徒然なる数学な日々 (night_in_tunisiaさん) の記事「ひさびさにキムキム」からこのことを知りました。
木村剛さんが、週刊! 木村剛 の記事 "2004.12.23 「引用」は「リンク」に対する冒涜なのか?" で、
「引用」「転載」をコミュニケーションのツールとして多用してきましたが、こうした手法に反対の方々も少なくないようです。ネット界の重鎮の中には、「ネット社会に対する冒涜」と捉える方もいらっしゃるようで、ネット界もなかなかに難しいものだと感じさせられる今日この頃です。と書かれています。
まだネットの世界がリアルの社会とは違ったものと考えられているのですね。特別なものではありません。ネットの世界は現実社会の一部です。現実社会のルール・法律は、うまく実効性を発揮できていない面もありますが、ネットの世界でも適用されます。
なにが問題なのか。たとえば2004.12.19の記事「ドン・キホーテ放火事件で本当に悪いのは誰?」では、ちょっと問題提起の文を書いて、ドン・キホーテの安田隆夫社長のコメントをまるごと転載しています。
おそらくドン・キホーテの安田隆夫社長は「冒涜された」とは考えないと思います。私が行った「転載」という行為については、逆に感謝しているのではないかと推察いたします。とあることから、無断であることが分かります。
著作権法は「転載」が可能なものとして、「国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物」(第32条)と「新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説」(第39条) があります。安田社長のコメントはどちらにもあたりませんね。
また、第32条に引用の規定があり、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」とあります。引用されたものになんらかのコメントをする場合でも「正当な範囲内」に限られます。ここではコメントも無く、全文ですから明らかにこの範囲を逸脱しています。night_in_tunisiaさんが指摘されているとおりです。引用に関しては、「著作権の話(3) 他人の権利を尊重する」を御覧下さい。
木村氏は、別のところでは
原典を明示した上で「引用」されることは、「情報発信者としての名誉」であって、まかり間違っても「情報発信者に対する権利侵害」にはあたりません。と書かれていますが、これはおっしゃるとおり、「引用」ならば名誉である場合が多いでしょうし、権利侵害でもありません。しかし、木村氏の行っていることは「転載」です。
木村氏は「引用」と「転載」について分けて書かれており、ちゃんとふたつの違いを区別できているようです。しかし、ここでは「引用」の正当性で自身の「転載」を正当化しようとしています。
論理が分からないのでしょうか。それとも論理が分かった上で、読者を欺く詭弁を使っているのでしょうか。どちらにしろ真剣な議論をする資格はありません。切込隊長との論戦に関しては経済関係の法律に疎いので、どちらの言っていることがただしいのか判断をくだせないながらも、木村氏がちゃんと答えられていないと感じていました。こういう議論のしかたをみると、切込隊長のほうが正しいと言う確信が強まります。
木村氏は
出版物において護られる「情報発信者の権利」以上に、ネット上において「情報発信者の権利」が護られるべきとは考えていないからです。と書かれています。著作権法に対する挑戦状ですね。
出版物はお金がとれる、ネット上の情報はタダ、ということと、権利の有無をごっちゃにしているのだと思います。
最後に。この文章の「引用」は著作権法に沿った形で自由に行っていただいて構いません。なお、「転載」はエキサイト社には既に許諾しています。
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