ヨコハマトリエンナーレ2020と同様、ここも日時指定の鑑賞券が必要です。私は年間パスを持っているので、月曜日のお昼ごろは枠がたくさん空いていることだけ確認して、当日枠で入れるだろうという予測のもとに予約をせずに行きました。
年間パスを持っているといっても、6月に切れているので、今回の新型コロナウイルス対策で閉館していた期間の延長をしてもらいます。閉館は3か月程度だったと思いますが、5か月延長してもらえます。11月まで有効期限が伸びましたが、このSTARS展は来年1月まであるので、次の展示会も行ける、という訳ではありません。
今回 Stars という訳で、現代日本美術を代表する6名のアーティストのグループ展になっています。
草間彌生、村上隆、奈良美智はポピュラーですが、李禹煥、宮島達男、杉本博司はちょっと渋い選択と言えるかもしれません。「日本から世界へ」というサブタイトルがつけられていることと、作品展示だけでなく「アーカイブ展示」として、 「アーティストの活動歴」と、「海外で開催された日本の現代美術展『50展』」のコーナーがあるように、海外での発信という意味が重視されているのだと思われます。
村上隆
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村上隆《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》
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この《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》から始まって、ポップアップフラワーなどいつもの村上ワールドな訳ですが、阿吽像は初めて見ました。
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村上隆《阿像》 |
村上隆《吽像》 |
新作で出ていた《原発を見にいくよ》は、2011年原発事故をテーマにしながら、ほんわかとした雰囲気に仕上がった作品です。男女二人 (猫型の被り物をしている) が、電車とレンタカーで原発事故後の福島に行くのですが、「SFの世界滅亡後みたいに美しい」というような歌詞 (すみません正確ではないです) でも美しいメロディーの歌が背景に流れます。今どこまで立ち入り禁止が解除されているのか分からないのですが、「立入禁止」と書かれた朽ち気味の看板があるところも通るし、放射性物質汚染水をためた大きな黒い袋がいくつも並ぶ風景も映し出されます。
最初は大騒ぎしたけれど、我々は今はもう意識していない。でも何も終わっていない。除染作業で戻れる土地は増えてきたけれど、日々汚染水は溜まっていくし、自分の自宅に戻れていない人もいる。そういう意味で続いているのだ。この作品はそれを思い出させてくれる。
李禹煥
李禹煥はこれまでグループ展の中で何回か見ていました。特に2016年に横浜美術館で行われた村上隆のスーパーフラット・コレクションに出ていた作品が印象に残っています。「もの派」ということで、作品には製作マニュアルがあって、展示会ごとに再構成される形をとります。
白い小石が敷き詰められたように見える床が印象的です。これも含めて製作マニュアルに入っているのか、それとも今回特別なのかはわかりませんでした。
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李禹煥《関係項—不協和音》
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直島に行った時に李禹煥美術館に行く時間が取れなかったのが残念。
草間彌生
草間彌生のセクションは、彼女の長いキャリアと作品の幅広さからグループ展は難しいと思うのですが、それでもなるべくバラエティーを出そうとする意図が感じられました。その意味ではよく考えられた選択だと思いますが、やっぱり大規模個展でないと物足りない気がします。
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草間彌生《ピンクボート》《無題 (金色の椅子のオブジェ)》《トラヴェリン・ライフ》 |
宮島達男
宮島達男は、7セグLEDカウンターを使った作品で有名で、2011年東日本大震災以降は震災がその中心テーマになっています。
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宮島達男《「時の海—東北」プロジェクト(2020東京)》
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写真でぼやけている光は1桁の7セグLEDカウンターで、それぞれ異なったサイクルで数字が変わります。市民参加型の作品で、参加者「コラボレーション・アーティスト」がそれぞれ更新時間間隔を決めます。この参加者は現在も継続して募集しています。→
「時の海-東北」プロジェクトのサイト
奈良美智
奈良美智のコーナーに入ると、奈良美智ワールドが展開します。
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奈良美智《玉葱王子》など
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次の部屋にあるのは、《Voyage of the Moon (Resting Moon)》。小さなデフォルメされた家の中は、原美術館にある奈良美智の部屋みたいな感じです。製作協力として graf の名前があげられていますが、そういれば横浜トリエンナーレ2005の出展作品もgrafの名前が入っていました。
杉本博司
杉本博司は、《シロクマ》など写真作品もありますが、何と言っても大画面の映像作品《時間の庭のひとりごと》が圧巻です。小田原にできた「
江の浦測候所」を中心に据え、日本の歴史に思いを馳せます。江の浦測候所は気にはなっているのですが、まだ行けていません。今は完全予約制ということで、ちょっと心理的なハードルが高くなっています。
文化功労者として、これからも国威発揚を文化を通じて行っていく所存でございます
私はこのコメントを読んで「幻の東京オリンピック前夜のようだ」と感じました。
MAMプロジェクト028:シオン
同時開催の
MAMプロジェクト028:シオンもインパクトがあります。古着の波が襲ってくる感じ。裏に回ると十字架が刺さっています。古着は大量消費社会のメタファーだということですが、宗教的なテーストを加えることで、普段気が付かず参加している大量消費という行為の背徳性に気付かせてくれるものだと思います。
なお、ここにあげた写真は全て「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。