2008/12/06

動き出して初めて真面目に考える裁判員制度

おはようございます。昔「評決」って映画を観たのだけれど、女の子と一緒の時に選ぶ映画じゃなかったな。いや問題はそこじゃなかったか ...

はっ、いきなり脱線した。

閑話休題。

動き出して初めて真面目に考える、ってのは私に限らず日本人の悪いクセだと思う。いやこのことに関しては以前から警鐘を鳴らしていた人は多くいるんですが (ぶんさん村野瀬さんなど)。ごめんなさいごめんなさい。

佐平次さんの「梟通信〜ホンの戯言」でユーウツな裁判員制度の発足 コリンP.A.ジョーンズ「アメリカ人弁護士が見た裁判員制度」(2)と言う記事があった。
コリンは云う。
裁判員制度は裁判所に対する批判をなくすためにある。

今まであった「常識がない」とか「量刑がおかしい」「冤罪」、、多くの裁判に対する批判が、裁判員を関与させることによって封じられるのだと。

裁判員は「御殿場事件」裁判、「高知バス事件」裁判の共犯者になってしまうのか。

自分が与した決定だからそれを擁護する側に回る。反対の立場をとっていても多数決で負けてしまった場合は後悔の念に苛まれるだろう。批判する側も、市民が関与した決定となれば、強くは批判できなくなるだろう。
本書はアメリカ人の”権力に対する疑い深い目”で裁判員法の条文を分析してその裏に検察や裁判所がいかなる狡知をめぐらせて裁判員の影響力を殺ぐように創ってあるかを明らかにしている。

たとえば裁判官が「今までの判例ではこうなっている」と説明するのは密室であり、それに疑いを抱く裁判員がいても従来の判例・判決書の類は秘扱いでみることができない。

そして裁判員には守秘義務がある。

裁判員制度Q&A > ○ 具体的にはどのような秘密をもらしてはいけないのですか(守秘義務の対象)。
漏らしてはいけない秘密には,1.評議の秘密と2.評議以外の裁判員としての職務を行うに際して知った秘密とがあります。

1.評議の秘密には,例えば,どのような過程を経て結論に達したのかということ(評議の経過),裁判員や裁判官がどのような意見を述べたかということ,その意見を支持した意見の数や反対した意見の数,評決の際の多数決の人数が含まれていると考えられています。

しろうとさんの裁判員に関しては分る。でもこれじゃ裁判官がどのように誘導したかまで秘密にしなければならないということだ。

社員がもつ守秘義務で、会社の違法行為を告発しにくい構図と同じだと思う。違法と断定できるだけの法律知識 (判例と照らし合わせて断定できるレベル) がない場合、「これって違法かも」という行為の告発は自分が守秘義務違反を犯すリスクが大きいのだ。

かくして問題と思われることが発生しても、裁判員は口をつぐまざるを得ず、それに加担することになるのだ。

裁判員制度Q&A > ○ 裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけないと聞いたのですが,上司や同僚,さらには家族や親しい人に話すことも許されないのですか。
裁判員等でいる間,裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけません(裁判員法101条1項)。

ここには理由すら示されていない。

テレビの朝のワイドショウでは「裁判員を脅迫などから守るため」と言っていたが、脅迫する方をなんとかすべきじゃないのか。

次のQ&Aは、それ自体は問題じゃないけれど。

裁判員制度Q&A > ● 裁判員や裁判員候補者として選ばれた場合,どのような服装で裁判所に行けばよいのですか。
どのような服装で来ていただくのか等の具体的な定めはなく,普通の服装でお越しいただければ結構です。

ここにはこう書いてって、先のテレビ番組でもそういっていたが、最後に「でもちゃんとした服装で」って付け加えていた。

そう、これは「空気読め」ってやつだ。

服装はともかく、評議では必ずこの「空気読め」って出てくる。断言する。そうなった場合でも守秘義務で言っちゃいけないのだ。

「空気読め」に関しては以前書きました。→ 「考える力と同調圧力と愛国心といじめと企業不祥事と」

13 件のコメント:

104hito さんのコメント...

この制度が適用されるケースってのはシリアスなだけに服装もだけど、度を超したロン毛や金髪ってのもいかがなものかと・・・制服は軍国主義の復活だっ!髪の毛を伸ばすのは反戦の意である!と唱えた時代から、まだ半世紀も経ってないんだけど・・・ボクって古っ^^;

yoshihiroueda さんのコメント...

★ 104hitoさん、
ロン毛や金髪やびっしりピアスや刺青はいいんじゃないの? 普段通りなんだから。ダメなら最初から選ぶなってことで。そのために髪を切れっていわれる方がおかしいですよ。

sofia_ss さんのコメント...

いろんな人に裁判に関わってもらいたいということなんですからどんな格好でも本人が良いならそれでOKだと思います^^人って、「言っちゃだめ」って言われると、言いたくなるもんなんですよね。

raphie さんのコメント...

NHKの番組、見そびれました。
裁判員の活動そのものには関心がありますが、導入決定当時、まだアメリカにいたため、世論の空気が全くわかりませんでした。これほどまでに望まれていない制度だったとは。それでもなお一方的に導入した制定過程に問題を投げかけずにいられません。誰もが感じたことかもしれませんが、もしこれが軍隊への徴兵制度だったらみんな大人しくしていられるんでしょうか。国民の意志が反映されず、しかも憲法上の違反のない間隙をぬった政府のやり方には、怪しい香りが強くします。良心的兵役拒否が認められて然るべきならば、憲法19条の「思想及び良心の自由を侵してはならない」の条項によって裁判員候補者にボイコットができても良いのではないかと感じます。

raphie さんのコメント...

…とボイコットについて考えましたが、もしも国民の多数の拒否によって制度を形骸化して、専門家の手に裁判が戻ることになったら、国民が拒否した裁判をやってやっているんだという、裁判官に国民に文句を言わせない口実を与えてしまうかもしれないのですよねぇ。難しいなぁ…。衆院選と同時の最高裁判所裁判官の国民審査で罷免に×印つけても裁判員制度拒否の意思表示にはならないのかなぁ。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ そふぃあさん、
他人の服装は批判しちゃいけませんよね。でも服装で判断されるのは仕方ないですけど。
言いたくなったら「噂だけど...」って前置きして言うかな。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ 佐平次さん、
その番組は観なきゃと思っていたのですが、すっかり忘れていました。途中から気がついたのだけどまあ再放送があるかと思ってそのまま寝ちゃった。再放送は火曜深夜にあるけれどドラマだけみたいですね。迫力のある方は再放送ないのか ...
最高裁の人がまともに答えられないようでは困りますよね。それは周知が足りないのではなく制度の設計自体に問題があるのだと思います。
死刑判決が出せない人にこそ裁判員になってもらいたいと思いますし、私はそうするつもりです (あ、令状が来たらの話です)。そういう人が多ければ、というか死刑にしろと声高に言う人も自分では死刑判決を出せないチキンだと思っているので、死刑は減って行って、死刑自体を形骸化できると思っています。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ らふぃさん、
日本でも世論は盛り上がっていませんでした。裁判員制度の導入の動きがあるということは分っていましたが、検討されている段階ではどういう制度に落ち着くのかわからないため議論のポイントは絞れず、ただアメリカの陪審員制度はどうなっているかが時々出て来るくらいでした。法案がいつ出され国会でどのような議論がなされいつ可決されたかというのも恥ずかしながら知らず今を迎えているというのが正直なところです。
マスコミにも問題がありますが、マスコミの姿勢は我々のニーズが作っているのでそれも問題があるでしょう。

yoshihiroueda さんのコメント...

ボイコットするよりも、裁判員として出て、佐平次さんが紹介されているコリンP.A.ジョーンズの本にあるように、裁判所がもうイヤというくらいに質問、指摘をしていくことで改善して行くのが必要なんじゃないかと思います。
でもほかの裁判員から「早く結論出したいという空気読め」って信号が送られるんだろうなあ。それに耐えることができるか。

bs2005 さんのコメント...

大変遅くなりましたが、TB有難うございました。こちらからもTB送らせて頂きます。
ところで私の名前クリックしても該当無しが出てしまいますね。でも記事中リンクして頂いたお気持ちは有り難く頂戴いたします。(笑)

先日NHKスペシャルで模擬裁判を見ました。改めて問題が多いなと思いました。裁判員制度そのものは、日本のように何でも他人事、お上任せの国には良いものだとも思いますが、何としても導入が早急過ぎると思います。その前に色々やらなければならないことがあったのに。全く何でもかんでも見切り発車する国ですね〜。人の命が関わっているようなことまで見切り発車するんですから、腹立たしいというより悲しくさえなります。

色々とあの番組で感じたことも書きたいのですが、何しろ今は時間と気持ちの余裕が無く(涙)、その内また書きます。まだ始まっていないのですからヒロさんも遅くないですよ〜!^^

yoshihiroueda さんのコメント...

★ ぶんさん、
コメントありがとうございます。
リンクURLの件ご指摘ありがとうございました。改行が入っていました。失礼しました。
裁判員制度の総論は私も賛同します。前にも書いた (「裁判員制度」タグをふったところ) のですが、国民が主体的に考えることを促し、民主主義の強化につながると思います。しかしそのためには子供のときから民主主義、憲法の意味 (政府を制約するもの)、論理的思考、ディベートなどを教え、それらの子供が大人になるまで待つ必要があると思います。

やもじ朕 さんのコメント...

こんにちは。裁判員制度そのものに異を唱えるものです。(陪審員制度なら異議をとなえません)

裁判員に万が一でも、選ばれたくない小生としては、以下のような言い訳をかんがえております。

裁判員に選抜されたら、相当な理由なしでは、断れないそうですね。
でも最終的に、裁判官の面接があるそうですから、そこで、こう申し立てます。
「わたくしは、大変に独断と偏見の強い人間です。
たとえば、被告が美人で自分好みの女性だったら、検察官が、なんと言おうというまいと、
証拠なんかくそくらえ、私はその人を無罪と評決するつもりです。それでよろしかったら私を選んでください。」
おそらく選ばないで小ねえ。これで裁判員なんかやらないですみますね。それでもえらばれたら、当然初心貫徹です。

yoshihiroueda さんのコメント...

★ やもじ朕さん、
以前デーブスペクターが、アメリカでは、質問にエキセントリックな回答をすることで陪審員に選ばれるのを避けると言っていました。アメリカでは被告側も陪審員を拒絶することができる (自分の望ましい人が揃うまで何度でもできる) という事情があるのですが、日本でも通用するかもしれません。
私は今回は通知が来ませんでしたが、死刑に反対していることと裁判所が揃える証拠を信用していないことを明言しようと考えています。