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2015/10/13

わずか2ヶ月で評価を覆す必要があろうとは

ユネスコの記録遺産に、日本からシベリア抑留者の引き揚げ記録と「東寺百合文書」登録されるという。同時に南京大虐殺も登録された。

世界記憶遺産:「南京大虐殺」登録 「慰安婦」却下 中国申請2件でユネスコ (毎日新聞 2015年10月10日)
記憶遺産:日本から2件 関係者、静かに喜び (毎日新聞 2015年10月11日)

「南京大虐殺」に関しては犠牲者数に関しては異論はあるだろうが、事実としては異論がないところであろう。犠牲者数に関しては中国側が出してきた30万人というのをそのまま受け入れるとユネスコ記憶遺産の権威も損ねることになるので、そこはしっかりと精査してもらいたい。

「事実としては異論がないところであろう」と書いたが、世の中にはそうは思わない人もいるのは知っている。しかし、政府内にそういう人がいて、それを堂々と表明するとは思わなかった。

「南京・慰安婦の存在、我が国は否定」 自民・原田氏 (朝日新聞 2015年10月2日)
原田義昭・元文部科学副大臣は会議後、記者団に「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しようとしている時にもかかわらず、申請しようとするのは承服できない」と語った。発言は政府見解と相反する内容だ。
こんな人もいるんだなー、やれやれと思っていたが、よく見ると「我が国はいまや否定しようとしている」と「我が国」が主語になっている。そして内閣からはこれを否定する言葉は聞こえてこない。聞こえてくるのは中国とユネスコへの批判だけ。

菅氏:「中国はユネスコを政治利用」 (毎日新聞 2015年10月2日)

そしてさらに

二階氏 ユネスコへの拠出金見直すべき (NHK 2015年10月11日)

これは恥ずかしい。

先日、「戦後70年内閣総理大臣談話」で、私はこの談話を「全体としては良い談話になったのではないでしょうか」と評価した。しかしそれは、今後の安部首相の言動によって決まるとも書いた。
今後は「謝罪」を繰り返すことはしない、と言っているわけです。

ただ私自身は、どこかで「これまでお詫びしてきた/その心は忘れない」という総括を行うべきだは思っていたので、これは適切だと思います。ただそれが、繰り返し、村山談話や河野談話を批判し、無力化しようとしてきた安倍首相では説得力がありません。しかし、肝心なのは、この先この談話が口先だけではないことを証明していくことだと思います。
これまでの反省があるのなら、この記憶遺産登録を真摯に受け止めるコメントを出すべきだろうし 、むしろ、犠牲者数に関しては定説が定まっていないことを明確にするために、日中共同で出してもよかったくらい。結論を出すのは難しいだろうけれど、中国側も提案を無視して単独では出しにくい状況にはなったと思う。

南京大虐殺に関しての一連の政府の対応を見ると、安部談話での「反省」は、自分の本心ではないということが明らかになったということだろう。スピーチライターが苦労して書いた文章を読んだだけ。「今後の安部首相の言動によって決まる」と書いたのは、あまり期待できないと思っていたからだが、それでもわずか2ヶ月も経たず評価を覆す必要があろうとは思ってもいなかった。