2009/12/03

国立国会図書館と著作権法の改正

パブリックコメントの募集で、

著作権法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見募集の実施について意見・情報受付開始日:2009年12月2日
意見・情報受付締切日:2009年12月13日

というのがあった。

中身をみると、国立国会図書館館長の長尾先生の講演で出て来た話題に関係する部分があった。ここでは著作権関連をまとめておこう。ただ今回は「著作権法施行規則の一部を改正する省令案」なので、「著作権法施行規則」が必要のない「著作権法」部分があるかもしれない。

・これまで日本ではウェブサイトのアーカイブはできなかったが、今回、国、自治体に関してはできるようになった。自治体は合併すると元の自治体のウェブサイトは消えてしまうため、保存は重要。カナダもウェブサイトのアーカイブができるようになったが、過去分はないため、インターネットアーカイブ社から購入した。

・書籍は書籍としての保存のためにデジタル化ができるようになった。コピーサービス (有料) はデジタルデータから行える。ただし図書館内での利用に限定される。

・また、デジタルデータは研究のために使えるようになった。

・目の見えない人のために、デジタル化し、音声合成で聞かせることができる。

・弱視の人のために、大活字本の作成ができるようになった。

・スキャンした書籍は画像として保持しているため、テキスト検索はできない。OCRを行っているが、それは音声合成用。

画像として保持して検索できないんじゃダメじゃん、という意見があることは私も知っていますし、同意もできるのですが、法律改正でやっとここまでできるようになったというのが実情のようです。著作権者の反対が強く、なかなか変えられないので、5年単位で少しずつ変えて行くことを目指しているそうです。先は長そうですね。

なお、今回、「著作権法施行令の一部を改正する政令案の概要」(PDF) には書かれていて、「著作権法の一部を改正する法律・新旧対照表」 (PDF) に書かれていないものとして、「第30条三」がありました。
著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音または録画を、その事実を知りながら行う場合 (を除き私的使用のための複製を許可する)
問題になっていたダウンロード違法化だと思います。「概要」に書いていない、と書きましたが、概要の最後に出てくる
Ⅶ その他規定の整理関係
Ⅰ〜Ⅵのほか、「著作権法の一部を改正する法律」(平成21年法律第53号)の施行
に伴い必要となる所要の規定の整理等を行う。
に対応するのかもしれません。

7 件のコメント:

pacer3 さんのコメント...

こんなパブコメやってたんですね。うむ、著作権はむずかしいです。国立国会図書館は、資料探しでよく利用するので、電子化は賛成です。学会誌の論文などは、いろいろ有料サイトがありますよね。あれも、PDFですぐ送ってくれると良いのに、コピーの郵送だったり、FAXだったり。まだ時代に合ってないです。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ pacer3さん、

国立国会図書館の電子化は画像としての電子化なので、検索が容易になるのではないのです。コピーが印刷になる分で入手の時間は短くなるでしょうけど。

論文だったら CiNii http://ci.nii.ac.jp/ がいいですよ。PDFダウンロードできます。扱っている分野がまだ不十分なのではないと思いますが。

bucmacoto さんのコメント...

純粋な意味での著作権を、原作者および作品内容に深く関与した方々が主張することに意義はありません。

けれど・・・著作隣接権のごときを振りかざされますと、ぉぃぉぃそれって違うだろー!っていう気になってしまいます。便乗とか掠め取った果実を保護するようではいけないって、そう思うのでした。(せいぜい保管庫として保存して再提供しているだけじゃんとう気になってしまう)

あ、そうか。 図書館と同じで、そういう(原著作者でない)人々は、「(自らの)著作権を訴えている」のではなく「著作権者の権利保護を(代弁者として)訴えている」のだと解釈すればいいのか(笑) < そうとは思えない場合も感じてるもんで(汗;)

yoshihiroueda さんのコメント...

★ ばくさん、

「純粋な意味での著作権」で何を指しているのかよく分りませんでした。

「著作権」は財産権なので、「純粋に」というと著作者の思い入れなどを除いてということになるかと思うのですが、ばくさんの書き方をみるとむしろそちらのほう (著作者人格権) を指しているようにも見えます。

著作隣接権は演奏者などを考えると認める必要があると思いますが、「単なる便乗」というのもあるでしょうね。代弁者と言っても、本人が死んだ後の財産権は遺族が受け継ぐだけなので、要は遺族の利益の主張を代弁していることになるんです。

ここのところの誤解が、著作権保護期間の延長を主張する人の中に少なからずいるように思います。たぶんその人達は、著作権と著作者人格権をごっちゃにしていると思われるふしがあるのです。

bucmacoto さんのコメント...

あ ^^;そうですそうです
> 「著作権」を(やり取り可能な財としての)財産権と見なせていない人。
それが私です。
「著作物そのもの」をコントロールすることのできる権利 = 私の感覚での「純粋な著作権」というわけです。(付加価値を生む財としての)著作権ってのは、定期借地権程度の保護が妥当じゃん。。。っていう感覚なのです。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ ばくさん、

コントロールできる権利が、誰に許諾するかを自由にできる権利のことを指しているなら、これは対価を得る権利とは実質的に切り離せないと思うので、難しいところですね。

一方、それが著作物を勝手に変えることができる権利という意味ならば、今でも著作者人格権で永遠に守られており、遺族にも継承されません。

なお、これでパロディなどができなくなるように見えますが、それは別の著作物と見なす必要があると私は思います。ここは線引きが難しいところだと思います。

yoshihiroueda さんのコメント...

著作権と著作者人格権に関してはもう少し整理して別の記事にまとめる必要があるという気がしてきました。しばしお待ちを。