2019/08/04

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展

三菱一号館美術館で行われている「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」のブロガー内覧会が7月31日に行われたので、参加してきました。お話はおなじみブログ「青い日記帳」のTak (たけ) さんと、担当学芸員の阿佐美淑子さん。高橋館長も最初にご挨拶があり、その後も時々お話に割り込んでいくというスタイルでした。

マリアノ・フォルチュニという人は知らなかったのですが、お話を聞いて、現代ファッション・デザインの始祖のような人だとわかりました。1900年代はじめ女性はコルセットで締め付けるスタイルが上流から中流まで広がっていた状況で、そのスタイルから解放した人の代表的な一人です。

フォルチュニの代表作が上写真左の方の黒いドレス「デルフォス」。19世紀末に発見された、紀元前5世紀の彫刻「デルフォイの御者」(右) にインスピレーションを受けデザインされたそうです。

数年後には、この上に羽織って外出することが普通になった (それまで女性が一人で外に出ることはなかった) ということです。その意味で新しい時代を作った人の一人といえるでしょう。そのあとシャネルなどが続くことになります。
デルフォスは、波型のプリーツが全体に入っています。すごく軽く、たたんで専用の箱にしまいます (左)。日本の絹が使われているそうです。

フォルチュニ自身が亡くなって作られなくなり、今では再現できないということです。特許は出ているのですが、それだけでは再現できないノウハウがあったのでしょう。洗濯もフォルチュニ社が行うようにしていて、そうしないとプリーツが消えてしまうということでした。

今回展示されているドレスは、ほとんどが日本にあるものを集めたものになっています。実はベネチアのフォルチュニ美術館には衣装はなく、むしろ日本に沢山残っているそうです。

ファッションデザインで著名なフォルチュニですが、実は画家、舞台美術設計者、染色家、写真家といったマルチな才能を発揮していて、この展覧会はそのマルチタレントにスポットをあてたものになっています。

最初は画家としてスタートしています。父も有名な画家で同名のマリアノ・フォルチュニ (「マリアノ・フォルチュニ・イ・マエサル」とクレジットされていました)。9歳の時の絵も展示されていますが、最初は下手だから入れないつもりだったのを、「9歳の時の作品」と聞いて入れることにしたそうです。

舞台装置設計では、外光と間接照明を用いたシステムで、時刻によって異なる外の光を遠隔操作で変えることができるようになっています。1900年に特許を取得し、ヨーロッパ各地で採用されたそうです。

住居の照明も手掛けていて、本当に精巧に作られているとのこと。今は制作されていないので、展示会では模造品を作って展示しているが、展示会後はベネチアのフォルチュニ美術館で展示される予定になっています。

写真家としても才能を発揮しますが、写真は外部に公開するために撮影していたものではなく、そのためあまり知られていません。しかし、様々な機材、技法を試し、また内容も芸術的な作品も多く、特によく撮影した雲の写真は芸術性が高いものになっています。

フォルチュニ社、特許という言葉が出ましたが、ビジネスマンとしてもあったということです。染織物は、1921設立の工場で同じ技術で現在も作られているそうです。

ファッションということで女性に向けた展覧会というイメージを与えますが、このようにマルチタレント、ビジネスマンという視点で見ると、男性も楽しめると思います。阿佐美氏は、「男性も楽しめるように舞台装置の設計図や模型もおいた。期待通り男性の食いつきが良かった」とおっしゃっていましたが (言葉はもっと上品に)、私は時間の余裕がなかったせいでそこはほとんどスルーしてしまいました。

10月6日までですので、まだまだ余裕があります。

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展
https://mimt.jp/fortuny/
場所:三菱一号館美術館 (〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2)
会期:2019年7月6日(土)~10月6日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、8月12日~15日、会期最終週平日は21:00まで)
休館日:月曜休館(但し、祝日・振替休日の場合、9月30日とトークフリーデーの7月29日、8月26日は開館)

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