2018/02/25

NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018

先日休みを取って、NTTドコモ・ベンチャーズ DAY 2018へ行ってきました。

NTTドコモ・ベンチャーズは、NTTドコモの子会社ベンチャーキャピタルで、発足から5周年になるとのこと。

大企業では、イノベーションは起こりにくい。そのためにはベンチャーの力が必要だ。そいう思いが伝わってきた。

ただ、NTTからみたらNTTの移動体通信を担当していたドコモも当時はイノベーションを司っていたと言えるのではないか。

そういうドコモもやはりNTT出身者で成り立っていた会社で、自社だけでイノベーションを起こすのは難しかったのかもしれない。iモードはベンチャーからの提案で始まっている。この辺りの物語は日経エレクトロニクスの連載で知ることができる。

iモードと呼ばれる前
第1回:2人が出会わなければ…  (初出 日経エレクトロニクス2002年8月26日号)

物語は1997年6月25日から始まる。コンパクトなHTMLブラウザを開発しプレゼンテーションを行いにきたACCESSの鎌田。俺は騙されないぞと的確な質問をするNTTドコモのエンジニア永田。...

この物語は、端末メーカー、コンテンツ提供者など、だんだん協力者が増え、iモードのローンチに繋がっていく。物語の王道だな。「ドラゴンボール」は通しで読んだことはないけれど、そんな感じではないか。最近だと「陸王」にワクワクしたのを思い出す。

このあたりのことをキーマンの一人松永真理は「人の覚悟は伝染します」と語っている (日経エレクトロニクス2003年3月3日号 (→ 国立国会図書館リンク) )。

この成功体験はNTTドコモの記憶に刻み込まれているのではないだろうか。iPhoneでスマートフォンという新しい地平を開いたアップルに遅れをとった今、NTTドコモは、ベンチャーの力が必要だということを思い出し、新しい展開を求めているだと思う。

通常の大企業も、「自分たちの力ではダメだ」ということは気が付いているだろう。オープンイノベーションに取り組むところも増えてきた。しかしまだ成功事例は少ないのではないか。取り組みの本気度が違うのではないかと思う。

ベンチャーと組んでイノベーションを起こした成功体験をもつNTTドコモだったら、また新しいイノベーションを起こせるのではないか。そういう期待をいだかせるイベントだった。


会場の横の目立たないところに、セッションごとにイラストでまとめを作成している人たちがいました。Graphic Recordingというようです。

2018/02/24

木島櫻谷展

木島櫻谷って、島崎藤村と同様、漫才コンビみたいですね、って失礼しました。

木島櫻谷は、「このしまおうこく」と読みます。

2月24日から泉屋博古館分館 (東京・六本木1丁目) で特別展「木島櫻谷」PartⅠ近代動物画の冒険が始まります。2月23日にそれに先立ち、ブロガー内覧会が行われました。ちなみに泉屋博古館は「せんおくはくこかん」と読みます。最初に挨拶された分館長の野地耕一郎氏が「イズミヤじゃないぞ」と強調されていました。

木島櫻谷という画家は、私は知りませんでした。実は4年前に展覧会を行なったところとても評判がよかったので、今年櫻谷の生誕140年に合わせて再度展覧会を企画したとのこと。今回Part I では、櫻谷の得意な動物画を中心に構成しています。「どうぶつのおうこく」 ... 失礼しました。

4月から行われるPartⅡのテーマは、"「四季連作屏風」+ 近代花鳥図屏風尽し" となっています。


ギャラリーで説明するのは、泉屋博古館 (京都) 学芸課長の実方葉子氏です。浅井忠の時にたっぷり説明していただいたのですが、今回はなるべく短くするように言われていたみたいです。今回は取り上げる数は全部ではなかったものの、作品ごとの説明は十分丁寧で、作品が好きなんだなということが実感できます。

櫻谷の描く動物は、写実的でありながら、人間的な表情を浮かべています。


《獅子虎図屏風》(1904)。ポスター作成にあたって右のライオンの目のあたりをトリミングしたところ、皆で「人間じゃんね」という感想になったとのこと。


この作品は《寒月》(1912)で、第6回文展出品作品。櫻谷は、文展の第1回から出品しており、第1回では最高賞を受賞しています。そしてこの作品でも最高賞を受賞しています。菱田春草らをライバルとして切磋琢磨していたということです。

この作品はモノクロームに見えますが、竹は様々な色彩を重ねて描かれており、右手の月の空はどう形容していいかわからない色調です。


この作品《かりくら》(1910) も同じく文展 (第4回) に出品されたもの。その後翌年のローマ万博で出品されて以降行方が分からなくなっていたとのことです。最近櫻谷文庫 (櫻谷が生前住んでいた家) で発見された時は、表装もされず、傷みが激しかったのを2年かけて修復したそうです。修復前の写真も作品のそばに展示してあります。

この作品は武士の絵なんですが、やはりこの馬に櫻谷の特徴をみてほしいということです。

スケッチや画材、道具の展示もあります。高価な日本画用絵の具がぎっしり詰まったトランクも出展されています。

京都市動物園に足繁く通ってスケッチをしていたそうで、今回新たに発見された京都市動物園の年間パスも展示されていました。当時年間パスという制度自体がなかったのでしょう、櫻谷専用に作られています。櫻谷に贈られた経緯はわかっていないそうです。

なお、写真は特別の許可をいただき撮影しました。

展覧会情報
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html

展覧会名: 生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 
主催: 公益財団法人 泉屋博古館/公益財団法人 櫻谷文庫/ BS フジ
会場: 住友コレクション 泉屋博古館分館 〒106-0032 東京都港区六本木1-5-1
会期: 2018年2月24日(土)- 4月8日(日)(月曜休館)
開館時間: 午前10時00分~午後5時00分(入館は4時30分まで)
入館料: 一般 800円(640円) / 学生600円(480円) / 中学生以下無料
     20名様以上の団体の方は(  )内の割引料金

2018/02/20

山本篤と千葉正也トーク

2月16日森美術館で、アーティスト2人山本篤と千葉正也のトークイベント
トークセッション MAMコレクション+MAMスクリーン「アーティストとアーティストについて語る」
が行われました。

山本篤は「MAMスクリーン007」で映像作品をずっと上映しており、千葉正也は「MAMコレクション006:物質と境界―ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」で作品を展示しています。

今回のイベントは、「アーティストとアーティストについて語る」ということで、それぞれが相手と一緒に語るという形式です。一緒に山本篤のキュレーションを行った徳山拓一氏、ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也のキュレーションを行った熊倉晴子氏も参加しています。
第1部:19:00~20:00「山本篤の作品について千葉正也と語る」
第2部:20:00~21:00「千葉正也の作品について山本篤と語る」

しかし「山本篤の作品について千葉正也語る」というより「山本篤の作品について千葉正也語る」と言った方が良いような進行でした。そこがまた面白かった。というかこんなに笑えるトークは初めてでした。

お互い以前から親交があるとのことで、お互いをリスペクトしているのが分かります。しかし千葉正也のリスペクトのしかたはちょっと違います。山本篤の映像作品ははっきり言ってお馬鹿映像なんですが、それをそのまま「無駄に長い」とか、「 (アートスペース) オンゴーイングで無駄に尊敬されている」とか、「一番の駄作の作品を見ましょう」とか言っちゃいます。でも「無駄に長い」と言いながら、「最後まで見ると『やった、終わった』と思える。いいものを見たという感覚が残る」と言っています。『やった、終わった』も褒め言葉なんでしょうね。

実際お馬鹿映像なんだけど、真面目に馬鹿をやっているということが分かります。"Custom-made Street Funkiness" はヒップホップファッションの二人が、道で拾ったゴミをどんどん身体に貼り付けて行くもの。山本は、「ヒップホップカルチャーはよく知らないけど、身体にたくさん持ち物をつけて自慢する感じ」と語ります。千葉はそれに対して、「知らなくてよくここまで特徴を捉えている」とまたこれも褒め言葉。

私は紹介された中では、"Long Walk, Guts Poses" が好きです。サラリーマンふうの男性が、何かいいことがあったのか、歩きながらなんども小さくガッツポーズをする、だんだんポーズが大きくなって、上着もシャツも脱いだりする。

「無駄に長い」というように15分くらいの作品が多いのですが、今回「MAMスクリーン007」ではそれぞれ2分程度のダイジェストになっているそうです。長いものを何本も見ると時間がかかってしまいますから仕方ないのかもしれません。

一方、山本は千葉が学生時代から売れたことから入ります。素直に尊敬しているようです。山本のトークは、山本の千葉作品の解釈を真面目に話します。千葉の絵画作品には、白い石膏像が描かれているのですが、これはヘタウマ。絵画は上手いので、上手いばかりだと普通に上手い作品になってしまうので、その中に偶然性を入れるために石膏像を入れているということです。

山本によると、千葉は2つのギアを持っているとのこと、1つ目は誠実に絵画を描く世界、もう一つは、ストーリーを持ってそれを乱す自由な世界。貪欲にチャレンジする、ブレークスルーするためのアクションだと言います。

そのあとは山本から千葉への質問になり、対談のようになってきます。千葉は制作のアイデアが常にたくさんあり、10年くらい前のアイデアを作品化することも多いとのこと。今回の出展作品《2013年のパワフルヤングボーイ》も10年前のアイデアだそうです。昔遠野に「さすらい地蔵」というのお地蔵さんがあって、若い男性が投げるという風習があったのだが、今はもう固定されて設置されている。しかし移動することがそのお地蔵さんの本来の姿なら、森美術館に持ってきて展示をしようということになり、交渉するも叶わず、その経緯を含めた作品になっています。作品のそばにその企画書のようなドローイングも一緒に展示されています。

千葉の話で印象に残ったのは、アートとお金の話です。2002年頃、Penなどでアート特集があると、この作品はなんぼだとか常にお金の話がでる。一般向けの雑誌だったらまだ仕方がないところもあるが、若いアーティストもお金の話をしていて、それとは違う生き方をしたかったとのことです。やっぱり真面目なんですね。

「MAMコレクション006」では2点しか出ていないですが、もっとたくさん見てみたいと思いました。

Domani・明日展 20th

Domani・明日展は毎年ではないのですが、行ける時は行くようにしています。今年は20回記念だそうですね。おめでとうございます。

過去行ってブログを書いたのが、2010年2014年2017年。2016年も行ったはずですが、ブログには書いていませんでした。

毎回知らないアーティストが多いのですが、今年はこれまで見たことがあったアーティストとして、中谷ミチコ、西尾美也、やんツーがいました。

中谷ミチコは、今回最もいいなと思ったアーティストです。みたことがあるな、と思ったら、2011年に横浜美術館で行なわれた「中谷ミチコ展|境界線のありか」に行っていたのでした。会期中に東日本大震災があったのですね。

それ以外にも2011年のBankART LifeⅢ "新・港村"、2014年の東アジアの夢ーBankART Life4 に出ていたのですが、記憶に残っていません。

やんツーは、これまで2015年の21_21  Design Sight「動きのカガク展」、同じく2015年 NTTインターコミュニケーションセンター「オープン・スペース 2015」で見ていますが、いずれも菅野創との合作でした。あいちトリエンナーレ2016でも出ていたはずですが気づかなかったようです。また、2016年11月のメディア芸術祭 トーク「メディアアートとフェスティバル」でのトークを聴きました。

西尾美也は2017年Socially Engaged Art展で、やはり服を交換する作品を出していました。あいちトリエンナーレ2016でも服をたくさん吊るし、どれでも着れるという作品を出していました。

今回印象に残ったのは、雨宮庸介です。順番に見ていって、雨宮氏のエリアに入ると、雨宮氏が観客の前で話をしていました。アーティストトークをやってるんだ、と思って聞き始めたら、だんだん変な感じがしてきました。「みんなが同じ方向に走っていて、これは何ですかと聞こうと思ったら、みんな息を切らしていて、これは真剣なんだなと思って、自分も一緒に走りました」というようなプロットが繰り返し出てきて、あ、これはこういうパフォーマンスなんだなと理解しました。

本人はその場で制作を続けていて、声をかけるとパフォーマンスが始まるそうです。でも制作中のアーティストには、ちょっと声をかけにくいかもしれません。

2018/02/17

持続可能な開発

2月14日、東京大学政策ビジョン研究センターの10周年記念国際会議「サステナビリティと国際関係- 持続可能な開発の実現に向けて-」を聴講してきました。

中心のテーマは国連 (UNDP: 国連開発計画) の「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals: SDGs) です。貧困問題、飢餓、教育、エネルギー、環境など、17の目標を設定し、どれか一つではなく、バランスを持った開発を目指しています。

外務省ホームページより

まず東京大学総長の五神真氏より基調報告として、東京大学の取り組みについてお話がありました。東大では未来社会協創推進本部 (FSI) を創設しています。大学というと研究までで、成果を具現化していくことはミッション外となりがちですが、その名にあるように「協創」を目指しています。多くのプロジェクトがありますが、それぞれ何らかの形で、SDGsと繋がっています。それぞれのプロジェクトがどの目標に繋がっているかを示されていました。

国際連合大学学長 デヴィッド・マローン氏の基調報告では、SDGsまでの歴史の話からスタートします。前身のミレニアム開発目標  (2000~) では、SDGsに含まれる平和に関する目標は除外されていました。平和、公正 (justice) は、持続性に大きな影響があります。今回SDGsには、「目標16: 平和と公正をすべての人に」が含まれています。

日本についても言及がありました。福島の原発事故で、日本の取り組みは後退した。しかし、長い間には停滞することもある。長い目で見ていく必要があるということでした。

パネルでは、プリンストン大学 ジョン・アイケンベリー教授、ジャーナリストの国谷 裕子氏、国際連合大学副学長の沖 大幹氏がそれぞれ短いプレゼンを行ないました。

アイケンベリー教授は、気温上昇2℃以内に抑えることが重要で、その影響を4つの項目 (自然災害、海面上昇、農業への影響、移民・難民) で語ります。問題があっても豊かな国は生き残ることができるが、紛争や難民で結局ヨーロッパにも影響が波及するので、全世界的な協調が重要だということを訴えます。

元NHK「クローズアップ現代」のキャスターを長く務めた国谷裕子さんは、その後も社会問題に関して活動を続けられています。その経験から「ある問題の解決が別の問題を生むことを何度も見てきて、悩んでいた。そこにSDGsに出会って、これだと思った」とのこと。SDGsでは、目標間の相互依存性を留意し、バランスをとった解決が求められます。

国谷さんは、SDGsは取り組みの時期に入っていて、企業が取り組みを初めているとのことです。一方日本では、途上国支援の延長という程度の位置付けになっています。今後ビジネスチャンスとして考える必要があると語ります。また、地方自治体での取り組みも始まっています。地方自治体は、人材流出、人口減少、老齢化といった課題が目の前の危機としてあるからです。後で出てきますが、例えば、SDGs Award をとった北海道下川町 では、森林資源を生かした産業、エネルギー自給率の向上などに取り組んでおり、今後はエネルギー外販で13億円の収益を上げることを目指しているそうです。

国谷さんは、「みんなが知って、みんなが取り組む。そうすれば世界は変わる」と語ります。"Imagine" ですね!

沖氏は、水の問題の専門家です。私は以前 BIG ISSUE を読んでこの人のことを知りました。当然、水の問題、環境問題に警鐘を鳴らすのかと思いましたが、意外にも「世界は良くなっている」というメッセージでした。SDGs レポート2017によると、世界の絶対貧困は減っているし、初等教育の普及も進んでいるとのこと。パリ協定では、世界が「化石燃料を使い切らない」と決め、再生可能エネルギーに舵を切っている。

「独り勝ちはない = 一連託生」という考えが広まっており、「グローバル・サウス」を単なる貧困地域としてではなく、労働/消費市場とみなすようになってきた。社会問題、環境問題への配慮は soft law (法律ではないが皆が守る規範) になってきた。

その規範は常に前に動いており、中国ですら変わらざるを得なくなってきている。

このことは大きな希望ですね。これまでは自分の利益のために動いてきた。「ゼロサム」が根底の考え方にあり、自分の利益は誰かの犠牲のもとに成り立っていた。しかしそれは結局「共倒れ」につながる。協力することで自分も相手も利益になるという考え方、そして、無理だと決めてかかるのをやめることがポイントにな流とのこと。

あとはアメリカですね。それから日本も、難民問題や人権、子どもの貧困など大きく遅れているところがあります。

先ほど中国を褒めましたが、南シナ海の支配など、覇権の拡大は世界のためにならないということを早く気が付いて欲しいです。一帯一路も「中国の覇権に従うもの」が参加資格といった側面が感じられます。

最後に会場からの質問を受け付けましたが、取り上げきれないほど多くの方の挙手がありました。最初の人の発言は「日本企業は重要性は理解していても、行動が伴わないことが多い。企業の取り組みをインデックス化して公開したらどうか」というもので、なるほどと思いました。中には「なぜ多くの目標の中でCO2削減が中心になっているのか。日本が80%削減したら鉄鋼セメント以外全産業が壊滅する」というような、これまで「バランスが大事」ということを聞いてなかったのかというような質問もありましたが。

全体的に、希望を感じさせる国際会議だったと思います。

2018/02/10

赤い枝を探せ

三菱一号館美術館で開かれている「ルドン―秘密の花園」展。初日の2月8日にブロガー内覧会が行われ、参加させてもらいました。

トークの様子
まず館長の高橋氏 (右写真) が、ルドンに対する思い入れを語ります。ルドンの《グラン・ブーケ (大きな花束) 》を購入するきっかけになったエピソード、購入後最初の公開が2011年パリのルドン展であったこと、震災の中での苦労、今回のルドン展までに時間がかかったことなど。

ルドンは、印象派の時代にあって独自の道を進み、生涯にわたって多彩な技法やテーマに取り組んだため、「ルドンといえば○○」といったわかりやすいレッテルはありません。ます。それでも普通「象徴主義」と位置付けられるとのことです。

ルドンは初期には木炭画、エッチングなどを使ったモノクロームの作品を発表していますが、発表はしないものの小品の油彩も描いていました。後年、油彩やパステル画など色彩を使った作品を発表します。

今回の展覧会のテーマは「花」で、必然的に色彩の豊かなものも多くなりますが、若い頃植物学者アルマン・クラヴォーと親交があり、その影響を受けた作品が黒の時代にもあります。

配置図
今回の展示の目玉は、ルドンが手がけたフランス ブルゴーニュ地方のドムシー男爵家の食堂の装飾画が日本で初めて揃うことにあります。三菱一号館美術館の《グラン・ブーケ (大きな花束) 》も元はその一つでした。

展示は元の食堂の壁ごとの配置をなるべく生かした配置になっています。元の配置図も示してありました。元は高いところにあっためあまり近寄っては見れないのを、今回の展示では寄ってみることができます。絵自体も上の方は粗く描かれていたのがわかります。次の写真の左の絵C.《人物(黄色い花)》は途中から繋いだ跡がわかります。

また、途中でやめている感じのところもあります (写真右作品《花とナナカマドの実》の右下)。「絵はどこまで描けば完成か」というのははっきり決められないところではありますが、この「途中でやめた感」はその頃の流行だそうです。

トークの中では明治時代の横山大観らの「朦朧体」との類似にも言及がありました。日本人には好まれるのではないかと。

象徴主義に関して、「赤い枝」の話がありました。ルドンの作品の中には赤い枝が描かれているものがある、とトークでいってしまうと、鑑賞が「赤い枝を探せ」状態になってしまう、という話でした。ええ、最初の方の展示まで戻って、横浜美術館所蔵の《二人の踊女》を確認してきましたよ。

これ以外にも、何かを象徴するものが描かれているのですが、ルドン自身は何も語らなかったそうです。

今回写真は特別の許可を得て撮影しています。ドムシー男爵家の食堂の絵の配置を再現した部屋があり、通常はそこでのみ写真を撮ることが可能です。

以下展覧会情報です。なお、4月6日は開館8周年のイベントで、付箋のプレゼントがあるそうです。

「ルドン―秘密の花園」展
http://mimt.jp/redon/
会場: 三菱一号館美術館
    〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
会期: 2018年2月8日(木)~5月20日(日)
開館時間: 10:00~18:00
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日: 月曜日(但し、祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)
チケット: 一般 1,700円、高校・大学 1,000円、小・中学生500円 
     ※障がい者手帳をお持ちの方と付添の方1名まで半額。