2020/08/29

「祝・安倍首相辞任」という心境になれない

前日、それから当日の朝まで続投の観測が流れていたので、安倍首相の辞任表明は正直なところ驚いた。

毎日新聞 2020/8/28 14:19 安倍首相、辞任の意向固める
毎日新聞 2020/8/28 17:18 安倍首相が辞意表明「職を辞することとした」潰瘍性大腸炎が再発

病気という理由は非難すべきことではないし、潰瘍性大腸炎というのは難病ということは理解できるが、このために批判がしにくい状況にある。私も病気自体を批判するつもりはないが、安倍首相のこれまでの政治姿勢を批判する上において、「病人を病気を理由に批判している」と読まれてしまうことには覚悟が必要と考えている。

本当の理由は前回と同様に政治的環境に耐えられなくなったのだと思われる。与党が国会で過半数を占める状況下での政権運営が長く続き、野党がどれだけ批判しても思う法案を通すことができ、不祥事に対する批判も自身は矢面に立たず、担当官僚に対応させてきた。国会答弁だけでなく、公文書破棄、改ざんなども自分では直接手を下さずにすませてきた。国会を解散し選挙で勝てばそれらの問題は解決したことになってしまう。今回新型コロナウイルス対応はそういう手法が使えず、これまでにない局面だったと思われる。

本来はもっと早くやめることもできたのだと思うが、やはり最長連続在任記録更新を達成したかったのではないか。その間できるだけ矢面に立たないようにということを第一に考えていたのだろう。臨時国会開会を拒否し、記者会見も行わないようにしていた理由はわかる。一方で「連続勤務」と、甘利氏など周辺の人々を使って仕事のしすぎというアピールを行ってきたが、これも今回の辞任の布石だろう。

安倍首相は、不祥事だけでなく、憲法や法律を無視/軽視する姿勢、ウソ、国会での野次など品性の低さなど、日本の国を代表するポジションに立つ人物としてふさわしくない人物だった。そういう意味では、後任の人は安倍氏よりもましな可能性は高く、今回の辞任は日本の国にとってはプラスになるといえる。しかし、本来は国民の手で審判を下せる場面は多くあったが、今やその機会はなくなってしまったと言える。今後「志半ばにして病に倒れた」という悲劇のヒーロー的な物語が語られ、批判が不十分なまま終わってしまうことを危惧する。

昔、柔道の斉藤仁選手は打倒山下泰裕選手を目指してきたが最後まで勝てず、その山下選手が引退して初めてトップに立つことができた。そのときの斉藤仁選手の無念さはいかばかりかと思う。私は今そんな心境だ。とても「祝・安倍首相辞任」という心境になれない。

追記: 「なぜ我々は安倍政権を選び続けてきたのか」を説明する記事がありました。

現代ビジネス 2020/08/29 安倍総理、辞任。日本の政治を「空洞化」させた政権の7年半

 (5ページ) 安倍政権を支えたのは、スローガンと現状維持だった。そして、有権者は、スローガンを叫びながら、実際には何も変えない内閣を選んだ。

それは、危機のときに日本がたびたびとってきた手法だ。実際の数字には目をそむけ、ドラスティックな改革を避けることで、多くの支持者は安心した。つまりは、「ゆるやかな衰退」を我々は選んだのだ。変わることを「混乱」ととらえ、変わらないことを「安定」ととらえた我々有権者は、安倍政権を「安定した政権」と評価した。

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