2月16日森美術館で、アーティスト2人山本篤と千葉正也のトークイベント
トークセッション MAMコレクション+MAMスクリーン「アーティストとアーティストについて語る」
が行われました。
山本篤は「MAMスクリーン007」で映像作品をずっと上映しており、千葉正也は「MAMコレクション006:物質と境界―ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」で作品を展示しています。
今回のイベントは、「アーティストとアーティストについて語る」ということで、それぞれが相手と一緒に語るという形式です。一緒に山本篤のキュレーションを行った徳山拓一氏、ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也のキュレーションを行った熊倉晴子氏も参加しています。
第1部:19:00~20:00「山本篤の作品について千葉正也と語る」
第2部:20:00~21:00「千葉正也の作品について山本篤と語る」
しかし「山本篤の作品について千葉正也と語る」というより「山本篤の作品について千葉正也が語る」と言った方が良いような進行でした。そこがまた面白かった。というかこんなに笑えるトークは初めてでした。
お互い以前から親交があるとのことで、お互いをリスペクトしているのが分かります。しかし千葉正也のリスペクトのしかたはちょっと違います。山本篤の映像作品ははっきり言ってお馬鹿映像なんですが、それをそのまま「無駄に長い」とか、「 (アートスペース) オンゴーイングで無駄に尊敬されている」とか、「一番の駄作の作品を見ましょう」とか言っちゃいます。でも「無駄に長い」と言いながら、「最後まで見ると『やった、終わった』と思える。いいものを見たという感覚が残る」と言っています。『やった、終わった』も褒め言葉なんでしょうね。
実際お馬鹿映像なんだけど、真面目に馬鹿をやっているということが分かります。"Custom-made Street Funkiness" はヒップホップファッションの二人が、道で拾ったゴミをどんどん身体に貼り付けて行くもの。山本は、「ヒップホップカルチャーはよく知らないけど、身体にたくさん持ち物をつけて自慢する感じ」と語ります。千葉はそれに対して、「知らなくてよくここまで特徴を捉えている」とまたこれも褒め言葉。
私は紹介された中では、"Long Walk, Guts Poses" が好きです。サラリーマンふうの男性が、何かいいことがあったのか、歩きながらなんども小さくガッツポーズをする、だんだんポーズが大きくなって、上着もシャツも脱いだりする。
「無駄に長い」というように15分くらいの作品が多いのですが、今回「MAMスクリーン007」ではそれぞれ2分程度のダイジェストになっているそうです。長いものを何本も見ると時間がかかってしまいますから仕方ないのかもしれません。
一方、山本は千葉が学生時代から売れたことから入ります。素直に尊敬しているようです。山本のトークは、山本の千葉作品の解釈を真面目に話します。千葉の絵画作品には、白い石膏像が描かれているのですが、これはヘタウマ。絵画は上手いので、上手いばかりだと普通に上手い作品になってしまうので、その中に偶然性を入れるために石膏像を入れているということです。
山本によると、千葉は2つのギアを持っているとのこと、1つ目は誠実に絵画を描く世界、もう一つは、ストーリーを持ってそれを乱す自由な世界。貪欲にチャレンジする、ブレークスルーするためのアクションだと言います。
そのあとは山本から千葉への質問になり、対談のようになってきます。千葉は制作のアイデアが常にたくさんあり、10年くらい前のアイデアを作品化することも多いとのこと。今回の出展作品《2013年のパワフルヤングボーイ》も10年前のアイデアだそうです。昔遠野に「さすらい地蔵」というのお地蔵さんがあって、若い男性が投げるという風習があったのだが、今はもう固定されて設置されている。しかし移動することがそのお地蔵さんの本来の姿なら、森美術館に持ってきて展示をしようということになり、交渉するも叶わず、その経緯を含めた作品になっています。作品のそばにその企画書のようなドローイングも一緒に展示されています。
千葉の話で印象に残ったのは、アートとお金の話です。2002年頃、Penなどでアート特集があると、この作品はなんぼだとか常にお金の話がでる。一般向けの雑誌だったらまだ仕方がないところもあるが、若いアーティストもお金の話をしていて、それとは違う生き方をしたかったとのことです。やっぱり真面目なんですね。
「MAMコレクション006」では2点しか出ていないですが、もっとたくさん見てみたいと思いました。
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