こんばんは。南方熊楠です (ウソ)。
PRESIDENT 2004.10.18号に、
年金伏魔殿に切り込む民間長官の六つの誓い
社保庁村瀬長官 「職員1万7500人に告ぐ!」というインタビュー記事があった。
その年の7月に損保ジャパン副社長から社会保険庁初の民間人トップになった村瀬氏。民間の血を入れることで、「病んだ役所体質」の抜本的解決が望まれていた。
インタビューは、冒頭から
-- 役所に入ると、いつの間にか役人に洗脳されてしまう。郵政公社の生田正治総裁 (商船三井出身) も今や組織維持の発想になってしまった。改革の志を貫くためには何が必要でしょう。と、手放しで期待する訳にはいかないというスタンスをあからさまにしている。
この質問に対して村瀬氏は、職員に対して「中からの改革」をしなければだめだと告げたこと、職員は危機感を持っていることを話し、「その危機感があれば変わるし、変えられる」と答えている。
この部分はいいだろう。意思があれば結果がついてくるとは思わないが、少なくとも意思があれば行動はついてくる。
では具体的に施策としてどのような手を打つのだろうか。
これまでの不正に関してはどうも歯切れが悪い。職員の福祉(ミュージカルや野球、マッサージ機購入)に年金を使っていたことに関しては、「反省すべき点は反省する」、一方で、「必要経費として考慮する必要があるものは、国民の皆様にオープンにした上で使える仕組みを作ってあげたい」と答えている。社保庁で使う書籍・雑誌の作成に監修料を受け取っていた件に関しても、「おかしいところは直していくべき」と述べるにとどまり、これまでの責任を問う姿勢は見せていない。
改革に関しては6項目あげており、その第一に「保険料の徴収」を上げている。
ではその具体的な施策に関してはどうなのか。「9月末までに全国の事務局47、事務所312ごとにアクションプログラムを作らせる。その数字を毎月追いかけたい」としている。すなわち、ここには具体的な対策は何もなく、号令をかけるだけということが分かる。
まさに、あざらしサラダさんが、「▼戦略なき目標設定が不正行為を生む」で、
村瀬長官が各地方事務局に対して出した通達に「言い訳無用」「結果を出せ」などの言葉が並んでいたことが報じられていたが、目標達成のための具体的な戦略については現場に丸投げの状態だった。と書かれていることは、その通りだったといえるだろう。あざらしサラダさんは、
あえて戦略をあげるとすれば「免除者対策」や「分母対策」といった、今回の不正行為のヒントとも取れる言葉が並んでおり、...と書かれているが、さすがにインタビューではそこまで答えていませんね。
このインタビュー記事を読んだ当時最も気になるやりとりは以下のようなものだった。
-- 民間では頑張った部門や人にはポストや報酬で報いる。これでは民間から長官を招いた意味がないのではないかと思った。
民間と違って、頑張った人に報奨金を出せる訳ではない。公務員制度の中では、極めて優秀な人でも大抜てきする仕組みはない。モチベーションをいかに高めるか、組織活性化は中期課題として考えたい。
公務員であっても、ポストが決まっている以上選抜は行われているはず。大抜てきをする必要はなく、通常の評価の中で何を評価するか決めて告げれば良い。ただ、言葉と行動が一致していなければ意味がなく、決めたらちゃんとそれに従って評価しなければならない (このことは以前「評価はメッセージ」の中でも書いた)。そうすれば1年後には、最初は方針を無視していた人たちの眼の色も変わるだろう。
そういう訳で、このインタビュー記事を読んだ当時、改革がうまくいくとは思えなかったのだ。もちろん、問題が出てきてから言っても仕方ないとというご批判はあるでしょうし、その点は甘んじて受けますが。
今日テレビで、警察の裏金作りの内部告発がなされていましたね。国民は、確かに金銭的な負担増は避けたいと思っているだろうが、それよりも負担したお金が公正に使われないことに不満を抱いていると思うのだ。