いまごろ米国大統領選挙の話題で申し訳ありません。「ブッシュとケリーは同じ穴のムジナ」と書いたので、結果はどちらでもよさそうなものではあるのですが、今は発言を反省しています。
誰も真正面からは逆らえない国アメリカ。その方向を決めるのがこんな人たちだという事実。これらの人が自分が正しかったと確認させないためにも、ブッシュが当選してはいけなかったのにと思う。
■サッカーマム: 「倫理」なんて言葉を口にするな
選挙後「報道ステーション」で、選挙の結果を左右したオハイオ州の「サッカーマム」と呼ばれる人たちのインタビューを行っていました。
サッカーマムとは何か。子供をサッカークラブに入れている母親達のことなんですが、自分の子供の教育に力を入れているような人たち、価値観としてはキリスト教倫理観に目覚めた人たち (若い頃はそうでもなかった) をさしています。これらの人たちが妊娠中絶に反対の立場をとるブッシュを支持した。インタビューでは戦争と倫理とを比較してどうか聞いていましたが、「戦争のことも大事ね。どちらが大事かは簡単にいえないけど、私はブッシュに入れた。そういうこと」といっていました。戦争のことなんか考えてもいなかった、って感じだったぞ。
雷鳥日記さんの「サッカーマム」、反米嫌日戦線さんの11月6日の記事「【400本目】『息子よ、アメリカって国はいい国だ。大統領さえ要らないくらいな!』」に説明と意見が書かれています。
「命の軽重」という観点から言えば、イラクの人々の命の重さよりも胎児の命の重さを重く見ているということ。問題はそれだけでなく、レイプで妊娠してしまう母体のことも考えなければならない。きっとサッカーマムにとっては他人事なんだろう。私は生まれてくるべき命を守っている、その自己満足だけが重要なのだろう。原理主義者はものを考えなくて楽でいいのは確かだが、自分が不幸を押し付けていることを認識してもらいたいものだ。
■ テロなんか関係ない人々
選挙報道を見ていると、中部南部はブッシュ、東部と太平洋沿岸はケリーと綺麗に分かれていることが分かる。私はこれらは単に田舎は保守的、都会はリベラルという違いかと思っていました。
そんなとき、『仏蘭西の空を仰いでみる。』さんの『キーワードは「わが身に降りかかる危機」?』を読みました。ここには、
超高層ビルが立ち並び国際的に有名な都市を抱える州ではすべてKerry,ほぼ絶対間違いなくビン・ラディンのターゲットにもならない州はBush。本人達は自分だけがよければという明確な意識はないかもしれないが、やはりここにも世界を見る意識はない。もっと言えばアメリカ全体を考える意識さえない。
ここにトラックバックしているSeven Seas & A Lonely Islandさんの「IQとジョージ」で紹介されている「アメリカのそれぞれの州のIQとどっちを選んだかの比較表」もおもしいぞ。
■ 誤りを認めない人々
記者の目:ブッシュ大統領再選=佐藤千矢子(北米総局) (毎日新聞 2004年11月5日)
ブッシュ氏を深く信じ、イラク戦争は正しかったと信じた国民が、嫌な現実を直視しなければならなくなった時、最も簡単なのは、大量破壊兵器は見つかっていないと考えることだ。ニューメキシコ、コロラド、アイオワ、ウィスコンシンの激戦州4州で、9割の人が「イラクに大量破壊兵器はあったはず」と答えたそうな。「イラクにあったに違いないよ。どこかの国に移転されてしまったんだ」。
チョムスキーが指摘するように報道されていないという側面は大きいのだろうが、それよりも、知る必要がない、知りたくない、というメンタリティなのだと思う。
■ これからの日本
ブッシュでよかったと思えることがひとつある。それはアメリカが双子の赤字などでますます力を弱めるだろうと考えられること。
田中 宇が「非米同盟」で、その点を指摘している (アメリカ自身がその方向を目指しているという主張は同意し難いが)。
日本は、この泥舟に一緒に乗るのではなく、いつでも逃げ出せるようにしておかなければならない。ましてや、国民の (特にお年寄りの) 財産である郵貯を献上して泥舟が沈むのを遅らせてはならない。どうせ沈むのだ。沈まないとしても支えるのに犠牲になる必要はない。でも今の小泉首相を見ているとそういう戦略が立てられるとはとても思えないのだ。
12 件のコメント:
TBありがとうございました。私はクリーブランドに滞在したことがありますが何度「ジャップ」と私を指差してオンナコドモが言ったことでしょう。一方この町のBARで食事をすれば老人が「わしゃあ韓国にもヴェトナムにも行った」と声をかけてきてなぜかご馳走してくれたり。うーん,罪の意識でもあるのかしらん?おじいさんはともかく宗教的倫理観に目覚めた女性が「ジャップ」と口にする。彼らの身勝手な矛盾を感じずにはいられません。妊娠中絶についてですがブッシュは南部メソジストの信者(表向き,裏では原理主義と手をとりあってますけど),ケリーはローマンカトリックです。本来カトリックが妊娠中絶反対,プロテスタントは離婚も中絶もOK。???。にぶろぐさんのカテゴリーはおもしろいですね。ちなみにそーか学会ですがフランスではカルトに認定されています♪
私は決してブッシュ大統領が良いとは考えていませんが、ブッシュ氏は4年前、1期目に登場したときには、クリントン政権以上に穏健派とみられていた面もあったと思います。それが就任から1年も経たずに9.11に見舞われ、大きく狂い始めた面もあったような気がします。いまはネオコンのパワーだけが注目を集めていますが、リアリストグループの牽制にあい、最初はバランスを保っていたと思います。もっとも、当初中立であった、安全保障政策担当のライス補佐官も、もともとネオコン人脈の推薦によって政権に参加していたわけですけれど。個人的には、若い頃、米国に行き、とても触発されました。今日の米国を見て、こんなはずじゃないだろう、と思ってしまいます。
★suwacommechatさん、クリーブランドはそのオハイオ州ですね。普通の日本人が知らないアメリカの部分ですので、貴重、でも不愉快な体験ですね。ブッシュとケリーの宗教的基盤はちゃんと考えたことはありませんでした。ありがとうございます。私のカテゴリー面白いですか? 新しいことを書こうと思うと増やしたりするので、統一的ではないかもしれません。
★yodaway2さん、折につけ指摘されるように、アメリカは良いところもたくさんあるんですけどね。やはり冷戦構造の崩壊で唯一のスーパーパワーになって歯止めがないのが問題なのでしょうか。
TBありがとうございます。 SATCで中絶を扱ったエピソードがあると思えば(あれはNYだけど)、失業率もイラク戦争もどうでもよくて中絶だけが投票の決め手・・・という地域もあるところがため息ですよね。 今のアメリカは諸外国に自分のPRが十分にできてない、自分の行動の正当性をきちんと主張できるだけの能力がないような気がします。
クリーブランドは日本人が想像を絶するような田舎です。例えば私が歩道を歩いているとすると車は私を見るなりスピードを落としてまじまじと眺めつつ去っていく・・・のは当たり前でした。大都市以外は「大草原の小さな家」がちょっと進化したくらいに思っていた方がいいかも(笑)。にぶろぐさんではチョムスキーさんが政治評論家?私にとっては尊敬してやまない言語学者です。リンクさせていただきました。これからも勉強しに参ります。
TBどうも。乱暴に言わせてもらえば、大多数のアメリカ人にとって、世界とは、アメリカとそれを支持する奴隷国家以外は考えたくない、自分達こそが正義だってことなんでしょう。また、その考えは、世界最強の軍隊を持つことによる優越感と誇りなのでしょうね。正直な話、ソ連が大国であった時代の方が「マシ」であったと考えます。米ソの軍事的均衡があった時代なら、イラクのような悲劇は有り得なかったのは事実です。
★seven_seaさん、コメントありがとうございます。私は、アメリカに正当性をきちんと主張できるだけの能力がない、正当性そのものがないと思っています。それから、PRが足りないというよりも、真実を伝えてないと思います。アメリカにはいいところもたくさんあると思うのですけどね。
★suwacommechatさん、私はネバダ州の田舎のレストランで勘定書きにチップの額が先に記入されていたことがありました。日本人はチップのこと知らない下等民族と思われたんでしょうね。suwacommechatさんは言語学の人なんですね。私は計算機屋なので言語学の面では反チョムスキー学派寄りです。しかしチョムスキーがいたから反チョムスキーも出てきたわけで、偉大な学者と認識しています。
★死ぬのはさん(heteheeteさんのまね)、トラックバック失敗しましたというメッセージが出たのですが、できていたのですね。「アメリカが正義」私ソ連の崩壊でそういう構図をちょっとだけ期待していました。本当に「正義」に目覚めてくれることを。でもそうはならなかった。今の自分達が正義だと思っていて、まだまだ世界中に悪がはびこっていると考えているのですね。私もソ連が大国だ他時のほうがましだったと思っています。
となるとにぶろぐさんは「ハリデー派」ですね?(笑)生後言語習得。メモしておきます。
えーと、システミック文法の方も弱いです。だんだんばけの皮がはがれますね。LFG, HPSGなどユニフィケーション文法なんですが、アカデミックな領域から離れていますのでこのへんで勘弁して下さい(汗)。
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