2018/01/08

草乃しずか展と中谷芙二子+宇吉郎展

銀座で行われている次の2つの展覧会に行ってきました。

草乃しずか展 煌く絹糸の旋律
会期:2017年12月27日(水)-2018年1月15日(月)※1月1日(祝・月)は休業。
会場:松屋銀座  8階 (東京都中央区銀座3-6-1)

「グリーンランド」 中谷芙二子+宇吉郎展
会期:2017年12月22日(金)~2018年3月4日(日)不定休
会場:銀座メゾンエルメスフォーラム  (東京都中央区銀座5‐4‐1 8階)

草乃しずかは、刺繍作家です。昨年は、ヨコハマトリエンナーレの青山悟、shiseido art eggの沖潤子と刺繍作家に縁がありました。また、三井記念美術館で行われた「特別展 驚異の超絶技巧! -明治工芸から現代アートへ-」でも刺繍絵画が出ていました。

草乃しずかは日本の伝統技法を用いた作品を作り続けています。最初は物資の足りない時代に古い着物をリフォームした作品などが出ていますが、現在はアートの領域に進んでいると言えるでしょう。源氏物語や鳥獣戯画の刺繍による再現、古来からの文様を用いたデザイン、紫式部やエカテリーナなど歴史上の人物をイメージして制作した着物などが出ていました。100歳を超えた母親とのコラボの作品 (母親が古布にアプリケして草乃しずかが刺繍) も興味深いものでした。

展示の中には、明治時代に、それまで職人が作るものだった刺繍が学校教育に取り入れられ、女子の教養になったということも触れられていました。そういえば昔小学校の家庭科で刺繍やったな。その頃は男子の教養でもあったのか。

会場には、刺繍の技法を説明するビデオも流れており、思わず全部見ていました。

またちょうど作家本人のギャラリーツアーがありました。会場は結構な混み様でしたので、それには参加しませんでしたが、ちょっとだけ本人を拝見しました。上品なご婦人でした。

中谷芙二子は、「霧の彫刻」を作り続けているアーティストです。私は、横浜トリエンナーレ2008の三渓園での展示で始めて知ったのですが、大阪万博のペプシ館以来世界各所で出しているんですね。会場にマップがあって、そのうち5作品がビデオで流されていました。昭和記念公園での展示風景では、子どもたちが霧の中で遊んでいたりして楽しそうで良かったです。


中谷宇吉郎は、中谷芙二子の父で、氷の結晶の成長を初めて明らかにし人工的に作った学者です。今回の展覧会では、中谷宇吉郎の業績に関する展示もあり、これはこれで興味深いものでした。

今回の展示のタイトル「グリーンランド」は、石川県加賀市に「中谷宇吉郎 雪の記念館」が建設されるにあたり、父が氷の研究を行なったグリーンランドの氷河の石を持ってきてその風景を作りたいという中谷芙二子の思いから来ています。

初めてGINZA SIXにも行って来ました。右の写真は屋上ですが、雨が降っていなかったらもう少し橋まで行って見たかったです。

GINZA SIXの6階の蔦屋書店も行ってみましたが、アート、デザイン関係の領域が充実していて、楽しいとところですね! 福袋も色々種類があって、家がもっと広ければ色々買ってしまいそうでした。万年筆なども売ってあって、高い万年筆の似合うオヤジになりたいと一瞬思いました。

本当は、アドミュージアムの「思いつく」を考える展にも行こうと計画していたのですが、月曜で休館でした。待ち合わせしていた息子には申し訳ないことをしてしまいました。

2018/01/07

新しい価値を売る (2) セルフィー専用カメラ

ここでアップルが提供しようとしているものはモノではなく、新しい体験であり、新しい生活。私達が買うのはそのモノではなく、それを使っている「自分自身」。以前、「モノを売るのではなく新しい価値を売る」なんて書いたんですが、この商品もそんな感じですね。

engadget (2018/1/5) 撮られる人を確実に笑顔にするカメラ! カシオの「TR mini」レビュー

  • コンパクト型で (わかりにくいな。化粧用品のコンパクトの形)、ふた部分がカメラとライト、下部分がディスプレイ
  • 美肌モードが充実
  • 使っている姿が可愛い
レビューの中の
現実ではないとわかってますってば! だけど楽しい!
とか
TR miniは、時計を巻き戻したとしてもそんなキレイな時はなかったぞ? と思える写真を量産してくれます。それが非現実的であるとわかっています。でも撮れた写真は確実に気分をアゲてくれるんですよね。 
 などを読んでいて、「モノを売るのではなく新しい価値を売る」では、
ここでアップルが提供しようとしているものはモノではなく、新しい体験であり、新しい生活。私達が買うのはそのモノではなく、それを使っている「自分自身」。
と書きました。この商品も同様に、デジカメを売っているのではなく、 これでセルフィー写真を撮っている自分、パーティーでみんなでとって盛り上がっている自分を買っているのだと思います。

ツイッターに書きましたが、まず世界市場を見ているというのはいいところだと思います。売れることはわかったので、日本でも出せばいいのにと思います。

CASIO INTERNATIONAL TR-M11


2017/12/31

2017年にいった展覧会とアートイベント

今年は横浜トリエンナーレの年でした。忙しかったので、あまりそれ以外の美術展にいけていないかもと思いましたが、そうでもないかな。

日付順はやめて展覧会、アートイベントで分類します。

美術展

  • 森美術館
  • 原美術館
  • 国立新美術館
    • 草間彌生展「わが永遠の魂」 (2017/5/1)
    • ジャコメッティ展 (2017/8/27)
    • サンシャワー展 (2017/8/27)
  • 三菱一号館美術館
  • 横浜美術館
    • 篠山紀信「写真力」(2017/2/12)
    • 和田淳展 | 私の沼 (2017/2/12)
    • ファッションとアート 麗しき東西交流 (横浜美術館) (2017/05/17) 
    • ヨコハマトリエンナーレ2017
  • Bunkamura
  • そごう美術館
    • 院展 (2017/2/16)
    • マリー・アントワネットとナポレオン皇妃ジョゼフィーヌが愛した宮廷画家 ルドゥーテの「バラ図譜」展 (2017/5/16)
  • パナソニック汐留ミュージアム
    • マティスとルオー展 (2017/3/11)
  • 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
  • 三井記念美術館
    • 「驚異の超絶技巧」展 (2017/11/18)
  • 21_21 Design Sight
    • デザインの解剖展 (2017/1/21) 
    • アスリート展 (2017/2/25, 2017/4/8)
    • そこまでやるか 壮大なプロジェクト展 (2017/10/1)
  • 東京ステーションギャラリー
    • パロディ展 (2017/3/18)
  • NTT-ICC 
    • ART+COM  . RHIZOMATIKS RESEARCH  (2017/3/18)
  • デザインハブ
    • 地域×デザイン2017 -まちが魅えるプロジェクト- (2017/2/26)
  • TOTOギャラリー「 間」
    • 堀部安嗣展 (2017/1/21)
  • 泉屋博古館分館
  • Fuji Xerox Art Space
    • 富士ゼロックス版画コレクションと印刷物展 (2017/2/8)
    • 河口龍夫展  (2017/6/16)
    • ハンネ・ダルボーフェン展 (2017/9/25)
  • FUJI FILM SQUARE
    • 鬼海弘雄写真展「India 1979-2016」(2017/5/29)
    • 高橋修悦写真展「走れ、小海線」(2017/5/29)
    • 「幕末明治の写真家が見た富士山 この世の桃源郷を求めて」(2017/5/29)
    • 二十世紀の巨匠 美と崇高の風景写真家 アンセル・アダムス (2017/11/27)
  • 3331 Arts Chiyoda
    • ソーシャリー・エンゲージド・アート展 (2017/3/5)
  • 岡本太郎記念館
  • 資生堂ギャラリー
    • 吉岡徳仁 スペクトル − プリズムから放たれる虹の光線 (2017/3/11)
  • ポーラミュージアムアネックス
    • Alan Chan「HELLO GINZA!」 (2017/5/1)
  • エスパス ルイ・ヴィトン東京
    • DAN FLAVIN展 (2017/5/1)
  • 銀座メゾンエルメス フォーラム
    • 「水の三部作 2」アブラハム・クルズヴィエイガス展 (2017/5/1)
  • BankART NYK
    • BankART LIfe 「観光」(2017/9/1) 
  • ソニービル

    ギャラリー

    • うらあやか個展  "The body dances freely" @ Art Center Ongoing  (2017/2/12) 
    • LITTLETOPIA - 森洋史個展  @ Art Lab Tokyo (2017/2/25) 
    • 多摩美術大学 日本画専攻卒業制作有志展澪標 (miotsukushi) @ 3331 Arts Chiyoda (2017/3/5)
    • 写真分離派展 @ NADIFF apart  (2017/3/4)
    • アンスティチュ・フランセ東京 (2017/3/18)
    • 木下佳通代展 @ ユミコ チバ アソシエイツ (2017/3/18)
    • アートラボ・グループ・アート・ショー ムスタングラーズ @ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
    • ベンモリ・ジャングルワールド x シロクマ親子 @ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
    • 山本桂輔展「地底の雲」@ ヒカリエ8/ (2017/5/29)
    • Gari Gari Girly展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/21) 
    • わらおびびし個展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/21) 
    • Hanabi展 @ Art Lab Tokyo (2017/7/29)
    • パオラ・ピヴィ《全部みんな同じに見える》@ ペロタン (2017/9/17)
    • 岩清水さやか @ Art Lab Tokyo (2017/9/17)
    • 黄金町バザール2017
    • Possessions Jomi Kim solo exhibition @ Art Lab Tokyo (2017/12/9)

    イベント

    • 2017/1/14 現代芸術アーカイヴの構築に向けて―保存・発信・活性化 @ 慶応義塾大学三田キャンパス
    • 2017/1/21ヨコハマラウンド ラウンド1 <0と1の間にあるアート> @ 横浜美術館
    • 2017/1/25 トリエンナーレ学校2017 vol.9 アートで地域をつなぐ活動にみる創造性 @ 横浜美術館
    • 2017/1/28 国立新美術館20周年シンポジウム「アーカイヴ」再考 - 現代美術と美術館の新たな動向
    • 2017/2/4 「MAMプロジェクト023:アガサ・ゴス=スネイプ」 アーティストトーク 森美術館
    • 2017/2/12 横浜美術館サポーター勉強会「美術館に収まりきれない彫刻の魅力」@ 横浜美術館
    • 2017/2/13 森美術館国際シンポジウム「現代美術館は、新しい『学び』の場となり得るか?―エデュケーションからラーニングへ」@ アカデミーヒルズ
    • 2017/2/22 トリエンナーレ学校2017 vol.10 建築家としてまちを刺激する試み
       @ 横浜美術館
    • 2017/2/26 DOOR to ASIA -アジアデザイナーと東北事業者が未来の扉をひらく- @ デザインハブ
    • 2017/3/22 トリエンナーレ学校2017 vol.11 法と市民活動 
    • 2017/3/25 ヨコハマラウンド ラウンド2 <創造と汚染>
    • 2017/4/8 アスリート展トーク@ 21_21 Design Sight → ブログ Analogy Learning
    • 2017/4/18 森美術館アージェント・トーク031:崩れゆく絆―アルフレド・ジャーが見る世界のいま → ブログ アルフレド・ジャーの講演を聞いてきた
    • 2017/4/19 N・S・ハルシャ展キュレータートーク「ハルシャ、マイスール、インド」
    • 2017/5/28 ヨコハマラウンド ラウンド3 <島とオルタナティブ: 歴史・社会、医療、アート>
    • 2017/6/6 森美術館 アージェント・トーク032: 選択の重要性―アーティストと美術館は制作、収集、展示、保管そして保存においていかに選択をするのか?
    • 2017/6/28 横浜美術館 トリエンナーレ学校2017 vol.12  【ヨコハマトリエンナーレ2017】アーティスト 宇治野宗輝と語らう
    • 2017/7/8 国立新美術館 シンポジウム「現代美術は東南アジア地域をどのように表象してきたか」
    • 2017/7/9 森美術館 アーティスト・リレー・トーク「MY WORK」
    • 2017/7/29 トークセッション 「写真の現場から世界へ:三影堂と中国現代写真の歩み」@ 森美術館
    • 2017/8/4, 5 ヨコハマラウンド ラウンド4<繋がる世界と孤立する世界>
    • 2017/8/20 ヨコハマラウンド ラウンドbis <K.T.O.と横浜・インド>
    • 2017/8/25 ヨコハマラウンド ラウンドbis パオラ・ピヴィ アーティストトーク
    • 2017/8/25 第11回shiseido art egg賞 対話型審査会 → ブログ shiseido art egg 公開審査会
    • 2017/8/26 「ヨコハマラウンド」 ラウンド5<ガラパゴス考察>
    • 2017/9/8 寺子屋サンシャワー 【第5回】建築|東南アジアの近現代建築 @ 国立新美術館
    • 2017/9/16 トークセッション「私の東南アジアを話し尽くす」@ 森美術館
    • 2017/9/18 ヨコハマラウンド ラウンド6 <新しい公共とアート>
    • 2017/9/19 トーク「写真の見方―記録か芸術か」@ 森美術館
    • 2017/10/8 ICC20周年記念シンポジウム「メディア・アートの源流とその変遷 メディア・アートとICCの20年」(NTT-ICC)
    • 2017/10/1 レクチャー「比較の難しさ 東南アジア地域をキュレーションするための調査、テーマ、その他の方法」@ 森美術館
    • 2017/10/15 ヨコトリしゅみせん!「有頂天の余韻を遺す〜図録ってどうやってつくるの?〜」@ 横浜美術館
    • 2017/10/21 ヨコハマラウンド ラウンド7 <我々はどこから来てどこへ行くのか?>
    • 2017/11/2 グッドデザイン賞審査レビュー ユニット16 仕組み取り組みのデザイン @ 東京ミッドタウン デザインハブ 
    • 2017/11/3 ヨコハマラウンド ラウンド8 <より美しい星座を描くために: アートの可能性とは?> → ブログ アートとAI
    • 2017/12/9 現代アートと哲学対話―新しい学びの可能性 @ 森美術館
    今年はヨコハマトリエンナーレ2107以外で言えば、国立新美術館と森美術館で行われたサンシャワー展が良かった。昨年からシンポジウムなど行われ、期間中もトークやレクチャーに参加しました。

    今年最も印象に残っているのが、森美術館で行われた「崩れゆく絆―アルフレド・ジャーが見る世界のいま」です。

    shiseido art egg 公開審査会

    shiseido art egg 審査会が今年から一般公開されることになり、抽選にあたったので8月25日の対話型審査会に参加してきました。

    shiseido art egg とは
    https://www.shiseidogroup.jp/gallery/artegg/
    シセイドウ アートエッグは、新進アーティストの活動を応援する公募展です。
    • 毎年3名が選ばれる。
    • 資生堂ギャラリーをどう使うかも審査の基準になる。
    • 選ばれた人は資生堂ギャラリーで3週間の個展ができる
    今回の受賞者は以下の三人 (第11回 shiseido art egg/審査結果) で、ここから一人を選ぶことになります。
    • 吉田志穂 
    • 沖潤子
    • 菅亮平
    「第11回 shiseido art egg」展 でそれぞれ約3週間ずつ個展が開かれました。

    最初に資生堂ギャラリーの沿革の説明がありました。資生堂は1915年に薬局から化粧品への事業転換を測ったそうです。1919年には資生堂ギャラリーを始めました。「芸術を通して価値を会社に取り込む」ことを狙いにしたとのことでした。

    shiseido art egg 審査の説明です。新人ということで、「新しい価値観」を重視しているということでした。また、ジャンルにとらわれないということも意識しているとのことで、今回は写真、刺繍のアーティストが入っていますし、菅亮平氏も純粋な絵画の作品ではありません。

    吉田志穂さんは、インターネットの世界での写真のあり方を探ります。ネットで見つけた写真の現地へ自ら赴き自分の写真を撮影します。

    展示では、「寄り」と「引き」を意識したものにしたとのことでした。引いて全体をみてもらう、寄って細部をみてもらう、両方あって初めて全体を理解してもら得るようにとのことです。

    沖潤子さんは刺繍作家です。一旦会社勤めを行なったあと、刺繍で美術の世界に入りました。このため3人の中では一番の年長さんです。

    扱う材料は、何か物語のある古布です。入手した布をずっと部屋に置いておき、熟成させるというのでしょうか、何かを感じた時に制作を開始します。

    最初はよくわからない作品と思っていましたが、お話を聞いているうちに、自分の内部にある思いや衝動が表出したものになっているのだなと理解できました。

    ただ、そういう作風の人だけに、展示方法も審査基準に入っていることは辛いかなと感じました。

    菅亮平さんは、「ホワイトキューブ」にこだわった展示です。「ホワイトキューブ」は現代の美術館やギャラリーで多く使われる展示空間。観客に美術館の立地や環境を忘れさせ、アートに没頭してもらうための装置です。しかし菅亮平さんの作品は、そのアート作品がなくなったホワイトキューブ。観客は何もない美術館を歩き回る感覚になります。

    審査員は『美術手帖』編集長の岩渕貞哉氏、アーティストの宮永愛子氏、建築家の中村竜治の3名。それぞれの候補者に感想を語り、質問もしていきます。

    審査は意見が割れました。というよりも審査員の皆さんも悩んでいるようです。

    審査基準の「ギャラリーをどう使うか」で言えば、そのような経験も豊富な菅亮平さんが一歩抜きん出ているように見えます。一方、新進アーティストの発掘の場ということを考えると、そういう経験を持った人は本来はあまりいないはずです。

    沖潤子さんは年齢的に新人賞を取るのは最後のチャンスだからというのもちらと聞こえてきたような気もしますが、そんなことで決めてはいけない、ちゃんと内容で判断しなければという揺り戻しも感じました。

    以前、「アートの評価ってなんだろうね」と書いたのを思い出しました。

    結局この日は決まらず (最初からそれも織り込み済みだったのかもしれません)、後日発表ということになりました。

    私としては、年齢に関係なく、自己の内面の表出が作品になっている沖潤子さんに決まって欲しいと思いました。
    → 2017/10/6 「第11回shiseido art egg賞」審査結果が発表されました。沖潤子さんが受賞されました。おめでとうございます。

    後日3年分のshiseido art egg 展覧会カタログをいただきました。ありがとうございます。川久保ジョイも昨年入賞していたんですね。

    2017/11/26

    デンマーク・デザイン展

    11月23日から行われるデンマーク・デザイン展の内覧会が22日に行われ、参加しました。

    北欧デザインというくくりでの展覧会はあったが、デンマークに特化したもので大きなものは今回が初めてということです。

    まずデンマーク大使館のマーティン・ミケルセン氏の挨拶です。

    デンマークの冬は長く、気候が厳しい。人はあまり外出したがらず、家を快適にすることに力を入れる。そのため快適なインテリア、家具のデザインが発達した。

    ここはこれからこの展覧会をみていく上でキーとなるポイントだと思いました。

    そのあとは、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館の主任学芸員 江川均氏による解説です。全体が章立ての構成になっており、それに従って館内を順に巡ります。

    最初はロイヤル・コペンハーゲン。これは「デンマーク・デザイン」が注目される前の時代です。まず「ブルーフルーテッド」(写真)。そしてその後の「ブルーフラワー」シリーズが続きます。

    磁器は焼成温度が1400℃と高く、その温度に耐えられる色は青しかなく、このため白地に青一色の絵付けが主流です。後には多色のものもありますが、それは複数回に分け焼いたもので、そのためコストが高くなります。多くの人に使ってもらうことを優先して青一色のものが多くなっているそうです。

    「ブルーフラワー」シリーズでは非対称のデザインが特徴ですが、これにはジャポニズムの影響が大きいということです。

    次の部屋では、近代デザインのパイオニア、コーオ・クリントに光が当たります。古典をベースにしながら、機能性を追求した家具をデザインしました。人間工学の先駆者と言われれいるそうです。直線的なデザインが特徴です。

    次の時代「 ミッドセンチュリー」の特徴は「オーガニック」です。「オーガニック」は今と違って、「曲面のデザイン」という意味です。人間工学の影響もありますし、素材の発達、工業の発達によってそれが可能になったという背景もあります。また、大量生産のアメリカに対して、手工業的なところがあり、そこが人気になりました。

    この時代の中心人物に、アーネ・ヤコプスン[アルネ・ヤコブセン]、ハンス・ヴィーイナ[ウェグナー]、フィン・ユールがいました。もともと建築家だが、その中の家具をデザインしたという人が多いようです。


    ヴェアナ・パントン (写真) もこの時代の人です。あれ、このデザインは? と思いましたが、そうです、以前  (2009年だったよ ...) 見たヴェルナー・パントンです。プラスティックという新しい素材を使うところはデンマークらいしかもしれませんがが、色使いやフォルムは他のデンマーク製品とは一線を画するようなものになっています。図録を見るとやはり特に国外で高く評価されたとありました。

    家具以外では、ポウル・ヘニングスンの眩しくない照明「アーティチョーク」や、ヤコブ・イェンスンのオーディオ機器やポータブルラジオがありました。ヤコブ・イェンスン[イェンセン]は、バング&オルフセンのかっこいいオーディオ機器を手がけた人です。これは欲しいと思う人は多いのではないでしょうか。

    レゴもデンマークでしたね。最初の頃のパッケージとか展示されていて興味深い。こんな小さなパッケージで小分けにされて売られていたんですね。少しずつ貯めて、大事に使っていたんだろうなと思います。

    最後の章「ポストモダニズムと現代のデンマークデザイン」では、自転車の説明がありました。展示されていたキビースィの自転車《PEK》高級品で高いものですが、デンマークは国土の高低差が少ないため、自転車大国となっおり、普段使いの自転車の産業も盛んだそうです。展示されていた自転車の背後の壁には、デンマークの日常に自転車が自然に存在する写真が貼られていました。

    最後に座れるチェアが幾種類か置いてあります。ここでは写真撮影も可能です (本記事は美術館より特別に写真撮影の許可をいただいています)。右はその一つ。デンマーク大使館のマーティン・ミケルセン氏が、「このサイドのカーブが自然にバックのカーブに繋がっているところが身体にフィットするんだよー」というようなことを説明していました (たぶん)。

    以下展覧会の情報です。

    日本・デンマーク国交樹立150周年記念
    デンマーク・デザイン
    http://www.sjnk-museum.org/program/current/5062.html
    会期:2017年11月23日(木・祝)~12月27日(水)
    休 館 日:月曜日(ただし12月25日は開館)
    会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
    〒160-8338 新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
    開館時間:午前10時-午後6時、金曜日は午後7時まで(入館は閉館30分前まで)
    観覧料
     一般:1,200円(1,000円)
     大・高校生:800円(650円)  ※学生証をご提示ください
     65歳以上:1,000円     ※年齢のわかる物をご提示ください
     中学生以下:無料      ※生徒手帳をご提示ください
     ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人と
     その付添人1名は無料。被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。
    主催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、日本経済新聞社

    2017/11/13

    パリ・グラフィック展

    11月9日、三菱一号館美術館で開かれている「パリ・グラフィック展」の内覧会に参加してきました。

    まず展覧会の情報から。

    パリ❤グラフィック展
    会期:2017年10月18日(水)~ 1月8日(月・祝)
    開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、11月8日、12月13日、1月4日、1月5日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
    休館日:月曜休館(但し、1月8日と、「トークフリーデー」の10月30日(月)、11月27日(月)、12月25日(月)は開館
    年末年始休館:2017年12月29日~2018年1月1日
    展覧会サイト:http://mimt.jp/parigura/
    トークは、三菱一号館美術館学芸員の野口玲一氏と、おなじみ「青い日記帳」主宰Takこと中村剛士氏。



    この展覧会は、19世紀末に大きく動いた、メディアとしての版画に焦点を当てます。誰が見るものか、何が伝えられるのか、どのように流通するのか。

    それまで、版画は絵画の1ランク下の存在に見られていました。そこに、ロートレックなど媒体による価値を気にしないアーティストたちが現れます。彼らはカフェや演劇のポスターで成功しますが、だからと言って「格上」の絵画に移行するのではなく、版画も絵画も同じように制作を続けます。

    パリの庶民は、これまであまり触れられなかった役者やダンサーの姿を、街中に貼られたポスターで知るようになります。ちょうどそれは、役者が描かれた浮世絵を見ていた江戸市民と似たようなものかもしれません。

    ポスターに人気が出てくると、エリートたちはそれを自分の家に飾りたいと思うようになります。大衆向けだった版画が、エリート向けに作られ、リビングに飾られたり、引き出して眺められたりしました。またそうなると題材も変わってきて、例えばエロティックなものも描かれるようになりました。

    また、大衆もポスターや版画集という形で版画を買うようになってきます。ここもまた江戸時代に庶民が絵 (浮世絵) を買っていたということを思い出します。

    お話を聞いていて、世紀末、時代が変わる感覚、高揚感に、版画ポスターが一役をかったのではないかと思いました。これまで芸術はアカデミーから出ていた、これからは我々庶民からアートが出てくる、そういう時代の変化を感じていたのかもしれません。

    そしてこれは今のネットの絵師にも通じるというお話には共感しました。そこから次世代のスターが生まれてくるかもしれません。もう生まれ始めているかも。

    以前どこかでロートレック展を見たとき、図録は買わず、「ロートレック写真集」というものを買ってきました。ロートレックの幼少時代、ムーラン・ルージュと踊り子たち、カフェ、娼館などロートレックに関係する様々な写真が収められています。そこに出てくる、ロイ・フラー、ラ・グーリュ、ジャヌ・アヴリルなどが今回モデルとして絵の中で出ていました。それで思い出して「ロートレック写真集」を引っ張り出して見ています。

    2017/11/04

    アートとAI

    11月3日に行われた、ヨコハマトリエンナーレ 「ヨコハマラウンド」ラウンド8<より美しい星座を描くために: アートの可能性とは?> の中で、スプツニ子! 氏から、
    世の中は記号であふれている。皆が全てのものに対してカテゴリーに当てはめて理解している。そのほうが理解が簡単だから。しかしアートはそのカテゴリーをはみ出す。そのはみ出し方は無限にあり、世の中の問題の解決策も無限にあるのではないか。
    という趣旨の発言があった。この、「アートは今までの常識を覆してくれる。新しい発想を提示してくれる」というのは、これまでも繰り返し言われてきたことであろう。

    また、AIが作るアート (イアン・チェンの作品、ゴッホ風の絵を描くAI) の話になり、
    AIは評価関数で動く。これはAIに評価関数を与えると、それが高くなる方向へ動くということ。一方、アーティストは評価されるために作るのではない。AIがアートを制作するようになっても人間はアートを作るのをやめないであろう。
    という話もでた。

    確かにAIで作るアートが「ゴッホ風の絵」とか、既存の価値観での作品だったら、「新しい発想を提示してくれる」というのは期待できないであろう。それは音楽の領域でも同様で、小室哲哉氏は、
    AIがどういう曲を作るかは、大体見えます。例えば「マニアックなジャズを」という絞り込み型の作曲はどんどんできる。オーダーを受けて作曲するなら、人よりはるかに優れた曲を作るでしょう。
    ...
    「なんか聴いたことある」というなじみがない曲も、ブレークするのは難しい。
    と語っている (AERA dot. 2017/8/31 AI作曲は「絞り込み型なら人間以上」 TM NETWORK小室哲哉)。

    ここで考えたのは、アーティストが一般人にできない発想を提示することに存在意義があるなら、AIもそのようなことができるだろう、ということ。そう考えたのは、Google  DeepMind の AlphaGo が、人間の棋士では考えもつかない手を打つということから (これは小室氏も指摘している)。

    ただし、AlphaGo は「勝つ」という単一の評価関数を持っている。アートに対して適切な評価関数は何だろう。そういう評価関数がなければ AlphaGo だってランダムな手を打つしかない。

    そのランダムな中から、意味のある、しかも「新しい発想を提示してくれる」ものを選ぶ必要がある。それができるのはアーティストだろう。そういう評価関数を与えると言っても良い。

    今回の議論の中で「美とは何か」という問いもあった。現代アートでは「美」は求めていないのかもしれないが、これまで印象派やゴッホが新しい「美」を提示したように、今後も新しい「価値」を見いだすのはアーティストだと思われる。

    こういうことを考えて、「AlphaGoは単一の『勝つ』という評価関数で動くが、アートの場合は『新しい発想』ということが求められ、単一の評価関数はない。しかし、アーティストが評価関数を作ることでAIにアートを作らせる可能性があるのではないか」という質問をした。はしょりすぎですね。でもスプツニ子! 氏から「Googleの碁の棋譜を見ると人間では考えつかない展開があるそうだ。そのような可能性があるかもしれない」という回答をいただいたので、収穫があったと思います。

    2017/09/29

    こんなシナリオ

    安倍首相の対抗が、同じく改憲/ナショナリズム/民族差別ではどう投票してよいかわからない。よりましな選択肢はないものか。

    という訳で次のようなシナリオ (期待) を考えた。

    ・民進党のリベラルは希望の党の公認を申請せず (ここ大事)、共産党との選挙協力を取り付けた上で、無所属で出る。
    ・希望の党は大幅に伸ばすものの過半数には届かない。
    ・与党も過半数に届かず、安倍首相は辞任。
    ・民進党リベラルはそこそこの議席を確保する。
    ・無所属リベラルと共産党は、自民党の新しいリーダーと協議し、首班指名では自民党側に回る。入閣は求めず、今後もキャスティングボートを握り続ける。

    二番め以降は選挙結果次第だけれど、まずは一番めの動きを期待します。

    追記:
    • 過半数に届かなかったら責任をとる、は安倍首相本人が設定した低い目標ですが、ギリギリ過半数を超えたとしてもこれまで2/3を維持していた訳ですから大敗北です。辞任せざるを得ないでしょうね。
    • 10/2 枝野氏が民進党リベラルを結集した新党「立憲民主党」を立ち上げることになり、ここで「無所属で出る」とした人たちの受け皿ができました。「そこそこの議席」と言わず全員当選の勢いを期待します。
    • 10/3 希望の党の第一次公認候補が発表になりました。民進出身は110名。「希望の党の公認を申請せず」と書きましたが、残りは立憲民主党に帰って来れば良いと思います。また、公認を得た人も蹴って立憲民主党に戻った方が良いと思います。
    さらに追記 (選挙後):
    • 大外れですね。
    • 与党は再び 2/3 を確保。今のやりたい放題がまだ続く。
    • 希望の党は伸びるどころか改選議席割れ。この点は良かったかな。
    • 立憲民主党が大幅に伸びたことは良かったと思います。「まっとうな」がポイント。