銀座資生堂ギャラリーで行われている「蓮沼執太: 〜 ing」展のブロガー内覧会が 4月11日に行われたので行ってきました。
"〜" は関係性の象徴。様々な関係性を表したいとのことです。そういえばRで学習するとき、説明変数群Xと目的変数yの関係を "y~X" で定義しますね。
そして "ing" は進行形であることはもちろんですが、その他に "Thing" や "Being" などと繋がります。
内覧会前に会場に入ってまず驚くのが、床に敷き詰められた金属のパーツ。何も置かれていない、いわば通路のようなところもあるのですが、金属のパーツの上を歩いても良いそうです。
そして壁は凹凸の鏡面。写真をとるときに対象だけに焦点を当てて周辺はボケにするテクニックがあるのですが、テクニックがなくてもそんな感じになります。
この作品は «Thing~Being»。人が歩くことで音がなります。これは人が存在する (Being) の証明です。鏡面に映る自分、そして他の観客の姿も、そこに人がいる証明になります。
この金属は、ヤマハの楽器工場で出た廃材だそうです。音楽のメタファを壊す「リモデル」というシリーズの最新作になります。楽器でないものを使うことがフロンティアだと語ります。なるほど、元々は楽器でなかったものを楽器にしたスティールパンなどのような例もあることを思い出しました。
内覧会の間は人が多くてやっていませんでしたが、資生堂ギャラリーの人が、時々散らばった楽器部品を整えます。
«Ginza Vibration» は、この部屋の天井から床に映し出される映像と、天井に設置されたスピーカーからの音を組み合わせた作品。その映像と音は、すぐ近くの資生堂銀座ビルの屋上ガーデンに設置されているカメラとマイクから拾っていて、特に昼間は工事の音が拾われるとのこと。変わっていくもののメタファということです。
蓮沼氏は、楽譜も可視化だし、波形も可視化だと語ります。展覧会の入り口にある「ごあいさつ」には、その右に単語それぞれを波形で表現したものが示されていました。
そのそばにある作品 «We are Cardboard Boxes» (僕達は段ボール箱) は、重ねた段ボール箱から時折音がなるもの。蓮沼氏は、「ただ箱から音が出るだけ。真剣に見るような作品じゃない。僕なりのユーモア。」と語っていました。
入り口の階段の天井に投影されている作品は «Walking Score in Giza»。銀座の街で歩きながらマイクを転がして音を録ったもの。街でマイクを転がしている様は、パフォーマンスをしているとも言える。蓮沼氏によると、この原点はフィールドレコーディングで、「環境を観察する。聞くことは意識すること」とのことでした。
このように蓮沼の作品は、いずれも音を使ったものです。というよりも私は、蓮沼はミュージシャンだと認識していました。最初に蓮沼を知ったのは、ヨコハマトリエンナーレ2011のピーター・コフィンの «Music for Plants» で、植物のための音楽を奏でるイベント (shutahasunuma.comより) としてでした。残念ながらそれはテニスコーツの回にしか参加できなかったのですが、その後も蓮沼執太という名前は気になっていました。時々アート系のニュースなどで名前が出てくるので、ヒットチャートに出てくるような音楽家ではなく、アーティストとしての音楽なんだと理解していました。今回の展示会では、音楽以外の仕事を知ることができ、また本人とも直接話ができて良かったと思います。
展示会情報
蓮沼執太: 〜 ing
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/
会期:2018年4月6日(金)~6月3日(日)(毎週月曜日は休館)
会場:資生堂ギャラリー (東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
料金:無料