2008/12/20

合衆国再生

こんばんは。Rosebudです(ウソ)。[→ 人気投票があったよ。]

バラク・オバマ「合衆国再生」、読みました。

合衆国再生—大いなる希望を抱いて
棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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リズムが良く、読みやすい。一文の長さは決して短くはないのだけれど、複文よりも重文が多用されているため、すっと入る感じ。「ワンフレーズポリティックス」の対極にあるのだが、歯切れが良い。日本語に翻訳されているのだけど、オバマのあの声、抑揚が日本語で頭の中で響く気がする。

オバマが考える政策のベースには、アメリカという国、そしてそれを支える国民への愛と信頼が感じられる。民主主義、自由主義経済、移民を受入れることによって得られる活力、勤勉さに根ざしたアメリカンドリーム、これらがアメリカという国を支える底力であるということを、本気で信じていることが伺える。

もちろん、ただノーテンキにアメリカSUGEEEE~! と言っている訳ではなく、問題は把握している。それが困難な問題であることも。また、これまでのアメリカの歴史がもつ汚点も無視したり糊塗したりしない。

また、理想で全てが上手くいくと思っている訳でもなく、妥協の必要性も理解している。賛成か反対かの二者択一ではなく、基本的には反対する法案であっても少しでも良い方向に変えて行くという方法をとって成果もあげてきた。

しかしそれでも、オバマは、先にあげたようなアメリカの良い点を生かすような政策で良い国を作って行けると考えている。自由主義経済も、金持ちのための自由ではなく、国民が勤勉で這い上がれる自由がなければならないと考えている。その活力を発揮させるためには教育も必要だし、健康保険を修復して安心して仕事に打ち込めるようにしなければならない。

そして大きな主張は、勝利演説でも述べた、赤い州と青い州の集まりではなく、一つのアメリカの再構築。これに関しては歴史認識の中で、もとはほとんどイデオロギー的に差がなかった二つの政党が、選挙に勝利するために相手をラベル付け自分の主張を明確にして行くことで分断を招いたかを描いていたのが興味深かった。

対外的にはアメリカ一国主義ではなく、自由主義陣営との対話、協調を重視しているのがわかる。そしてそれがアメリカの国益にかなっていることを説得しており、この姿勢は他国民としても好感がもてる。

一連の外交政策の中で「世界的な理想比べに勝利する」という表現が印象的だった。敵を叩くのではなく、同じ価値観を共有するとあなたも幸せになれますよというメッセージ。これに惹かれるというのは、私が考える理想的な日本のありかたに近いとうことなのだけど (→ 「俺について来い」)。

アフリカに関する中で、ルワンダの虐殺を防ぐ手段の一つとして、「市民保護区域の創設」というのがあった。これ以上の説明は書かれていないし、検索しても「市民保護区域」という言葉では見つからなかったのだけど、これって私のいう「サンクチュアリ」(→ 参照)と同じかもしれない。と、また我田引水する訳ですが。そうそう、「アフリカ自身に自分を救う意欲がないとわかったら、アフリカを助けられるという期待は持つべきではない」というのも同じ考えだ。

こういうふうに理想を語るのだけれど、決して完璧な人間を演じるのではなく、不安や悩みなど人間的側面も出していることも交換が持てた。選挙に落ちる不安、選挙資金を提供する団体に主張が流されるおそれ、いい親であるための努力と仕事との板挟みなど。

高い理想と率直さに惹かれる。もちろんオバマの力量は未知数で、今後の舵取りの失敗で、ただの理想家に過ぎなかったという評価になるかもしれない。しかしそれでも、こういう姿勢で国民に語り、引きつける政治家は日本にいない。アメリカの選挙のプロセスもうらやましいけれど、それで希望を託せる人物がいることもうらやましい。

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