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2016/11/16

小田野直武をスターにしたい

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重要文化財 松に唐鳥図 佐竹曙山筆
 一幅 江戸時代 18世紀 個人蔵
 【展示期間:11/16~12/12】

先日「小田野直武と秋田蘭画」で言及した「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」展。明日11月16日からスタートということで、本日内覧会および開会式がありました。

開会式にはやはり法政大学総長の田中優子先生がいらっしゃっていて、乾杯のスピーチをされました。その時に出てきた言葉が、「小田野直武をスターにしたい」。
私は何回か著書の中で小田野直武について書いているけれども、きっと誰かが小田野直武の生涯を小説にしてくれると思っている。そしたら次は大河ドラマのテーマになって ...
あまり注目されていなかった小田野直武ですが、今回の展覧会を機に多くの人に知ってもらいたいとのことでした。

ただ小田野直武は、「世界に挑んだ7年」とあるように平賀源内にスカウトされて江戸に行ってから夭逝するまで活動期間は7年。そのため作品はあまり残っていません。展覧会では直武を中心とする秋田蘭画の画家たちの作品、また直武亡き後の司馬江漢らの画家の作品もあわせて展示されており、全体がストーリー構成の展示となっていました。

以下その章立てです。

第1章 蘭画前夜
第2章 解体新書の時代~未知との遭遇~
第3章 大陸からのニューウェーブ~江戸と秋田の南蘋派~
第4章 秋田蘭画の軌跡
第5章 秋田蘭画の行方

「蘭画前夜」では、直武の数え歳12歳のときの作品も展示されているのですが、そこにちゃんと銘が記されていて、その時期から既に才能を認められた画家だったことがわかります。

右に示したのは、「第4章 秋田蘭画の軌跡」から佐竹曙山筆「松に唐鳥図」(画像はサントリー美術館に提供いただきました)。前景に斜めに描かれた松、薄く描かれた遠景、秋田蘭画の典型的な構図です。

「不忍池の図」など小田野直武の画は、「小田野直武と秋田蘭画」からご覧ください。

展覧会情報
「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画展」
会期: 2016年11月16日(水)~2017年1月9日(月・祝)
会場: サントリー美術館
URL http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_5/

そうそう、会期の途中で展示替えがあります。目玉の一つ「不忍池図」が12月12日までですのでご注意ください。

2016/11/12

チームラボ新作@禅展

「チームラボの新作発表会がある」と聞いて、11月8日に国立東京博物館・平成館で行われた「チームラボ新作発表@禅展・夜間特別内覧」に行ってきました。

inoko-m 猪子寿之氏と「円相 無限相」

国立東京博物館・平成館で行われている特別展「禅―心をかたちに―」が後期日程に入るにあたって、11月下旬にシンガポールで公開予定の新作「円相 無限相」が先行展示されます。今回の内覧会では、その発表としてチームラボ代表猪子寿之氏のスピーチがありました。

この「円相 無限相」は、禅の書でよく取り上げられるテーマ「円相」をモチーフにしたもので、円や無限大が永遠に書かれ続けていきます。これはビデオをループしてる訳ではなく、コンピューターによって毎回異なった円や無限大が生成されます。書の世界に実際には紙に書かず空中に書く動作を行う「空書」という概念があるそうですが、それをイメージしているようです。

もちろん内覧会はこの作品のお披露目だけでなく、禅展全体のプロモーションが目的です。今回は国内の禅宗のお寺の名品を一堂に集めたということで、50年に一度しかできないであろう規模だそうです。所蔵作品や文化財などを提供したお寺のお坊さんも挨拶されていましたが、すみません、お名前を記録していませんでした。

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記念撮影

後期展示は、チームラボ作品以外にもセールスポイントがあります。

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慧可断臂図 (雪舟)

一つは雪舟と白隠の「慧可断臂図」(えかだんびず) が揃うこと。「慧可断臂図」とは、禅展の「見どころ」から引用すると、
「慧可断臂図」は、禅画ではよく取り上げられる画題の一つで、初祖達磨(だるま)に慧可(えか)が入門を請うために自らの左腕を切り落として覚悟の意を示す場面が描かれる。
達磨さんも止めろよ、と思う。「手も足も出ませんでした」ってやかましいわ。

雪舟の「慧可断臂図」(右: 写真は特別の許可を得て撮影しています) が腕を切り落とした後の慧可を描いているのに対して、白隠は腕を切り落とす直前の姿を描いています (すみません写真は撮り忘れたので、「見どころ」から見てください)。

なお、白隠の「慧可断臂図」は、大分県臼杵市の臨済宗妙心寺派の見星寺で新たに発見されたものだそうです。

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若冲作品を鑑賞する人々

もう一つのセールスポイントは伊藤若冲の作品2点「旭日雄鶏図」と「鷲図」が特別出品されることです。今年は若冲生誕300年ということで大規模な展覧会が開かれましたね。待ち時間4時間に恐れをなしていきませんでしたが、ここで見ることができました。やはりここだけ人だかりができていました 。

若冲の作品というと禅画とは対照的な位置にあると思いますが、若冲自体は禅宗とは深い関係にあるそうです。禅展の 最新情報 から引用します。
大典和尚(梅荘顕常 相国寺第百十三世)と深交を結び、30代半ばから若冲居士と称して禅に帰依し、剃髪して肉食妻帯を避けました。相国寺には代表作の「動植綵絵」を「釈迦三尊像」とともに寄進し、鹿苑寺(通称は金閣寺)には障壁画を描き、父母と自身の墓は相国寺内に建てました。このように若冲は臨済宗の禅と深い関係にありました。
また58歳のとき伯珣照浩(萬福寺第二十世)に参禅して「革叟」という道号を授かり、晩年には海宝寺に障壁画を描き、五百羅漢の石像を奉納した石峰寺に遺骸が埋葬されるなど、若冲は黄檗宗の禅とも強く結ばれていました。
今相国寺で、伊藤若冲展 が行われていますね。「動植綵絵30幅を一堂に展示」というキャッチに惹かれますが、「(コロタイプ印刷による複製品)」という但し書きが書いてありました。11月末に京都に行くので行こうかなと一瞬思いましたが、ちょっと微妙な気分です。

展示会場内には座禅体験コーナーもあります。この日はお坊さんが一緒に座禅をしてくれていましたが、いつもお坊さんがいらっしゃるわけではないと思います。

最後に展覧会情報をあげておきます。

特別展「禅―心をかたちに―」http://zen.exhn.jp/
会期: 2016年10月18日(火)– 11月27日(日)
休館日: 月曜日
開館時間: 午前9時30分〜午後5時
金曜日と10月22日(土)、11月3日(木・祝)、5日(土)は午後8時まで(入館は閉館の30分前まで)
会場: 東京国立博物館 平成館
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
http://www.tnm.jp/

2016/09/04

小田野直武と秋田蘭画

2016年11月16日から、サントリー美術館で「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」展が開催されます (プレスリリース (PDF))。それに先駆け、先日8月26日  (金) にプレスおよびブロガー向けイベント、 「世界に挑んだ7年小田野直武と秋田蘭画」展 プレミアムトークが行われました。法政大学総長の田中優子先生も講師に入っているじゃないですが。申し込んで参加してきましたよ。

解体新書(部分)
杉田玄白ら訳、小田野直武画 一冊(序図)
安永3年(1774)
国立大学法人東京医科歯科大学図書館
【全期間展示】
小田野直武と秋田蘭画に関しては、先日受講していた今だからこその江戸美術」で、平賀源内の仕事の中で取り上げられていました。平賀源内が秋田藩から連れてきて「解体新書」の挿絵を描かせたこと、源内から遠近法を教えられ、秋田蘭画の中心人物となったこと。秋田蘭画ということはこのとき初めて知り興味を持ったが、このコース自体は江戸美術とヨーロッパの文化の大きな類似性を捉えるものだったので、秋田蘭画に関してはそれ以上深く調べることはしていませんでした。その前の田中優子先生のgacco「江戸文化入門」でも取り上げられていたのですが、このコースも密度が濃くて追いついていくのが精一杯でした。

そんな中、このプレミアムトークの案内がきたのです。これまでにブログやSNSで宣伝に協力した人優先ということで、申し込みにはこれまでこのブログでで紹介した記事を列挙して猛烈アピールしました。講師が田中優子先生だし!

効果があったか、招待状がきたので行ってきました。

今回、会期の3ヶ月近く前にこのプレス向けのイベントが企画されたわけですが、それはこの展覧会のキーパーソンである下記の皆さんからぜひ広めたいということで開くことになったとのことです。
  • 高階秀爾氏(美術史家、大原美術館館長、公益財団法人西洋美術振興財団理事長
  • 河野元昭氏(京都美術工芸大学学長、静嘉堂文庫美術館館長、秋田県立近代美術館名誉館長)
  • 田中優子氏(法政大学総長)
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高階秀爾氏からはその時代の文化的な背景の話がありました。

江戸時代鎖国をしていたとはいえ、ものの交易はあり、それに伴い文化的な交流もあった。ただ、宗教的なものは拒否されていたので、宗教色の弱いオランダが交易の対象となっていた。このためオランダの絵画は、宗教画がなく、また王政ではなく市民社会中心だったため王侯貴族を描く人物画もなかった。それら以外のもの静物画、風景画が中心であった。これらは観察して描くものであり、日本でも博物学的な関心が高まっていたのと呼応する。そのころ吉宗は洋学を解禁し、絵も積極的に購入していた。平賀源内が活躍し、博物図譜の流行、解体新書に繋がる ...

当時のヨーロッパ文化と日本の文化の関係が「今だからこその江戸美術」の中心的なテーマだったので、高階氏の話はすっきりと理解できました。

田中優子氏のお話は平賀源内を軸に構成されていました。

当時各藩は藩内の資源を活用し産業を興すことを求められていた。平賀源内は脱藩しており、フリーランスとして各藩の鉱山開発を請け負っていた (本来の意味の山師ですね)。秋田も鉱山開発の目的で訪れている。その後、角館に住んでいた小田野直武を呼び寄せている。これは実は秋田藩が直武に要請したものだが、秋田藩が任官し江戸に送っているにもかかわらず、江戸では藩の江戸屋敷ではなく源内の家に住み着いていた。そこで解体新書の挿絵を描かせるわけだが、解体新書の後、自分の独自の絵を描き始めた。陰影画法による絵が描かれている (遠近法はすでにあった)。「児童愛犬図」で描かれている子どもは中国、犬は洋犬、窓は日本と、画法も含め複数文化の融合になっている。安部公房のクレオール論で、「秋田蘭画はクレオール」と位置付けている ...

田中優子氏は、後の質疑応答の時間で、幕府が各藩の産業育成を促したことを、16世紀末から始まったグローバリゼーションのなかで幕府がどう生き残っていくかというコンテキストから説明してくださいました。これまで単独で存在していた色々な知識がだんだん繋がってくる、そういう知的興奮を最近感じます (今頃かよというツッコミはおいといて)。

河野元昭氏のお話は解体新書から始まります。

解体新書の表紙は、なかの挿絵と違って、同じような構図だが翻案になっている。男性は手で隠している。中の挿絵は敷き写し。トレーシングペーパーのような薄い紙で元の図を模写した。元の「ターヘルアナトミア」が銅版画であるのに対して、「解体新書」は木版画。この写した紙から版を起こすことになる。源内の師事を受けて1年で解体新書しており、現在は以前から直武の才能を知っていたと思われる ...

銅版画で濃淡が出せるところを、木版だとハッチングによって濃淡を出すことになります。この違いも興味深いところです。

重要文化財 不忍池図
小田野直武筆 一面
江戸時代 18世紀
秋田県立近代美術館
【展示期間:11/16~12/12】
その他、代表作の「不忍池」の謎についてのお話がありました。芍薬は愛情のシンボルなので結婚のお祝いとして描かれたものではないか、新築のお祝い説がある、なぜ池の前に花壇ではなく鉢植えが置かれているのか、鉢の中と遠景は同時には見えないのでこれは絵の上での合成である、遠景が小さく描かれており構成は西洋のボタニカルアートと同じ ...

最後の締めくくりとして「直武が担っているものを感じて欲しい。直武をスターにしたい」という言葉がありました。それぞれの思いが詰まった、興味深い2時間でした。

記念撮影セッション

2016/07/10

「今だからこその江戸美術」受講修了

日本版MOOC (Massive Open Online Course) のgaccoで、「今だからこその江戸美術 Edo Visual Culture As We Really Should Know It 」 を受けていました。

4週に渡って開講しており、各週に課題があります。いつも締め切りギリギリで提出していました。

最初の3週は4択のテストで、ちゃんと講義を聞いていれば答えられるのがほとんどですが、最終週は400字レポートでした。5つのキーワードを含めて400字にまとめるのは、なかなかしんどい。

レポートの設問は
18世紀英国最大の文化的発明とされるピクチャレスクについて、その出現の経緯から日本への(ありうべき)影響まで、400字以内で概述せよ。ただし次のキーワードを必ず含めること。
1. サブライム
2. 土井 有隣
3. クロード・グラス
4. 横浜絵
5. スコットランド
というもので、「江戸美術」と言いながらヨーロッパの状況を踏まえて回答しなければなくて、なかなか面白いでしょ? 気合入れて書きましたよ。

レポートを提出すると、他の受講者のレポートの採点です。5名の受講者を採点し、良いところ改善すべきところなどコメントも書きます。

せっかくなので、自分が書いたレポートをここであげようかと思いましたが、まだ締め切り前なのでやめておきます。次週加筆します。採点基準も一旦消しました。→ 加筆しました。

私のレポートです。
ピクチャレスクは、辞書的には「絵のような」という意味であるが、風景画においては、危険な場所を対象にしていることと、絵に画家の視点、構想が込められていることを特徴とする。

イギリス人はイタリアへの旅行グランドツアーにおいて、アルプスの山越えという危険な行為の克服が新たな感動であることを知った。この人間への試練を与える荒々しい自然を崇高(サブライム)と表現し、絵の題材にした。スコットランドは高い山、崖が多い海岸が多くイギリス人 (イングランド人) にとって、題材の宝庫である。

視点に関しては、イギリス人はフランス的な均衡を好まず、不均衡な構図を好んだ。風景もクロード・グラスという凸面鏡に写して写生していた。

日本にもピクチャレスクの影響が見られる。長崎派の土井有隣は崖や枯れ木などのピクチャレスク的題材を選んだ。北斎の絵は構図が特徴だし、あるものを取捨選択してフレームに収める視点が横浜絵にも見られる。(398文字)
採点基準に関しですが、これまで受講した「デザインのまなざし」や「イノベーション入門」では採点基準は決まっていても採点者の主観や知識が影響するものだったのに対して、今回は指定されたキーワードが含まれているかどうかで採点するので、自動的に決まってしまいます。そのキーワードが正しく理解されて適切なコンテキストで使われているかは関係がありません。この点は一所懸命作文したのにがっかりという感じ。

あとこれ以外に点数は1点と少ないですが、指定していないキーワードが使われているかどうかで加点があります。400文字中に全部のキーワードが含めれらていることなど考えにくいので、100点は絶対取れない設計になっていました。評価項目に「富嶽三十六景」に言及しているか、というのがありました。「北斎の絵」を「富嶽三十六景」にしておけばよかった。ちょうど400文字に入ったし。

2016/05/08

アートと複製

横浜美術館で「複製」をテーマにした2つの展覧会が続けて開催された。

荒木悠展 複製神殿
2016年2月26日(金)~4月3日(日)
アートギャラリー1、Café小倉山
http://yokohama.art.museum/exhibition/index/20160226-461.html

富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館 複製技術と美術家たち -ピカソからウォーホルまで
2016年4月23日(土)~6月5日(日)
http://yokohama.art.museum/exhibition/index/20160423-463.html

それぞれ以下のイベントに参加した。

荒木悠 新作講評会(荒木悠展 複製神殿)
日時: 2016年3月21日(月・祝)16:00 - 17:00
ゲスト: 藤幡正樹(メディア・アーティスト/元東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授)

トークセッション「富士ゼロックス版画コレクション その魅力と使命」(複製技術と美術家たち展)
日時: 2016年4月23日(土)15:00 - 16:30
出演: 横田 茂(横田茂ギャラリー代表) 小林 弘長(富士ゼロックス株式会社総務部) 中村 尚明(横浜美術館学芸員)

まず荒木悠展について。荒木悠の今回展のテーマは、「authenticity(真正であること)」。対立概念として「ニセモノ」があり、タイトル作品の「複製神殿」は荒木が住んでいたアメリカ南部ナッシュビルにあるパルテノン宮殿の原寸大レプリカがモチーフになっている。この建物は、1897年のテネシー州制100周年記念万国博覧会のために建てられ、現在は美術館として使用されている。荒木は当初これとそのオリジナルであるギリシャのアテネのパルテノン宮殿を対比させた作品を作る目論見であったのだが、アテネで市当局の許可が下りず (実際に行って担当者に交渉しないといけないので、アテナイまま行ったという … すみません)。結局アテネで入手した「イギリスにもレプリカがあるよ」という情報をもとにそのままイギリスへ行き、エジンバラにあるパルテノン宮殿のレプリカ「ナショナルモニュメント」を組み合わせて作品を作ることになる。

荒木悠新作講評会では、このような背景の他に、「レプリカ」とは何か、「レプリカ」と「クローン」の違いの話が興味深かった。

「クローン」が素材まで一致した複製であるのに対して、「レプリカ」は設計図などをもとに製作したもの。石などをギリシャから運んでくるわけではなく、ローカルで採れる材料を使うため、クローンとはなり得ない。ただ、ナッシュビルのパルテノン宮殿は、「レプリカ」とも言えない。現在ギリシャのパルテノン宮殿で失われている部分も学術考証を加えて再現しているのだ。そういう意味ではエジンバラのパルテノン宮殿もレプリカではない。予算不足と市民の支持の不足で未完成のまま放置されている (Wikipeida: National Monument of Scotland)。

同じ設計図でも同じもの「クローン」が得られないということから、ヨコハマトリエンナーレ2014に関する天野太郎氏のトーク「どついたろか現代アート」の中で、Temporary Foundationについてとりあげている。[2014/09/20 Yoko-Treats! Vol. 8]

Temporary Foundationは、京都市美術館で1991年まで行われていたアンデパンダン展の林剛と中塚裕子のユニットの作品を、残された資料 (アーカイブ) から再現を試みるものである。資料からのみの再現であるため、そのためクリエーションの要素が入ることになる。これを天野氏は子どもの夏休みの宿題に喩える。図書館で同じ資料を調べて書いても、同じものはできないという訳だ。

ヨコハマトリエンナーレ2014出展作家のサイモン・スターリングの作品「鷹の井戸」も、同様に残った資料から再現するものであった。

一方、やはりヨコハマトリエンナーレ2014出展作家の毛利悠子は、制作・設置プロセスを徹底して記録に残すことで、正確に再現できるようにすることを目指している。

美術作品を残すということ 計測する作家・毛利悠子インタビュー

ただその主眼は、正確に再現できるようにすることを通じて、「即興的・感覚的な制作活動のなかに潜んでいる法則を明らかにする」ことのようだ。

これらは複製において望むか望まないかにかかわらずオリジナルの (= 複製を製作した人独自の) 要素が入ってくる例であるが、機械による複製であるゼログラフィー (複写機) ではオリジナルの要素が入らず、毎回同じものができる。しかし画材は複写機の場合トナー (ドライインク) になるため、クローンではあり得ず、レプリカになる。一方コピーからのコピーは、画像劣化は多少あるものの、基本的にはクローンである。

コピーがいくらでもできるとなると芸術の価値はどうなっちゃうのという疑問が湧いてくるが、それが次の複製技術と美術家たち展のサブテーマとなっている「アウラの衰退」である。

「アウラ」とは、一般に言えば「オーラ」のことかと思ったが実際にそのようだ。
はてなキーワード 「アウラとは」

トークセッション「富士ゼロックス版画コレクション その魅力と使命」の中村氏による説明では、アウラとは、ベンヤミンによって定義された言葉で、「一点のみの美術作品に備わる尊厳」を指す。作品に押印される手の痕跡が物語る歴史の重みとも言える。コピーは別の物質で置き換わるためアウラは継承されないという。相対的にオリジナルの価値が増す。

写真についても同様にいくらでもコピーが作れるのでそのプリント一枚一枚にはアウラは継承されないという。しかし一方で、ベンヤミンは「初期の (人物) 写真にはアウラがある」と言っているそうだ。その理由は、初期の写真では撮影するのに長い時間同じ姿勢を保つ必要があり、作成に時間がかかったものであるためということだ。

もうひとつ違和感があったのが、ウォーホルがコマーシャリズムのなかで大量に溢れるイメージのアウラを消し去るということであった。ロゴやスープのパッケージなど、企業が出すイメージは完全にコントロールされ、そのバリエーションを許さない。そのことによってそのイメージはアウラを獲得するということだった。それをウォーホルが色をフラットにしたり変えたりして複製を作ることにより、その統一性という価値を壊してしまった。これはイメージのありがたみが毀損されたということができるだろう。

そう、結局「アウラ」とは、俗っぽく言えば「ありがたみ」なのかなと思う。作品集で見た名作も改めて美術館でみるとありがたい。版画も本来はいくらでも作れるが、枚数を制限してありがたみを維持する。日本のメーカーがシーズンごとに新製品を出していたのに対して、アップルのiPhoneは1年ごとの新製品で (作り込みに時間をかけるだけでなく) 消費者の渇望を引き出しているのではないかと思う。オリンピックのエンブレムも、大量にある素人の作品の中でプロによる作品が選ばれたが、その背景にデザインをつくるためにかかった時間、努力が作品から見えてくるということだろう。

まだまだ「複製」に関しては考えることがありそうだ。

2016/01/12

村上隆と狩野一信と藤田嗣治

今森美術館で行われている村上隆展 (村上隆の五百羅漢図展) の関連イベント椹木野衣氏の講演を聞いてきました。

トーク「大震災、五百羅漢図と村上隆」

題名の通り、東日本大震災との関連を述べています。村上隆の五百羅漢図はもともと東日本大震災を契機に作られました。
東日本大震災後にいち早く支援の手を差し延べてくれたカタールへの感謝を込めて、震災の翌年2012年にドーハで発表されました。
(展覧会概要より)
テーマに選んだ五百羅漢は、もともと自然災害で亡くなった人の鎮魂、残された人の慰めのために五百羅漢像として作られていたそうです。500という多さは、それだけあればどれかは亡くなった人に似ているものがあるという意味があるとのことです。

今回の講演内容はもうすぐ評論として世に出るということなので、内容に深くは触れず、3人の芸術家 (村上隆と狩野一信と藤田嗣治) が活躍したそれぞれの時代と社会の波乱および自然災害の関係を対比させる視点についてのみ記載したいと思います。

2011年3月、狩野一信の五百羅漢図全100幅の公開が予定されていました。直前に東日本大震災が起こったため、延期され、その四十九日をすませた4月29日に改めて開幕することになりました。

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(江戸東京博物館 五百羅漢-増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信 より)

狩野一信がこの五百羅漢図を制作していたのが、1854年から1863年に亡くなるまで。この頃の日本は、1853ペリー来訪、1858年井伊直弼が大老になり、安政の大獄がああった時期ですが、自然災害では1854年 安政東海地震安政南海地震豊予海峡地震 が立て続けに発生し、翌年 安政江戸地震、さらに翌年の1856年には安政東京湾台風が襲ったとのこと。五百羅漢図にはそういう時代背景がある。

藤田嗣治もフランスに渡ってすぐに第一次世界大戦と恐慌を経験し、さらに帰国後は第二次世界大戦の中で戦争画を制作するなど、世界的に乱世であった時代を生きて来た。それだけではなく、戦争の影に隠れているが  (情報統制により広く報道されないようにしていた)、日本では自然災害が多く発生していた  (1943年鳥取地震、1944年東南海地震、1945年三河地震、1944-45年昭和新山、1946年昭和南海地震、1948年福井地震)。

藤田はその戦争画により軍部に協力したという非難を受けるのだが、私は「アッツ島玉砕」など藤田の戦争画は、国民を鼓舞するというより、戦争の悲惨さを伝えている、いわば戦争画の名前を借りた反戦画だと思っていました。

さて、村上隆が生きる現代もまた、1991年湾岸戦争以降、2001年9.11同時多発テロ、2003年イラク戦争、2015年パリ同時多発テロと、大国対大国ではない新しい形の不安定さが続いている。自然災害の方もそれまで比較的安定していたのに、1993年北海道南西沖地震 (奥尻島津波)、1995年阪神淡路大震災、2004年中越地震、2007年中越沖地震/東電柏崎刈羽原発事故、2011年東日本大震災/東電福島第一原発事故と災害が続いている。

椹木氏は、村上隆の作品に、そういう時代背景を見ている。特に朱雀 = 火の鳥を描いたパートに、宇宙 = 核エネルギーへの言及をみており、また、破滅と再生を見ている。

アートの解釈は、最初は人それぞれであろうと思うが、狩野一信や藤田嗣治との共通項を見出す椹木氏の視点は面白いと思ったし、勉強になった。

時代背景が似ているのはわかったが、時代背景から影響された部分に共通項がどれほどあるのかまでは私自身まだ咀嚼できていないので、私の文章にもうまく表出できていません。申し訳ありません。

2016/01/10

FLOWERS BY NAKED

FLOWERS BY NAKED 内覧会に行ってきました。

FLOWERS BY NAKED は一言で説明するのは難しいですが、「花」をモチーフにしたメディア・アートと言えば良いでしょうか。公式ページには、「花をテーマにしたアート、空間、食、お酒、メイク、ファッション……あなたの周りが花で溢れる女子会」と書いてあります。しまった、「女子会」だったか。

最初は大きな本にテーマが描かれるプロジェクションマッピング "Big Book" がお出迎え。

bigbook

Dandelion Clocks

IMG_0627

桜彩

R. Yoshihiro Uedaさん(@ryokan)が投稿した動画 -

全体像

R. Yoshihiro Uedaさん(@ryokan)が投稿した動画 -

行くまではチームラボの作品と勘違いしていましたが、村松亮太郎氏のチームNAKEDの作品でした。いけばなの草月流ともコラボしており、代表の勅使河原茜氏もいらしてました  (山本寛斎氏もお客様として招かれていたようで、勅使河原さんとお話しされていました)。

日本橋三井ホールでは夏になると生きた金魚を使ったアートアクアリウムが開かれます。これは人気が高く2012年には会場まで行って待ち時間を聞いて断念したことがあります (その後2014年に行くことができました)。このFlowers by Nakedも人気が出るのではないでしょうか。

草月流とのコラボ作品に関しては、草月流自身がダイナミックな作風なのですが、会場全体を暗くしないといけないため、それがあまり生きていなように感じました。その点は残念なところでした。

以下、展覧会の情報です。

会期: 2016年1月8日(金)〜2月11日(木・祝)
時間: 月~木/日/祝日 10時~20時、金/土/祝前日  10時~21時
(最終日2月11日 (木・祝)は、10:00〜17:00)
場所: 東京都中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1 日本橋三井ホール
チケット料金: 大人(高校生以上)1300円 /小人900円

2015/12/31

2015年に行った展覧会とアートイベント

今年も小さいのもあわせて結構行っていますね。21_21 Design Siteに加え、森美術館の年間パスを買ったので同じ展覧会に複数行くことも多かったように思います。
  • 2015/01/20 パスキン展 @ Panasonic 汐留ミュージアム
    → ブログ http://wp.me/p19tR8-1bH
  • 2015/02/04 メディア芸術祭 @ 国立新美術館
  • 2015/02/18
    • PHILIPPINE DESIGN EXHIBITION @ 東京ミッドタウン デザインハブ (DESIGN HUB)
    • 「テラダモケイのお花見」 展 @ SFT GALLERY
    • 「新構造」東京展 @ 国立新美術館
  • 2015/02/28 ホイッスラー展 @ 横浜美術館
  • 2015/03/06 チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地
    → ブログ http://wp.me/p19tR8-1bZ チームラボ展が会期延長!新作展示!
  • 2015/03/18 ピクトリアリズム展 @ フジフイルム スクエア
  • 2015/04/29 PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭
    • 京都市美術館
    • 鴨川デルタ出町柳
    • 堀川団地
    • 京都芸術センター
    • 京都文化博物館 別館
  • 2015/04/30
    • 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 @ 京都国立近代美術館
    • 平成27年度 第1回コレクション展 @ 京都国立近代美術館
    • 特別展覧会 桃山時代の狩野派 永徳の後継者たち @ 京都国立博物館
    • PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 河原町塩小路周辺
    • still moving | 元・崇仁小学校
  • 2015/05/09
    • ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美  @ Bunkamura
    • 燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密 @ 根津美術館
    • le fil rouge  @ エスパス・ルイヴィトン
  • 2015/05/27 石田尚志 渦まく光 Billowing Light  @ 横浜美術館
  • 2015/05/30 絵の住処(すみか)-作品が暮らす11の部屋- @ DIC川村記念美術館
  • 2015/06/06 草月いけばな展「水のかたち 風のいろ」 @ 新宿髙島屋11階
  • 2015/06/07 紙をはじめる  (CORNER レクチャー ) @ Impact Hub Tokyo
  • 2015/06/13
    • 山下以登個展「さよなら迷宮」@ HB GALLERY
    • Swimming Pool @Paul smith
    • デザインの見かた講座 (CORNER ワークショップ) @ Impact Hub Tokyo
    • シンプルなかたち展:美はどこからくるのか @ 森美術館
    • Star Wars 展 @ Tokyo City View
  • 2015/06/30 MAMリサーチ 上映+トーク「ゼロ次元/加藤好弘」 @ 森美術館
  • 2015/07/03 MAMコレクション001:ふたつのアジア地図―― 小沢剛+下道基行アーティスト・トーク @ 森美術館
  • 2015/07/04
    • 「動きのカガク展」トーク「クリエイションとテクノロジー」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • シンプルなかたち展 @ 森美術館
  • 2015/07/15 えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム2015 内覧会
    → ブログ http://wp.me/p19tR8-1ci 夜の水族館
  • 2015/07/25
    • ディン・Q・レ展:明日への記憶 @ 森美術館
    • ディン・Q・レ展 アーティストトーク@ 森美術館
  • 2015/07/28
    • 和のあかり×百段階段 @ 目黒雅叙園
    • トーク「ロベルト・チャベットとは誰か?」 @ 森美術館
  • 2015/07/30
    • アール・ヌーヴォーのガラス展 @Panasonic汐留ミュージアム
    • アドミュージアム
    • 画鬼・暁斎ーKYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル @ 三菱一号館美術館
  • 2015/08/22
    • 「ニッポンの*マンガ*アニメ*ゲーム」展 @ 国立新美術館
    • レクチャー "マンガの時間を「見る」という体験:解放される音、分解される運動"@ 国立新美術館
  • 2015/8/29 大地の芸術祭
    • 清津倉庫美術館
    • うぶすなの家
    • もぐらの館
    • 鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館
    • 松代 農舞台
    • CIAN
    • 越後妻有里山現代美術館[キナーレ]
  • 2015/8/30
    • 越後松之山「森の学校」キョロロ
    • EAT&ART TARO「ザ キュウリ ショー」@ 黎の家
    • 塩田千春「家の記憶」
    • クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」
    • ゴームリー 「もうひとつの特異点」
  • 2015/09/05
    • teamLab Exhibition, Walk Through the Crystal Universe @ ポーラ ミュージアム アネックス
    • View's view  @ ギャラリーなつか
    • 濱田富貴 @ ギャラリーなつか
    • 「境界」 高山明+小泉明郎展 @ Le Forum | HERMES
    • 色部義昭「WALL」 @ ギンザ・グラフィック・ギャラリー
    • 絵画を抱きしめて  @ 資生堂ギャラリー
    • ヨシナリミチコpresents [肉食オトメ] @ Meets Gallery
  • 2015/09/12
    • ディン・Q・レ展 トークセッション 第2回「アート・社会・歴史」@ 森美術館
    • ディン・Q・レ展 @ 森美術館
  • 2015/09/16 蔡國強展:帰去来 @ 横浜美術館
  • 2015/09/23
    • ディン・Q・レ展 @ 森美術館
    • アージェント・トーク027 緊急上映!鬼才クリストフ・シュリンゲンジーフに迫る
  • 2015/10/10 蔡國強展:帰去来 @ 横浜美術館
  • 2015/10/11
    • ニューアート展 NEXT 2015 田中千智展 I am a Painter @ 横浜市民ギャラリー
    • シンポジウム「日本の国際展のいま、未来――美術館、地域といかにして共栄しえるか」 @ 横浜美術館
  • 2015/10/17 春画展 @ 永青文庫
  • 2015/10/24
    • フランク・ゲーリー展 @ 21_21 DESIGN SIGHT
    • もりの教室 @ 東京ミッドタウン
    • グラフィックトライアル・コレクション @ Design HUB
  • 2015/11/01
    • 平川紀道アーティスト・トーク @ NTT-ICC
    • オープンスペース2015 @ NTT-ICC
    • 夏弥ד10Colors”  @  SPACE8
  • 2015/11/02 G展 @ 東京ミッドタウン
  • 2015/11/03
    • 中島清之展 @ 横浜美術館
    • 鴻池朋子展「根源的暴力」 @ 神奈川県民ホールギャラリー
  • 2015/11/14 牧田恵実 リビドー展 @ Art Lab Tokyo
  • 2015/11/27
    • モシェ・クプファーマン展 @ Fuji Xerox Art Space
    • 中島清之展 @ 横浜美術館
  • 2015/11/28
    • 風景を探して_ミナミタエコ展 @ Gallery House MAYA
    • TOTOギャラリー・間30周年記念展 アジアの日常から:変容する世界での可能性を求めて @ ギギャラリー・間
    • フランク・ゲーリー展 トーク「I Have an Idea」第2回 "でこぼこ" 機能とかたちについて @ 21_21 DESIGN SIGHT
    • きものモダニズム展 @ 泉屋博古館
  • 2015/12/05
    • フランク・ゲーリー展 トーク「I Have an Idea」第3回 "うろこ" 生成と粒子について @ 21_21 DESIGN SIGHT
    • 村上隆展 @ 森美術館
  • 2015/12/18
    • 「く°ま - 3人のアーティストによるテディベアの世界 - 」展 @ 新生堂
    • 佐藤草太展 @ 新生堂
    • 杉本博司 @ CoSTUME NATIONAL Aoyama Complex :: Lab
    • Painting ゲルハルト・リヒター @ WAKO WORKS OF ART
    • 村上隆展 @ 森美術館
    • NISSAN ART AWARD @ BankArt NYK
今年は横浜トリエンナーレの年ではありませんが、サポーター仲間と4月末にPARASOPHIA 京都芸術祭、9月末に大地の芸術祭に行ってきました。写真は大地の芸術祭 蔡國強の「蓬莱山」です。大地の芸術祭に関してはフリーペーパーに記事を書きました。(→ ヨコトリーツ![Yoko-Treats!]第12号「大地の芸術祭を訪ねて」発行!)2015-08-29 18.15.08

個人的ベスト10をあげます。
  • 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 @ 京都国立近代美術館 // 東京で見逃していたので。
  • MAMリサーチ 上映+トーク「ゼロ次元/加藤好弘」 @ 森美術館 // 「具体」やハイレッドセンターも比較的最近知ったので、さらに別の動きがあったことは興味深い。
  • 燕子花と紅白梅 光琳デザインの秘密 @ 根津美術館 // 燕子花と紅白梅が揃うのは56年ぶりだそうだが、それ以前に直接見たことはなかったので。実は根津美術館も初めて。
  • 大地の芸術祭: 塩田千春「家の記憶」、クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」、ゴームリー 「もうひとつの特異点」// 全館使う展示は大地の芸術祭ならではだと思う。他にも、鉢&田島征三 「絵本と木の実の美術館」も楽しくてよかった。
  • アージェント・トーク027 緊急上映!鬼才クリストフ・シュリンゲンジーフに迫る // 社会活動なのか演劇なのかハプニングだかわからないプロジェクトが興味深い。現在の日本で難民を受けれていない中、「外国人よ、出ていけ!」みたいなプロジェクトを行ったら、日本人の見たくない部分が露わになるんだろうなと思う。
  • 蔡國強展:帰去来 @ 横浜美術館 // 横浜で制作したものも何点もあって、横浜美術館も頑張ったんだなと思う。
  • ニューアート展 NEXT 2015 田中千智展 I am a Painter @ 横浜市民ギャラリー  // 初めて知ったアーティスト。黒を基調とした作品だがその黒の中にいろいろな表情というかテクスチャーがあって、丁寧な作品作りだと思った。
  • フランク・ゲーリー展 @ 21_21 DESIGN SIGHT  // 全体から部品レベルまでカバーするITシステムに感心した。
  • 中島清之展 @ 横浜美術館 // 歳をとっても常に新しいことにチャレンジする姿勢には共感した。ただそれゆえ「この人の画風」というものが定着せず、知名度が上がらなかったのは残念なところ。
  • 村上隆展 @ 森美術館 // 圧倒される巨大さ。それを制作するための過程が展示されているのもよかった。アートというよりは巨大な工芸作品または建築のプロジェクトを思わせる。そういう意味でフランク・ゲーリー展との類似性がある。
アート以外では、今年はオンライン学習サイト Coursera で "Data Science Spepicalization" の各コース (無料版) を、1月から毎月1コースずつ9月まで受講しました。全部クリアして、仕事に生かせるくらいまでRが使えるようになりました。2016年はビッグデータ関連を受講したいと思います。

2015/01/26

パスキン展

現在Panasonic汐留ミュージアムで行われているパスキン展、そのweb内覧会が1月20日に行われましたので行ってきました。ブロガー向けの内覧会で、このため特別に写真の撮影が許可されています。

展覧会入口 - パスキンの肖像がお迎え
展覧会入口 - パスキンの肖像がお迎え

まず展覧会情報をあげておきます。

展覧会名: パスキン展 -生誕130年 エコール・ド・パリの貴公子- (LINK)
開館期間: 2015年1月17日 (土) ~ 3月29日 (日)
開館時間: 午前10時より午後6時まで
(入館は午後5時30分まで)
休館日: 毎週水曜日 (但し2月11日は開館)
場所:東京都港区東新橋1-5-1
Panasonic汐留ミュージアム (LINK)

入口を入った最初にパスキンの写真がどーんとあるのですが、外から見ると右のような感じになります。

展覧会は、パスキンの生涯にあわせ、雑誌の風刺画家としていきなり成功したミュンヘン時代、ちゃんと絵画をやりたくてパリに移り住んだ時代、第一次世界大戦の戦火を避けアメリカに拠点を移した時代、そして再びパリに戻り人気作家となった時代の4部構成になっています。

今回は内覧会は、"青い日記帳Presents" と冠が付いており、人気アートブログ「弐代目・青い日記帳」主宰TakさんとPanasocnic汐留ミュージアム宮内真理子学芸員の対談の形式でトークが行われました。 Takさんの記事はこちら

トークをする「青い日記帳」主宰Takさんと宮内真理子学芸員
トークをする「青い日記帳」主宰Takさんと宮内真理子学芸員

トークは、パスキンの人生にそって、人生のステージと住んだ場所、それらが作品の与えた影響をつなげる形で進みます。ブルガリアの裕福なユダヤ人の息子として生まれ、その後画家になりたくて家を出て絵画の勉強をし、19歳で早くもミュンヘンの風刺雑誌の挿絵画家になったパスキン。風刺画家として素描が中心だった時代、パリのモンパスナスに住み本格的に油絵の勉強を始めるとオーソドックスな画風になります。戦火を避け移り住んだアメリカで解放された作風になり、そしてまた戻ってきたパリでは、柔らかい輪郭、色使いで人気作家になります。最後の時代は「真珠母色の時代」とよばれているそうです。

肌が美しく映えるとご自慢のパナソニックLED照明
肌が美しく映えるとご自慢のパナソニックLED照明

本人は以前から芸術家は45歳までと言っていたそうですが、実際その年齢で自殺してします。不倫が成就しなかったのが直接の原因のようですが、人気作家になっても満たされないところがあったのでしょう。

当時人気があったとのことですが、アートの歴史を見たときに、ユトリロ、シャガール、ローランサン、モディリアーニ、フジタのような残り方をしていないように思います。もっと長く生きていたらという話もあるのですが、もしかしたら本人が自分のスタイルを極めることに情熱を失ったのかもしれません。または、人気画家として同じスタイルで描き続けることを潔しとしなかったのかもしれません。

最後の全盛期の柔らかなタッチの絵は日本人に好まれるのではないでしょうか。あまり紹介される機会がないアーティストだと思いますので、一度行ってみてはいかがでしょうか。

他にパスキン展について書かれているブログ:
Art & Bell by Tora (とらさん) 2015/01/24 「パスキン展 @パナソニック汐留ミュージアム」
 -- 時代別の説明と作品の紹介が詳しく載っています。

2014/12/31

2014年に行った展覧会とアートイベント

今年行った美術展と付随するトークイベント、シンポジウムをまとめました。ヨコハマトリエンナーレがあったので、いつもよりも多いですね。[2013年2012年2011年、2010年どうした?、2009年]
  • 2014/01/07 アージェント・トーク022「具体:すばらしい遊び場所」展から考える日本美術のグローバルな位置 @ 森美術館
    → ブログ: アージェント・トーク022
  • 2014/01/11
  • 2014/01/18
    • トーク「特別でない、日常の道具をデザインする」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • コレクション展「私の一枚」@ フジフイルム スクエア
    • 内藤廣展 アタマの現場 @ ギャラリー・間
  • 2014/01/25
    • 「D-8が語るデザインとミュージアム」Vol.3テーマ「"デザインを語る場"の実現に向けて」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • ハギハラトシサト展 @ art lab tokyo
  • 2014/02/05 トリエンナーレ学校2013 vol.9 ヨコハマトリエンナーレ2014参加作家が語る!
  • 2014/02/14 メディア芸術祭 @ 国立新美術館
  • 2014/02/16 ヨコハマトリエンナーレ2014プレイベント 国際展で考える「東アジア地域における文化交流の仕組みづくり」@ ヨコハマ創造都市センター
  • 2014/02/21 「デジタル・ショック」オープニング・パーティー@ アンスティチュ・フランセ東京
  • 2014/02/25
    • 今井俊介展 @ 資生堂ギャラリー
    • 光るグラフィック展 @ クリエイションギャラリー G8
    • 佐藤雅彦 + 齋藤達也 「指を置く」 @ ギンザ・グラフィック・ギャラリー ggg
    • ボヌフォア展 @ Maison Hermes Le Forum
    • 「デジタル・ショック」Last Room 上映とアプリケーション『デプリ』の構想についての対談 @ アンスティチュ・フランセ東京
  • 2014/03/01
  • 2014/03/23 シンポジウム「ウォーホルと日本」 @ アカデミーヒルズ
  • 2014/03/26 トリエンナーレ学校2013 vol.10 森村泰昌×サポーター
  • 2014/03/29 魅惑のニッポン木版画 @ 横浜美術館
  • 2014/04/01 ミナミタエコ 個展「此処ではない何処か」@ マルプギャラリー
  • 2014/04/04 コメ展 @ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2014/05/19 荒川修作+M・ギンズ記念シンポジウム @ 早稲田大学
  • 2014/05/20 「こども展」ブロガー特別内覧会 @ 森アーツセンターギャラリー
    → ブログ: こども展
  • 2014/05/21 トリエンナーレ学校 トヨダヒトシ氏の作品上映及び対談 @ ヨコハマ創造都市センター
    → ヨコトリーツ![Yoko-Treats!]第5号 トヨダヒトシ氏インタビュー
  • 2014/05/27 映画をめぐる美術 ――マルセル・ブロータースから始める @ 東京国立近代美術館 → ブログ: 映画をめぐる美術
  • 2014/06/06 「イメージの力」展 @ 国立新美術館
  • 2014/06/07 伊豆高原ステンドグラス美術館
  • 2014/06/10 アージェント・トーク023 国際的同時性:60年代日本を世界美術史に着地させるために @ 森美術館
  • 2014/06/14 ゴー・ビトゥイーンズ展 トークシリーズ第1回「子どもと社会」
  • 2014/06/27 版画コレクションのあゆみI @ Fuji Xerox Art Space
  • 2014/07/04 プロジェクション・マッピング @ ドックヤードガーデン
  • 2014/07/05 イメージメーカー展オープニングトーク@ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2014/07/21 魔法の美術館~光と影のワンダーランド @ 長崎県美術館
  • 2014/07/30
    • アートアクアリウム @ コレド室町
    • バルテュス写真展 @ 三菱一号館美術館
    • たよりない現実、この世界の在りか @ 資生堂ギャラリー
  • 2014/08/01 ヨコハマトリエンナーレ2014開幕
    • アーティスト・トーク ヴィム・デルボア @ 横浜美術館レクチャーホール
    • アーティスト・トーク - サイモン・スターリング @ 横浜美術館レクチャーホール
    • アーティスト・トーク - カルメロ・ベルメホ @ 横浜美術館レクチャーホール
  • 2014/08/02 ヨコハマトリエンナーレ2014
    • アーティスト・トーク - イライアス・ハンセン @ 新港ピア
    • アーティスト・トーク - メルヴィン・モティ @ 新港ピア
    • アーティスト・トーク - やなぎみわ×沈昭良 @ 新港ピア
    • やなぎみわ移動舞台車トランスフォーム
  • 2014/08/03 ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスト・トーク - マイケル・ランディ@ 横浜美術館レクチャーホール
  • 2014/08/06 イメージメーカー展トーク「ビジュアルインパクト〜広告を超えて表現すること〜」@ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2014/08/09 ヨコハマトリエンナーレ2014 トヨダヒトシ《NAZUNA》@ 横浜美術館レクチャーホール
  • 2014/08/10 ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスト・トーク - 上田暇奈代×森村泰昌 @ 横浜美術館 円形フォーラム
    ヨコトリーツ![Yoko-Treats!] 第9号 「詩の仕事は詩を書くだけではない」
  • 2014/08/12 アージェント・トーク024:追悼 スチュアート・ホール:カルチュラル・スタディーズの創始者の遺産から、今、東京で考える @ 森美術館
  • 2014/08/15 ゴー・ビトゥイーンズ展 トークシリーズ第3回「子どもとアート」@ 森美術館
  • 2014/08/16 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「和田昌宏を解剖する vol.1」@ 横浜美術館
  • 2014/08/20 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「アート×横浜市 vol.1 」@ 富士通エフサス
  • 2014/08/24 ヨコトリノーツ - もう一つのヨコハマトリエンナーレ @ 高島屋 横浜店
  • 2014/08/27 ヨコハマトリエンナーレ2014 マイケル・ラコウィッツ トーク&上映会 BUKATSUDO
  • 2014/08/29 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「しばいたろか現代アート vol.1 」日ノ出スタジオ
    ヨコトリーツ![Yoko-Treats!] 第8号 「とっつきにくい現代アートもおいしく料理」
  • 2014/08/30 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「和田昌宏を解剖する vol.2」@ 横浜美術館
  • 2014/09/06 ヨコハマトリエンナーレ2014 映像プログラム オープニング上映:フランソワ・トリュフォー《華氏451》+大林宣彦氏講演会 @ 横浜美術館レクチャーホール
  • 2014/09/07
    • ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスト・トーク - エリック・ボードレール @ 横浜美術館レクチャーホール
    • 黄金町バザール 岡田裕子トーク @ 高架下スタジオSite-D
  • 2014/09/12 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「しばいたろか現代アート vol.2 」@ 高架下スタジオSite-D
  • 2014/09/13
    • イメージメーカー展トーク「ビジュアルインパクト〜広告を超えて表現すること〜」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • 松井智惠 映像作品上映会& 松井智惠展「一枚さん」& 対談 @ NADiff Gallery
  • 2014/09/14 ヨコハマトリエンナーレ2014 国際シンポジウム 国際展で考える:現代アートと世界/地域との関係 @ 横浜美術館レクチャーホール
  • 2014/09/17 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「アート×横浜市vol.2 〜アーバンデザインはいかに創造性を育むか〜 」@ 富士通エフサス
  • 2014/09/20
    • ヨコハマトリエンナーレ2014 TAKIDASHI カフェ @ 横浜美術館前
    • ヨコハマトリエンナーレ2014 釜ヶ崎芸術大学 in ヨコトリ 講座①「芸術と生きる」@ 横浜美術館 円形フォーラム
  • 2014/09/21 ヨコハマトリエンナーレ2014 TAKIDASHI カフェ @ 横浜美術館前
  • 2014/09/27
    • BankART Life IV @ BankART Studio NYK
    • ヨコハマトリエンナーレ2014 トヨダヒトシ《11211》@ 象の鼻テラス
  • 2014/09/28 bction @ ニュー麹町ビル
  • 2014/10/03 BankART Life IV 谷本真理さんパーティー @ BankART Studio NYK
  • 2014/10/05 ヨコハマトリエンナーレ2014 Temporary Foundation「横浜トライアル」Case-3「Still Moving : 漂流」@ 横浜美術館
  • 2014/10/08 ヨコハマトリエンナーレ2014 釜ヶ崎芸術大学 in ヨコトリ 講座③「まっかなおつきさんを見る会」@ 横浜美術館
  • 2014/10/10 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「しばいたろか現代アート vol.4 」
  • 2014/10/11 ヨコハマトリエンナーレ2014 アーティスト・トーク - 都築響一×森村泰昌 @ 新港ピア
  • 2014/10/12 トヨダヒトシ: 映像日記/忘却の海にて @ 横浜市内某所
  • 2014/10/17 アージェント・トーク025:ヤン・ヘギュー叙事的な離散をまとめていくこと @ 森美術館
  • 2014/10/18
    • Find ASIA @ ヨコハマ創造都市センター
    • ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「忘却の海」を航海する船のつくりかた @ 新港ピア
  • 2014/10/22 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「アート×横浜市 vol.3 創発されるものづくり~協働の現場から」@ 富士通エフサス
  • 2014/10/24 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーターズサロン「しばいたろか現代アート vol.5 」@ 高架下スタジオSite-D
  • 2014/10/29 ヨコハマトリエンナーレ2014 サポーター交流会 (森村泰昌ADによる作品解説)
    ヨコトリーツ![Yoko-Treats!]第10号 森村泰昌ADインタビュー
  • 2014/10/31 ヨコハマトリエンナーレ2014 高山明/Port B 「横浜コミューン」@ hitehi works
  • 2014/11/03 ヨコハマトリエンナーレ2014閉幕
    • やなぎみわ移動舞台車トランスフォーム @ 新港ピア
    • Moe Nai Ko To Ba を燃やす @ 横浜美術館前
  • 2014/11/04
    • G展 @ 東京ミッドタウン
    • アージェント・トーク026 ベルリンー社会と生活にアートが根ざす街 by かないみき @ 森美術館
  • 2014/11/16
    • リー・ミンウェイとその関係展:砂のゲルニカ 観客が砂の上を歩くイベント @ 森美術館
    • 活動のデザイン展 @ 21_21 DESIGN SIGHT
    • 蜷川実花の写真展 @ フジフイルム スクエア
    • リー・ミンウェイとその関係展:砂のゲルニカ パフォーマンス @ 森美術館
  • 2014/11/23 音楽と美術のあいだ オープニング・トーク2 @ NTT-ICC
  • 2014/11/28 MAMプロジェクト022 キュレータートーク「ヤコブ・キルケゴールの作品を通して見るサウンド・アートの可能性」@ 森美術館
  • 2014/11/29
  • 2014/11/30 いろは展トークイベント 「第一回 記憶のめくり方」@ デザイン・ハブ
  • 2014/12/06 トーキョー・エクスペリメンタル・フェスティバル Vol.9 ―TEFサウンド・インスタレーション トークイベント @ トーキョーワンダーサイト本郷
  • 2014/12/21 ヨコトリ2014サポーター活動シンポジウム @ ヨコハマ創造都市センター
2014-11-03 12.53.37
ヴィム・デルボア「低床トレーラー」CC-BY-SA

最初にも書きましたが、今年は何と言ってもヨコトリの年。昨年からフリペチームでフリーペーパー制作に関わり、取材のためというのもありますが、ほとんどのイベントに参加しました。美術館チームで団体向け事前ガイダンスやギャラリートークもおこない、おもてなしプロジェクトにも関わって主にビジターサービスセンターで用いる情報の整理を行ってきました (2011年に始めた「ヨコハマトリエンナーレ 勝手にサポーター」も今回展向けのものにしています)。おかげで現代美術の見方が分かった、とは言えないまでも、変わったということができると思います。それ以上に、複数の活動に参加して人とのつながりが広がりました。

これとは別にオンライン学習コースで、Machine Learning や統計学を勉強しました。こういう学習では基礎的なところしかできませんので、仕事で使うことが次の年の課題になります。

2014/12/07

チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地

ご無沙汰しておりました。

ヨコハマトリエンナーレ2014の期間前から、サポーター活動が活発化して、フリーペーパー向けには文章も書いていたのですが、こちらには時間を回せていませんでした。その間、ヨコトリ2014関係のトークを聞いたり、別の展覧会に行ったりしていたので、少しずつ書いていきたいと思います。

11月29日、日本科学未来館でこの日から始まる「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」のブロガー向け内覧会がありましたので行ってきました。

チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地
http://odoru.team-lab.net/
会期:2014年11月29日(土)~2015年3月1日(日)
会場:日本科学未来館 〒135-0064 東京都江東区青海2−3−6
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週火曜休館。但し、2014年12月23日(火・祝)2015年1月6日(火)は開館。
年末年始休館:2014年12月28日(日)~2015年1月1日(木)
主催: 日本科学未来館/チームラボ/日本テレビ放送網/BS日テレ

最初は気づかなかったのですが、タイトルにあるように、「踊る!アート展」と「学ぶ!未来の遊園地」の二つが合体したものです。

チームラボは、ITエンジニア、メディアアーティスト、デザイナーなど構成された「チーム」です。一人の才能ではなく、「チーム」でものを作り出すことをポリシーにしているようです。チームでのディスカッションを通して作品を作り上げていきます。

チームラボが世に出す作品は、デジタル技術とアートを組み合わせたもの。今回これまでの作品を一堂に集め、さらに新作を加えました。アート作品という指向が強いものが「踊る!アート展」、遊びを通じて学ぶ場を提供するものが「学ぶ!未来の遊園地」という位置付けです。

「踊る!アート展」は大迫力のものばかり。写真も撮ってきましたが、サイトの写真、動画を見てもらったほうが良いと思いますので、リンクをつけます。

"花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に – Tokyo" (リンク) 床の花は人が通ると咲きます。また、足でけちらすことができます。咲く花は時間によって変わります。季節を圧縮した感じ。

"花と屍 剝落 十二幅対" (リンク) 横に12枚並んだアニメーション作品。剥落して裏にあったものが見えるようになります。

"Nirvana" (リンク) 若冲作品のアニメーション化。高さ約5m、幅約20mあります。

2014-11-29 17.58.45

"追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 ‒ Light in Dark" (リンク) 複数画面を前後方向にも並べたビデオ・インスタレーション。

R. Yoshihiro Uedaさん(@ryokan)が投稿した動画 -


「学ぶ!未来の遊園地」も楽しかったのですが、逆方向には行きにくいので、「踊る!アート展」をもっとじっくり見ればよかったと思いました。

2014/05/29

映画をめぐる美術

「映画をめぐる美術」展を見て来た。

映画をめぐる美術 ――マルセル・ブロータースから始める

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
2014年4月22日(火)~6月1日(日)

展覧会は、映画を言語の拡張として捉えていたマルセル・ブロータースの考え方を基軸として構成されている。会場の構成もこの展覧会の構成を反映していて面白い。マルセル・ブロータースの考え方が中心の部屋に据えられ、それぞれのコンセプトごとにそこから繋がる別の部屋に入っていくように設定されている。「シネコンのような」という説明が与えられていた。

第一の部屋は"Still"。シンディ・シャーマンは扮装で映画の主人公になりきる。当然森村泰昌を想起させる。

アナ・トーフ《偽った嘘について》は写真と文字の自動スライドショー。スライドショーというとコンピューターのソフトウェアと思うだろうが、アナログポジフィルムをカルーセル映写機にセットして一枚一枚機械式に切り替えている。違いは多くあるものの基本線はトヨダヒトシ (今年行われるヨコハマトリエンナーレ2014の出展作家) を想起させる。トヨダヒトシは本人が手操作で切り替えるので、このような展示会でずっと見せるということはできず、毎回イベントのような形になる。トヨダヒトシが日常の風景、食べ物、人など、見たものをそのまま撮っているのに対して、アナ・トーフは一人の女性の表情、苦渋に満ちた表情を映し出していく。トヨダヒトシが個々の写真の繋がりを提示せず観客に委ねているのに対して、アナ・トーフは (動きはないものの) 言葉でストーリーが朧げながら浮かび上がる。アナ・トーフが使っているテキストはジャンヌ・ダルクに対する審問の記録という。

第2の部屋のやなぎみわも面白かった。映画部?の女子高生が「レオン」(→ Wikipedia) の二人 (レオンとマチルダ) と「グロリア」(→ Wikipedia) の二人 (グロリアとフィル) を再現するのだけど、同じ二人が演じていて、設定の似た両方の映画を交互に出すので、今どっち?と混乱する。というか考えながら見るのが楽しかった。やなぎみわもヨコハマトリエンナーレ2014の出展作家。

第6の部屋アイザック・ジュリアンの《アフリカの亡霊》は、アフリカの過去の映像、映画で国おこしを図るブルキナファソの現代の風景、アフリカの大地で踊る一人のダンサーを映し出すもの。アフリカの音楽、リズムが惹きつける。

常設展も毎回違っているものが入っていて面白い。今回は Chim↑Pom が入っていて、こういうところに展示されるようになったかと不思議な気がする。川端龍子 (りゅうし) の作品が新しく入ったということで、一つの部屋がまるごとあてられていた。太平洋戦争のための戦意高揚の作品が特集されていた。

2014/05/25

こども展

5月20日、森アーツセンターギャラリーで開催されている「こども展」のブロガー特別内覧会が開かれ行ってきました。



「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」展覧会情報

会期: 2014年4月19日(土)~6月29日(日)※会期中無休
場所: 森アーツセンターギャラリー
開館時間 10時~20時 (火曜日は~17時)

詳しくは 森アーツセンターギャラリー「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」、または、特設サイトへ。

特別内覧会ということで、エキジビション・ディレクター中山三善氏のギャラリートークがありました (以降も含め写真は美術館より特別に撮影許可を得ています)。また、通常は有料の音声ガイドも無料で貸していただけます。音声ガイドのナレーターは竹内まりやで、展覧会のテーマソングになっている「人生の扉」も入っています。なお、音声ガイドは 2種類あって、もう一つのジュニア版はクイズ形式になっているそうです。

この展覧会は、以前オランジェリー美術館で行われた企画展を再構成して持ってきたもの。巨匠が子どもを描くということで、ピカソも入っていますが、基本的にはかわいい子どもの姿を写実的に描いたものです。この展覧会は難しいことを考えず、かわいいと楽しんでもらえば良いとのことでした。こんな毒にも薬にもならない展覧会は久しぶり ... って、あ、ごめんなさい、かわいい子どもの絵で癒されるので薬にはなりますね。

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その中でも私が一番気に入ったのは (おそらく、多くの人もそうかと思います) ポスターにもなっているルノワール「ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども」(→ Wikipaintings) とその関連作品でした。

ジュリー・マネは、ベルト・モリゾとウジェーヌ・マネ (エドワール・マネの弟) 夫婦のひとり娘。この一角はジュリー・マネの成長を絵で追います。右の2点はいずれもベルト・モリゾによるもの。右は「庭のウジェーヌ・マネとその娘」(→ Wikipaintings)、その左は「犬を抱く娘」(→ Wikipaintings) です。ルノワールの「ジュリー・マネの肖像、あるいは猫を抱く子ども」にはベルト・モリゾは気に入ったらしく、自身で版画にもしています。これもいい感じでした。

ジュリー・マネは成長してやはり画家になっており、ここには彼女が描いた子どもの絵も展示してあります。

オフィスアイ・イケガミ アートブログによるレビュー「こども展―名画にみるこどもと画家の絆― 」にはもっといろいろなエピソードが載っています。その中で
マネの代表作≪すみれの花束をつけたベルト・モリゾ≫(1872年、オルセー美術館)をジュリーは生涯大事に自宅居間に飾っていたという。
Berthe Morisot with a bouquet of violets by Edouard Manet
Berthe Morisot with a bouquet of violets
by Edouard Manet
というのは母娘の愛情を感じさせるいい話ですね。右の絵です (WikiPaintingから持ってきました)。

竹内まりやの音声ガイドには、作品の解説から離れて、ベルト・モリゾをとりあげたチャプターがあります。彼女を「働くお母さん」という観点で評価をしているんですね。同じ働く女性として共感したのだと思います。あわせて夫ウジェーヌ・マネの理解あってこそと評価していています。そういうことが可能な階級、仕事だったということを考えないといけないとは思うのですが、そういう意味で似たような位置づけにある竹内まりやではしかたないかなという気もします。

このコーナーばかり取り上げましたが、他にも印象的な作品がありました。エンダディアン「ネガールの肖像」は気に入って後で調べようと思ったのですが、綴りが分らず検索できません。

5月31日から同じ森ビルの最上階にある森美術館で「ゴー・ビトゥイーンズ展 こどもを通して見る世界」があります。こちらは毒もある展覧会で、ハナ・マフマルバフ監督「子供の情景」(Wikipedia) 上映など関連イベントが多くあります。この展覧会にも行きたいと思います。子どもを見る「こども展」と、子どもの目で世界を見る「ゴー・ビトゥイーンズ展」。あわせて見ることで世界が広がるのだと思います。

2014/03/09

日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』

東京都美術館で行われている、日本美術院再興100年 特別展『世紀の日本画』。前期後期で全作品を入れ替えるのですが、後期が始まる3月1日、閉館後にブロガー向け特別観覧会があり、参加してきました。

画像

表題のとおり、日本美術院の再興から100年を記念し、これまでの名作を俯瞰するものです。「再興」というのは、最初明治31年 (1898) に岡倉天心によって創立されたものの、その後資金不足で一旦休止状態にあったものを、大正3年 (1914) に岡倉天心の一周忌にあわせて活動を再開したということです。

最初に学芸員の河合晴生氏から全体の説明、最初の部屋のいくつかの作品の説明がありました。

狩野芳崖の「悲母観音」には、聖母と赤子を配置しているところにキリスト教というか西洋の影響が見られる。横山大観の「屈原」は、妬まれ左遷され自殺した屈原と東京美術学校を追われた大観に重ねたもの。同じく大観の「無我」は、幼いこどもを描くことで抽象的な概念をイメージ化している ...

また、それまでの日本画が輪郭を描くものであったのに対して、色と濃度の差でものの形を表現する西洋的手法が「朦朧体」と呼ばれたなど、美術院初期、これまでの日本画から脱却しようとしている時代の美術家の挑戦が感じられます。

それぞれの作品が、ただ日本画の伝統を追っているだけではないことがわかる展示になっていました。小倉遊亀の「コーちゃんの休日」(コーちゃんは越路吹雪) にはマチスの影響があることがわかります。月岡榮貴の「やまたのおろち」はシャガールのような幻想的な感じを受けました。

色の強さにインパクトを感じるものが多くありました。小林古径「芥子」の緑、小茂田青樹「虫魚画巻」背景の銀、速水御舟「比叡山」の群青の濃淡、今村紫紅「熱国之巻」インドの光の強さを表現するための金粉 ...

今回最も気に入ったのが、岩橋英遠の「道産子追憶之巻」。一面の風景の中に、秋から冬にかけて変わっていく自然を表現しているものでした。これが1978年から1982年の作品で、まだまだ変わっていく日本画のダイナミズムを感じました。

日本画というと、以前、"「日本画」なの?" でもう日本画ともいえない作品も見てきたのですが、今回のものは伝統に沿いながらも新しい「美」を目指す姿勢を感じることができました。現代美術に抵抗のある人にもオススメです。4月1日まで。

2014/01/14

バルテュスの優雅な生活

娘が成人式の式典に出席している間、図書館で読みました。

バルテュスの優雅な生活


バルテュスに関しては原久路の作品に関する記事であげたのですが、バルテュス自体はそれまで知らず、またそれ以降も詳しいことは知らなかったので、興味深く読みました。昔の人だと思っていたのですが、2001年に亡くなったので現代の人と言えるんですね。勝新太郎とも交流があり、一緒の写真も載っていました。その他リチャード・ギアとの写真もありました。

また、この著者にもなっている節子さんという日本人が奥さんだったのですね。節子さん自身が書かれた馴れ初めの部分が面白かったし、若くして結婚した節子さんが、教養をつけるために勉強したエピソードも興味深く読みました。

2014/01/12

16th DOMANI・明日展

国立新美術館で行われている16th DOMANI・明日展 に行って来ました。毎年行われているのですが、以前は2010年に行ったので4年ぶりになります。

今回の特徴は、建築を大きく取り上げたことだろう。建築家43名それぞれに区分されたスペースを与えられている。それぞれじっくりみていると、時間がいくらあっても足りない感じ。

建築家のことはほとんど知らないのだけれど、現在NTTインターコミュニケーションセンターで行われている都市ソラリス展の事前シンポジウムで出ていた松川昌平のARKHITEKTOMEがあった。建築において可能なパターン (コンピュータ上のモデル) を作っては、与えられたコンテキストで評価し、淘汰していくことを繰り返すもの。昨年11月東京ミッドタウンで行われた、慶應SFCのORFでも出ていたらしい。

アート作品に関しては自分としてはあまり収穫はなかったが、その中にあって榊原澄人の作品は惹かれた。

É IN MOTION No.2(部分) http://domani-ten.com/artist/exhibition/01.php より
É IN MOTION No.2(部分) http://domani-ten.com/artist/exhibition/01.php より[/caption]

大きなスクリーンに、一部が繋がった4つのシーンが少しずつずれながら連続して投影されている。個々のシーンの中では部分部分でそれぞれイベントが発生していて、そのイベントを追っていると他のイベントを見るのが疎かになってしまいまうので、今度は別のところを中心にみることになる。画面の移動はゆっくりではあるが、それでも終端にくると見えなくなるので、そのあいだにみないといけない。一周は15分くらいだと思うが、この作品は全部じっくり見てしまった。

大野由美子の床面にジグソーパズルのピースを並べた作品も面白かった。靴を脱げばその上に乗れるようになっているのだけれど、ピースが靴下にひっかかって元と違ったものになるのではないとひやひやした。

川上りえの作品も、針金で制作したキューブの組み合わせを天井から吊るしたものの下を通っていく感じで、不思議な感覚。

2014/01/10

アージェント・トーク022

1月7日、森美術館で行われた

アージェント・トーク022:「具体:すばらしい遊び場所」展から考える日本美術のグローバルな位置

を聞いてきました。

「具体」に関しては一昨年国立新美術館で展覧会が開かれたので行って来ました(→「具体」展)、昨年はニューヨークのグッゲンハイム美術館で開かれていました。そのキュレーターの一人ミン・ティアンポさんのトークです。

日本の美術をどう世界の中で位置づけるか。それは今も日本の美術界のテーマであるのでしょうが、現在は村上隆以外は海外に打って出るような動きはあまりみられないと感じています。もちろん個人個人では意識している人も多いのでしょうが (ヴェネチア・ビエンナーレで日本館として賞をとった田中功起もその一人でしょう)、全体の力になっておらず、日本の中で分ってもらえればいいというようなスタンスに見えます。

このトークの中で面白かったのは、「具体」が雑誌というかカタログを作成して世界の美術家に送付していたということ。今はインターネットが使えますが、当時そういうものはない中で、世界に発信していたというところです。数こそ多くは配れませんが、物理的に存在するものは強いですね。

美術というと、美しいか美しくないか、されに現代でいえば、好きか嫌いかの差しかないように感じていましたが、全世界の中で相対化し美術の歴史の文脈の中に位置づけることが重要なんですね。国際公用語としての英語はそのためには重要ということで、会場とのQ&Aの回答中に言われていました。

2014/01/01

2013年に行った展覧会

毎年年末にまとめている「今年行った展覧会」、こんな時間になっちゃった。

今年は展覧会というより、あわせて行われるトーク等が増えたように思います。
  • 2013/01/06 国芳展 @ 横浜美術館
  • 2013/01/13
    • 美術にぶるっ @ 東京国立近代美術館
    • 田中一光展の関連イベント。 @ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2013/01/29 吉竹美香さんアージェントトーク @ 森美術館
  • 2013/02/11
    • 装画を描くコンペティショングランプリ ミナミタエコ個展 @gallery_h_maya
    • 大巻伸嗣More Light @ 渋谷ヒカリエ
  • 2013/02/20 メディア芸術祭 @ 国立新美術館
  • 2013/03/13 デザインあ展 @ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2013/03/19 TECHNE映像の教室展 @ 東京ミッドタウン デザインハブ
  • 2013/04/21 ルーベンス最終日 @ Bunkamura ザ・ミュージアム
  • 2013/06/01 「ソフィ カル - 最後のとき/最初のとき」 @ 原美術館
  • 2013/06/29
    • カラーハンティング展ギャラリートーク @ 21_21 DESIGN SIGHT
    • 怠慢ガール @ TAMBOURIN GALLERY
  • 2013/07/07 箱根ガラスの森美術館 2013年特別企画 ─時空を超えた東西の技─「モザイク美の世界」ヴェネチアン・グラスと里帰りした箱根寄木細工 // 観光客向け美術館だけど結構良かった。
  • 2013/07/27 トークセッション「ニッポン国文化村~負の現在」@ さくらWORKS
  • 2013/08/11
    • 福井利佐 「LIFE-SIZED」@ ポーラ ミュージアム アネックス
    • ミン・ウォン展 @ 資生堂ギャラリー
    • ベネチアビエンナーレ報告会 @ さくらWORKS
  • 2013/08/17
    • 泥象 鈴木治の世界 @ 京都国立近代美術館
    • 『dreamscape ─ うたかたの扉』 @ 京都芸術センター
  • 2013/08/23 プーシキン美術館展とキュレーターの講演 @ 横浜美術館
  • 2013/08/30 エドワード・マイブリッジの「動物の運動」写真展 @ フジフイルム スクエア // 他にも木村伊兵衛展がありました。
  • 2013/09/08 横浜トリエンナーレサポーター企画 あいちトリエンナーレ2013 と 名古屋市美術館でのトークイベント
  • 2013/09/16 黄金町バザール (他の日にも行きました)
  • 2103/09/21
    • カラーハンティング展トーク 「やさいピグメント」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • クリスチャン・ケレツ展 @ ギャラリー・間
    • 六本木クロッシングとアーチストトーク @ 森美術館
  • 2013/09/28
    • カラーハンティング展トーク「国家珍宝帳プロジェクトを語る」@ 21_21 DESIGN SIGHT
    • NISSAN ART AWARD @ BankART Studio NYK
  • 2013/10/14
    • 竹内栖鳳展 @ 東京国立近代美術館
    • Rhizomatiks @ ICC: InterCommunication Center
  • 2013/11/05 アージェントトーク @ 森美術館
  • 2013/11/16「D-8が語るデザインとミュージアム」Vol.1 テーマ「デザイン・ミュージアムの魅力と力」@ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2013/11/23 シンポジウム「都市ソラリスへ」 @ ICC: InterCommunication Center
  • 2013/12/03 アージェントトーク021 中国社会のいま @ 森美術館
  • 2013/12/07
    • 森村・荒木対談 @ 資生堂花椿ホール
    • 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る @ 資生堂ギャラリー
    • 「トマシェフスキ展 - 世界を震わす詩学」 @ ギンザ・グラフィック・ギャラリー ggg)
  • 2013/12/08 横浜トリエンナーレサポーター企画
    • 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る@ 資生堂ギャラリー
    • 美しき、ブラックリスト展~D&AD Awards 1963-2013~ @ アド・ミュージアム東京
    • 「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」@ 原美術館
  • 2013/12/14「D-8が語るデザインとミュージアム」Vol.2 テーマ「ジャパンデザイン、そしてデザインの力」@ 21_21 DESIGN SIGHT
  • 2013/12/21 参加アーティストによるプレゼンテーションとトークセッション テーマ「空中都市」@ ICC: InterCommunication Center
ベストを選出する余裕はないけど、「美術にぶるっ」、竹内栖鳳展、「泥象 鈴木治の世界」、あいちトリエンナーレの名和晃平 フォームが見応えありました。

これ以外にヨコハマトリエンナーレ関係のイベントがありました。来年はいよいよ本展です。忙しくなりそうです。

2012/12/31

2012年にいった展覧会

今年も最後になりました。また今年行った展覧会をまとめてみたいと思います。
昨年 (「2011年アート系イベント」) よりは少ないけど、結構いってますね。なんかまだ忘れているような気がする。

今年良かったのは
  • ぬぐ絵画展: やらしい目で見るためじゃないよ!というアピールに苦労していた様がよく分った。
  • 石子順造的世界: マンガ、キッチュな世界等普通の美術展と違う雰囲気が楽しめた。
  • 松井冬子: 制作途中の素材等の展示もあって充実していた。
  • エリック・ギルのタイポグラフィ展: ページにあわせて文字を修飾する等、昔は手間かけてたんだねえ。
  • 村山知義: 装丁、ポスター、舞台装置など様々な分野での活躍。
  • アラブエクスプレス展: どうしても戦争や文化を考えさせられる展覧会。
  • 「具体」展: 当時の熱気が感じられた。
  • 与えられた形象―辰野登恵子/柴田敏雄: これも若い時代の熱気が感じられた。
  • 山口晃: そんなに大きなスペースではないのだけれど作品ごとのディテールが楽しめる。
  • 会田誠: カオスラウンジみたいなスペース、18禁エリア、でかい作品などバラエティに富む展示。これはもう一枚チケットがあるので行く。
ベスト10なんて出せる程行ってないと思ったけど10個になりました。

追記: 地中美術館 (写真) に行ったの忘れてました。

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2012/11/18

沖縄の人たち 山城知佳子

昨日 2012年11月17日から「会田誠展:天才でごめんなさい」が開催されており、初日の昨日はトークセッションも開催され、こちらも参加して来ました。会場外に立ち見が出るほどの盛況でした。

これに関しては別稿で書きたいと思います。ここでは、同期間に行われている「MAMプロジェクト18 山城知佳子」アーティストトークにも参加して来たので、その感想を書いておきたいと思います。


 肉屋の女

トークは山城さんと森美術館キュレーターの近藤さんの対談形式で行われました。山城さんはあまり雄弁な方ではないようで、近藤さんが話題をふってそれに答えるという形で進行がなされました。

過去の作品を紹介して、最後に今回の作品「肉屋の女」に話題がなった時も、近藤さんが作品の背後にあるストーリーを補足説明していました。作品に出てくるものに様々なメタファーを感じ取った近藤さんがそのことを質問すると、全体で「肉」を表現したい、出てくる人間も肉を食べそして肉として食べられることを意識しているとのこと。作品の中のに出てくる洞窟 (沖縄ではガマ) もその中で一般人が自決をした沖縄戦のイメージを重ねているのかという問いに対しても、人間の体内の穴を奥まで進んで行くイメージとのことでした。

作品に対して、その意図を問うと「作品そのものを見てください、感じてください」という日もいて、山城さんもそういうタイプなのかと思ったのですが、答えを聞いて行くとやはりコンセプトが少しずつ出て来て、現代アートはやはり概念であり言葉なんだなと思います。

沖縄の住民に関しても、周りからは住みやすく人々も楽天的なように見えるけれども、そこに住んでいる人は、基地があって、レイプが身近に感じられ、逃げ場のなさを感じているとのことです。沖縄に住んでいる表現者は、そのことを考えざるを得ない。

そういう背景を聞いたので、セッションの最後の質問の時間では「肉屋の女の女性には悲しそうな表情が見える、それは意図したものか」と聞きました。「そういう意図はなく、役者さんにそういう指示も出していない。むしろたくましさを表現した」とのことでした。また「むしろ肉に群がる男達 (労働者) に悲しさを感じる」とのことでした。出演者の女性の表情は、山城さんが男達に向けている目なのかもしれません。

山城さんの作品には、黙認耕作地、その中のマーケット (闇市)、黙認浜 (これは山城さん命名の言葉)、壊される自然、辺野古の海など、沖縄、日本を考えさせられるモチーフが色々出て来ます。同時期に開催されている『黙認のからだ』(2012年11月17日(土)–12月22日(土)、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku) も行ってみようと思います。