2008/11/20

日本語が亡びるとき

あたし彼女
ウソ
てか
な訳ないじゃん
みたいな

... すみません、ふつうに戻します。

話題のこの本読みました。

日本語が亡びるとき—英語の世紀の中で
水村 美苗


最初は下記で知った。

404 Blog Not Found 今世紀最重要の一冊 - 書評 - 日本語が亡びるとき
日本語で何かを成しているものにとって、本書をひも解くことは納税に匹敵する義務である、と。
その前に梅田望夫が紹介してたんだね。

My Life Between Silicon Valley and Japan 水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。

梅田望夫が読めと言っても、そうですか、としか思わないのだけれど、この本は私は読む必要があるだろうな。Amazonでもう売り切れたということなんだけど、まあ3〜5日のことだし待てるかと思って発注。でもいまは3〜5週間待ちになってた。

待ってる間にも、取り上げるブログが出ていた。

思索の海 (若手言語学者 dlitさん) 例の本(書評というか感想文)
事実についてはそれほどおかしなことが書かれているとは思いませんでしたが、その代わり「へ〜」と思えるような目新しいことも出てこなかったように思います。しかし、その事実から導き出される推論や意見がどうにも飛躍が多いように思えてなりませんでした(これが一番苦痛だった)。
ふむふむ。
ところでこれは世間的に「優れた評論」になるのでしょうか?僕にはどうしても「自分の言葉に対する思いを勢いで書き綴ったエッセイ」としか思えませんでした。
なるほど、そういう評価をする人がいるということは忘れないでおこう。

ARTIFACT@ハテナ系 『日本語が亡びるとき』を読まずに騒動だけ見た感想

読まずに、て。でも、
基本的に非教育分野の人が「教育で○○すべし」という教育論系の書籍はトンデモまじっていること多いんで、まず読まない。書籍だけではなく、そういう教育論をやたらとぶつ人は、大体ロクでもないんで、いいフィルタリングになってる。教育論って、別に専門知識なくても、誰でも何か言えちゃう分野だから、そういう人が混じりやすいんだろうけど。
これは分る。この理由ならエアレビューも許せます。

実際読んでみて、すごく複雑な思いだ。梅田望夫のように手放しで賞賛するものでもないし、かといって読む必要なし、読んで損したというのでもない。

文章的には、第1章、第2章の自分の経験を語っているところは、すんなりと入って行けるし、瑞々しく情景が浮かぶ。さすが小説家と思う。しかも、本論に続く伏線が的確に埋め込まれている。

このころにはdlitさんの評価をすっかり忘れていましたよ。

しかし、3章は読むのが苦痛だった。段落のレベルではまだ筋が通っているのだけれど、全体の論旨が頭の中で再構成できないのだ。同じことが何度も繰り返して出てくるし。4章以降は少しましになる。繰り返しも意識して構成している。また、フィールドが日本語になるので、物語の部分に瑞々しさが戻る。

そして4章以降には日本語に関する主張がだんだん含まれて行く。しかし、その主張は飛躍が大きく、納得させられるようなものではない。

あれ、dlitさんの感想と同じだ。

「自分の言葉に対する思いを勢いで書き綴ったエッセイ」というのもそう思う。「自分の言葉に対する思い」というより明治時代の「日本近代小説」に対する思いかな。そういう見方をすると、微笑ましく読める。なにしろ、評論ぽく論理を展開しているかと思ったら、その中で「そう。あの大好きな吉川英治。」とかでてくると思わずにやりとしてしまいますよ。それから、こんな記述も。
周知のように、十五世紀に西洋の大航海時代がはじまるまで地球の多くの部分は無文字文化であった。それが、朝鮮半島との近さが幸いして、日本列島は、四世紀という、太平洋に浮かぶほかの島々と比べれば僥倖としかいいようもない時期に漢文が伝来し、無文字文化から文字文化へと転じたのである。文字文化の仲間入りをしたのを記念した「文字の日」をつくり、ブラスバンドに演奏させぽんぽんと花火をあげて祝いたいような ーー あるいは、漢文明に感謝の意を表して、銅鑼を打ちパチパチと爆竹を鳴らして祝いたいような慶ばしいできごとである。ことに小説家にとってそうである。
なんてね。

そしてこういう人を手放しで賞賛する梅田望夫も微笑ましい。

先に「複雑な思い」と書いた。これは段落レベルの主張には納得させられるところも多いからだ。それらは、自分で「日本語はどうなるのか」、「どうあるべきなのか」、「そのために何をすべきか」を考える題材になる。

そして、「文学」とはなにか。「今の文学は文学じゃなく、明治時代の近代日本文学こそ日本の宝である」と考えるような人をなぜ作ってしまったのか (ただの「昔は良かった」年寄りというのではない理由がある)。いろいろ考えさせられる本であることは間違いないと思う。

それ以外にも、「日本の政治家が英語でちゃんと主張できないのは英語力の問題とは違う」とか、「読むことと書くことの違い」とか、考えることは多い。バラバラに書いてあるから、あるテーマに沿ってピックアップしながら再度読む必要があるだろう。

それからこの本に関して書いている人がたくさんいるので、それらも読まないといけないね。読まないといけないと言うより、それぞれ違った観点から書いてあってよむと面白そうだ。

追記:

毎日新聞 書評 今週の本棚:池澤夏樹・評 『日本語が亡びるとき…』=水村美苗・著 (魚拓)
-- この評自体は手放しでの賞賛でどうかとは思うが、確かに現在の日本の独立が保たれ日本語が国語として成立したのが僥倖であったという部分の記述は面白かった。

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