胸像》、右の絵画作品は同じくラコンプの《立つシルヴィの肖像》です。

最後の部屋にはボナールの晩年の作品がありました。ナビ派がそれぞれの道を歩む中ボナールは風景画を中心に描くようになっていたのですが、最後にまた子どもという題材に回帰したということです。

美術館は密集した場所でとどまる訳でもないし、手で触るものもないので、ウイルス感染のリスクは少ないと思うので、休館するというのは過剰反応のように思います。山場の期間を過ぎた3月中旬以降は美術館あたりから徐々に活動を活発化させた方が良いのではないでしょうか。

なお、写真は特別の許可を得て撮影しています。

開催概要
画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン
https://mimt.jp/kodomo/
場所:三菱一号館美術館 (東京都千代田区丸の内2-6-2 (Google Map))
会期: 2020年2月15日(土)~ 6月7日(日)
開館時間: 10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
    (祝日を除く金曜、第2水曜、4月6日と会期最終週平日は21:00まで)
休館日: 月曜休館
    (但し、祝日・振替休日の場合、開館記念日4月6日、
     会期最終週6月1日と、トークフリーデーの3月30日、
     4月27日、5月25日は開館)
    ただし、2月28日から3月16日の期間臨時休館

2019/08/04

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展

三菱一号館美術館で行われている「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」のブロガー内覧会が7月31日に行われたので、参加してきました。お話はおなじみブログ「青い日記帳」のTak (たけ) さんと、担当学芸員の阿佐美淑子さん。高橋館長も最初にご挨拶があり、その後も時々お話に割り込んでいくというスタイルでした。

マリアノ・フォルチュニという人は知らなかったのですが、お話を聞いて、現代ファッション・デザインの始祖のような人だとわかりました。1900年代はじめ女性はコルセットで締め付けるスタイルが上流から中流まで広がっていた状況で、そのスタイルから解放した人の代表的な一人です。

フォルチュニの代表作が上写真左の方の黒いドレス「デルフォス」。19世紀末に発見された、紀元前5世紀の彫刻「デルフォイの御者」(右) にインスピレーションを受けデザインされたそうです。

数年後には、この上に羽織って外出することが普通になった (それまで女性が一人で外に出ることはなかった) ということです。その意味で新しい時代を作った人の一人といえるでしょう。そのあとシャネルなどが続くことになります。
デルフォスは、波型のプリーツが全体に入っています。すごく軽く、たたんで専用の箱にしまいます (左)。日本の絹が使われているそうです。

フォルチュニ自身が亡くなって作られなくなり、今では再現できないということです。特許は出ているのですが、それだけでは再現できないノウハウがあったのでしょう。洗濯もフォルチュニ社が行うようにしていて、そうしないとプリーツが消えてしまうということでした。

今回展示されているドレスは、ほとんどが日本にあるものを集めたものになっています。実はベネチアのフォルチュニ美術館には衣装はなく、むしろ日本に沢山残っているそうです。

ファッションデザインで著名なフォルチュニですが、実は画家、舞台美術設計者、染色家、写真家といったマルチな才能を発揮していて、この展覧会はそのマルチタレントにスポットをあてたものになっています。

最初は画家としてスタートしています。父も有名な画家で同名のマリアノ・フォルチュニ (「マリアノ・フォルチュニ・イ・マエサル」とクレジットされていました)。9歳の時の絵も展示されていますが、最初は下手だから入れないつもりだったのを、「9歳の時の作品」と聞いて入れることにしたそうです。

舞台装置設計では、外光と間接照明を用いたシステムで、時刻によって異なる外の光を遠隔操作で変えることができるようになっています。1900年に特許を取得し、ヨーロッパ各地で採用されたそうです。

住居の照明も手掛けていて、本当に精巧に作られているとのこと。今は制作されていないので、展示会では模造品を作って展示しているが、展示会後はベネチアのフォルチュニ美術館で展示される予定になっています。

写真家としても才能を発揮しますが、写真は外部に公開するために撮影していたものではなく、そのためあまり知られていません。しかし、様々な機材、技法を試し、また内容も芸術的な作品も多く、特によく撮影した雲の写真は芸術性が高いものになっています。

フォルチュニ社、特許という言葉が出ましたが、ビジネスマンとしてもあったということです。染織物は、1921設立の工場で同じ技術で現在も作られているそうです。

ファッションということで女性に向けた展覧会というイメージを与えますが、このようにマルチタレント、ビジネスマンという視点で見ると、男性も楽しめると思います。阿佐美氏は、「男性も楽しめるように舞台装置の設計図や模型もおいた。期待通り男性の食いつきが良かった」とおっしゃっていましたが (言葉はもっと上品に)、私は時間の余裕がなかったせいでそこはほとんどスルーしてしまいました。

10月6日までですので、まだまだ余裕があります。

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展
https://mimt.jp/fortuny/
場所:三菱一号館美術館 (〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2)
会期:2019年7月6日(土)~10月6日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、8月12日~15日、会期最終週平日は21:00まで)
休館日:月曜休館(但し、祝日・振替休日の場合、9月30日とトークフリーデーの7月29日、8月26日は開館)

2018/02/10

赤い枝を探せ

三菱一号館美術館で開かれている「ルドン―秘密の花園」展。初日の2月8日にブロガー内覧会が行われ、参加させてもらいました。

トークの様子
まず館長の高橋氏 (右写真) が、ルドンに対する思い入れを語ります。ルドンの《グラン・ブーケ (大きな花束) 》を購入するきっかけになったエピソード、購入後最初の公開が2011年パリのルドン展であったこと、震災の中での苦労、今回のルドン展までに時間がかかったことなど。

ルドンは、印象派の時代にあって独自の道を進み、生涯にわたって多彩な技法やテーマに取り組んだため、「ルドンといえば○○」といったわかりやすいレッテルはありません。ます。それでも普通「象徴主義」と位置付けられるとのことです。

ルドンは初期には木炭画、エッチングなどを使ったモノクロームの作品を発表していますが、発表はしないものの小品の油彩も描いていました。後年、油彩やパステル画など色彩を使った作品を発表します。

今回の展覧会のテーマは「花」で、必然的に色彩の豊かなものも多くなりますが、若い頃植物学者アルマン・クラヴォーと親交があり、その影響を受けた作品が黒の時代にもあります。

配置図
今回の展示の目玉は、ルドンが手がけたフランス ブルゴーニュ地方のドムシー男爵家の食堂の装飾画が日本で初めて揃うことにあります。三菱一号館美術館の《グラン・ブーケ (大きな花束) 》も元はその一つでした。

展示は元の食堂の壁ごとの配置をなるべく生かした配置になっています。元の配置図も示してありました。元は高いところにあっためあまり近寄っては見れないのを、今回の展示では寄ってみることができます。絵自体も上の方は粗く描かれていたのがわかります。次の写真の左の絵C.《人物(黄色い花)》は途中から繋いだ跡がわかります。

また、途中でやめている感じのところもあります (写真右作品《花とナナカマドの実》の右下)。「絵はどこまで描けば完成か」というのははっきり決められないところではありますが、この「途中でやめた感」はその頃の流行だそうです。

トークの中では明治時代の横山大観らの「朦朧体」との類似にも言及がありました。日本人には好まれるのではないかと。

象徴主義に関して、「赤い枝」の話がありました。ルドンの作品の中には赤い枝が描かれているものがある、とトークでいってしまうと、鑑賞が「赤い枝を探せ」状態になってしまう、という話でした。ええ、最初の方の展示まで戻って、横浜美術館所蔵の《二人の踊女》を確認してきましたよ。

これ以外にも、何かを象徴するものが描かれているのですが、ルドン自身は何も語らなかったそうです。

今回写真は特別の許可を得て撮影しています。ドムシー男爵家の食堂の絵の配置を再現した部屋があり、通常はそこでのみ写真を撮ることが可能です。

以下展覧会情報です。なお、4月6日は開館8周年のイベントで、付箋のプレゼントがあるそうです。

「ルドン―秘密の花園」展
http://mimt.jp/redon/
会場: 三菱一号館美術館
    〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
会期: 2018年2月8日(木)~5月20日(日)
開館時間: 10:00~18:00
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日: 月曜日(但し、祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)
チケット: 一般 1,700円、高校・大学 1,000円、小・中学生500円 
     ※障がい者手帳をお持ちの方と付添の方1名まで半額。


2017/11/13

パリ・グラフィック展

11月9日、三菱一号館美術館で開かれている「パリ・グラフィック展」の内覧会に参加してきました。

まず展覧会の情報から。

パリ❤グラフィック展
会期:2017年10月18日(水)~ 1月8日(月・祝)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、11月8日、12月13日、1月4日、1月5日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、1月8日と、「トークフリーデー」の10月30日(月)、11月27日(月)、12月25日(月)は開館
年末年始休館:2017年12月29日~2018年1月1日
展覧会サイト:http://mimt.jp/parigura/
トークは、三菱一号館美術館学芸員の野口玲一氏と、おなじみ「青い日記帳」主宰Takこと中村剛士氏。



この展覧会は、19世紀末に大きく動いた、メディアとしての版画に焦点を当てます。誰が見るものか、何が伝えられるのか、どのように流通するのか。

それまで、版画は絵画の1ランク下の存在に見られていました。そこに、ロートレックなど媒体による価値を気にしないアーティストたちが現れます。彼らはカフェや演劇のポスターで成功しますが、だからと言って「格上」の絵画に移行するのではなく、版画も絵画も同じように制作を続けます。

パリの庶民は、これまであまり触れられなかった役者やダンサーの姿を、街中に貼られたポスターで知るようになります。ちょうどそれは、役者が描かれた浮世絵を見ていた江戸市民と似たようなものかもしれません。

ポスターに人気が出てくると、エリートたちはそれを自分の家に飾りたいと思うようになります。大衆向けだった版画が、エリート向けに作られ、リビングに飾られたり、引き出して眺められたりしました。またそうなると題材も変わってきて、例えばエロティックなものも描かれるようになりました。

また、大衆もポスターや版画集という形で版画を買うようになってきます。ここもまた江戸時代に庶民が絵 (浮世絵) を買っていたということを思い出します。

お話を聞いていて、世紀末、時代が変わる感覚、高揚感に、版画ポスターが一役をかったのではないかと思いました。これまで芸術はアカデミーから出ていた、これからは我々庶民からアートが出てくる、そういう時代の変化を感じていたのかもしれません。

そしてこれは今のネットの絵師にも通じるというお話には共感しました。そこから次世代のスターが生まれてくるかもしれません。もう生まれ始めているかも。

以前どこかでロートレック展を見たとき、図録は買わず、「ロートレック写真集」というものを買ってきました。ロートレックの幼少時代、ムーラン・ルージュと踊り子たち、カフェ、娼館などロートレックに関係する様々な写真が収められています。そこに出てくる、ロイ・フラー、ラ・グーリュ、ジャヌ・アヴリルなどが今回モデルとして絵の中で出ていました。それで思い出して「ロートレック写真集」を引っ張り出して見ています。

2017/07/15

全裸のキリスト

三菱一号館美術館で、「レオナルド×ミケランジェロ展」が行われています。

レオナルド×ミケランジェロ展
会期:2017年6月17日(土)~9月24日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、祝日は開館)
展覧会サイト:http://mimt.jp/lemi

7月11日、ブロガー向け内覧会が行われました。ナビゲーターはおなじみ「青い日記帳」主宰のTakこと中村剛士さん。

ちょうどこの日からミケランジェロの未完の彫刻 《十字架を持つキリスト (ジュスティニアーニのキリスト) 》が公開されています。

これはミケランジェロが製作していたものですが、彫り進めて顔の部分に来た時に、もともとの石に大きな疵が見つかり、そのためミケランジェロは製作を途中でやめてしまったものです。後に17世紀に別の彫刻家によって現在の形に仕上げられたようで、この形で取引されていたことが記録でわかるそうです。長らく行方がわからなかったのですが、2000年に特定されたとのこと。

なぜ会期の最初から展示されなかったかというと、6月までロンドンのナショナル・ギャラリーで展示されていたため。学芸員のトークでは設置にあたってのドタバタも披露されました。二重の木箱で送られてくるのだが、内箱の状態で設置して、箱の底は土台として残しその上にカバーがかけられて展示される。箱の状態で設置するため、どちらが正面なのかわかっていないといけないのだが、イタリアから来た担当者はわからないとのこと。結局再度クレーンを持ち込み設置し直したそうです。トークでは「何しに来たんだ」、「さすがイタリア人」という怨嗟の声が感じられました。

さてこの作品は、キリスト像には珍しく全裸です。しかも痩せ細った姿でなく筋骨隆々。ルネサンス芸術にギリシア古代芸術の特徴を取り入れた形になっています。キリストが全裸というのは、当時はとんでもない話だっということですが、ミケランジェロだから通ったというところもあるとのこと。

どの部分がミケランジェロでその部分が後世の彫刻家によるものか、という疑問に関しては、立ち方、十字架に寄り添うポーズ、足や背中の筋肉にはミケランジェロの特徴が出ているとのこと。顔に疵が発見されてそこでやめてしまったので、顔、左腕あたりは後世の彫刻家によるものと考えられているそうです。

展示にあたっては外光が入るようにしているとのことで、一階に設置されていることもあり、外からも一部は見えるようです。どれくらい見えるのか、そとから見た感じはどうなのか、ちょっと気になります。

ミケランジェロのこの作品のことばかり書きましたが、レオナルド×ミケランジェロ展は、素描を中心に二人の対比がされた展示になっています。

2017/02/11

オルセーのナビ派展

2月9日、三菱1号館美術館で行われている「オルセーのナビ派展」のブロガー内覧会に行ってきました。実は抽選に外れて参加できないのに勘違いして行って、ご好意で参加させていただいたのです。

オルセーのナビ派展 http://mimt.jp/nabis/
場所: 三菱一号館美術館 〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
会期: 2017年2月4日(土)~5月21日(日)
開館時間: 10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜休館(但し、2017年3月20日、5月1日、15日は開館)

左: Takこと中村剛士氏 / 右: 三菱一号間美術館館長 高橋明也氏
Takこと中村剛士氏と三菱一号間美術館館長 高橋明也氏のトークがありました。

ナビ派は一般にはあまり馴染みがなく、まとまって出されるのは今回が日本初と言ってよいくらいらしい。これは日本に限らず世界的にそうらしい。私も以前オルセー美術館展があったとき (そんなに前じゃないと思っていたが2010年だった)、その一つのチャプターが「ナビ派」で、そこで初めて知った。

その「ナビ派」とは何か。サイトの「見どころ」から引用する。
19世紀末パリ、ゴーガンの美学から影響を受け、自らを新たな美の「ナビ(ヘブライ語で"預言者"の意味)」と称した前衛的な若き芸術家グループ。平面性・装飾性を重視した画面構成により、20世紀美術を予兆する革新的な芸術活動を行った。
絵としては、ゴーギャンの系譜を引き、面を一様に塗るのが特徴のようだ。その意味で浮世絵に近いところがあり、また実際に浮世絵に影響を受けているアーティストもいて、日本人にもなじみやすいということだ。印象派よりも日本人向きじゃないかとのこと。私も絵画らしい絵画だと感じた。

もう一つの特徴はテーマに暗示された背景、物語性らしい。私の好きな作品 (2010年オルセー展で好きになった) にヴァロットンの「ボール」があるのだが、公園でボールを追う少女、しかし木の影や大人が離れていることにより不吉な予感がある。

フェリックス・ヴァロットン《ボール》
オルセー美術館は印象派で有名なところだが、現館長のこじはる ... じゃなかったコジュヴァル氏の専門がナビ派で、このためナビ派の作品の所蔵を増やしているし、展示もそれまでひっそりあったのが光の当たる場所になったらしい。あとコジュヴァルは自分の美意識のためには強引なところがあってトランプみたいなところがある、という話が面白かった。

なお、写真は普通内覧会では特別に許可されるものですが、今回はそういう断り書きはないようです。一部のボナール作品は撮影禁止、またすべてのボナール作品はSNS投稿はお断りしますということだけで、その日だけの話じゃないように思います。ボナールに関しては「著作権の関係で」という話でしたが、Wikipediaを見ると、亡くなったのが1947年1月23日なので、ちょうど死後70年なんですね。でも70年はちょうど超えたので心配は必要ないと思います。