ネットを見ていると、「課金する」という言葉が「料金を課する」という意味とは逆の「料金を払う」という意味で使っていることに気づく。実際にゲームをやっている人が「課金する」という言い方をしているのだ。
ドリランドに課金しすぎてヤバイことになった:キニ速
この人はユーザーみたいですが、次のKAWANGOってドワンゴの社長じゃないの? (「ドワンゴ会長?「kawango」氏、人力検索はてなで質問中 ほか」をみると会長みたいですね。本人は否定しているそうだけど)。 課金する側だけど、あきらかに「会員が課金する」という使い方をしている。
Twitter / KAWANGO: 今週はじめてわかり、ドワンゴ社内で衝撃が走ったある数 ...(リンク先ははてなブックマーク - もとの投稿は消されているようだ)
今週はじめてわかり、ドワンゴ社内で衝撃が走ったある数字を紹介する。ニコニコのプレミアム会員80万人のうち、携帯のメールアドレスで登録して課金しているのは18万人。そのうちPCでのアクセスを一回もしていないユーザは11万人。他にも以下のような記事で「課金」が「支払う」意味で使われている。
最初にこの現象に気がついたのは4年前。
「人はなぜゲーム内アイテムにお金を払うのか」 デジタルジェネレーションが生んだ新しい経済価値について,成蹊大学の野島美保氏にあれこれ聞いてみた
のブックマークコメントに
「鯖代の足しにしてください」「運営がんばってください」というメッセージを添えて課金(しかもあんまり有利にならないのに)してくれるユーザーばかりです。というのがある (前は複数あったように思うのだが)。
この記事本文は明確に「お金を頂く」方の立場から書かれているので、この記事を読んだ人の中では誤用はすくないということはあるだろうが、これ以降数年で誤用が定着しているように感じる。
もう少し調べたらこんな情報があった。
課金とは (カキンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
本来この言葉は「料金を課する」、つまり提供者が利用者から料金を徴収することを指すのだが、インターネット上では主体が完全に逆転した解釈のほうが定着している。
「課金されたものに納金する」→「課金する」のように略された形になる。
税金を納めることを"納税"と言わず"課税"と言うぐらい異なった用法である。
とは書いてあるものの、その後は
インターネット上で課金と言えば主に、オンラインゲームなどの内容に利用料金を払うことを指す。使用料を払うこと。として、その用法で統一してある。
「大百科」にこういう書き方されては、それが正しいと思うよね。KAWANGO氏もここで勉強したんではなかろうか。
ところで、このことを書いたらツイッターで松永英明氏から以下のようなコメントをいただいた。
8:33 AM - 14 May 12 via モバツイ / www.movatwi.jp . · Details
私はこれに対して、
8:14 PM - 14 May 12 via Twitter for iPhone · Details
と書いたが、松永氏から
9:00 PM - 14 May 12 via TweetDeck · Details
とまたコメントを頂いた。これに対しては私はうまい説明をもっていません。
別の観点で「〜を課する」ものとして「課題」があるが、これの反対語には適切な言葉がない。「課題への回答を提出する」、さらには、「課題を提出する」というような使い方になってしまう。あとは「課題やらなくちゃ」のように「課題 - する」という形で使われるのではないか。こういうところから「課金 - する」という使い方になったということも考えられる。
いずれにせよ、「課金」を「お金を払う」の意味で使うのは、現段階で誤用といえるだろう。私は言葉の意味の変遷には寛容なほうだとは思うが、全く逆の使い方が併存してはコミュニケーションを阻害するので避けた方が良いだろう。
たとえ国立国語研究所が許しても、このウエダが許しません。
4 件のコメント:
[...] このエントリーを書くきっかけになったブログ。 「課金」の誤用が気になる « うえぶろぐ WordPress [...]
[…] 「課金」という言葉は「料金を課する」つまりは金を払ってもらう側が使う言葉であり、金を払う側が使う言葉ではないという事説を以前目にして(「課金」の誤用が気になる | うえぶろぐ WordPress )いて、確かに課税・納税を例にすればどれだけ言葉としておかしいかということがわかります。考えた結果「納金」が妥当なんだろうという結論に行き着いたのですが、実際に使うと違和感がありますね。 […]
「課金」と「納金」に限らず、「鍵をかける」と「錠をかける」、「募金」と「寄付」など、日本語には主体と客体とが渾然一体となっているような表現が多く見られます。よく、「日本語には主語がないことが多い」と言われますが、それと関連して、これは日本語の特質なのではないでしょうか。そう考えれば、「ユーザーが課金する」と表現することは、西欧諸言語の見方からすれば誤用かもしれませんが、日本語の中に於いては、必ずしも誤用とは言えないのではないでしょうか。
坂本さん、いただいたコメントに気づかず申し訳ありません。
途中にそのようなあいまいな言葉が入っていると、聞いている途中に誰の話をしていたんだっけ?とわからなくなったりして、コミュニケーションが阻害されると思います。別の言葉があるんだったらそちらを使うように心がけたいと思います。「募金に応じる」のように。
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