PCウイルス作成者、日本で初逮捕…著作権法違反容疑で (CNET Japan / FujiSankei Business i. 2008/01/25)
アニメ画像を無断で使ったコンピューターウイルスを作成したとして、京都府警ハイテク犯罪対策室と五条署は24日、大阪府泉佐野市の大学院生ら20代と30代の男3人を著作権法違反容疑で逮捕した。この記事の書き方はまだましなほうで、「テレビアニメの静止画像を利用してウイルスを作成した」なんて書いてあるのもある。
実際のところは、ウイルス作成を取り締まる方法がないので、著作権侵害を理由にしたらしい。
個人情報の流出など、ウイルスによる被害は後を絶たないが、日本にはウイルスの作成自体を処罰する法律はない。このため府警は、ウイルスに使われていたアニメ画像を無断で使用した著作権法違反の容疑を適用し、作成者の立件に踏み切った。別件逮捕に似ているが、ちょっと違う。別件逮捕は別件でまず逮捕しておいて取調べを行う間に本命の容疑を固めるものだが、ここにはその本命はない。
まず驚いたのは、著作権侵害というのは経済的な権利の衝突であって (著作者人格権というのもあるけれど)、民事の範疇だと思っていたのだ。よく見たら刑事罰も規定されているんですね。
著作権法 第八章 罰則
適用対象がすごく分かりにくく、この場合どの適用対象にあたるのか良く分からないが、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という記述があった。
ほかにも分からないことがある。
・著作権侵害は親告罪 = 著作権者が訴えなければ罪にならないはず。
・「容疑者」が大阪住民なのに、なぜ京都府警?
これに関しては、別のニュースソースがあった。
Winnyウイルス作成者を人気アニメ「CLANNAD」著作権侵害で逮捕 - 京都府警 (マイコミジャーナル 2008/01/25)
京都アニメーションが制作したアニメーション「CLANNAD(クラナド)」の静止画像の入った...京都府警に頼まれて協力したのだろう。アニメ製作会社にしてみれば、これよりもYouTubeとかニコニコ動画を取り締まってほしいところだろうから。
気になるのは、この「別件逮捕」をやむなしという声があることだ。
以前オウム真理教の事件で、「名誉毀損」での逮捕があり、驚かされたことを思い出す。このときは、カッターナイフで銃刀法違反、駐車場に入って不法侵入というのもあったと思う。このときには仕方ないとも思いつつも、なんでも逮捕の材料にできることに恐ろしいものを感じたのも確かだ。
そしてその後、「デスノート」の作者もアーミーナイフの所持で逮捕された。植草教授もなんとか逮捕できるような行為はあったのだろうけど、冤罪を主張している人たちの主張を読むとそれもそうかもしれないと思う。
警察の意思があって、検察も協力が得られれば誰でも逮捕できるということだろう。逮捕されるようなことをするほうが悪いと言い切れるかな?
唐突だが、「中国農民調査」という本を読んだ。この中には、法律で規定されない税金や負担金を課す地方役人の話がこれでもかと出てくる。反抗すると逮捕されたりリンチされたり殺されたりするのだ。
この中で大学で法学部を出た役人の話が出てくる。
「いまおまえをつかまえるのに手続きなんかいらないんだ! おれは大学の法学部を卒業しているんだぞ」法律を学んだものが言う言葉とは思えないでしょう。でも学があることは次の言葉でわかる。
「テレビのニュースや新聞を見たってわかるだろう。いま中国が法治を実行していると思ったらずいぶん青いな。アメリカの大統領が地方の法律で裁かれるのは外国だからだ。中国は人治の国だ。だからおれはおまえを裁けるんだ!」お上に逆らうほうが悪いと思っている人は、中国みたいになりたいのだろうか。
補足: ウイルスを野放しにして良いといっている訳ではありません。ちゃんと法律を整備し、法の定めに従って仕事をしろということを主張したいのです。
4 件のコメント:
遅いですよね。法律が遅れています。
★ そふぃあさん、そうですよね。今回の事件でもうひとつ知ったことが、日本にはウイルスを取り締まる法律自体がないということでした。ウイルスからの防御のほうは、警告もされているし、浸透してきているのに。
違う法律で取り締まるというのは絶対的に法の精神に反していると思うのですが、罪状を見ると「なんとかしてほしい」の気持ちが先に立って、世論もそれを許してしまう危うさやもろさを感じます。植草教授の件はどちらが本当かもう私たちにはわからない気がしますが、擁護派の話を聞いていると、日本には言論の自由もないんじゃないかと不安になります。大衆側も「そんなことしたんだから仕方ない」と逮捕を許す土壌があることをわかっていて利用しているかもしれないと考えると身の毛がよだちます。特に今回のようにはっきりと実際の罪状で犯罪を取り締まれないだなんて、法治国家とは言えないのではないでしょうか。こういう事態に対して、冤罪に対する危機意識が大衆レベルで高まらないというのも気がかりです。
★ らふぃさん、別件逮捕を許す土壌というのがいちばん怖いのです。迷惑かけているんだから仕方ないよねというところから、だんだん外堀を埋めて行って、そのうちお上に逆らうのがいけないというところへいきそうです。立川反戦ビラ配布事件など既にそういう兆候が見えてきます。このような中、新しい法律も恣意的に解釈できる部分が広くなってきており、危険な兆候がますます広がっているように感じます。
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