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2010/01/23

検察のリークとか

こんにちは。「検索のリーク」ってつい書いちゃう。職業病か。

前回、「今日は報道に関係して、ちょっと気になる話題がありました。」と書きました。それがこの検察のリークの問題。

最初に見たのがこの記事。

誰も通らない裏道 (2010/01/16) 朝日新聞東京本社編集局、謎の取材源
「どうやって確かめたんですか?」という問いに、朝日新聞側は「取材で確認しました。取材源は言えませんが。」と応えたもの。それに対して、
現状、取り調べの内容を知り得るのは検事だけですね。今日は弁護士は接見できないはずです。であるとすれば検事が誰かに漏らしているということになります。それは違法ではないですか?またそういう情報を一方的に流すメディアの在り方がいま問われているのではないですか?
という発言が出て以降は音沙汰がないという。

この中のコメント (一番に下にある最初のもの) で、NHKに情報源を問い合せたら、直接取材下人じゃないが「検察のリークだと思う」と答え、
「リークはありますよ。表向きは違法なことだが情報は漏洩している。じゃなかったら記事ができない。検察に取材すれば情報はくれる。しかしその情報が本当か嘘かは我々報道側は知らない。

しかし、検察からリークした情報に脚色することはない。リークした情報そのままそっくり情報を流しているだけだ。そしてその報道の真偽の判断は視聴者に委ねる。あくまでわれわれはリークした情報をそのまま伝えている。」
と言ったというのには驚いた。

この問題に関してはジャーナリストの上杉隆氏がとりあげている。彼は以前からずっと記者クラブの問題を取り上げている。

ダイヤモンド・オンライン 週刊・上杉隆 (2010年01月21日) 小沢問題で検察リークに踊らされるメディアへの危惧

彼の主張に、これは「大本営発表」であるということがある。発表を無批判に流すマスコミ。そこには権力をチェックする本来のミッション、職業倫理が全くない。しかも「大本営発表」と言っていない分、戦前の報道よりもたちが悪い。

しかしこの中で上杉氏が、「情報リークをする検事の実名を出すタブー」と言っているのはどうだろうか。

検索のリークは守秘義務違反だと言うけど、マスコミがそれを問題視しないのは合理的だと思う。その問題を指摘すると今後情報が得にくくなるんだから当然だ。たとえそれが犯罪者からのタレコミ情報であっても、情報源の情報ソースを秘匿するというのがマスコミの職業倫理にもあっている。検事の守秘義務違反を犯罪というのは適切ではないかもしれないけれど (道路交通法違反を犯罪と普通言わないのと同じ意味で)。

リークの問題は検察 = 行政側にあるのだから、行政のトップ = 政府が問題の解決を図るべき。別に法律を作ったりしなくとも今の規定で処分できるでしょ。

しかし、原口大臣は問題にしてないんだよな。もちろん小沢の問題に介入すると取られるからだろうけど、現在の捜査対象に関係なくプロセスをきちんとしておくことは今後のために重要だと思う。「転び公防」の問題も同じだ。

自民党政権ではない今が、これまでたまったいろいろな問題を是正するチャンスなのだと思う。今まで間違ってました、ごめんなさい、って言いやすいと思うのだ。

追記: 原口大臣の記者会見 (下記) をみると、原口大臣はリークの違法性よりも国民の知る権利を重要視しているのか。そうすると対処が変わってくるな。

Business Media 誠:ほぼ)完全収録:Twitterから検察報道、クロスオーナーシップまで——原口総務相記者会見 (2/4)

2008/10/29

日本は法治国家ではない ...

... から、慎重を期すべきだったと思うぞ。

シバレイのblog 「友人が拉致られました(`´# 」

いや、言いたいことは分る。私も腹立たしいし、情けないと思う。

平和的なデモも出来ないんじゃ、「愛国者」の皆さん (カギ括弧付き) が嫌っている中国と同じじゃん。

でもね、現状を是とする訳じゃないけど、現状のこの国は「転び公妨」の国警察の犯罪が問われない国、逮捕は逃亡や証拠隠滅を防ぐ手続きではなくて逮捕自体が罰になる国、そして支持者をシモジモの皆さんとよぶAsshole首相の国なんだ。 シバレイさんもサウンドデモの件で分っているはずだ。

現状を是とする訳じゃないけど、現状を認識した運動の戦術を考える必要がある。「不当逮捕」されて、その不当性を訴えるためにやっているように見える。

しかしその訴えさえ、マスコミには届かない。ネットにも「不当逮捕」を是とする人が大勢いるのだ。典型例として、サウンドデモのブックマークコメントに残されたコメントを再掲する。
2008年07月08日 tyouaniki
デモ側の方々には申し訳ないですが、映像写真を見た印象ではデモ側がとても気持ち悪い・ウザいので個人的に警察GJって感じです。 見た目で判断するのは良くないんでしょうけれど…。
じゃあどうするのか。

少なくとも届けは出す必要があるだろうね。ニートのデモのように、思いっきり無害なものと安心されるようなやつ。「中国と同じ」って書いたけど、届けを出すことによって逮捕される中国とはまだまだ違うと思う。

雨宮処凜さんが人集めなんかしちゃったら警戒されるって。

追記: YouTubeを見ると「公妨だ!」と叫んでるんですね。実際に「転び公妨」だったんだ。警察との事前打ち合わせに反している行為があった訳でもないので集会条例違反を問題にしていた訳ではないんだ。すみません、その点は認識が間違っていました。ただ戦術を考える必要があるという考えは変わりませんが。事前打ち合わせの後ろのほうでうろうろしていたハゲオヤジが私服警官でこの人が逮捕を指揮していたらしい。

それらを問題にしている皆さんの記事をあげる。

麻生でてこい!!リアリティツアー救援会ブログ

瀬戸智子の枕草子:
「不当逮捕ではないでしょうか?」

反米嫌日戦線「狼」(アカにサヨおなら): 【また渋谷警察署】 麻生太郎邸拝見ツアーに自分からぶつかって公務執行妨害
-- 「警察に対する防衛・対処は無防備すぎたのではないだろうか」という点は私の考えと近い。

「猫の教室」 平和のために小さな声を集めよう: 「転び公妨」、公安警察による不当逮捕

村野瀬玲奈の秘書課広報室: 麻生太郎邸を見に行くことも許されない「反民主国」日本
これでは警察発表は嘘ということになりませんか?「嘘つきは泥棒のはじまり」と私は小さい頃に教わったけど、警察の幹部は「嘘つきは泥棒のはじまり」という言葉を知らないのでしょうか???
村野瀬さんは高知白バイ事故事件のことも十分知っているのにこの書き方はナイーブすぎると思うぞ。

それから、日本は法治国家ではないことを恐ろしいことだと思っている人の記事。

Chikirinの日記: 名前隠すのはなんでだっけ?
日本の警察には、...「違法な行為をした人を逮捕する」のではなく、「逮捕したい人を逮捕する」という基本原則があるってこと。
これを問題視しているのは良いと思うのだけど、そのために「目をつけられるようなことをしない」というのは、相手の思うつぼ。文句のつけられない方法で運動をすることを考えないといけない。いや確かに難しいけど。

コメント欄などで、「ただ歩いているだけなのに逮捕されたって言っているけど、政治的主張を掲げているじゃないか」という主張が複数あった。「政治的主張」が逮捕される理由なのか?政治的主張で逮捕される国になることがお望みなのだろうか。

さらに追記: 瀬戸さんの記事からたどりついたdr.stoneflyさんの記事
「不当逮捕とエントリー」…500回記念総括にかえて
被害者 (一般には容疑者と言われるんでしょうが) に対して思いを馳せた文章。情緒的ではあるけれど説得力があります。

逮捕された人、それを間近で目撃した人、それぞれに心の傷となって、次の行動に暗い影を落としていくのだろうな。そのじわじわ効く効果はテロと同じ。いや、テロは行動をどう制限したら良いのか分らないのに対して、漠然と、しかもさらに広く行動や発言に制約を加えるという点では、テロ以上の効果をもつものと思う。Chikirinさんはその犠牲者の一人だ。

いただいたトラックバック

Tracked from 徒然気儘な綴方帳 at 2008-10-30 03:59
タイトル : 「死刑の存置が国民のニーズに合致する」というのであれば
えー、ついぞ先日、残念ながら現在もなお死刑村遅刻である我が日本国において、ふたりの未執行死刑囚に対して死刑の執行がなされたわけでございますが、その一方で、現在「国際人権規約」という国際的な人権に関する取り決めを批准している日本国に対しまして、その履行状況の定期的な審査が自由権規約委員会によって行われ、司法制度や従軍慰安婦関連の問題など、人権理事会の理事国でもある日本に対しては随分と厳しい視線が注がれた、というようなニュースがあったばかりだというのに、日本政府の定例報告において......more

Tracked from 瀬戸智子の枕草子 at 2008-10-30 13:38
タイトル : 不当逮捕ではないでしょうか?
さっきからため息ばかり。 ふっ==== フウ〜〜〜〜〜 原因はこれ。 「麻生首相...more

2008/08/24

日本は法治国家なのだろうか?

「日本は法治国家なのだろうか?」... これは以前『「転び公妨」って言葉 ... 』で引用した森巣博さんの記事のタイトル。

『「転び公妨」って言葉 ... 』の最後に
高知バス白バイ衝突事件なんてのもあることを忘れてはいけないと思う。
と書いた。この件に関してはこれ以上の言及をしていなかったが、最高裁で上告が棄却されたそうだ。新聞には載っていないようだ。

きっこのブログ: 警察による大犯罪を見て見ぬふりの最高裁

バスに乗っていた生徒たちは、完全にバスが停まっていたと訴え続けてきた
→ 最高裁判断: 関係者の証言は信用できない

事故直前にたまたま現場を通りかかったまったく無関係なドライバーの目撃証言
→ 最高裁判断: 供述者が第三者というだけで、その供述が信用できるわけではない

新証言 (事故の翌朝に事故現場を見に来た人の証言)「スリップ痕などどこにもなかった」
→ 最高裁判断: 上告理由にあたらない (高知白バイ事故=冤罪事件進行中「判決でました 」)
-- 注: 通常上告は新証拠/証言がなければ認められない。この最高裁判断は新証言の存在を認めていない、提出を認めないという意志の表明といえる。

バイ隊員の仲間の証言 (事故現場を見えない位置からの目撃証言)
→ 最高裁判断: たとえ関係者であっても、警察官の場合は信用できる

...

「日本は法治国家なのだろうか?」という問いに、ただただ暗澹たる思いになる。

さて森巣さんのコラム、COURRiER Japon 9月号の第16回は「日本は法治国家なのだろうか?(後)」の矛先はマスコミと警察に向けられている。
じつはわたしは、不審人物や犯罪者たちがどこにかたまって存在するのか、知っている。おそらく、日本国民の大多数も、知っている。マスメディアも報道しないだけで、知っている。ところがそれを告発すると、警察に狙われるのは、逆に告発者の側となってしまうのである。
これは、警察のことを言っているのだ。

警察で行われてきた裏ガネ作り。これは横領した公金を返納した、ということですんでいるけれども、その中で様々な犯罪が行われてきたことは全く問われていない。下っ端は偽造領収書に署名捺印させられたが、これは虚偽有印私文書作成・同公使。その他それを強要した上司は強要罪、さらに脱税など8つの犯罪をあげている。それらが全く問われていないのだ。

きっこのブログの記事のタイトル「警察による大犯罪を見て見ぬふりの最高裁」も、それにつながる。

裁判員制度が始まったら、市民の目でこれらの警察の犯罪を抑えることができるのだろうか。裁判員は外部からの情報を遮断されるのだろう? 裁判所が証拠として出したものだけで判断しないといけないのでは監視のしようがないのではないか。

(すみません、この部分正確なところは理解していません。裁判が始まるまで情報をシャットアウトするなんてことが可能な訳はないと思うのですが、どのようにして裁判所提供の情報だけで判断することが可能なのでしょうか。)

マスコミの報道は知ることができるのだろうか。しかし...

森巣さんのもう一つの矛先はマスコミだった。このような法治主義下の不平等を放置するマスコミ。
海外、というか主に英語圏のマスコミと日本のそれとの決定的な相違は、日本のマスメディアは素朴な質問を発さない部分にある、と思う。権力に遠慮しているのか、それとも単に頭が悪いだけなのか。権力に媚びる。そして、権力のおこぼれにあずかろうとする。
今回の事故、というか事件でも同様だ。

「高知白バイ事故=冤罪事件進行中」ブログの記事「今日の記者会見」から引用する。
 誰も片岡さんのことを真剣に考えてくれてはいないようだ。(県内一社を除き)
なんで自分の頭で考えてくれないのだろうか?

...

記者会見の後、会見場を出た片岡さんに声を掛けたそうな若い記者が何人もいました。この事故や裁判の経緯を知らなくてもいいんです。

知らなきゃ『知らないんですけど教えてください』で聞けばいい。
追加トラックバック - 裁判員制度に疑問を抱いている人達がいます。

村野瀬玲奈の秘書課広報室: 冤罪の高知白バイ・スクールバス衝突事故 (裁判員制度、大丈夫とは言えない気がします... (6))

2008/07/12

そして裁判員制度 - 転び公妨 [3]

「転び公妨」続き (2)。

裁判員制度は、国民が政治の一つの柱である司法に関与することで、民主主義をより良く実現する方策として打ち出されているものと思う。たぶん。

しかし、ディベートなどを教育されていないところに導入するというのは次期尚早だという意見があり、私もそれには同意する部分が大きい。まあショック療法としてはありかもねとも思うが。

ただ問題はディベートだけではないと思う。検察側が法律をちゃんと適用して立件したということに疑問をもたないことも問題となるだろう。

なにかの間違いで自分が被告席に立つかもしれないということを考えた方が良い。そこで裁く人達は、そういう疑いを持たない人達かもしれないのだ。

情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)カナダのメディアリテラシーに学びたい〜ここまでやるか…
カナダの教育は、政府はあなたたちをだますかもしれませんよ、という教育、日本の教育は、政府は信用できますよ、という教育。どちらが、本当に市民にとって有利な政府をする意欲があるかは明白だろう。 
騙されるかもしれないという認識をもって、政治に接することで、政治に対する評価は厳しくなる。そのような厳しい評価に耐えた党が政権を取る…すばらしい。
追記: この記事は「カナダde日本語」(美爾依さん) の「植草一秀氏の痴漢冤罪事件」で知りました。植草一秀氏の事件に関しては、「転び公妨」の最初の記事で、「2回目はもうどうしようもないと思ったのだが...」と書きましたが、2回目を擁護する人達が存在するという事実、主張する内容から、既存メディアが伝える内容を鵜呑みにしてはいけないと思うのだ (もちろん擁護している人の主張も鵜呑みしている訳ではない)。

裁判員制度も権力を監視する仕組みとして捉えなければならないと思う。そのためにはカナダのような教育方針がなければならないと思うのだ。

冤罪に関しては、特に痴漢冤罪に関しては男性諸氏は不安を持っていると思う。植草一秀氏の事件とは別の日常のレベルで起こりうる話で、被害者の証言がそのまま証拠として受入れられる以上、疑いをはらす方法はないに等しい。ましてや裁判員から印象でエロオヤジ認定を受けたりしたらどうしようもないと思う。

そしてジャーナリズムの役割 - 転び公妨 [2]

「転び公妨」続き。

森巣博氏の「越境者的ニッポン」第15回「日本は法治国家なのだろうか?(前)」ではジャーナリズムに関しても問題提起している。
しかしこのドキュメンタリー・フィルムが提示した恐怖は、その点ではなかった。当時、オウム真理教の亀戸・新東京総本部前には、何人かのジャーナリストがつめていた。そのジャーナリスト達は、警察によるこの無法行為を、にやにや笑いながら眺めていたのである。
森巣氏は、三権分立の相互監視はそれだけでは機能せず、その相互監視が機能しているかどうかを監視するのがジャーナリズムだとしている。

マスコミを監視しなければ行けないのは市民であり、そこに市民ジャーナリズムの価値があるだろう。お上にたてついて逮捕される人たちを批判する人達は、大本営発表をそのまま流すマスコミからの情報に基づいて批判しているのだろう? 私には、お上にたてついて逮捕される人たちを批判する人達と、マスコミのことを「マスゴミ」と一批判する人達が同じに見えて仕方がないのだが。

これも九郎さんの「韓国での李政権批判デモについてメモ」で知ったのだけど、

ネットの「祭り」がリアルに炎上した韓国・抗議デモの事情 (IT-PLUS 7月1日)
 警察による鎮圧や、女子大生が機動隊に頭を踏みつけられ負傷したこと、ベビーカーにまで容赦なく放水する警察の姿が生中継されたことで、さらに集会は激化した。個人放送局の中継動画に触発されて、もう黙ってはいられないと集会に参加したという主婦もたくさんみかけた。集会は過激になりすぎ、一部暴徒化しているとの報道もあった。

ほとんどの携帯電話にカメラが付いていることから、警察が暴力を振るおうとすると一斉にカメラを向けて証拠写真を残したり、集会の参加者の顔写真を撮影する警察の顔写真を逆に撮影して「この人に気をつけろ」とブログに書き込んだり、ろうそく集会が始まった5月初めからポータルニュースもブログもコミュニティーも動画投稿サイトも個人放送局も、集会の様子を伝えるネットユーザーたちの写真、動画、書き込みで溢れかえっている。
いつもは韓国の民度の低さには批判的なのだが、こういう権力を監視する姿勢をもっているところは学ぶべき点だと思う。

「転び公妨」って言葉 ...

... 初めて知りました。

以前も取り上げた、COURRiER Japonの森巣博氏による連載「越境者的ニッポン」。8月号の第15回「日本は法治国家なのだろうか?(前)」で紹介されている。

定義の前に、オウム真理教の信者を題材にしたドキュメンタリー「A」の1シーンについて書かれた部分を引用する。
1996年8月7日、オウム真理教の亀戸・新東京総本部から山本靖春さんが出てくると、その行く手を公安の私服刑事が阻んで、職質 (職務質問) を始めた。警察官による職質はあくまで任意だ。されるのがいやなら、無視しても構わない。それは日本国の法律によって保障されている。

小一時間ほど続いた職質に業を煮やした山本さんは、刑事を振り切り駅の方向に歩みだす。すると私服刑事は、山本さんの首を押さえながらのしかかり、路上に押し倒した。山本さんは後頭部を舗道に激しく打ち、失神したのか動かなくなってしまった。

ここで山本さんにのしかかっていた私服刑事は、突然膝をかかえて悲鳴を上げる。駆けつけた制服警官2人の間で、

「公妨だね?」
「ええ、公務執行妨害」

という会話が交わされ、脳震盪状態の山本さんは現行犯逮捕された。パトカーに乗せられ、連れ去られる。これで山本さんは、娑婆とはしばしのお別れだ。いつ戻れるのかわからない。なぜなら、警察の拘置延長請求を裁判所は、ほとんど無制限に認めるからだ。
この手法は「転び公妨」と呼ばれ、60年代から使われてきた。
パクりたい相手に、私服の刑事がぶつかって、自ら転ぶ。ぶつかってくる者は私服なのだから、ぶつかられた人にとって、相手が「公務」を執行中なのか、まったく不明な状態だ。それでも「公務執行妨害罪」は成立して、現行犯逮捕されてしまう。これが通称「転び公妨」である。
Wikipediaにも記述がある(「『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります」という断り書きがあるが)。

Wikipedia: 転び公妨

YouTube: 転び公妨 オウム 公安調査庁 森 達也

オウムに関しては、カッターナイフを所持してたとして銃刀法違反で信者が逮捕されたことがあった。そのときは、多くの人が、カッターナイフを持っていて逮捕されるのかと同時に、サリン事件を起こしたオウムを調べるためだったら仕方ないかと思ったのではないか。

しかし最近になってこれが利用されたケースはどう思うだろうか。

痛いニュース(ノ∀`):デスノート作者の漫画家・小畑健(37)が銃刀法違反で逮捕 (2006年9月7日)
-- 最近って思っていたけどもう一昨年の話だったか...

痛いニュース(ノ∀`):秋葉原で十徳ナイフ(刃渡り5cm)所持のオタクが警察官10人以上に囲まれる (2008年6月15日)
-- 秋葉原連続殺傷事件の直後

警察に批判的な意見が多いのかと思ったら、後者はそうでもないのだね。みんな従順だなあ。相手が「オタク」だから?

そして最近はこれ。

▼CLick for Anti War 最新メモ (九郎政宗さん): 洞爺湖サミット批判デモを警察が不法弾圧/逮捕されたのは
トラックを包囲して窓ガラスを割り、怪我をさせながら逮捕・・・まるで「中国のチベット弾圧」のよう。
ここの記事自体では逮捕に利用した理由は分らないので、そこでリンクされている記事もあげておこう。

クッキーと紅茶と(南京事件研究ノート): サウンドデモ&道路交通法に関する「真っ赤な嘘」

九郎さんの記事の
・・・なんと警察はロイターのカメラマンに襲いかかって拘束してしまいますたとさw
こいつはメ・ン・ド・ウ・な・こ・と・に・なるよっ
に対してコメントがついている。
たいしたことにならんでしょw
clawの先見のなさは異常だからなぁ。
「たいしたことにならん」というのはこわいことだと思うけどな。それを容認するところがこわい。

そしてリンク先のもう一つの記事

クッキーと紅茶と(南京事件研究ノート)もっとも「現行犯逮捕」に値するのは誰か?
であげられているブックマークコメントの引用
2008年07月08日 tyouaniki
デモ側の方々には申し訳ないですが、映像写真を見た印象ではデモ側がとても気持ち悪い・ウザいので個人的に警察GJって感じです。 見た目で判断するのは良くないんでしょうけれど…。
これも怖い。

自分が気に入らない者は逮捕されてしまえと考える人は、自分は大丈夫だと思っているのだろうか。お上にたてつくのがいけないと考えているのだろうか。

森巣さんの記事には、「立川反戦ビラ事件」のことにも言及されている。これにも警察の行為を是とする人が多かったのだよね。そして植草一秀氏の事件。これは2回目はもうどうしようもないと思ったのだが、ちゃんと追えていないのだが警察発表とかなり違う事実があるようだ。

明日は我が身... ということは確かにめったに起こらないかもしれないが、それを怯えながら過ごすのを皆さん容認できるだろうか。電車で痴漢に間違えられることは多くの人がおそれていると思うのだが、お上にたてつかなければ大丈夫だと思っているのだろうか。お上にたてついていなくても、高知バス白バイ衝突事件なんてのもあることを忘れてはいけないと思う。

2008/01/26

著作権法違反で...

... 逮捕できるとは知らなかった。

PCウイルス作成者、日本で初逮捕…著作権法違反容疑で (CNET Japan / FujiSankei Business i. 2008/01/25)
アニメ画像を無断で使ったコンピューターウイルスを作成したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室と五条署は24日、大阪府泉佐野市の大学院生ら20代と30代の男3人を著作権法違反容疑で逮捕した。
この記事の書き方はまだましなほうで、「テレビアニメの静止画像を利用してウイルスを作成した」なんて書いてあるのもある。

実際のところは、ウイルス作成を取り締まる方法がないので、著作権侵害を理由にしたらしい。
 個人情報の流出など、ウイルスによる被害は後を絶たないが、日本にはウイルスの作成自体を処罰する法律はない。このため府警は、ウイルスに使われていたアニメ画像を無断で使用した著作権法違反の容疑を適用し、作成者の立件に踏み切った。
別件逮捕に似ているが、ちょっと違う。別件逮捕は別件でまず逮捕しておいて取調べを行う間に本命の容疑を固めるものだが、ここにはその本命はない。

まず驚いたのは、著作権侵害というのは経済的な権利の衝突であって (著作者人格権というのもあるけれど)、民事の範疇だと思っていたのだ。よく見たら刑事罰も規定されているんですね。

著作権法 第八章 罰則

適用対象がすごく分かりにくく、この場合どの適用対象にあたるのか良く分からないが、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という記述があった。

ほかにも分からないことがある。
・著作権侵害は親告罪 = 著作権者が訴えなければ罪にならないはず。
・「容疑者」が大阪住民なのに、なぜ京都府警?

これに関しては、別のニュースソースがあった。

Winnyウイルス作成者を人気アニメ「CLANNAD」著作権侵害で逮捕 - 京都府警 (マイコミジャーナル 2008/01/25)
京都アニメーションが制作したアニメーション「CLANNAD(クラナド)」の静止画像の入った...
京都府警に頼まれて協力したのだろう。アニメ製作会社にしてみれば、これよりもYouTubeとかニコニコ動画を取り締まってほしいところだろうから。
気になるのは、この「別件逮捕」をやむなしという声があることだ。

以前オウム真理教の事件で、「名誉毀損」での逮捕があり、驚かされたことを思い出す。このときは、カッターナイフで銃刀法違反、駐車場に入って不法侵入というのもあったと思う。このときには仕方ないとも思いつつも、なんでも逮捕の材料にできることに恐ろしいものを感じたのも確かだ。

そしてその後、「デスノート」の作者もアーミーナイフの所持で逮捕された。植草教授もなんとか逮捕できるような行為はあったのだろうけど、冤罪を主張している人たちの主張を読むとそれもそうかもしれないと思う。

警察の意思があって、検察も協力が得られれば誰でも逮捕できるということだろう。逮捕されるようなことをするほうが悪いと言い切れるかな?

唐突だが、「中国農民調査」という本を読んだ。この中には、法律で規定されない税金や負担金を課す地方役人の話がこれでもかと出てくる。反抗すると逮捕されたりリンチされたり殺されたりするのだ。

この中で大学で法学部を出た役人の話が出てくる。
「いまおまえをつかまえるのに手続きなんかいらないんだ! おれは大学の法学部を卒業しているんだぞ」
法律を学んだものが言う言葉とは思えないでしょう。でも学があることは次の言葉でわかる。
「テレビのニュースや新聞を見たってわかるだろう。いま中国が法治を実行していると思ったらずいぶん青いな。アメリカの大統領が地方の法律で裁かれるのは外国だからだ。中国は人治の国だ。だからおれはおまえを裁けるんだ!」
お上に逆らうほうが悪いと思っている人は、中国みたいになりたいのだろうか。

補足: ウイルスを野放しにして良いといっている訳ではありません。ちゃんと法律を整備し、法の定めに従って仕事をしろということを主張したいのです。