スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション―人生・仕事・世界を変える7つの法則
カーマイン・ガロ 外村 仁 解説
イノベーションというと、技術者や経営者にしか関係なさそうに見えますが、自分の人生をよりよくしたいすべての人に向けられた本のように思います。
発明家になれる人は限られているが、イノベーターには誰でもなれる。 ... イノベーションは、すばらしい人生を送るために普通の人々が日々、行うことだ。その人たちが、スティーブ・ジョブズだったらどうするだろうかを考える時に指針になることを目指しています。
1日に何回も、何か問題を抱えたどこかの学生、どこかのアントレプレナー、どこかの産業デザイナー、どこかのCEOがこう自問しているはずだ ーー『スティーブ・ジョブズならどうするだろうか?』と。これに対してここでは7つの法則を提示しています。
- キャリア「大好きなことをする」
-- 自分の心に従え。 - ビジョン「宇宙に衝撃を与える」
-- 自分のビジョンに賛同する人を惹きつける。 - 考え方「頭に活を入れる」
-- 創造性はさまざま物事をつなぐこと。そのためには幅広い体験が必要だ。 - 顧客「製品を売るな。夢を売れ。」
-- 顧客からニーズを聞くのではなく、顧客の本当の希望を知る。 - デザイン「1000ものことにノーという」
-- 不要なものを取り除き、必要なものの声が聞こえるようにする。 - 体験「めちゃくちゃすごい体験を作る」
-- アップルストアの顧客サービスは体験を提供している。 - ストーリー「メッセージの達人になる」
-- プレゼンにより周りの人を巻き込む。
法則の全てが誰にでも適用可能なものとは言えないかもしれませんが、自分にどう関わってくるかを考えるのは有効だと思います。
特に重要なのは法則1 「大好きなことをする」ではないでしょうか。
アップルから追い出されたころのことをこう語っています。
くじけず前に進めたのは、自分がしていることが大好きだったからです。大好きなことをするのでなければ、すばらしい仕事などできるはずがありません。またこのようにも話しています。
アントレプレナーというのは大変な仕事だからね。この仕事で成功した人と成功できなかった人を分けるものの半分は、忍耐力だと思うんだ。また、情熱が傾けられるものが今なければ、レストランの雑用係かなにかになって、見つかるまで探すべきだということもいっています。
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大きな情熱がなければやり遂げられるはずがない。
ちょうど前後してみたジャック・ウェルチのインタビュー (CEO EXCHANGE) で、リーダーシップに必要なものとして、4つのE (Energy, Energize, Edge, Execute) に1つのP (Passion) を加えていました。ここでも「情熱」が語られています。
7月30日、Earthling 2011 で講演された山中俊治さんも「自分の好奇心に従え」と語っていました。
NHK教育で再放送されていた、FIRSTサイエンスフォーラム「常識の壁を打ち破れ」でも、同じメッセージが出されていました。情熱を傾けて一生懸命やると何かは必ず得られる。
そして同じメッセージが「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」の法則1の後半でも出てきます。次の言葉は社会起業家ビル・ストリックランドが、アップルから追放された時のジョブズに関して語ったもの。
情熱があっても失敗はします。でも情熱があれば、失敗で終ってしまうことがないのです失敗したときこそ、その夢がどれほど大事なものかよくわかるとも言っています。
読んで自分の行きて来た道を考えると複雑な心境ですね。がんばってきたつもりではあるのだけど情熱が足りなかったんじゃないのとも思います。情熱が傾けられるところにいながら、少しずつずれてきて今ここにいるのかもしれない。一方でこれからでも少しずつでも情熱の傾けられる道に修正していかないといけないと思うのです。