2021/07/18

三菱の至宝展

 7月8日、三菱一号館美術館で、「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」のブロガー内覧会に招待され参加してきました。

三菱創業150周年記念 三菱の至宝展 https://mimt.jp/kokuhou12/
会期:2021年6月30日(水)〜2021年9月12日(日)
会場:三菱一号館美術館 (東京都千代田区丸の内2-6-2)
時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30) 祝日を除く金曜、第2水曜は21:00まで開館
休館日:月曜日 ※但し、祝日の場合は開館
観覧料:一般 1,900円 / 高校・大学生 1,000円 / 小・中学生 無料

三菱財閥由来の静嘉堂と東洋文庫の所蔵品をメインに、三菱経済研究所などの所蔵作品を加えたものになります。静嘉堂からは美術品が、東洋文庫からは古典籍が出品されています。静嘉堂の美術品は、岩崎彌太郎の弟で三菱第二代社長の岩﨑彌之助と、その子で三菱第四代社長の岩﨑小彌太によって収集されたものというのは知っていたのですが (過去の投稿「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」)、創業者岩崎彌之助とその子で第三代社長岩崎久彌による古典籍のコレクション、学術貢献のことは今回初めて知りました。2組の親子で指向性が異なるのが興味深いです。

今回12点の国宝が出品されているというのが売りな訳ですが、やはり曜変天目茶碗が一番の目玉だと思います (写真は特別の許可を得て撮影しています)。

曜変天目は、藤田美術館と静嘉堂にそれぞれ所属されているもの、「なんでも鑑定団」で発見 (?) されたものの3つがあると言われていいます。藤田美術館のものは2015年にサントリ―美術館と、2019年に奈良国立博物館で見たのですが、静嘉堂のものは「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」を見ると「今回は出品されていません」とあって、見たことがあったような気がしていましたが、もしかして初めてかもしれません。

ブロガー内覧会だからとはいえ、誰も周囲にいない状況で鑑賞できるのは不思議な気持ちです。

この展示は最後の方にあるのですが、途中にある写真撮影コーナーでこんなアトラクションがありました。

フラッシュを焚いて写真をとると、曜変天目の模様が浮かび上がる仕掛けです。写真をとるまで左のパネルがかかっているだけなので、見逃しやすいと思います。私も最初「何これ?」と思い、説明を読んで初めて気づきました。

私はあまり古文書とかに興味はないので、静嘉堂の出品物の方にばかり目が行きます。下は俵屋宗達の≪源氏物語関屋澪標図屏風≫の澪標図 (前期のみの展示 / 後期は関屋図)。奥には橋本雅邦の≪龍虎図屏風≫が写っています。


そういう観点からいくと、以前見た「静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物」のほうが私に向いていたと思います。

そういえば静嘉堂文庫美術館は2022年に東京・丸の内に移転するのですね (静嘉堂文庫美術館の移転について)。所蔵物の保管は世田谷で行われるということで、展示するものだけが東京に行くようですが、どれだけの規模になるのか、曜変天目は常設展示になるのか、今から気になります。


2021/06/14

学び続ける姿勢 ~ 長尾真先生の訃報にふれ

元京都大学総長の長尾真先生が5月23日に逝去されました。ご冥福をお祈りします。

国立国会図書館の館長を勤められたり、文化勲章の受章など、長尾先生の業績に関しては、しっかりとまとめられるところがあると思いますので、ここでは個人的な思い出などを綴ろうと思います。

私が長尾研に配属になったのは昭和54年4月、4回生 (4年生のこと) になってからでした。正式名称は「有線通信研究室」だったと思いますが、当時は電気系学科の中で真正面からコンピューターを扱っていたのは、ここだけと言って良いと思います (別に情報工学科はありましたし、電気系学科の中でも研究の一環で取り組んでいるところはありました)。

長尾研は人気が高かったので、抽選になりましたが、私はなんとなく抽選に負けない予感がしていました。予感と言っても、落ちると宇治の原子力発電系研究室になってしまうことだけは避けたいという思いが、「負ける訳にはいかない」、「負けるはずがない」という根拠のない確信を生んだだけかもしれません。

長尾研では、おおきく画像処理と自然言語処理のテーマに分かれていましたが、私は大学受験においては英語も国語も得意だったので、自然言語処理の方を選びました。得意と書きましたが、潜在的に好きだったのだと思います。活用の種類があって、活用系があって、それぞれに後に繋がる語が決まってくるとか、文は主語と動詞と目的語、補語からなっていて、動詞も動名詞や不定詞や関係詞節で名詞の働きをすることができるので主語や目的語になりうる、というような言語を構造的に扱う、ルールベースの考え方がしっくりきていました。

その頃、長尾研を中心に言語学関連の若手の研究者が月に1度のペースで集まって発表を行う「対話研究会」という集まりがありました。田窪行則先生 (国立国語研究所所長)、山梨正明先生 (京都大学名誉教授) 等がいらして、当時はまだ学生だった三宮真智子先生も話をされました。他の分野の話は、当時はほとんど理解できていなかったと思いますが、それでも面白く、毎回楽しみにしていました。理解できていないながらも、ambiguityとvaguenessの違いとか山梨先生の比喩の話など、今の私の知識や興味範囲を形作るパーツになっています。当時は「学際」という言葉も知りませんでしたが、長尾先生はその重要性を早くから気づいておられ、それを実際に行う環境を用意されたのだと思います。

この会は私が卒業後も続いていて、形式は変わっていましたが、1988年にATR自動翻訳研究所に出向したときに参加したことがあります。

それから、情報工学科の西田豊明先生のところとも交流があり、モンタギュー文法の連続レクチャーに参加させてもらったりしました。

大学、大学院時代はこういう環境にあったのにもかかわらず、就職の段階においては自然言語処理を仕事で続けていこうとは考えていませんでした。ビジネスにおいて機械翻訳というアプリケーションはあったのですが、当時は精度が100%でないと結局人が全部見ないといけなのだから使えないという考え方に対して有効な反論がなく、先が見えない感じがしていたのです。

在学中に当時ゼロックスパロアルト研究所 (PARC) の研究者だった鈴木則久氏のお話を聞く機会があり、そこで話されたAltoとネットワーク環境にあこがれて、当時の富士ゼロックス (現富士フイルムビジネスイノベーション) を就職先として選びました。当時の富士ゼロックスでは、自然言語処理をやってないことは知っていましたが (後で考えるとかな漢字変換はあった)、それよりもこの新しい計算機環境に魅力を感じたのです。

入社後は希望通り、システム系の技術部門に配属になりました。自然言語処理は離れたつもりでしたが、そこで自然言語処理をテーマにしようという話が出てきました。

当時長尾研を中心に大手電機メーカー各社が参加するMuSystemという機械翻訳のプロジェクトがあり、富士ゼロックスも参加することになりました。またその後、NTTを中心に多くの企業から出向者を集め、ATR国際電気通信基礎技術研究所という研究所が設立されました。先に触れたATR自動翻訳電話研究所はその一つで、私は遅れて1988年から3年間出向しました。

1991年に出向から帰った後も自然言語処理の研究を続けることになり、推敲支援や要約などをテーマとしていました。その後研究で取り組んだ検索と要約を商品化することになり、開発部に移りました。検索と要約の商品化後はうまく次に繋げられず、私はいったん自然言語処理から離れることになります。

仕事上では自然言語処理から離れたものの、心は離れることができず、休みをとって自然言語処理関連の学会やシンポジウムに出たりしていました。特に長尾先生が招待講演をされる時にはできるだけ参加しました。

2008/07/23 音声・自然言語に関する研究開発プロジェクト MASTARプロジェクト キックオフシンポジウム (PDF) 基調講演「これからの言語処理の課題」

2010/02/24 第1回産業日本語研究会・シンポジウム 基調講演「産業日本語を育てよう」
-- 「産業日本語」は、機械翻訳の翻訳対象として翻訳に優しい制限言語。曖昧さが少ない書き方なので、日本語が十分習得できていない外国人にも適している。

2010/03/18 第9回京都大学学術情報メディアセンターシンポジウム 「カルチュラル・コンピューティング」基調講演「文化とコンピュータ」(動画)
-- ここでは書道に触れられている。先生はもともと字に関してはお世辞にもお上手とは言えなかったのだが、その後習字を学んでいると噂で伺った。下の写真の一番奥は先生の書の作品集。
-- この中で、「知」、「情」、「意」の関係にも触れられている。これまでの「知」の時代から21世紀は「情」の時代になるという位置づけ。この時は既に21世紀に入っているが、この話は1993年長尾研究室20周年記念の講演で既に述べられていた。
-- 知識が我々を豊かにする。Through knowledge, we prosper.
-- この時は京都吉兆の徳岡氏のお話が面白かった。料理と料理の間のお酒は口の中の味をリセットする。長尾先生はお酒を召し上がらないので、リセットのためにご飯を求められた。途中途中にご飯を食べるとそれでお腹がいっぱいになるので最後まで楽しんでいただけず、困った。

2011/02/05 知の構造化センター シンポジウム 基調講演
 講演アーカイブ
 Toggetter 知の構造化センター シンポジウム

2011/03/02 第2回産業日本語研究会・シンポジウム 基調講演「知識インフラと日本語」
-- 日本は情報に疎い。情報を分析するチームを各国持っているが、日本は弱い。「知識インフラ」はこういう問題意識から出ており、課題に対してこれまでの研究を知ることができるものを目指している。構造としては、知識データベースをつなぐもの (ゆるいつながり)。

2011/05/24 講演会「あらゆる知識へのユニバーサルアクセス」 @ 国立国会図書館
-- 長尾先生の講演ではなく、国立国会図書館と提携することになったインターネット・アーカイブのブリュースター・ケール氏の講演。→ 国立国会図書館月報 608(2011年11月)号

2011/11/23 情報処理学会自然言語処理研究会 招待公演「電子図書館と自然言語処理」
-- 午後に嵐山で喜寿お祝い会が行われる日の午前中に行われました。

「情報学は哲学の最前線」 (2019年) 京都大学学術情報リポジトリ紅 PDF

NTT-DATA - Data Insight 2018.9.6 事例&対談 長尾真(情報工学者)新井紀子(数学者)

2020/04/24 4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム (第5回)長尾 真 元京都大学総長「危機に直面して」動画  / テキスト(PDF)
-- 先生のお父様の話「長い人生には必ず二度三度か予想もしない厳しい状況に晒されるのだ。このときにどう振る舞うかがその人の価値を決めるのだ」を引用し、こういう時はものごとの本質についてよく考える貴重なチャンスである、古典を読んだり、音楽で心を豊かにしよう。

「危機に直面して」長尾 真 元京都大学総長

長くなってしまいました。表題の「学び続ける姿勢」についてまとめておきたいと思います。最後の「危機に直面して」でもわかりますが、どんな時にも学ぶことを重視されていると思います。先生が我々に見せてくれた姿は、情報科学以外では、書道であり、哲学であり、文化です。国立国会図書館の館長という職は、私は最初名誉職と思ったのですが、図書館のデジタル化に関して著作権法の改正に政治家を動かしたり、インターネット・アーカイブからWebのアーカイブを購入したり (ただで集めたものになんで金を払うんだという抵抗がきっとあったと思います)、常に社会をよくしていこうとする姿勢もなかなか真似ができないことと思います。

いや、確かに仕事の大きさや、影響力は真似はできないと思いますが、学び続ける姿勢、チャレンジする姿勢は、我々でも学べるのではないか。今後も折に触れ、先生のことを思い出すことだろうと思います。先生だったらこの場合どのように考えられるだろうか、どのような決断を下されるだろうか、そうやって思い出していくことで、亡くなった後も先生が我々を導いてくれるのだろうと思うのです。ここで「我々」と書きました。私だけでなく、多くの人たちがそんな思いを抱いていると思います。

2021/03/28

Constable

Cons table というとcons cell の拡張かな?と思うよね、フツー。いやいやここはConstableですから。

ジョン・コンスタブルは19世紀はじめに活躍した英国の風景画家です。ターナー (→ 過去の投稿「ターナーとサブライム」) と同時期の人なんですね。

三菱一号館美術館で開かれているコンスタブル展のブロガー内覧会に参加させてもらいました。

この頃風景画は「ピクチャレスク」(絵になる) 題材が好まれていましたが、コンスタブルは自分の生家がある農村地帯の絵を中心に描いています。題材が平凡なのと、風景画自体もは歴史画などより低くみられていたため、生計のために人物画も描いていました。

彼は、光を感じ、表現するため、屋外での絵画制作を重要視していました。油絵の制作、特に大型のものには道具が水彩に比べてかさ張りますが、父親の製粉工場に道具をおくことができたり、父親がアトリエを郊外に借りてくれていたり、その点では恵まれた環境だったと思います。のちには船で川を移動しながら描くこともやっていたそうです。

右は展示の様子。絵と共に絵を拡大した布がアクセントになっていて、単調な展示になるのが避けられています。写真は特別の許可を得て撮影しています。

同時代の作家の作品も併せて展示されています。下はターナーの作品群。

評価が高くなってくると、展覧会に出展して評判を得るための大型の作品を制作する一方、購入しやすく一般の家庭でも飾りやすい小型の作品 (「キャビネ・サイズ」) も描いていたというのは、微笑ましいお話ですね。結婚して子供もできて、養う必要が出てきたので、人物画もコンスタントに描いていたということです。右は《ジェイムズ・アンドリュー卿》と《ジェイムズ・アンドリュー夫人》。

またピクチャレスクな題材も制作するようになりました。ブライトンはリゾート地で以前は俗っぽいと避けていましたが、《チェーン桟橋、ブライトン》(写真右) で取り上げた時には、以前からそこに住んでいて仕事をしている漁民も併せて描いています。その点は他の作家と一線を画すところだと思います。

1932年のロイヤル・アカデミー展で、コンスタブルの《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホール階段からの眺め、1817年6月18日)》(右) は、ターナーの《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》(左) と並べて展示されました。その頃展示会直前に「ヴァーニシング・デイ」という最後の手直しをする期間が設けられていたのですが、ターナーは、コンスタブルの作品に比べて地味だった自作の右下の方に赤いブイを描き加えました。コンスタブルの「ターナーはここへやってきて、銃をぶっ放していったよ」というコンスタブルの発言が勝者の余裕を感じます。

以下展覧会の情報です。

テート美術館所蔵 コンスタブル展
https://mimt.jp/constable/

場所: 三菱一号館美術館〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
会期: 2021年2月20日(土)~5月30日(日)
開館時間: 10:00〜18:00 (金曜日の夜間開館は3月中は中止中)
休館日:月曜日 (※但し、祝日・振替休日の場合、会期最終週と2月22日、3月29日、4月26日は開館)
⼊館料・当日券: 一般1,900円、高校・大学生 1,000円、小・中学生 無料

2021/03/26

モンドリアン展

Composition with Red, Blue and Yellow
(WikiArtより)
モンドリアンというと右のような絵を思い出すよね。私もブログで「柴崎コウがモンドリアン柄の服を着ている」と書いたように、そんなイメージしか持っていませんでした。

2021年3月23日からSOMPO美術館で、「モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」が始まります。そこではモンドリアンの別の姿を見ることができます。前日に行われたプレス内覧会にブロガー枠で参加させてもらいました。

モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて (LINK)
場所: SOMPO美術館
会期: 2021.03.23(火)- 06.06(日)
開館時間: 10:00 - 18:00
休館日: 月曜日※/展示替期間/年末年始
※ ただし5月3日は開館
入場料:
オンラインチケット当日窓口チケット
一般1,500円1,700円
大学生1,100円1,300円
小中高校生無料無料
障がい者手帳をお持ちの方無料無料

SOMPO美術館は以前はビルの高層階にあったのですが、昨年5月、その隣に新しく独立した美術館として建てられました。私は新しくなって初めて行きました。

前はオフィスビルのフロアを改修しましたーという感じのレイアウトだったのですが、新しい美術館は美術館らしく一つの広い部屋を自在に区切れるようになっているようです。ただ面積が小さいので、5階から3階まで3つのフロアを使った展示になっています。

2階はショップになっていて、これは以前より明るくて広く、休憩もできるスペースになっています。売っているものもバラエティが増えています。今回私はモンドリアン柄のエコバッグと箸置きに惹かれました。結局買いませんでしたが ...。

さて展覧会のほうに戻ります。モンドリアンも最初の頃は風景画などを描いています。風景画の中にも、後に続く構成的な要素が見られ、セザンヌっぽい作品もありました。キュビズムの要素を取り入れ、「新造形主義」理論を立ち上げます。点描の作品もありますが、粒が大きく、スーラなどの筆触分割とは異なり複数の異なった色を組み合わせて一つの色を感じさせるというものではありません (会場内の写真は特別の許可を得て撮影しています)。

このように、多くの人の影響も受けつつ自分の世界を作っているわけですが、影響を与えた人の一人にヤン・トーロップがありました。ヤン・トーロップといえば私も図録をもっていました。改めてみかえしてみると、1988年に大阪のナビオ美術館で開かれた展覧会で買ったもののようです。図録の中身をみると点描に類似点が見られます。ヤン・トーロップの「象徴主義」に傾倒したとのことですが、私にはそこまで深いところは理解できていません。


壁が青く採色されている作品群があって、一体何でくくっているのかと思いましたが、その右の壁がピンクになっていて、展示場自体もコンポジションを表しているのがわかりました。

モンドリアンは1917年、モンドリアンはデオ・ファン・ドゥースブルフらと「デ・ステイル」を結成し、絵画以外にも影響を与えます。それらのアーティストの作品も展示されています。多くは絵画ですが、その中にヘリット・トーマス・リートフェルトのアームチェアシリーズがあります。左は「ベルリン・チェア」。モンドリアンの影響がよくわかると思います。

展示の最後に、これもヘリット・トーマス・リートフェルトのシュレーダー邸の映像があります (houzz.jp に記事があります)。天井から吊るされた引き戸で部屋が分割されるようになっており、平面を直線で区切る、まさにモンドリアンの世界です。オランダのユトレヒトにあり、予約すれば見学可能ということですので、一度行ってみたいです。

SOMPO美術館では毎回入場前のスペースに写真を撮影できるコーナーがありましたが、今回は展示の最後に撮影スペースがあります。シュレーダー邸をバックにヘリット・トーマス・リートフェルトのジグザグ・チェアに座って撮影ができます。隣にはモンドリアン柄のワンピースが飾ってありますが、これは頼めば着れるのかな (たぶんできません)。


Courrier.jp にモンドリアンに関する記事がありました。

2021/03/21

SDGsをLEGOで表現

 先日、「SDGs・ESG×レゴ®ワークショップで、これからのビジネス思考をつかむ!」というワークショップがあり、その基礎編第二部に参加しました。

最初にSDGsの説明があり、その中で「エコロジカルフットプリント」という話がありました。エコロジカルフットプリントは、現在の地球上の人間の生活を支えるために必要な面積。2019年は地球1.7個分だった。2020年はパンデミックのせいで経済活動が停滞したため少し改善したが、地球1.6個分にあたり、持続可能というのは程遠い状況にあります。なお、WWFの資料2019年版 (PDF) を見ると、もし世界中が日本人と同じ生活をすると地球2.8個分が必要だそうです (アメリカ人では5.0個)。
* SDGsの説明:外務省 JAPAN SDGs Action Platform

このワークショップでは学んだことをレゴで表現します。

まずは自己紹介でウォーミングアップ。「今の気分」、「Myヲタク要素」、「私の仕事」をレゴで表現します。最初の2つはブロック1個だけ、最後の「私の仕事」は複数使って組み立てても良いというルールです。私は、

  • 今の気分 = 緑のブロック → リラックス
  • Myヲタク要素 = 花のブロック → アート (美術鑑賞)
  • 私の仕事 = コンピューターに向かっている人 → IT関係
としました。

次のワークは、自分の価値観を伝える。「お金」、「友人」、「名誉」をそれぞれ青、赤、緑のブロックで表し、紙の上に配置してそれらの優先順位を伝えます。「伝える」前に、普段はそういうことを考えていないので、自分の価値観を見直すことから始める必要なあると感じました。私の場合、お金は大事だと思っていますが、今は生活に困らない状況なので、低いというより基礎として下におき、その上に友人と名誉を並べておきました。名声は必要ないけれど、友人を失っても守るべき矜恃があると思って、友人と名誉は横並びです。

次のレクチャータイムでは日本のSDGs達成状況について、参加者に問いかけがありました。日本で達成できていない5つのゴールは何か? 多くの人は「目標5 ジェンダー平等」は正しく挙げられていましたが、それ以外は少し正解率が落ちるようでした。その他は、「目標13 気候変動」、「目標14 海の豊かさ」、「目標14 陸の豊かさ」、そして「目標17 パートナーシップ」です。ODAの実績は、総額では世界4位ですが、国民一人当たりにすると18位なんですね (参考:外務省 ODA実績 (令和2年3月27日))。総額も2000年くらいまでは1位だったのですが (参考:外務省 日本のODAについて)。

今日のメインのワークは、現状をレゴで表現するもの。言葉で表現すると抽象化されたきれいごとの表現になってしまって、その後の対話が進まないそうです。作品制作後それぞれが説明するのですが、その時にグループのそれ以外の人から質問を受けます。答える時のルールとして「なんとなく」とかはダメで、必ず理由を答えなければいけません。その時にまた自分がなぜそれを選んだのか考えることになるのです。

私が作成したのは、ゴミの山の中でゴミを拾って生活している少年。


学校にも行けず、ゴミの中から金になるものを見つけて生活費にします。何が捨てられているかわからないので、怪我の危険性もあります。SDGsでいうと、「目標1 貧困をなくそう」、「目標3 健康と福祉」、「目標4 教育」につながります。

この中の旗は希望です。この環境の中でも、ここは自分の場所だという主張です。そしてここから出ていくことを夢見ている、という想定です。花も希望かと問われたのですが、その解釈もいいのですが、どんなに美しいものもゴミ捨て場に捨てられたらゴミになってしまうということを表すために入れました。

最後のレクチャーはビジネスとの関係です。これまで社会貢献は企業の余裕を示す程度の扱いでした。余裕がなくなると真っ先に切られる。しかし、持続可能な社会でないと企業も持続できません。持続可能性に投資することは企業の存続にも意味があるのです。また、持続可能性を重視する消費者が増えれば、ESGを重視する企業の製品・サービスを選ぶでしょう。

投資会社BackRockのCEO ラリー・フィンクがLarry Fink Letterの中で、持続可能性を重視する企業へ投資する方針をあきらかにしました。先日YAMAPのブランドリニューアルのお話を聞きましたが、単なるロゴのリニューアルではなく、企業のビジョンから変えるという話の中で、このラリー・フィンク・レターのことが言及されていました。

2021/02/28

トラNsれーショNs展 (トランスレーションズ展)

21_21 DESIGN SIGHTで、「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」が開催されています。自然言語処理関係者だったら開幕即行くぐらいの勢いでないといけないのですが、昨日、要約、いや、漸く行ってきました。

企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
http://www.2121designsight.jp/program/translations/

会期:2020年10月16日(金) - 2021年6月13日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
休館日:火曜日(11月3日、2月23日、5月4日は開館)、年末年始(12月26日 - 1月3日)
開館時間:11:00 - 17:30(入場は17:00まで)
入館料:一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料

最初に企画説明があります。この展覧会では、「翻訳」を「理解して、相手がわかる言葉にする」というプロセスだと捉えています。人間が見たものの説明をしたり、自分が考えていることを表明したりする場合も、見たもの/考えていることを取捨選択し、表現する適切な言葉を選ぶところから始めなくてはいけません。そこでの選択ミスは「誤訳」ということになります。聞いたことを人に伝える時にも、録音機のように聞いたことをそのまま伝えることはできないので、要約したり別の言葉で言い換えたりすることが発生するので、同じ言語でも誤訳が生じます。

言語間でなく、この展覧会は様々な非言語の変換を題材にしています。「オンテナ」は音を振動と光に変換し聴覚障害者が音を感じるのを助けます。「見えないスポーツ図鑑」は競技中のアスリートの感覚を感じることを目指しています。さらには「Human × Shark」の研究の先には匂いを媒介としたサメとのコミュニケーションができる未来があるかもしれません。

各展示には持ち帰れる説明シートがあります。片面は日本語、片面は英語です。

展示の中には体験型のものも多くあります。最初の グーグル・クリエイティブ・ラボの「ファウンド・イン・トランスレーション」もその一つ。展示スペースの中央にマイクがあって、画面に表示される質問に答えると、分析の様子がグラフィック表示され、各国語に表示されます。

私は「昨日見た夢はなんですか」という質問に対して、「このコロナ禍の中、みんなを連れて旅行に行ってきました」と言ったつもりでしたが、「この頃、中野中みんなを連れて ... (このころなかのなかみんなをつれて)」と聞き取られ、「中野の全ての人を連れて ...」みたいに翻訳されているのがご愛嬌。

後ろのパネルには転移学習の説明があります。

一つの言語から学べることは、
あらゆる言語に適用できる。
 

これまで見たことのない言語であっても、ある言語の知識があればコンピューターは別の異なる言語を理解できることを研究者たちは発見しました。この発見により、ほとんど知られていない言語や遠隔地の言語、さらには絶滅の危機に瀕している言語でも翻訳が可能になります。

ってざっくり説明しすぎだろ。 

エラ・フランシス・サンダース「翻訳できない世界の言葉」は、文字どおり翻訳が難しい語を集めたもの。絵本として出版されているものからの抜粋なんですね。日本語からは "TSUNDOKU" (積ん読) などが採録されています。

ティム・ローマスの「ポジティブ辞書編集」も同様に翻訳不可能な言葉を集めたものです。これは感情を表す言葉なので余計に翻訳が難しそうです。一方で感情は人類に共通する部分も多そうですから、ある言語のある感情を表す言葉が国際共通語として広まる可能性もあると思います。

和田夏実+筧康明の「…のイメージ」はジェスチャーを画像に変換します。具体的にはふんわり包み込むような動きをすると、正面スクリーンに雲が生まれ浮いて流れていきます。また、手を上下に揺らすと雨が落ちてきます。

永田康祐の「Translation Zone」の翻訳対象は言語ですらなく、日本で揃う食材を使って外国の料理を作るもの。レヴィ=ストロースの料理の三角形 (全ての料理は、「焼く」、「煮る」、「薫製」の3頂点の三角形の辺のどこんかに位置付けられるという説。その後「油:揚げる」が加わって四面体になる) に従えば、全ての国の料理が再現できることになる。ただし手に入れられない材料があるので、そこは「誤訳」が生じることになる。
[検索したら、日本調理科学会誌の記事がありました。]

東南アジアのチャーハン的な料理と焼うどん的な料理を作っていましたが、美味しくできたようです。もととは違うものではあるのでしょうけど、もととどう違うかはわかりませんよね。でもこれは言語の翻訳でも同じようなものです。

自国の材料で他国の文化を再現するということで、以前日本語ラップを「文化翻訳」という視点で考えた「ラップの文化翻訳」を思い出しました。

オンラインでトークイベントも何回も行われていたんですね。もっと早く気づくべきでした。

2021/01/30

2020年に行った展覧会とアートイベント

2020年はたいへんな年でした。おかげであまり展覧会やアートイベントにいけていませんし、この投稿も遅くなってしまいました。

  • 2020/01/11
    • 開かれた可能性——ノンリニアな未来の想像と創造 @ NTTインターカルチャーセンター (LINK)
    • アーティスト・トーク《ガムラン・オブ・飲むニケーション》から見える過去・現在・未来——かわっていくおなじもの @ NTTインターカルチャーセンター (LINK)
  • 2020/01/14
    • 動きの中の思索―カール・ゲルストナー @ ギンザ・グラフィック・ギャラリー (LINK)
  • 2020/01/21
    • Digital × 北斎【序章】@ NTTインターカルチャーセンター (LINK)
    • 「開かれた可能性——ノンリニアな未来の想像と創造」上映プログラム [アニミスティック・アパラタス(精霊信仰装置)——Cosmos] @ NTTインターカルチャーセンター (LINK)
    • 特別上映 ダムタイプ《memorandum》@ NTTインターカルチャーセンター (LINK)
  • 2020/01/24
    • 感情を伝える形と音 - thatgamecompanyがゲームというメディアに夢見る世界 @ D-Lounge (LINK)
  • 2020/02/01
    • 第31回東京国際映画祭・国際交流基金アジアセンター特別賞受賞 『武術の孤児』上映&ホアン・ホアン監督トーク @  アテネ・フランセ文化センター (LINK)
      → ブログ  武術の孤児 
  • 2020/02/04
    • 近松素子「あとかた」@ Oギャラリー
    • 込宮空芯菜展 @ Oギャラリー
    • 「無形にふれる」展 @ ポーラ ミュージアム アネックス(LINK)
    • ヤコポ バボーニ スキリンジ 「Bodyscore-the soul signature」 @ シャネル・ネクサス・ホール (LINK)
    • 「“all the women. in me. are tired.“ -すべての、女性は、誰もが、みな、疲れている、そう、思う。―」展 @ THE CLUB (LINK)
    • 岡田杏里個展「El yo y el Yo」@ 蔦屋書店 GINZA ATRIUM (LINK)
    • 河口洋一郎 生命のインテリジェンス THE INTELLIGENCE OF LIFE | ギンザ・グラフィック・ギャラリー (LINK)
    • 記憶の珍味 諏訪綾子展 @ 資生堂ギャラリー (LINK)
    • 世界のクリエイティブがやってきた ! 2019」展 @ アドミュージアム東京 (LINK)
  • 2020/02/15
    • ミナ ペルホネン/皆川明 つづく @ 東京都現代美術館 (LINK)
    • ダムタイプ|アクション+リフレクション @ 東京都現代美術館 (LINK)
    • DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに @ 国立新美術館 (LINK)
    • ダムタイプ|ラウンドテーブルトーク @ 東京都現代美術館 (LINK)
    • MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ@ 東京都現代美術館
    • COMING OF AGE @ エスパス ルイ・ヴィトン東京
  • 2020/02/19 
    • FACE展2020  @ 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (LINK)
  • 2020/02/20
    • 『未来の学校祭 2020』脱皮パフォーマンス|DAPPI MUSIC PERFORMANCE @ 東京ミッドタウン・ホール (LINK)
  • 2020/02/21 
    • 『未来の学校祭 2020』脱皮トーク|Media Art in Tokyo:メディアアートはTOKYOをどう脱皮させられるか? @ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター (LINK)
  • 2020/02/22
    • 第4回メディアアート国際シンポジウム「メディア文化のオープンネス――協働,ネットワーキング,文化交流に向けて」@ オンライン (LINK)
  • 2020/02/23 
    • 大竹英洋写真展「ノースウッズ-生命を与える大地-」@ フジフイルム スクエア(LINK
    • 高橋康資写真展「東京ジャンクション」@ フジフイルム スクエア (LINK)
    • TOKYO MIDTOWN × ARS ELECTRONICA『未来の学校祭 2020』“脱皮ツアー” @ 東京ミッドタウン
    • 『未来の学校祭 2020』脱皮トーク|Out of the Box 2:イノベーションのための脱皮 @ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター(LINK)
    • 矢後直規展「婆娑羅」トークイベント ゲスト:菅付雅信 @ ラフォーレミュージアム原宿 (LINK)
    • 『未来の学校祭 2020』脱皮トーク|STARTS – Innovation at the Nexus of Science, Technology, and the ARTS:アートシンキングが触発する脱皮 @ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター (LINK)
  • 2020/02/26 
この後中止になったイベントが増えた。
  • 2020/03/06 MAMプロジェクト027:タラ・マダニ アーティストトーク
  • 2020/03/07 矢後直規展「婆娑羅」トークイベント ゲスト:太田莉菜(モデル・女優)
そしてオンラインのイベントがほとんどになってくる。
  • 2020/05/11
    • 2020年度グッドデザイン賞 審査の視点セミナー [プロダクト分野]
久しぶりにリアルのイベントはヨコハマトリエンナーレ。
  • 2020/07/17 
  • 2020/07/19
  • 2020/07/26
    • ヨコハマトリエンナーレ2020 参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」オンライン・ディスカッション (LINK)
  • 2020/08/09
  • 2020/08/15
    • 『GOOD DESIGN FILE 愛されつづけるデザインの秘密』発刊記念・著者 高橋 克典氏が語る「ロングライフデザインの秘密」@ オンライン
  • 2020/08/24 
    • STARS展 @ 森美術館 (LINK) → ブログ STARS展
    • ㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画 @ 21_21 Design Sight (LINK)
    • 東京ミッドタウン・デザイン部 ONLINE「日本のグラフィックデザイン2020」ギャラリーツアー @ オンライン
  • 2020/09/02
    • 社会課題を解決するデザインを考える ~「ソーシャルデザイン」思考〈村田智明氏による DESIGN THINKING 連続セミナー③〉@ オンライン
  • 2020/09/08
    • オラファー・エリアソン ときに川は橋となる @ 東京都現代美術館 (LINK)
    • 鴻池朋子 ちゅうがえり @ アーティゾン美術館 (LINK)
    • Takahiro Matsuo 「INTENSITY」@ ポーラミュージアム・アネックス (LINK)
    • ACC2019展 - 真っ赤なクリエイティビティ- @ アドミュージアム東京
    • 和巧絶佳展 @ パナソニック汐留美術館 (LINK)
  • 2020/09/09
    • 日産アートアワード2020 @ ニッサン パビリオン (LINK)
  • 2020/09/25
    • ヨコハマトリエンナーレ2020 エピソード07 サウンド・リーズン @ 横浜美術館 (LINK)
  • 2020/10/08 
    • ヨコハマトリエンナーレ2020 エピソード08 田村友一郎《舎密/The Story of C》@ 横浜美術館 (LINK)
  • 2020/10/11
    • ヨコハマトリエンナーレ2020 参加型アクション「エピソード06 岩井優《彗星たち》」カンバセーション @ オンライン
  • 2020/11/01「GOOD DESIGN SHOW 2020」3DAYS スペシャルオンライントークライブ @ オンライン (LINK)
    • フォーカスイシュー・セッション「5つのテーマで読み解く、社会課題にデザインができること」
    • アジアの最新デザイン事情 〜タイ・シンガポール・トルコ・インドネシアより〜
    • ロングライフデザイン展 見どころ紹介
    • 山水郷チャンネル GOOD DESIGN SHOW 2020 Ver.
    • LOCAL! 地域のデザインを展望する
  • 2020/11/18
    • 「ベゾアール(結石)」シャルロット・デュマ展 アーティストによるトークセッション @ オンライン (LINK)
オンラインのイベントはデザイン系もいろいろ参加しましたが、ビジネスよりのものが多く、ここにはあまりあげていません。

個人的によかった展覧会 (ヨコハマトリエンナーレ以外で)
  • ミナ ペルホネン/皆川明 つづく: アパレル分野は興味の範囲外でしたが、意外と楽しめました。特に実際に着た人のエピソードと合わせての展示が良かった。
  • オラファー・エリアソン: レアンドロ・エルリッヒみたいにみんなで行けば良かったな。
  • 鴻池朋子: 会場内に山を模した構造物が作られ、上から俯瞰できるようになっている展示も良かった。

2021/01/11

出COVID記

年末から年始にかけ、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に罹患、入院していました。罹患から退院までの経緯を報告します。

2020/12/24

  • 朝体温を測ったら37.2°C。会社からは37.5°C以上の場合出勤を見合わせる指示が出ていて、その基準を満たしてはいなかったものの、急遽在宅勤務に切り替えました。結果的に1週間前の木曜日までしか会社には出社していないことになり、濃厚接触者を発生させずにすみました。
  • 夕方の体温は38.4℃。明日は病院に行こうと考えました。
2020/12/25
  • 朝の体温は37.2°C。会社は休みます。
  • 病院に行こうかと思って体温を測ったら36℃台で、もしかしたらただの風邪の可能性もあるため病院へ行くのはもう1日待ってみることにしました。
  • 夕方の体温は37.9℃。明日は病院に行く。
2020/12/26
  • 朝の体温は37.0°C。病院 (医院) に連絡する時点ではやはり平熱だったけれど、2日前からの状況を話して、発熱外来を受けることにしました。
  • いつもは徒歩で行ける医院ですが、自動車で来ないとみてもらえません。医院の中には入れないため、駐車場から連絡して、事務の人に出てもらって受付。
  • 先生が防護服で出てきてPCR検査の検体 (唾液) 採取。2日で結果は出るとのこと。
  • 夕方の体温は38.2℃。
  • 毎日新聞2020年12月25日 小川淳也議員のコロナ感染体験 「これで軽症なのか」入院11日間
    • "病院は宿舎から1キロほどの距離でした。39度の熱がある中で、ヘトヘトになって歩いて行きました。" 後に出てくる羽田議員も含め、皆さんPCR検査がなかなか受けられない状況にある。
2020/12/27
  • 朝の体温は37.9°C。
  • PCR検査の結果が来ました。陽性。医院から保健所に連絡が行き、保健所から電話連絡が来ます。
  • 保健所からのヒアリング内容ですが、この一週間の症状 (熱、喉の痛み、咳、鼻水)、立ち寄ったところ、LINEを使っているか、ホテルで自分で洗濯ができるか、自宅療養の場合ケータリングが必要かなど、詳細にわたります。立ち寄ったところは通勤とジムで、ジムではマスクをつけて運動して、運動のたびに器具を消毒するのでここも感染源とは考えにくいです。
  • 「神奈川県療養サポート」というLINEアカウントに登録し、ここから毎日2回体温や酸素飽和濃度 (パルスオキシオメーターが送られてくる予定)、各種症状を登録することになります。
  • その後連絡があり、入院、ホテル、自宅待機のうち、自宅待機になりました。「自宅・宿泊療養のしおり」のURL をもらい自分で印刷したものを見ながら説明を受けます。
  • しおりには番号は載っていませんが「コロナ119番」という緊急電話番号があり、それを口頭で伝えられます。この連絡先にはLINEのメニューから電話をかけることができます。
  • でも電話はなかなか通じません。スカイプからその電話番号にかけたら比較的はやくとってもらえました。
  • 細は濃厚接触者になりPCR検査を受けてきましたが、まだ感染していない可能性があります。できるだけ感染を防ぐため、二人の動線を分けます。ベッドとトイレを分け、食事も同じ部屋ではありますが別のテーブルでいただきます。
  • 夕方の体温は37.0℃。夜になると38.4℃まで上がりました。

2020/12/28
  • 朝の体温は38.3°C。
  • 夕方の体温は39.6°C。ここまで体温が上がることは今までなかったので、以前何かでもらったロキソニンを使いました。これは効果があり、汗を大量にかいて体温は35℃台までさがりました。
  • パルスオキシオメーターはまだ届かず、コロナ119番へ連絡。
  • 昨日会社へは陽性であったことを報告していましたが、会社からは保健所からヒアリングされた内容をすべて報告するように指示がありました。あわせて感染しそうなところへの行動(旅行や会食)があったのかなかったのか報告が必要です。後者は「ない」で良いのですが、前者の報告は熱がある中で結構時間がかかり、つらい思いをしました。
  • 立憲民主党 2020年12月28日 福山幹事長、羽田雄一郎参院議員の逝去について記者会見
    • PCR検査が直ぐに行われないことが問題。自民党ならスケジュールを捻じ込むことができただろう。国会議員は所属に関わらず特別枠があって良い。
2020/12/29
  • 朝の体温は38.0°C。
  • 夕方の体温は38.3°C。その後39.5°C。再度ロキソニンを使う。
  • 高熱が続くので、コロナ119番に連絡して不安を訴えたら、「今ウイルスと戦っている証拠です」と言われて納得してしまいました。ここで納得していなかったらもう少し軽く済んだかもしれません。
2020/12/30
  • 朝の体温は38.6°C。
  • 夕方の体温は38.9°C。
  • パルスオキシオメーターはまだ届きません。忘れているのではないかと伝えてようやく夕方持ってきてきてくれました。測定したところ酸素飽和濃度93%。今日の2回目の報告は行っていたが、再度登録。これでようやく症状の深刻さが伝わったようです。

2020/12/31
  • 朝の体温は39.6°C。またロキソニンを飲んだところ35.2℃にまでなりました。
  • 酸素飽和濃度は「深呼吸して測り直してください」と言われて測り直したところ95%。一応良さそうに見えるが、入院に切り替えるという話になった。
  • 入院先の調整ができて、海老名総合病院に入院することになりました。
  • 民間委託の救急車 (ワゴン車で運転席と後部座席はポリエチレンシートでシールドが作ってある) で搬送。羽田議員の件もあるので、途中容体が急変しないかとか非常に不安でした。
  • 入院したら個室に入り、酸素吸入開始。解熱剤としてカロナールが処方されたのですが、これはほとんど効きません。
  • 血栓予防の注射が朝晩行われます。
  • ステロイド剤 (副腎皮質ホルモン) がこれから毎朝投与されます。ステロイドは喘息の特効薬でもあり、肺機能回復に効果があるのではないかと期待しています。
  • 夕食はあまり食べられませんでした。
  • 持ってきた荷物はスマートフォンや歯ブラシなど必要なものを除いてすべてビニール袋に入れて保管されます。汚染物扱いです。通常使っている薬も同様の扱いで、同じ薬が入院先の病院から処方されます。
  • 治療は公費負担ですが、パジャマ、フェースタオル、バスタオルなどのレンタルがありこれは1日500円。毎日替えることができます。下着は使い捨てで1回当たり150円。
  • 細にはスカイプでテキストメッセージを送っているのですが、この日は熱が下がっていなくて、自分で書いていて支離滅裂な内容になっていました。途中で「すみません自分でもまとまった話ができません」と送ったのですが、後から見ても何を言いたかったのか分からなくなっています。
  • 部屋にエアコンのスイッチがなく、一晩寒い思いをしました。次の日にようやくエアコンのリモコンが入手できました。
  • NHK 2020/12/31 東京都 新型コロナ 過去最多の1337人の感染確認 初の1000人超
    • これクリスマス頃の感染だとすると、年末年始の影響は仕事始めの頃から広く影響が出てくる。
    2021/01/01
    • 今朝の体温は36.3℃。平熱まで下がりました。昨日の晩は39.0℃あって結構苦しかったです。シーツが汗びっしょりで最後のウイルスとの戦いだったんだと思います。早く退院できるのではと思います。
    • 細のPCR検査は一旦陰性だったものの、微熱と頭痛が続くため再検査。時間指定で伊勢原まで行ってきたのに、駐車場で1時間以上待たされたそうです。72時間連絡がなかったら陰性とのこと。陽性なら連絡ありだそうです。
    • 病院の食事は冷凍食品のセットが納入されています。朝400キロカロリー、昼は牛乳137キロカロリーを含め620キロカロリー前後、夜は500キロカロリー前後です。あまりおいしくはないし、お味噌汁も冷めていますが、しっかり食べて体力回復に努めたいと思います。


    • 後で看護師さんに聞いたら、通常は食事の支度は看護師はしないそうです。新型コロナ感染症隔離病棟を少人数で回すため、看護師さんの仕事も増えます。
    2021/01/02
    • 6:30で38.4℃。解熱剤を飲みました。
    • 午前中は汗が引くまで待っていたのですが、午後着替えて睡眠をとっていました。ずいぶん楽になりました。
    • 会社からは、富士フイルムグループ社員なので、アビガンを使ってもらうよう交渉してはどうかという提案がありました。しかしこの野戦病院のようなところでそんなVIP待遇が可能なのか分かりません。また、承認は見送りになったはずです。会社にはその旨伝えました。後日この提案は撤回になりました。
    2021/01/03
    • 今朝の体温は37.7℃。今日は氷枕を使っています。
    • 採血。
    • 午後はシャワーを浴びました。一旦呼吸酸素吸入を外してそのシャワーが終わった後もう一度酸素吸入を始めます。この間酸素吸入がないのでしばらくSpO2値が低下していますから、その回復を待ちます。
    2021/01/04
    • CTスキャナーと胸部 X線写真。
    • CTスキャナーで肺炎が広がっていることがわかりました。治療自体はこれまでと変わらず、酸素吸入とステロイド剤です。
    • アビガン使用の依頼は撤回にはなったのですが、医者に「アビガンはどうなんでしょうか」と聞いてみました。「明確に否定されちゃったからね」と一蹴。それにウイルスの拡大を抑えるもので、既に広がった状態では効果はないそうです。
    • 細の再検査はやはり陰性。
    2021/01/05
    • 酸素吸入量を3リットルから2リットルに落としました。
    • 午後シャワー。今日は酸素ボンベをもって入りました。
    2021/01/06
    • 酸素吸入量を2リットルから1リットルに落としました。その後ゼロになりました。
    • ただ寝てると数値が悪くなるのでちょっと早すぎたかも。起きているときは意識して呼吸しているのに対して、無意識で呼吸出来るようにならないといけないのです。
    2021/01/07
    • 個室から相部屋に移りました。ここには酸素吸入の装置はありません。六人部屋に四人入れる運用のようです。
    • 症状が軽くなったら、酸素吸入の装置のある部屋は新しい人に回して、さっさと交代ということだと思います。
    • 換気扇のそばのベッドで換気扇から入る風が寒いしうるさい。どうにかしてくれと言ったのですがどうにもならないようで、自分で換気扇の風を遮る対処をしました。
    • 午後はシャワー。当然ながら酸素吸入はありません。
    2021/01/08
    • 大学の授業がまだ残ったまま入院になったので、病院で資料を作成します。Wi-FiはないのでiPhoneテザリングです。さすがに授業を録画することはできないので、資料のみアップロードします。来週の授業なんですが、もう既に見て出席をつけている生徒もいます。
    • NHK 2021年1月8日 東京都 コロナ検査陽性でも入院先など決まらない人が急増
      • 基本的にホテルと自宅待機で病床数を確保する政策だったはずだが、それ以上に陽性患者を抑える施策ができていないことに尽きる
    • NHK 01月08日 保健所ひっ迫で接触者調査を縮小 (神奈川県)
      • 政策の変更というより事実上不可能になったということだな。抑える施策に政府が消極的だったから仕方ない。
    2021/01/09
    • 今日の回診で明日10日の退院が決まりました。
    • 午後はシャワー。
    2021/01/10
    • 退院。病院のロビーは通らず、裏口みたいなところから出ていきます。
    • 海老名駅まで10分くらい歩くのですが、体力の衰えを感じます。
    • 電車の中で、40代くらいのオジサンが、向かいの席で会話していた男女の近くまで言って文句を言ってた。本人はマスクが鼻にかかってなくてよっぽど怖いよ。殺伐としてる。
    • 帰ってお昼はラーメンにしてもらいました。温かい食事が身に染みる。
    • 夕食はお造りとお節料理風盛り合わせ (黒豆、なます、かまぼこ、大根、角煮、スナップエンドウなど)。少し日本酒も飲んで幸せを感じます。
    • 細の待機も今日で終わりです。
    終わりに

    2020/08/30

    日本を取り戻す、国民の手に

     「日本を取り戻す」というスローガンは、「民主党から取り戻す」という意味で捉えられている人も多いと思うが、この7年8ヶ月のことを見るともっと大きな意味があったのだと思う。

    それは、「戦後民主主義で国民の手に渡った主権を、取り戻す」ということであろう。

    それは安倍政権のスローガンというよりも、日本会議などの旧来の価値観をもつ人々の悲願であったと思う。その最たるものが憲法改正で、自衛隊の明文化だけでなく、天賦人権論の否定など、国家を縛るのではなく国民を縛るものにするというのが基本的な考え方であろう。

    憲法自体は安倍首相の任期中には変えられなかったが、現憲法の軽視は進んだ。安法法制での解釈改憲や、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」という憲法53常に基づく臨時国会の召集要求を無視してきた (衆議院 憲法第五十三条に基づく臨時国会召集に関する質問主意書)。

    また、法律も無視し続けてきた。モリカケ、桜の会はそのプロセス中の法律違反だけでなく、それを正当化するために、文書改ざん、文書破棄も行われてきたし、東京高検黒川検事長の定年延長において法律の曲解が行われたのも記憶に新しい。

    この意味で、「最悪の内閣」と言えるだろう。

    そして、「最低の内閣」でもあった。国会でのヤジや、ウソ、誤りを認めず謝罪しない姿勢、はぐらかし答弁など、国会の品位を落とし続けてきた。安倍首相がやっていいんだったら他の議員もそれにならう。「ご飯論法」はその最たるものだろう。与野党の質問時間割合を変更し、大幅に与党よりにしたことで、質問よりも「首領様を讃える言葉」みたいな内容のものが多くなり、国民の声は届かない。

    このように、この「最長最悪最低」首相のもとで憲法改正は達成できなかったものの、「日本を取り戻す (国民から)」は着実に進んだ。

    次の自民党総裁が誰になるかわからないが、この状況を反転させ、「日本を取り戻す、国民の手に」ということを進めて欲しい。まずは福田元首相が導入した公文書管理の仕組みを再整備して欲しい。骨抜きができないように。

    追記

    毎日新聞に「ご飯論法」が閣僚まで広がっている指摘があった。

    毎日新聞 2020/08/30 安倍政権の「大きな罪」 野党が批判する「ご飯論法」、閣僚まで広がる

    今の時点でいるのではなく、マスコミは毎回適時「またはぐらかし」「これで何回目」と見出しにあげる必要があったと思う。

    2020/08/29

    「祝・安倍首相辞任」という心境になれない

    前日、それから当日の朝まで続投の観測が流れていたので、安倍首相の辞任表明は正直なところ驚いた。

    毎日新聞 2020/8/28 14:19 安倍首相、辞任の意向固める
    毎日新聞 2020/8/28 17:18 安倍首相が辞意表明「職を辞することとした」潰瘍性大腸炎が再発

    病気という理由は非難すべきことではないし、潰瘍性大腸炎というのは難病ということは理解できるが、このために批判がしにくい状況にある。私も病気自体を批判するつもりはないが、安倍首相のこれまでの政治姿勢を批判する上において、「病人を病気を理由に批判している」と読まれてしまうことには覚悟が必要と考えている。

    本当の理由は前回と同様に政治的環境に耐えられなくなったのだと思われる。与党が国会で過半数を占める状況下での政権運営が長く続き、野党がどれだけ批判しても思う法案を通すことができ、不祥事に対する批判も自身は矢面に立たず、担当官僚に対応させてきた。国会答弁だけでなく、公文書破棄、改ざんなども自分では直接手を下さずにすませてきた。国会を解散し選挙で勝てばそれらの問題は解決したことになってしまう。今回新型コロナウイルス対応はそういう手法が使えず、これまでにない局面だったと思われる。

    本来はもっと早くやめることもできたのだと思うが、やはり最長連続在任記録更新を達成したかったのではないか。その間できるだけ矢面に立たないようにということを第一に考えていたのだろう。臨時国会開会を拒否し、記者会見も行わないようにしていた理由はわかる。一方で「連続勤務」と、甘利氏など周辺の人々を使って仕事のしすぎというアピールを行ってきたが、これも今回の辞任の布石だろう。

    安倍首相は、不祥事だけでなく、憲法や法律を無視/軽視する姿勢、ウソ、国会での野次など品性の低さなど、日本の国を代表するポジションに立つ人物としてふさわしくない人物だった。そういう意味では、後任の人は安倍氏よりもましな可能性は高く、今回の辞任は日本の国にとってはプラスになるといえる。しかし、本来は国民の手で審判を下せる場面は多くあったが、今やその機会はなくなってしまったと言える。今後「志半ばにして病に倒れた」という悲劇のヒーロー的な物語が語られ、批判が不十分なまま終わってしまうことを危惧する。

    昔、柔道の斉藤仁選手は打倒山下泰裕選手を目指してきたが最後まで勝てず、その山下選手が引退して初めてトップに立つことができた。そのときの斉藤仁選手の無念さはいかばかりかと思う。私は今そんな心境だ。とても「祝・安倍首相辞任」という心境になれない。

    追記: 「なぜ我々は安倍政権を選び続けてきたのか」を説明する記事がありました。

    現代ビジネス 2020/08/29 安倍総理、辞任。日本の政治を「空洞化」させた政権の7年半

     (5ページ) 安倍政権を支えたのは、スローガンと現状維持だった。そして、有権者は、スローガンを叫びながら、実際には何も変えない内閣を選んだ。

    それは、危機のときに日本がたびたびとってきた手法だ。実際の数字には目をそむけ、ドラスティックな改革を避けることで、多くの支持者は安心した。つまりは、「ゆるやかな衰退」を我々は選んだのだ。変わることを「混乱」ととらえ、変わらないことを「安定」ととらえた我々有権者は、安倍政権を「安定した政権」と評価した。

    2020/08/27

    STARS展

    森美術館で行われている STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ に行ってきました。

    ヨコハマトリエンナーレ2020と同様、ここも日時指定の鑑賞券が必要です。私は年間パスを持っているので、月曜日のお昼ごろは枠がたくさん空いていることだけ確認して、当日枠で入れるだろうという予測のもとに予約をせずに行きました。

    年間パスを持っているといっても、6月に切れているので、今回の新型コロナウイルス対策で閉館していた期間の延長をしてもらいます。閉館は3か月程度だったと思いますが、5か月延長してもらえます。11月まで有効期限が伸びましたが、このSTARS展は来年1月まであるので、次の展示会も行ける、という訳ではありません。

    今回 Stars という訳で、現代日本美術を代表する6名のアーティストのグループ展になっています。

    • 草間彌生
    • 李禹煥
    • 宮島達男
    • 村上 隆
    • 奈良美智
    • 杉本博司
    草間彌生、村上隆、奈良美智はポピュラーですが、李禹煥、宮島達男、杉本博司はちょっと渋い選択と言えるかもしれません。「日本から世界へ」というサブタイトルがつけられていることと、作品展示だけでなく「アーカイブ展示」として、 「アーティストの活動歴」と、「海外で開催された日本の現代美術展『50展』」のコーナーがあるように、海外での発信という意味が重視されているのだと思われます。

    村上隆

    村上隆《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》

    この《Ko²ちゃん(プロジェクトKo²)》から始まって、ポップアップフラワーなどいつもの村上ワールドな訳ですが、阿吽像は初めて見ました。
     
    村上隆《阿像》 村上隆《吽像》

    新作で出ていた《原発を見にいくよ》は、2011年原発事故をテーマにしながら、ほんわかとした雰囲気に仕上がった作品です。男女二人 (猫型の被り物をしている) が、電車とレンタカーで原発事故後の福島に行くのですが、「SFの世界滅亡後みたいに美しい」というような歌詞 (すみません正確ではないです) でも美しいメロディーの歌が背景に流れます。今どこまで立ち入り禁止が解除されているのか分からないのですが、「立入禁止」と書かれた朽ち気味の看板があるところも通るし、放射性物質汚染水をためた大きな黒い袋がいくつも並ぶ風景も映し出されます。

    最初は大騒ぎしたけれど、我々は今はもう意識していない。でも何も終わっていない。除染作業で戻れる土地は増えてきたけれど、日々汚染水は溜まっていくし、自分の自宅に戻れていない人もいる。そういう意味で続いているのだ。この作品はそれを思い出させてくれる。

    この作品に関しては、みぽりんさんのnote 「Star展と東日本大震災@森美術館」にもっと詳しい説明、感想が書かれています。

    李禹煥

    李禹煥はこれまでグループ展の中で何回か見ていました。特に2016年に横浜美術館で行われた村上隆のスーパーフラット・コレクションに出ていた作品が印象に残っています。「もの派」ということで、作品には製作マニュアルがあって、展示会ごとに再構成される形をとります。

    白い小石が敷き詰められたように見える床が印象的です。これも含めて製作マニュアルに入っているのか、それとも今回特別なのかはわかりませんでした。

    李禹煥《関係項—不協和音》

    直島に行った時に李禹煥美術館に行く時間が取れなかったのが残念。

    草間彌生

    草間彌生のセクションは、彼女の長いキャリアと作品の幅広さからグループ展は難しいと思うのですが、それでもなるべくバラエティーを出そうとする意図が感じられました。その意味ではよく考えられた選択だと思いますが、やっぱり大規模個展でないと物足りない気がします。

    草間彌生《ピンクボート》《無題 (金色の椅子のオブジェ)》《トラヴェリン・ライフ》

    宮島達男

    宮島達男は、7セグLEDカウンターを使った作品で有名で、2011年東日本大震災以降は震災がその中心テーマになっています。

    宮島達男《「時の海—東北」プロジェクト(2020東京)》

    写真でぼやけている光は1桁の7セグLEDカウンターで、それぞれ異なったサイクルで数字が変わります。市民参加型の作品で、参加者「コラボレーション・アーティスト」がそれぞれ更新時間間隔を決めます。この参加者は現在も継続して募集しています。→ 「時の海-東北」プロジェクトのサイト

    奈良美智

    奈良美智のコーナーに入ると、奈良美智ワールドが展開します。

    奈良美智《玉葱王子》など

    次の部屋にあるのは、《Voyage of the Moon (Resting Moon)》。小さなデフォルメされた家の中は、原美術館にある奈良美智の部屋みたいな感じです。製作協力として graf の名前があげられていますが、そういれば横浜トリエンナーレ2005の出展作品もgrafの名前が入っていました。


    杉本博司

    杉本博司は、《シロクマ》など写真作品もありますが、何と言っても大画面の映像作品《時間の庭のひとりごと》が圧巻です。小田原にできた「江の浦測候所」を中心に据え、日本の歴史に思いを馳せます。江の浦測候所は気にはなっているのですが、まだ行けていません。今は完全予約制ということで、ちょっと心理的なハードルが高くなっています。

    追記: 杉本博司は平成29年 (2017年) に文化功労者に選出された時のコメントの中でこう述べている (美術手帖 2017/10/24)。
    文化功労者として、これからも国威発揚を文化を通じて行っていく所存でございます

    私はこのコメントを読んで「幻の東京オリンピック前夜のようだ」と感じました。

    MAMプロジェクト028:シオン

    同時開催のMAMプロジェクト028:シオンもインパクトがあります。古着の波が襲ってくる感じ。裏に回ると十字架が刺さっています。古着は大量消費社会のメタファーだということですが、宗教的なテーストを加えることで、普段気が付かず参加している大量消費という行為の背徳性に気付かせてくれるものだと思います。
     


    なお、ここにあげた写真は全て「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスの下で許諾されています。

    2020/08/11

    ヨコハマトリエンナーレ2020 エピソード06 彗星たち 清掃アクション

     8月9日、前の投稿「ヨコハマトリエンナーレ2020 エピソード06 彗星たち」で予告していた清掃アクションに参加してきました。

    アーティストの岩井優さんと一緒に、製作した仮面をつけて、横浜美術館の3階、2階からの吹き抜けの周囲を一周清掃して回ります。

    最初に清掃の方法に関して簡単なレクチャーを受けます。使うのはクイックルワイパーみたいなモップ。掃くようにするのではなく、モップを床につけたまま回転させて方向を変えていくことがポイント。

    二人が清掃する間、写真を撮るなどのため、サポートスタッフの皆さんが同行します。作品として写真を残すことも重要なのに、私はついついお掃除のほうに意識が行っちゃって、あまりいい写真は撮れなかったんじゃないかなと後で反省しました。気が付いたら岩井さんが先に進んでいて慌てて追いつくという場面が何度もありました。

    申し込み時には忘れていたのですが、8月9日は長崎に原爆が落とされた日。清掃アクションは10:30から30分と思っていたのですが、レクチャーの時間が10分用意してあってその後30分間で11時2分にかかってしまいます。いつもは仕事中でもこっそり黙祷をしていて、今回も複数名参加するイベントだろうから隅で気づかれずにできるだろうと思っていたら、私一人が参加するだったので、予めお断りをいれました。そうしたら岩井さんも「私もやります」ということで、皆で実施することになりました。祈念式典以外で人前で黙祷したことはなかったので、私としても貴重な体験になりました。

    実は、個人での清掃アクションは行ったのですが、記録写真が横指定だったのにも関わらず縦で撮っちゃって、撮り直しが必要なんですよね。

    7月26日に第一回参加者のオンラインディスカッションがあったのですが、皆さん様々なところで清掃アクションを実施されていることが分かりました。そうすると自宅前でお茶を濁すのは難しそう。

    追記 (2020/10/11): 

    動画があげられていました。今日岩井さんと参加者のオンラインミーティングで初めて知りました。

    Action 0809

    2020/07/19

    ヨコハマトリエンナーレ2020 エピソード06 彗星たち

    新しく発見された彗星「ネオワイズ彗星」が見ごろだそうですね。

    毎日新聞2020年7月18日 5000年に1度 奇跡の尾

    今日7月19日は、ヨコハマトリエンナーレ2020の市民参加作品 岩井優《彗星たち》の「オンライン・マスク制作」に参加しました。マスクをかぶって清掃するというパフォーマンスを行うのですが、そのためのマスク製作です。このパフォーマンスはマスクなしで作業を行ってはいけない除染作業のメタファーとなっています。清掃に使うのは箒、ほうき星からタイトルの「彗星」に繋がっています。

    マスクのベースとなるのは表面に黒鉛 (グラファイト) が塗布された紙袋。最初の原発は黒鉛を使っていたということで、これも原発のメタファーになっています。このベースに商品パッケージなどを材料に飾り付け、自分なりのマスクにカスタマイズしていきます。

    私の作品は右。あまりパッケージがなかったので、マスキングテープやビニールテープを使いました。放射状に配置したので、放射性物質のメタファーになっているでしょ。また星も使っていて、彗星に繋がっていると言えると思います。

    Zoomで説明を聞いた後、黙々と作業する、そのあとは今後のアクションのお話や質疑応答です。この後のアクションとして、
    • このマスクをつけて清掃作業を行うところを写真にとり、皆さんの写真を集めます。
    • 今日から1週間後、またオンラインで集まって感想を交換します。
    • 8月9日、横浜美術館で清掃アクションを行います。
    なお、これは今回で終わりでなく、会期中3セット行われます。まだ参加者募集中ですので、興味を持たれた方は上記リンクからどうぞ。

    2020/07/18

    ヨコハマトリエンナーレ2020

    初日の7月17日に行ってきました。

    新型コロナウイルス感染症の非常事態宣言は一旦解除されたものの収束はまだ見えないという状況の中、密集を避けるためにチケットは予約制となっています。10日前頃に購入を思い立って、どうせならば10:00開館と同時に入りたいと思ってチェックしたら、まだ枠が空いていましたのですぐに購入しました。30分単位の枠で40人から50人程度のようですね。

    当日は10:00開館直後に横浜美術館に到着したらこんな感じ。全体が薄いネットに覆われているようで、感染症対策に隔離されたイメージを感じさせます。それともヨコトリの後は横浜美術館リニューアルを行うためその準備か?

    たぶんそんなことはなくて、今回のタイトル "Afterglow" に関係したものになっているのだと思います。

    追記: イヴァナ・フランケの ≪予期せぬ共鳴≫ という作品でした。

    10人くらい並んでいましたが、すぐに前に進みました。ソーシャルディスタンスに配慮したマーカーがついていて、一コマずつ進みます。スクリーンの前に立つと自動で検温結果がでて、アルコール消毒して中に入れます。

    最初はニック・ケイブ «回転する森»がお出迎え。これくらい派手な作品が最初にあると期待が高まります。


    キラキラしますよ。


    今回のタイトルは "Afterglow" ということですが、これまでのような説明は少なく、自分で考えることが求められています。

    しかし、以下のキーワードが提示されています。
    • 「独学」   自らたくましく学ぶ。
    • 「発光」   学んで得た光を遠くまで投げかける。
    • 「友情」   光の中で友情を育む。
    • 「ケア」   互いを慈しむ。
    • 「毒」    世界に否応なく存在する毒と共存する。
    渡されたパンフレットの中には、作品の一部にはこれらの関係が書いてあるものがあります。作品選考に当たっては、キュレーターの皆さんはこのキーワードから真面目に考えたんでしょうね。作品の中には「発光」する生物を使ったものがいくつかありますが、ちょっと真面目過ぎるだろ、と思います。

    結局この日は終了間際の 17:45 までいました。中身は次から少しずつ書いていきます。

    2020/06/07

    "Black Lives Matter" の訳が「黒人の命は大事だ」に違和感

    全米で "Black Lives Matter" の声が沸き上がっている。

    HuffPost 2020/5/31『#BlackLivesMatter』企業も黒人差別に抗議、力強いメッセージ続く Netflix「私たちには声を上げる義務がある」
    毎日新聞 2020/6/6 巨大な黄色文字で「BLACK LIVES MATTER」通り ホワイトハウス前に

    この "Black Lives Matter" の日本語訳は「黒人の命は大事だ」とされていることが多いようだ。

    しかし、そうすると「黒人以外の命は大事ではないのか」とか「本来 "All Lives Matter"であるべきだろう」という声が上がって来る。

    これは "matter" の日本語訳を「大事だ」としていることに起因していると思う。

    新英和中辞典 "matter"
    動詞 自動詞[しばしば否定・疑問文で] 問題となる,重要である 《★【用法】 進行形・命令文にはならない》.
    What does it matter? それがどうしたと言うのだ(かまうものか).
    It doesn't matter a bit if we are late. 遅くなっても少しもかまわない.
    Nothing mattered to him. 彼には何がどうなってもかまわなかった.
    というように、確かに「重要である」はあるのだが、否定形で使われることが多いということ考えると、否定形 "don't matter" (どうでもいい) の否定「どうでもいいなんてことはない」と訳すべきものだと思う。

    この "matter" の使い方は、マイケル・ジャクソンの "Beat It" で覚えた。
    It doesn't matter who's wrong or right.
    誰が正しくて誰が間違っていようと関係ないさ
    (対訳:内田久美子 (ライナーノーツより))
    "don't matter" (どうでもいい) の否定とみることにより、これまでは "Black lives don't matter" という状態だったということを認識できると思う。そして "All Lives" に対して否定している訳ではないということを理解いただけると思う。

    参考: 以下では"Black Lives Matter" の訳を「黒人の命も大切」としている。本来の意味を伝えるには、この「も」ということがポイントだろう。
    Harpers Bazaar 2020/06/03 なぜAll Lives Matter(すべての命が大切)」と言うのをやめる必要があるのか

    2020/04/05

    パンデミックと人権 (3) 様々な差別

    この新型コロナウイルス肺炎 (COVID-19) の蔓延に伴い、様々な差別が浮き彫りになっている。

    人種差別・民族差別

    新型コロナウイルスが最初に問題になったのが中国で、このため中国人、さらには欧米人には区別がつきにくい日本人も差別にあっている。

     一般論は怖い。「中国人は」「大阪人は」「名古屋人は」、あるいは「白人は」「女は」「おっさんは」と属性でひとくくりにするのは、そう語る人自身の過去の残念な体験や、意地の悪さを映し出すだけなのに簡単には改まらない。特にこの新型コロナウイルス禍では、一般論好きの人たちがにわかに元気になり、差別と呼ぶのも恥ずかしいような無知、偏見をさらし始める。
    自分の「外」と「内」を分け、「外」を排除するのは、 自分を守るための防衛本能から来ているところがあるだろう。しかしそれを起因する属性以外に広げることと、その「外」に対して攻撃を加えることが差別になる。ここで「起因する属性」というのは「新型コロナウイルスに感染しているか否か」であって、アジア人か否かは無関係だ。また、感染する人から距離を置けばいい話であって、攻撃する必要はない。

    しかしそういう差別意識は、人はだれしも持っているものだろう。なくすのが難しければ自制して表に出さないのが、これまで人権重視が人間の共通の価値観であることを学んできた教養によるものだろう。しかしその自制は非常事態では忘れられていく。

    その差別意識は簡単に利用される。トランプ大統領が『中国ウイルス』と呼んでいるは自分たちの無策を隠すため、日本でも麻生太郎副総理が「武漢ウイルス」と呼んだが、ボスカーさんは「これも無知だけではないだろう」と言っている (無知はもう前提としてある訳だ)。ちなみに、COVID-19 という病名は、発生した土地の名前をつけるとずっと偏見が残るからあえて土地の名前を付けないようにしたということだ。それでもトランプ大統領や麻生氏のように意図的に無視する人間が出てくる。

    ここで「差別や憎悪はメディアやネットを通じて広がるので時にウイルス以上に“感染力”が強い。たちが悪いのは自分が『感染』していると思っていない点だ」という作家ショーン・ボスカーさんの言葉を皆が意識することが重要だ。

    米国最高裁は「差別」と「区別」に明快な線引きを行っている。

    米国最高裁は対象事件での「仕分けの性質」を問うことにした。具体的には「黒人ならこれはダメとか、女性ならあれはダメ」など、自分ではどうすることもできない、生まれ持ったステータスをもってして、特定の権利を受ける人・受けられない人を「仕分けていないか」を問うのである。
    これは各個人が自問自答できる基準であるだろう。

    左記記事より
    そして日赤の訴えも参考になる。

    「ウイルスは心の中にも感染する。特効薬やワクチンはないので自分で連鎖を断ち切るしかない。」
    他の記事:

    差別的な言葉は間違いなく人を傷つける。人を絶望に陥れる破壊力がある。
    感染者・医療従事者への差別

    感染者、感染者と接触した人、医療関係者への差別も続いている。

     医師と看護師の感染が確認された兵庫県小野市の北播磨総合医療センターでは、感染者と接触していない職員や患者、家族らから「ばい菌扱いされた」「勤務先から出勤停止と言われた」などの訴えが相次いだ。ライブハウスでクラスター(感染者の集団)が発生した大阪市では、別の店舗の経営者から「感染リスクが高い『危ない場所』との風評被害が出ている」との声が上がる。
    差別であるだけでなく、「このままでは、感染者が立ち寄り先などに迷惑が掛かると感じ、保健所の行動歴聞き取りに正確な情報を話しにくくなる恐れがある」ということだ。


    日本赤十字社が公表する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」の中で
    「未知のウイルスは私たちを不安に駆り立て、ウイルスを連想させるものへの嫌悪・差別・偏見を生み出し、人と人との間の連帯感や信頼感を破壊します。私たちの誰もが、これら3つの感染症の影響を受けていますが、最前線で対応する職員はその影響を最も強く受けることになります。COVID-19対応においては、感染対策(第1の感染症対策)はもちろんのこと、第2、第3の感染症が職員に与える影響を考慮に入れながらCOVID-19対応者へのサポート体制を構築していくことが極めて重要となります」
    と記載しているそうだ。

    医療関係者による患者差別

    医療関係者による患者差別もあるという。


    差別の対象は精神科にかかっている感染者だ。精神科特有の難しさがあるかららしい。彼らをコントロールするのが (まだ) 長けている精神科医と感染病専門医で協力することで対応が可能でないかと思う。

    2020/04/01

    パンデミックと人権 (2) 感染者のプライバシー

    だんだん感染経路が把握できない感染者が増えている ...

    クラスターになればライブハウス、病院、大学名が特定される。一方、クラスターにならなければ名前が出ないので、どういうところを避ければいいのか判断がつかない。

    クラスターを特定するのにこだわるからではなかろうか。感染経路が分からなければ可能性あるところを全部挙げればいいじゃん、と思う。

    それぞれの感染者の名前をマスクして、自宅近辺を除き通ったところ立ち寄ったところを全部集めて重ねる。多くの人が通ったところはそれに応じて濃くなる。それによって危険な地域をあぶりだす。夜のお店はお店の協力が得られないというのであれば街の名前だけ出す。

    これなら感染者個人のプライバシーも守られ、お店の立場も守られるのではないか。その店のある街にとっては迷惑かもしれないが、個々の店で感染対策をしっかりしてそれをアピールすればよい。

    ということを考えていたら、こんな記事があった。

    Courrier 2020.3.28 ユヴァル・ノア・ハラリ「非常事態が“日常”になったとき、人類は何を失うのか」
    うっかりしていると、今回のコロナ危機が、「監視の歴史」における重大な分岐点になるかもしれないのだ。大量監視ツールの標準展開が、それまで展開を拒否していた国で続々と実施されるかもしれない。「皮膚より上」から、「皮膚の下」の監視へと劇的な移行が起きているだけに、その懸念は強くなる。 
    プライバシーか、健康か。両者の二者択一を迫られれば、たいていの人が健康を取るだろう。
    このあと両方をとるべきという方向性が示されるのだが、そのまま押し切られる恐れが大きいと思われる。

    このことに関してはこのパンデミックが終息してからが本当の試練だろう。心しておきたい。

    追記:

    対応が評価されている韓国だが、過剰な対応が批判されている。
    東京新聞 2020.04.02 コロナ対策で浮かび上がる「監視社会」韓国 個人情報をここまでさらしてよいのか

    NHKでも取り上げられるようになった。
    NHKニュース 2020.04.17 ビジネス特集 新型コロナで迫られる“選択” さよならプライバシー




    2020/03/31

    パンデミックと人権 (1) 行動の制限

    だんだん感染経路が把握できない感染者が増えている ...

    自分が感染しているかどうかわからない人から感染が広がっているということだろう。

    そうするとPCR検査を積極的に行って、陽性の人を隔離する必要があると考えるが、そうすると医療崩壊が起こると言われている。幸い発症しても軽くで済む人が多いようなので、陽性の人を病院に入れるのではなく自宅隔離か特別の施設で隔離するようにすれば良いのではないかと考える。今はそうできないということみたいなので、必要なら時限立法等必要かもしれない。

    自宅隔離がうまくいかないという話もある。

    ブルームバーグ 2020/03/02 自宅隔離は感染広げる、武漢の轍を踏まぬよう-中国がイタリアに警告
    研究者らによると、自宅隔離では家族への感染防止を徹底しないばかりか、自由に外出を続けて外で第三者にうつすことも多い。イタリア紙コリエレ・デラ・セラが30日報じたところによると、同国当局が28日に外出禁止の取り締まりを強化したところ、違反者のうち約50人が自宅隔離を指示された感染者だった。
    やはり特別の施設が必要なのか。
    武漢では2月初めにオフィスやスタジアム、体育館を転用した仮設病院に症状の軽い患者を全て隔離し始めてから、感染拡大が劇的に鈍化した。
    現在イベントが中止になっているのでスタジアム、体育館の転用は比較的容易なのではないか。 利用料を国費で出せば損失の一部の充当にもなる。イベント主催者にも何らかの形で行くようにできればいいが、そこまでは出せないかもしれない。

    症状が出ていなくて、検査を希望している人もたくさんいるらしい。希望者にも検査をばんばん行って、安心して隔離施設に行ってもらえば良いのではないか。

    検査は100%正確ではなく、陰性の人も偽陰性の可能性がある。このため、陰性の人も自宅隔離にするという条件を飲んでもらう。数日開けて再度検査し再度陰性ならば自宅隔離をといても良いだろう。

    ただ、隔離は行動の制限であり、自由権の侵害という側面はどうしても出てくると思う。陽性の人を隔離するのはこれまで行われてきている訳で、議論の上で結論が出ているのだと思われる。ここで私が陰性の人も行動の制限をすべきだと言っているのはその範囲外だろう。このため「希望して条件を飲んだ人」に限定した。

    しかし都市封鎖という事態になれば、外出自粛ではなく諸外国のように外出禁止という措置が取られるかも知れない。これは健康な人も含めての話だ。今回人権先進国の西欧諸国で次々と外出禁止などの施策がとられているのは正直びっくりした。どういう根拠に基づきそういう命令が出せるのであろうか。そして日本でも同様なことができるのだろうか。

    日本経済新聞 2020/03/30 緊急事態宣言発令なら知事に権限 自粛要請、強制力なし 官房長官「ぎりぎり持ちこたえ」 から引用:


    緊急事態宣言が出されても「外出自粛」のままで、強制力はないという。強制力のあるものは財産権の侵害にとどまっている。人権の面では抑制されたものになっているのだが、パンデミックを抑えるのに諸外国のような強権的なことができなくて大丈夫かという懸念も出てくる。

    人命と人権ではどちらが大事か問われればそれは人命なのだが、それによって人権がどこまで制限されて良いのかというのは考えていく必要があるだろう。

    追記: 東京都が軽症者の隔離のためホテルを借り上げるようにするという。

    都は軽症・無症状の患者は、病院外で療養させられるよう感染症法の運用見直しについて国と最終調整しており、受け入れ先と想定するホテルと交渉も始めた。
    これをみると、時限立法は必要なく、感染症法の運用見直しですみそうだ。

    そして厚労省も動いた。

    厚生労働省は3日、新型コロナウイルスの感染の拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者について、自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知したと発表した。

    2020/03/03

    画家が見たこども展

    3月15日から三菱一号館美術館で始まった「画家が見たこども展」、現在は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため臨時休館になっているのですが、その直前の2月26日にブロガー内覧会が行われ、参加してきました。ギリギリのタイミングでしたね。

    ブロガー内覧会自体も感染予防のため、高橋明也館長 (左) とTakさん (右) によるギャラリートークは取りやめということになっていたのですが、館長の挨拶だけは行うことになり、最初の部屋モーリス・ブーテ・ド・モンジェル《ブレのベルナールとロジェ》の前でお話がありました。

    挨拶だけではなく、この展覧会の位置づけなどもお話いただきました。

    三菱一号館美術館では、これまでもナビ派の展覧会を行ってきて、ナビ派をプッシュしてきたと言っても良いでしょう。19世紀頃から聖母子像など以外も子どもは題材として扱われるようになりましたが、特に日常の生活、家族を扱うナビ派では、子どもは重要な対象になります。そこで、ナビ派を中心として子ども

    そして今回は南フランス ル・カネにあるボナール美術館の協力を得て、ボナール作品が多く集まっています。三菱一号館美術館所有もヴァロットンも多く出展されていました。

    ただちょっと可愛い子どもの絵を期待している人にとっては物足りないかもしれません。以前森アーツセンターで行われた「こども展 名画にみるこどもと画家の絆」(→ ブログ記事「こども展」) では、「難しいことを考えず、かわいいと楽しんでもらえば良い」ということだったので、その点に主催者側のこだわりの差が出ているものと思います。

    その中から、可愛い子どもの絵を選ぶと、左のドニ《サクランボを持つノエルの肖像》 があります。ドニはポスターに使われている《赤いエプロンドレスを着た子ども》も可愛いです。

    ほとんどが絵画作品でしたが、彫刻作品もあります。左はジョルジュ・ラコンプの《シルヴィの胸像》、右の絵画作品は同じくラコンプの《立つシルヴィの肖像》です。

    最後の部屋にはボナールの晩年の作品がありました。ナビ派がそれぞれの道を歩む中ボナールは風景画を中心に描くようになっていたのですが、最後にまた子どもという題材に回帰したということです。

    美術館は密集した場所でとどまる訳でもないし、手で触るものもないので、ウイルス感染のリスクは少ないと思うので、休館するというのは過剰反応のように思います。山場の期間を過ぎた3月中旬以降は美術館あたりから徐々に活動を活発化させた方が良いのではないでしょうか。

    なお、写真は特別の許可を得て撮影しています。

    開催概要
    画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン
    https://mimt.jp/kodomo/
    場所:三菱一号館美術館 (東京都千代田区丸の内2-6-2 (Google Map))
    会期: 2020年2月15日(土)~ 6月7日(日)
    開館時間: 10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
        (祝日を除く金曜、第2水曜、4月6日と会期最終週平日は21:00まで)
    休館日: 月曜休館
        (但し、祝日・振替休日の場合、開館記念日4月6日、
         会期最終週6月1日と、トークフリーデーの3月30日、
         4月27日、5月25日は開館)
        ただし、2月28日から3月16日の期間臨時休館