2019/12/29

横浜トリエンナーレ「サポーター・イニシアティブ」提案その後

活動上のルール・注意点1の12項 「活動独自のWEBサイトやブログを制作・公開することはできません。」の部分に抵触する「次の横浜トリエンナーレサポーター活動の枠組み」で、自主活動「サポーター・イニシアティブ」の位置付けと、私自身が2つの「サポーター・イニシアティブ」の届け出を出したことを書いた。その後報告をしていなかったが、一応方向性が決まったので報告する。

「この枠組みの範囲で/逆手にとって改善を目指す。諦めるのはチャレンジしてダメだったらでも遅くない」としていましたが、結論から言えば「チャレンジしてダメだったので諦める」ことにしました。

最初の回答

届け出を出してから約2週間後 (9月23日)、回答が来た。内容は

・アーティスト勉強会
 活動独自のWEBサイトやブログを制作・公開することはできない。
 代わりに公式WEBサイトを提供することはできない。
 会場内にロボット等の設置はできない。
・サポーター互助会
 イニシアティブを実施する際に事前にサポーターに相談するか否かは、活動の主宰者(サポーター)の判断となる。

ということで、拒絶判定なのか、文言を修正すれば通るのかわからない。特に互助会に関しては元から「誰かが援助を求めた場合、何らかの力になれる人が自主的に相談に乗り、解決を目指す」と記載しており、相談を強制するものではないため、その点を明確にすれば問題なく通るはずである。

一旦「ご指摘の事項は満たしていると考えます。誤解を招くようでしたら修正して再提出します。」と返したが、事務局を通じてのやりとりだと伝わらないものもあると考え、直接説明する場をいただくよう申し込んだ。

直接説明

10月20日に説明の機会を得たので、11ページのPowerPoint資料を用意して説明に行った。説明では届け出に書いたことに加え、まず2つの提案に共通する上位目的として「サポーター活動の活性化」をあげ、それぞれ背景となる問題意識から活動内容につながるように説明を構成した。互助会での情報交換に使うツールの例としてSlackのスナップショット、勉強会の想定成果としてヨコトリ2017の時に作ったアーティストごとのまとめも持って行った。

組織委員会から2名の方がいらして、また組織委員会との窓口になっている事務局の方も同席された。

組織委員会の基本的なスタンスとして、イニシアティブの活動に関して組織委員会が責任をもつ必要があると考えているようだ。ネットを使うことで炎上することを怖がっているように見える。

互助会はクローズなコミュニケーションであることを事務局の方に補足していただいたが、組織委員会の方はどちらもTwitterもFacebookも見たことがないようで、どこまで理解いただけたか。

勉強会のWeb公開に関しては、新しくサイトを立ち上げるだけでなく、既存サイトを使って成果物を上げるのもダメだという見解であることが新たにわかった。しかしこれは、説明会での「活動報告は公式ブログに書いてもらいたいということで研究成果を公表してはいけないという意味ではない」という回答と矛盾する。ここで議論になったが、ここで話しても押し問答にしかならないのでとりあえず先に進める。

互助会に話を戻すと、相談やマッチングなどは、組織委員会が自分たちでやろうとしているとのこと。どうするのかというと、彼らの話をつなぎ合わせてみると、
・相談する内容があればまず組織委員会に相談会の届けを出す。
・相談会の日程が決まったら、組織委員会からメールニュースでアナウンスする。
・相談会で相談。
ということのようだ。メールニュースに載せるにはまだ十分検討されていないものに対しては心理的障壁が大きいので、そこをカバーするものだということは再三伝えたのだが、納得されていない感じだった。誤解がないように、「障壁が大きい」というのは、組織委員会が障壁だというのではなく、プロセスが障壁なのだということも伝えた。

「それはイニシアティブではなくてウエダさんの仲間内でやってはどうか」とも言われた。これに対しては「それでは私と親しいわけではない人がどうやって助けを求めるのか」ということを伝えた。

また、イニシアティブという形ではなく組織委員会の活動としてやってはどうかという話も出された。これに関しては「同じことができるのなら組織委員会でやってもらっても構わない、その時は協力する」というように答えた。

全体を通じて大事なことは、相互に助け合うことがコミュニティを強くする、そして強いコミュニティが100日前イベントや緑化フェアなどでのプロモーションでの一体感をもった活動につながる、ということを何回か繰り返し伝えた。

結局説明と質疑応答で2時間くらいかかった。伝えるべきことは全部伝えることができたと思う。

その場で結論が出るわけでなく、組織委員会側が持ち帰って検討するということになった。この場で結論が出なかったWebの扱いに関しても、統一見解を出してくれるよう後で依頼した。

最終回答

11月13日になって回答のスケジュール調整をしたいと連絡があり、11月26日に回答が得られることになった。スケジュール調整の中で、一方的にお話を伺うだけなら面会である必要もないので、事前に内容を知らせていただくようお願いした。「提案を実現の方向で行きたいけれども、メールの文章だけだと意見の食い違いや時間差なども心配なので、直接お話しして進めたい」という回答だったので、期待して行くことにした。「イニシアティブという形ではなく組織委員会の活動として行うので協力を要請する」ということと想像した。

当日1時間半以上かけて出かけて行ったが、「提案は受け入れられない」というゼロ回答で10分ちょっとで終わった。ただし組織委員会からは「ウエダさんの知見を皆に伝えるため、互助会を実際の会合形式で行うイニシアティブにしてはどうか」という逆に提案さがあった。持ち帰って検討してほしいということだったが、その場で断った。繰り返し「私がサポートするのではなく誰もがお互いにサポートすること」、「いつでも気軽な相談ができることを目指していること」という主旨を伝えたつもりだったが、何も伝わっていなくて徒労感が大きい。

まあでもやるだけのことはやった。「諦めるのはチャレンジしてダメだったらでも遅くない」という当初の計画通りだ。

Webサイトを新規立ち上げるだけでなく、既存サイトに公開することも許されないということは、サポーターサイトにあるルール (PDF) や FAQ で明確化しアナウンスしてほしいということは伝えた。そうでないと誤解を与える。成果の公開を制限するということは、著作権 (著作者人格権ではなく財産権としての著作権) を制約することになるので、その点も明確にする必要がある、そうでないトラブルの原因になるということも伝えた。

また、互助会に関しては、どのルールに抵触しているのか公式な回答を依頼した。

さて本日12月29日の状況だが、
・Web既存サイトへのアップロード禁止に関してはまだアナウンスは出ておらず、公式サイトのルール、FAQもそのまま
・どのルールに抵触しているのか公式な回答はまだ
となっている。もう仕事納めなので今年中の回答はないだろう。

横浜トリエンナーレのサポーター活動には「ガイドサポーター」がある。2014年、2017年とこちらの活動もしてきたが、次回はもういいかなという気になっていた。リンク先を見ると募集人員が集まり、締め切られたようで、おめでたいことです。組織委員会としてはガイドサポーターさえ集まれば成功なんだろうなと思うと、これまで頑張ってきたのはなんだったんだろうとむなしい限りです。

追記 2020/1/14 

2020/1/9 付けのサポーター向けニュースメールでは他のサポーター・イニシアティブが成果を公開するというアナウンスがあった。Googleドライブでの公開で、これもWeb既存サイトへのアップロードには変わらない。とすれば私の提案も受け入れられる余地があるわけで、先の回答の依頼に、どういう条件で認められるのかという質問を追加した。引き続き回答を待ちたい。

追記 2020/2/2

1月24日、上記質問に回答が来た。
  • 互助会が認められないというのはどのルールに抵触しているのか。
    → サポーター・イニシアティブの活動はオンライン上ではなく、参加メンバーと場を設け、集まっていただき活動して頂くことが必要となります
  • Web既存サイトへのアップロード禁止に関してアナウンス
    → 近日中に実施します (1/24 時点ですでに変更済み)
  • Web公開はどういう条件で認められるのか
    → サポーターブログやメールニュースでお知らせできます。ダウンロード専用Googleドライブでの公開は一般公開でない。
ということで、
  • 互助会 → オフラインの活動があればOK (事前にオンラインで相談の概要を確認し、オフラインで実際の相談に関して議論する)
  • 勉強会 → 成果物 (Word文書など) をGoogleドライブにおき、サポーターブログやメールニュースでお知らせすればOK
ということになるので、この理解があっているか確認を求めており、その結果により再提出を検討したい。なお、元の質問が「サポーター・イニシアティブの活動はオンライン上ではなく、参加メンバーと場を設け、集まっていただき活動して頂くことが必要となります」がどのルールに抵触しているかだったので、再度問い合わせを行った。

追記 2020/2/10

2月10日、再度の問い合わせに回答が来た。

  • オンライン上での活動が認められない根拠
    → 活動上のルール・注意点1の12項 「活動独自のWEBサイトやブログを制作・公開することはできません。」の部分に抵触する。
    # 何の意味かわからないと思いますが、Slackでの書き込みが、「独自のWEBサイト」で、「公開」にあたると考えられているようです。10月20日の直接説明で「クローズなコミュニケーションである」ということは説明したのですが。
  • オンライン上で自主活動を行う上で連絡、質問、相談のために、メンバー内で、オンライン上で連絡を取り合うことも禁止されているか
    → 組織委員会としては禁止していない
2月9日にサポーターの集まりがあったので、これまでの経緯を報告してきた。今後の方針として以下のことを検討中で、皆さんのご意見をいただきたいということを表明した。
  • 互助会 → 相談会を定期的に開く組織委員会提案をベースに再提出
  • 勉強会 → 勉強会成果をWordで作成、PDF化し、Googleドライブでの公開


2019/12/23

なぜ「ら」を抜いて話してしまうのでしょうか?

... と質問されたので答えました。

Ouora: "なぜ「ら」を抜いて話してしまうのでしょうか?" の回答

・『「ら」抜き言葉』という言い方は適切ではありません。
・これは正しい進化です。

2019/12/08

恋人がサンタクロース

ユーミンの「恋人がサンタクロース」という曲があります。なぜ「は」ではなく「が」なんだろういうと、「誰がサンタクロースなの?」の質問の答えになるからです。

「あなたの恋人はどんな人?」→「恋人はサンタクロース」
「サンタクロースってどんな人かな?」→「恋人がサンタクロース」

新情報、旧情報という概念があって、旧情報はこれまでの文脈にでている概念、新情報は新しく加えられる概念です。例文の前者では旧情報は「恋人」、新情報は「サンタクロース」になります。一方後者では旧情報は「サンタクロース」、新情報は「恋人」です。

というように「が」は新情報を導入する役割があります (これはひとつの機能での見方で、他の説明が間違っているわけではありません)。

「今日天気はどう?」→「空は明るいよ」
「部屋が明るくなってきたね」→「空が明るいから」

というような文脈が想定されます。

なお、「は」は動詞に対する役割を示す「格助詞」ではなく、語に付加的な特別な意味を与えるものです。「は」は「とりたて」で、話題を設定する機能があります。ですから主格や目的格など何にでもつきます。もとの格助詞が省略される場合もあります。

「その本を読んだ」 →「その本は読んだ」
「学校へ行った」→「学校は行った」/「学校へは行った」
「太郎くんにお年玉をあげた」→「太郎くんにはお年玉をあげた」

「とりたて」は他のことには言及していない宣言でもあります。有名になった「ご飯論法」はこれですね。「ご飯は食べていない」(パンは食べたけどこのことは言及しない)。

------

以上、Quora "日本語の「は」と「が」の使い分けの基準、例えば「空は明るい」「空が明るい」での「は」と「が」使い分け基準は、何なのでしょうか?" への回答でした。

以前"*? 空が飛べたら" で、
新情報と旧情報を区別するとか (「恋人がサンタクロース」)、対比 (「(他の飲み物ではなく) コーヒーが飲みたい」) などの役割がある。
と書いたのの補足でもあります。


恋人がサンタクロース、手の早いサンタクロース …

2019/09/14

次の横浜トリエンナーレサポーター活動の枠組み

横浜トリエンナーレサポーターの自主的な活動「サポーター・イニシアティブ」の受付が始まった (→ 横浜トリエンナーレサポーターサイト)。

これまでの自主活動を振り返る。

フリーペーパー第一号
横浜トリエンナーレサポーターは以前からあったが、今のような自主活動と呼ばれるようなものが本格的に始まったのはヨコトリ2014から*。2013年度初めに運営側から4つの活動が示され (その後一つ追加)、各人が希望する活動のチームを選んで活動する形式だった。私は、フリーペーパーを作成するフリペチームを選んだ。

* 「2005年の横トリは自主活動だらけだった」というご指摘を受けました。申し訳ありません。私がサポーターに加わったのは2011年で、それより以前のことは古参のサポーターから話は聞いていたものの、文章中では端折ってしまいました。「今のような自主活動と呼ばれるようなもの」と書き替えました。

3年に一度の開催のはざま期間は、ヨコトリ2014が指導する2013年までは何も活動はない期間で、毎回リスタートしていたが、継続的な活動になるように2015年度はサポーター提案の自主活動が行われた。これは3名以上のメンバーがいるこという条件だけで、運営側では選別などを行わなかった。この活動を通じて、ヨコトリ2017本展時の活動を自主的に行えるようにするインキュベーションの狙いもあったと理解している。

フリーペーパー第2期第一号
ヨコトリ2017の活動は2016年度から始まった。運営側で「交」、「観」、「繋」、「支」の4つのキーワードをもとに自主活動の募集を行い、結果7つのグループができた。多くは2015年度の活動の延長や合体であり、その意味では狙い通りだったといえる。ただしフリーペーパーに関しては、2015年度は自主的な活動にはなかったが、必要とされるものという認識で有志が集まった。私もその中に加わった。

ヨコトリ2017が終わって、2018年度は継続的な活動を立ち上げる動きはなく、イベント的な活動を届けを出して行う形だった。サポーターとしては、継続的な活動がなくなることに懸念をもちつつも、Facebookなどの横の繋がりは維持していたという状態。

2019年4月になって、2019年度の活動説明会が行われた。懸念はあたっていて、本来なら2020年本展の助走期間である今年度なのに、昨年の活動の延長程度の位置づけということが分かった。自主活動は「サポーター・イニシアティブ」という名前になり、届け出が必要、予算は全くなし、組織委員会は全く関与しない。フリーペーパーは印刷代紙代も必要だし、組織委員会から毎回レビューを経て発行していたので、発行ができないことは確定だ。フリーペーパーはヨコトリの活性化に寄与している自負があったので、残念で仕方がない。

また、それまでは自主活動リーダーと組織委員会で構成される「運営会」と、リーダーを中心とした「れんらく会」が行われていたが、それらがなくなる。自主活動側から運営側に提言する機会はなくなり、自主活動同士のコミュニケーションの場もなくなるということだ。

当然やる気満々だった人たちからは活発な質問が出て、休憩時間にも以前から組織委員会にいる方をつかまえて議論していた。彼女からは、「届け出も審査するためではなく、活動を制限する意図はない。自主活動を自由に始めてもらうことが目的」という言質を得たので、次にもう少し具体的な届出方法などを明らかになる6月まで待つことにした。

結局6月は説明会は行われず、7月28日になってようやく説明会が行われた。前回の質疑応答が反映された形になっているかというとそうはなっておらず、「自主活動を自由に始めてもらう」主旨は表には表れていないまま、事務的な進め方の説明に終始していた。自主的なWebの立ち上げ禁止など、むしろ後退しているように見える。

質問は主に新たに出席した人から出され、4月に出席していた人たちはむしろ諦めモードに入っているように思えた。質問の中で「Webの立ち上げ禁止とあるが研究成果を発表してはいけないということか」という質問があって、それに対しては組織委員会から「活動報告は公式ブログに書いてもらいたいということで研究成果を公表してはいけないという意味ではない」という答えが得られたのは収穫かと思う (ただし横浜トリエンナーレサポーターサイト のFAQ では、個人の感想をブログやSNSにあげることしか許していないように見える)。

さてこれの枠組みに対しては、サポーターの姿勢としては2つの方向性があるように思う。一つはあきらめる、見捨てる、東京オリンピックや横浜トリエンナーレ以外のサポーター活動にシフトする。もう一つは、この枠組みの範囲で/逆手にとって改善を目指す。

私は後者の立場でチャレンジしようと思います。諦めるのはチャレンジしてダメだったらでも遅くないし、チャレンジしたものが横浜トリエンナーレで認定されなくても、自分の活動として残るような形で提案する。

以下の2つの届け出を出しました。

1. サポーター互助会

各サポーターイニシアティブ、各個人のサポーター活動において生じる疑問/課題を、お互い知識/知恵/技術/経験を持ち寄って解決する場を作る。通常はオンラインで活動する。
・活動相互支援: 誰かが援助を求めた場合、何らかの力になれる人が自主的に相談に乗り、解決を目指す。
・マッチング: 「イラストが描ける人いませんか」など、技術を求めている人と提供できる人のマッチングを行う。仲人役を設けるのではなく、各自が自分が提供できる技術を互助会内に公開し、公開情報から求めている人を探す形をとる。
・この指とまれ: 新しいサポーターイニシアティブを立ち上げる際に、同士を募る。同じ目的や似た内容のイニシアティブがある場合、協業したり、合併して、活動の強化を目指す。
・情報交換: 「ヨコトリ2020出展アーティストのAさんの個展がBギャラリーで行われている」、「著作権に関する解説記事がありました」など、サポーター活動に役に立つかもしれない情報を交換する。

2. アーティスト勉強会

ヨコトリ2020アーティスト、出展作品の内容、それに対する評論などを調べ、リンク情報を整理し、ガイドの情報源として提供するとともに、公開する。
・調べる内容
 アーティスト本人のサイト、所属するギャラリーのサイトへのリンク
 Wikipediaへのリンク: 略歴など
 最近の展覧会情報、出展作品の情報へのリンク
 インタビュー記事などアーティストをとりあげた記事へのリンク
 評論へのリンク
・公開先 (*はオプショナル)
 サポーターブログ: 下記活動の更新情報を掲載する
 Webサイト: アーティスト別ページに加え、アーティスト索引、サイト内検索をもたせる
 ヨコトリガイドロボット*: お客様からのアーティスト情報の質問に答える音声対話ロボットを会場内に設置する
 ヨコトリ検定ロボット*: 上記ロボットを用いて、ヨコトリに関する音声対話クイズを出し、お客様に楽しんでもらう

自前のWebサイトなど、チャレンジングな内容も含ませていて、この対応で7月の説明会の質疑応答の本意が分かるはず。

9月7日土曜日に届出を出したところ、9月12日木曜日受け取った旨の連絡があり、事務局で確認中、問い合わせがあるとのことでした。9月13日にまた連絡が来て、次週になるとのことです。ただ動いていないのか、逆にしっかり審査しているのか ...

2019/08/31

今森光彦展 写真と切り絵の里山物語

松屋銀座8Fで8月28日から9月4日まで行われる「今森光彦展 写真と切り絵の里山物語」のブロガー内覧会が8月27日に行われ、参加してきました。

今森光彦氏は、写真家であり、切り絵作家。今回初めて写真と切り絵の両方を出展する展覧会になるとのこと。また中には写真と切り絵を組み合わせた作品もあります。

テーマは「里山」。「里山」は、多くの人が山と認識していると思うが、山ではなく野良仕事の場所を指すとのことです。自然と共存している感覚から日本の芸術がうまれる。日本人の自然観は自然と対峙するのではなく、自然に溶け込む形になる。

そういう価値観というと、自然と生活が一体となった田園風景、古民家など、田舎暮らしの憧れを表現すると思われがちだが、彼は田舎をエキゾチックに捉えたいと語ります。実際に写真作品では美しい風景が広がり、旅行ポスターを思わせます。

切り絵は、黒一色のものと、フルカラーの作品があります。カラーのものは色を付けるのではなく、単色の紙を組み合わせたもの。寄ってみると梨のつぶつぶまで別の紙で表現されていることがわかります。

使うハサミは1つだけ。大きい部分と細かい部分を、ハサミの刃の位置によって切り分けるそうです。カッターで切るより細かく切れるとのことです。会場内には今森氏の作品製作実演ビデオも流れているのですが、思ったよりも大胆にザクザク切っていてて驚きました。

今回、写真と切り絵の展示だけでなく、「里山の再生」がテーマとなっています。彼のアトリエは、滋賀県大津市の竹林を開墾するところから始めていて、その過程の写真も展示されています。その周囲には畑や池、林など様々な環境がミックスされたものになっています。蝶をそこに生息させるようにするのですが、蝶はそれぞれ食料を得る植物が変わってくるので、蝶を70種生息させようと思うと70種の植物を育てる必要があるとのことです。

今は自宅アトリエのみならず、地域の人々と地域の再生を目指した活動を続けています。子ども達と昆虫採集を行ったりしている様子も展覧会の最後の方に出てきます。

今森氏は、人と話をするのが好きなんでしょうね。1時間の内覧会全体のうちトークは15分だけ割り当てられていて、3部構成のそれぞれの場所で話をする予定だったのですが、最初のところから10分をオーバーして、係のひとから「そろそろ次に」なんて促されていました。短い会期内ですが、ギャラリートークも何回か予定されていますので、その時間狙っていくとよいと思います。

なお、ここに載せてある写真は、主催者により特別の許可を得て撮影しているものです。

展覧会情報
今森光彦展 写真と切り絵の里山物語 (LINK)
会期: 2019年8月28日(水)-9月4日(水)※9月1日(日)は19:30まで。
場所: 松屋銀座8F (〒104-8130 東京都中央区銀座3-6-1)
入場料: 一般1,000円、高校生700円、中学生500円、小学生300円

内覧会までに時間があったので、銀座近辺の展覧会をいくつか回ってみました。
  • これもデザイン展 @ GOOD DESIGN Marunouchi
  • 石川愛子典 @ Oギャラリー
  • 澁澤久実子展 @ Oギャラリー
    アーティストご本人がいらしてて「ペーパーリトグラフ」という技法のことを伺いました。
  • 有山達也展「音のかたち」@ クリエイションギャラリーG8 (LINK)
    当日初日でオープニングパーティーが予定されていて、お客さんがたくさんでした。パーティーは誰でも参加できたそうですが、内覧会の時間とかぶってたので断念。9月25日にトークショーが予定されているので申し込みました。

2019/08/04

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展

三菱一号館美術館で行われている「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」のブロガー内覧会が7月31日に行われたので、参加してきました。お話はおなじみブログ「青い日記帳」のTak (たけ) さんと、担当学芸員の阿佐美淑子さん。高橋館長も最初にご挨拶があり、その後も時々お話に割り込んでいくというスタイルでした。

マリアノ・フォルチュニという人は知らなかったのですが、お話を聞いて、現代ファッション・デザインの始祖のような人だとわかりました。1900年代はじめ女性はコルセットで締め付けるスタイルが上流から中流まで広がっていた状況で、そのスタイルから解放した人の代表的な一人です。

フォルチュニの代表作が上写真左の方の黒いドレス「デルフォス」。19世紀末に発見された、紀元前5世紀の彫刻「デルフォイの御者」(右) にインスピレーションを受けデザインされたそうです。

数年後には、この上に羽織って外出することが普通になった (それまで女性が一人で外に出ることはなかった) ということです。その意味で新しい時代を作った人の一人といえるでしょう。そのあとシャネルなどが続くことになります。
デルフォスは、波型のプリーツが全体に入っています。すごく軽く、たたんで専用の箱にしまいます (左)。日本の絹が使われているそうです。

フォルチュニ自身が亡くなって作られなくなり、今では再現できないということです。特許は出ているのですが、それだけでは再現できないノウハウがあったのでしょう。洗濯もフォルチュニ社が行うようにしていて、そうしないとプリーツが消えてしまうということでした。

今回展示されているドレスは、ほとんどが日本にあるものを集めたものになっています。実はベネチアのフォルチュニ美術館には衣装はなく、むしろ日本に沢山残っているそうです。

ファッションデザインで著名なフォルチュニですが、実は画家、舞台美術設計者、染色家、写真家といったマルチな才能を発揮していて、この展覧会はそのマルチタレントにスポットをあてたものになっています。

最初は画家としてスタートしています。父も有名な画家で同名のマリアノ・フォルチュニ (「マリアノ・フォルチュニ・イ・マエサル」とクレジットされていました)。9歳の時の絵も展示されていますが、最初は下手だから入れないつもりだったのを、「9歳の時の作品」と聞いて入れることにしたそうです。

舞台装置設計では、外光と間接照明を用いたシステムで、時刻によって異なる外の光を遠隔操作で変えることができるようになっています。1900年に特許を取得し、ヨーロッパ各地で採用されたそうです。

住居の照明も手掛けていて、本当に精巧に作られているとのこと。今は制作されていないので、展示会では模造品を作って展示しているが、展示会後はベネチアのフォルチュニ美術館で展示される予定になっています。

写真家としても才能を発揮しますが、写真は外部に公開するために撮影していたものではなく、そのためあまり知られていません。しかし、様々な機材、技法を試し、また内容も芸術的な作品も多く、特によく撮影した雲の写真は芸術性が高いものになっています。

フォルチュニ社、特許という言葉が出ましたが、ビジネスマンとしてもあったということです。染織物は、1921設立の工場で同じ技術で現在も作られているそうです。

ファッションということで女性に向けた展覧会というイメージを与えますが、このようにマルチタレント、ビジネスマンという視点で見ると、男性も楽しめると思います。阿佐美氏は、「男性も楽しめるように舞台装置の設計図や模型もおいた。期待通り男性の食いつきが良かった」とおっしゃっていましたが (言葉はもっと上品に)、私は時間の余裕がなかったせいでそこはほとんどスルーしてしまいました。

10月6日までですので、まだまだ余裕があります。

マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展
https://mimt.jp/fortuny/
場所:三菱一号館美術館 (〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2)
会期:2019年7月6日(土)~10月6日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、8月12日~15日、会期最終週平日は21:00まで)
休館日:月曜休館(但し、祝日・振替休日の場合、9月30日とトークフリーデーの7月29日、8月26日は開館)

2019/06/24

全身全霊塩田千春

6月20日から、森美術館で塩田千春の大規模個展「塩田千春展:魂がふるえる」が開かれている。22日、アーティストトークが行われたので、聴きに行ってきた。

塩田千春は写真で見ていたので姿は知っていたが、声は初めて。なんとなくどっしりした声を予想していたが、予想と違ってかわいい声でした。

アーティストトークはいつまでたっても慣れないということで、最初は緊張した感じだった。アーティストトークは過去の作品をスライドで見せて、制作意図や手法など語っていればいいのにね、と思っていたのだが、塩田千春のトークはそうではないことがだんだんわかる。

インスタレーションにつて語る場面では、「絵はじわじわと感じるもの、インスタレーションは直観に訴えるもの」という。そして、「インスタレーションはその場で苦しんで作る」ものと語る。同じように見える作品でも、その場によって変えていく。同じテーマで3年くらい続ける。後でキュレーター片岡真実 (森美術館副館長) との対談では、苦しみが見た人にも伝わるということも言っているし、毎回失敗したと思うところが出てくるので、次の展覧会ではそれを直していく。

今回驚いたのは、がんとの闘病の中でこの展示会を立ち上げてきたということだ。今回の展覧会が決まったのが2年前で、その翌日、がんの再発が発見された。最近のがんは日帰り入院・手術ですぐに治るイメージもあるが、抗がん剤で髪が抜け始めているときの写真などを見ると「闘病」という言葉が容易に想起される。

その闘病も、普通だったら仕事を休んでじっくりということになるが、塩田千春の場合はそうならない、今回の展覧会の準備をしなきゃというのではなく、今病気の自分が作らないといけないものがあるという感じだった。後の対談で制作の原動力を問われて「アーティストは作ることしかない」と答えたように、人生そのものがアートなのだとわかる。

ただ、片岡真実によれば、この時期に作られた作品は「病気」を直接出したもので、そのままではまだ作品として出せるレベルではなかったという。まだ時間があるからと何度もダメ出しした。こんなにダメだしした展覧会は今までにないというのが面白かった。

アーティストとして作品に全身全霊を傾ける自分がいる一方で、「母親としての自分」もいる。これからどうやって生きていくのか、娘はこの後どうやって生きていくのかを考えた。それが子ども達が「魂」に関して自分の考えを話す作品につながる。

また、会場から出た「息抜きはなにか」という質問に対しても、「自分は24時間アーティスト」と答える一方で、「これで家族にはつらい思いをさせることもある。紙の抜ける写真はダンナが泣きながら撮った」ということも語っている。

アーティストとして全生活を作品にかけたい一方で、それを支えてくれる家族がいる、そのありがたさも噛みしめているというように感じた。

対談の中では、マリーナ・アブラモヴィッチに師事していた若いころの話も出てくる。その時の苦しみも、展示会に出ている作品で伝わってくる。特に ”Bathroom” は、バスルームで延々と泥をかぶり続ける作品で、どうしてこんなことまでと思う。本人も、今見ると辛いという。今は泥をかぶらなくとも言いたいことを表現できるようになったそうだ。

今塩田千春というと「糸を使った作品」というイメージが想起されるのだが、展覧会は若い時の作品もあり、塩田千春の全体像が見られる展示会になっています。

塩田千春展:魂がふるえる
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/index.html
会期:2019年6月20日~10月27日 (会期中無休)
会場:森美術館 (東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし10⽉22⽇(⽕)は22:00まで(最終⼊館 21:30)
料金:一般 1800円 / 65歳以上 1500円 / 高校・大学生 1200円 / 4歳~中学生 600円

2019/04/09

不審メール

朝からこんなメールが来てて慌てました。


Apple アカウントにモザンビークからログインがあったので、アカウントをロックしているとのこと。早速この「検証」というところに行きました。


早速対応しようとしたのですが、URL を見たら
https://yaelah-tumang-susahbener-verifycation5533.jp/account/... (上記はID消去済み)
と、全然アップルと関係ないじゃないですか。危うく引っかかるところでした。

ちなみにAppleの本物のサイトは、


全く同じですね。ただこちらは普段使っているところなので、IDがあらかじめ入っています。

元のメールを見ると、@yahoo.co.jp のアドレスに来ているし、また送信者 (Appleと青反転で示されているところ) もアップルとは関係ないアドレスでした。

よく考えたら2ファクタ認証も導入しているので、パスワードが破られても自分のiPhoneに認証コードが表示されるはずでした。慌てているとそれも思い至らなかったのでした。

皆さんご注意ください。2ファクタ認証は必須ですね。

2019/04/02

新元号についてちょっと語っとくか

4月1日、新元号「令和 (れいわ)」が発表されましたね。号外をゲットするべく新宿まで行ったのですが、配布の場所とタイミングが合わず、入手できませんでした。あとでニュースを見ると、かなり混乱があったようなので、負け惜しみが言いやすくなってよしとしましょう。本当は「歴史の証言者」シリーズに加えたかったのですが。

平仮名にすると3文字というのは予想していたのですが、「令」の文字と「和」の文字はいずれも予想外でした。「和」は「昭和」でも使っていたし、「令」は初めてなんですね。これを聞いて最初に浮かんだのが次のツイート。
これまで中国古典を依拠していたものを、日本の古典からとるというのは、安倍首相が可能性を言及していたようで、それ自体は「やっぱりな」という感じ。

毎日新聞  2019/04/01 新元号「令和(れいわ)」 出典は万葉集、和書初 来月1日0時施行
出典は万葉集の「梅花(うめのはな)の歌三十二首」の漢文で書かれた序文「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」からとった。
「令月」と「風和ぎ」の関係が微妙。本来なら2字熟語は、「気淑く」と「風和ぎ」の対比からとか、形容詞-名詞や動詞-目的語などの関係からとるものじゃないかな。そういう意味でいうと「令和」=「和を命令する」のような印象になる。「和をもって尊しとなす」という聖徳太子17条憲法を思い出すという意味では良さそうだが、要は「揉め事を起こすな」、「不満があっても抑えろ」という「空気読め」文化の走りだよね。

ただ、「令月」の意味を引くと、
大辞林 第三版の解説 (コトバンク)
れいげつ【令月】
①  何事をするのにもよい月。めでたい月。よい月。
②  陰暦二月の異名。
と、「令」は「命令」の「令」でなく、「めでたい」とか「よい」という意味であることがわかる。そうならばやっぱり「形容詞-名詞」となる選択にしてほしかったな。まあ「和」は名詞でもあるんだけど。

ネットを見ていると、ロバート・キャンベルさんの言葉に目が止まった。

朝日新聞デジタル 2019/04/02 ロバート・キャンベルさん「国書か漢籍か、超えた元号」
「国書か漢籍かということはどうでもよく、国を超えて共有される言葉の力、イメージを喚起する元号だ」
本来の意味はどうでもよくて、新しい言葉として、新しい意味を付け加えていけばいいのかもしれない。「明治」が「維新」、「大正」が「デモクラシー」や「ロマン」、「昭和」が「復興」や「レトロ」というコノテーションであるように。

と、普段は「元号なんてやめてしまえ」派なんですが、色々考えてしまいました。

2019/01/13

(平成) 最後のオフ会

ブログを始めたのは2004年、それまでは楽天の日記やBlogger (まさにここ) に手を出していたのだけど、本格的に始めたのはExciteブログだったのです。エキブロでは続けられたのは、エキブロ内でのフォロー関係があって、ゆるい繋がりのコミュニティができやすく、その中でも良いコミュニティに恵まれたからだと思います。

そのコミュニティでは毎年オフ会をやっていて、最近は毎年という訳ではなくなったけど、昨日「(平成) 最後のオフ会」が行われました。「平成が終わるのを機に最後のオフ会を行います」ということでしたが、これはきっとまた復活すると思い、「(平成)」をつけています。

最初は15年前だったそうですが、私は初めは気づかず後になってから参加するようになりました。後になってと言っても、見直したら2005年で2年目には参加していたんですね。
にぶろぐ (2005/12/10) お腐海は世界を浄化する

TwitterやFacebookがなかった頃は、ブログのコミュニティがSNSだったんですね。今はみなさんブログはあまり更新していなくて完全にやめちゃった人もいますが、また再開する人もいました。ブログはやっぱりある程度まとまったことがかけるところがいいところで、私もはてなブックマークやTwitterの短いコメントだけでなく、もうしこしまとまったことをブログに書いていきたいと思います。

お互い近況報告をして、昔の話をしていると、あっという間に3時間近くたちます。楽しい時間でした。2時間半かけても行く価値はあったなと再確認しました。

職業や年齢、住んでいる場所も違うけど、なぜかゆるく繋がっている。そんな繋がりを今後も大事にしたいと思いました。という訳で、復活したらまた参加しますよー。

2019/01/06

Evernote 2アカウント体制

Evernote プレミアムを使っていて、Web記事のクリップも論文や雑誌記事のPDFもなんでもEvernoteに入れていたら、ノート数も4万を超え、どんどん遅くなってくる。ノートの切り替えも遅いし、一時期は入力にも追いつかない状態。

いよいよ耐えられなくなって、乗り換え先を探していたのだが、
  • テキストに添付ファイルがつけられる
  • テキストだけプレーンにもてる (OneNoteはノートにテキスト枠が複数置かれる)
  • Webから簡単にクリップできる
というのがなかなかなくて、困っていた。このまま課金に応じるのも癪なので無料版に戻し、遅いMacクライアントはやめて、Webだけで使っていた。

ただ問題はアップロード容量。以前はFreeで100MB/月だったのが、60MB/月になっている。でもまあいつもそれくらいで済んでいると思ったのだが、年末にパンフレットなどを整理するため数MB程度のスキャンデータを複数入れていたら、3日くらいで限度になってしまった。やっぱり有料版にしないとダメか。

そんな中、こんな記事があった。

Lifehacking.jp (2019/01/03) Evernoteをもう一度ゼロから始めよう
Evernoteは非常に便利なメモツールであり、ファイルの置き場であり、作業環境ですが、時間がたつほどにデータのノイズが多くなりすぎて利用しづらくなるという難点があります。
そこで今回とった荒療治が「アカウントを2つ用意して、作業用とアーカイブ用に情報の流れを分ける」というものです。
なるほど!

ただよく見るとLifehacking.jpの堀さんは両方とも有料版にしているのね。
わたしは大した出費ではないので、両方ともにプレミアムで運用しています。
一つだけでももったいないと思っていた私には真似ができない。どちらか一方だけ有料版にすると、作業用とアーカイブ用のどちらを有料版にするかな。

それから堀さんは
メインアカウントからアーカイブアカウントへは、定期的にノートを移動します。基本的には「必要のないものをざっと消してから、全部移動」という作業になります。
というやり方を取っているのだが、移動ではなくて共有にしようと思う。そうすればアーカイブの方に全部あることになるので、検索するときはどちらにあるか悩まずにアーカイブの方だけで検索すれば良い。

こんな感じ。

アカウント ノート 普段使う場所メモ
作業用 = 無料版 作業用 (共有) クライアント 軽いままを保つ
アーカイブ用 = 有料版 作業用 (共有)
アーカイブ用
Webブラウザファイルの添付はここから
検索もここから

  • クライアントでは軽くしておきたいので、作業用にする。
  • もう一方はWebブラウザで使うようにすることで、ユーザー切り替えを頻繁にしなくてすむようにする。
  • ファイルの添付を行うときは有料版から。すなわちアーカイブ用アカウントでWebブラウザから。
  • Web記事のクリップは、アーカイブ用アカウントから作業用 (共有) ノートに。
  • 読んだらタグをつけてアーカイブへ。
方針が固まったので、早速再度プレミアム登録する。今40%引きで、年間費用が3,120円。そのまま更新していたら$45だったのでこれだけでもラッキー。というか毎回継続せずに一旦Freeに戻した方がお得かもね。

今までクライアントでは新しくする作業用アカウントで使うので、これまで使っていたファイルを一旦全部消す。次のようになった。

ディスク空き容量 285.85GB → 313.8GB // 28GB か。案外少ないな。
削除数 40万項目以上 (ノート数は41400ちょっとなのに)

しばらく運用してどうなるかみてみます。

2018/12/30

キュンチョメ 完璧なドーナツを作る

12月3日、キュンチョメの「完璧なドーナツをつくる」連続上映会 #4 「トマト缶とドーナツを交換する」に行って来ました。当日の最終回です。

お代はいらないけどトマト缶を持って来てください、ということで持って行きました。一番左のやつです。トマト缶は世界中で使われているので、食糧支援に向いているのだそうです。


最終日にはこうなっていました。キュンチョメのInstagramより引用。

「完璧なドーナツをつくる」は、「アメリカのドーナツは穴が空いているが、そこに沖縄のサーターアンダギーをはめ込んだら完璧なドーナツになるのではないか」という考えをベースにしています。ただ合体させるだけでなく、米軍基地の中で作ったドーナツと、基地の外で作ったドーナツを、フェンスを越えて合体させます。そう、フェンスで分断された両国民の融合の象徴でもある訳です。

作品としては、その計画を沖縄の人に話して、それに対する意見を聞いていくことが続きます。基地反対の運動家、基地建設を請け負う建築会社の社長、米軍軍人相手のバーの女主人... と様々な立場の人の話が含まれます。

以下作品の感想です。

一言でいうととても真面目に作られている。沖縄の皆さんへのインタビューが中心だが、自分に反対の立場の人からも真摯に丁寧に話を聞いている。沖縄にも様々な立場があることが分かって良かった。

その中には、基地建設を請け負う建築会社の社長のように、立場上基地を歓迎せざるを得ない人もいる。彼は自分の意見は言わないと言っていたが (これ自身本音では反対であることを示唆しているが)、後の方で本音もでる。

米軍軍人相手のバーの女主人は、沖縄米兵少女暴行事件以降、米兵が夜間外出禁止になり、お客さんが激減したと語る。それまで仲良くやっていたのに、対立は沖縄の住民の首も締める。

別の人が証言した、以前は日米の壁があまりなかったという話も興味深かった。子供の頃は米軍の戦闘機に基地の外から花火を撃ち込んだりしていて、そんなのは痛くも痒くもないので米兵もそれを挑発していたという。


キュンチョメを知ったのはヨコハマトリエンナーレ2014の初日に、ツイッターアイコン  (@kyun_chome) のあの花輪の格好で現れた時。なんだこいつはと思ったのだけど、その後ウェブサイトを知ってみてみたら真面目に社会問題を扱うアーティストだと分かった。イロモノと思っててすみません。

2016年に駒込の倉庫で行われた個展「暗闇でこんにちは」(artscapeレビュー)で初めて実際の作品を見た。特に東日本大震災・福島原発事故を題材にした、写真から立ち入り禁止の場所を消していく作品が印象的だった。その後色々な展覧会に参加していたと思う。

2017年岡本太郎賞アーティストを集めた展覧会の作品も良かった (ブログ「ヨコトリ2017の予習として ...」 )。ヨコハマトリエンナーレ2017にも来てくれるかなと思ったが、その頃Rebornに出していたのですね。次の横浜トリエンナーレにはいるといいなと思っていたが、あいちトリエンナーレに先をこされて残念 (@ryokan tweet)。

そういえば、キュンチョメは二人組ということをウェブサイトで知ったのだけど、女性の方ホンマエリさんしか表に出てこないので、実は今は一人で活動しているのかと思っていた (Superflyみたいに)。今回ナブチさんにもお会い出来て良かった。

今後もキュンチョメの活躍に期待したいと思います。

追記:
Hyperallergic (2019/1/17) An Artist Duo’s Ingenious Movie About US Military Bases in Japan
-- More than anything, Making a Perfect Donut is about contradictions

2018年に行った美術展とアートイベント

2017年は美術館ごとにまとめたらやっぱり難しかったので、今年は日付順に戻します。
  • 2018/01/08
  • 2018/01/14
    • 石内都アーティストトーク @ 横浜美術館 (LINK)
  • 2018/01/16
    • 森美術館「カタストロフと美術のちから展」プレ・ディスカッション・シリーズ 第3回「阪神・淡路大震災から20余年:体験とその継承」@ 森美術館 (LINK)
      → ブログ「災害とアート
  • 2018/01/20
    • トークセッション 「プロトタイプとしてのアートについて考える―レアンドロ・エルリッヒ作品を通して」@ 森美術館 (LINK)
      → ブログ「哲学とは考えること
    • 野生展 @ 21_21 Design Sight (LINK)
  • 2018/01/29 
    • 靉嘔展 @ Fuji Xerox Art Space (LINK)
  • 2018/02/03
    • 「石内 都 肌理と写真」@ 横浜美術館 (LINK)
  • 2018/02/08
    • 「ルドンー秘密の花園」展 ブロガー内覧会 @ 三菱一号館美術館
      →ブログ「赤い枝を探せ
  • 2018/02/11
    • 第2回メディアアート国際シンポジウム「“アート&テクノロジー” ―創造・教育・アーカイブのために―」@ 東京ウィメンズプラザ (LINK)
    • YANG FUDONG - THE COLOURED SKY: NEW WOMEN II (彩色天空 : 新女性 II) @ エスパス ルイ・ヴィトン東京 (LINK)
    • MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform 展示会 @ 表参道ヒルズ+ラフォーレ原宿 (LINK)
  • 2018/02/12
    • ワークショップ: MeCA教育普及プログラム「コトバ身体」@ 渋谷区文化総合センター大和田 (LINK)
    • 六本木、旅する美術教室 第2回 メディアアートの見方 (LINK) Media Ambition Tokyo  @ Tokyo City View
    • DOMANI・明日展 @ 国立新美術館  (LINK)
  • 2018/02/14 @ アート・コンプレックス・センター
    • 女子美術大学 芸術学部アートデザイン表現学科 メディア表現領域 卒業制作有志展「○△□展」(LINK)
    • 細密展 密 (LINK)
    • 近江カズヒロ緊縛画展 (LINK)
    • 塩野ひとみ 個展 【私は、あなた】(LINK)
    • ACT PRINT PROJECT 2 (LINK)
    • 早川剛 個展 ~咆哮~ (LINK)  # たまたま行ったら迫力があってよかった。
  • 2018/02/16 
    • MAMコレクション+MAMスクリーン トークセッション「アーティストとアーティストについて語る」@ 森美術館 (LINK)
      → ブログ 「山本篤と千葉正也トーク
  • 2018/02/20
    • en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展  @ TOTOギャラリー・間 (LINK)
    • 民俗写真の巨匠 芳賀日出男「伝えるべきもの、守るべきもの」@ 富士フイルムスクエア (LINK)
  • 2018/02/23
    • 生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険 (LINK) ブロガー内覧会
      → ブログ 「木島櫻谷展
  • 2018/02/28
    • レアンドロ・エルリッヒ展 @ 森美術館 (LINK)
  • 2018/03/11
    • 「カタストロフと美術のちから展」 プレ・ディスカッション・シリーズ 第4回 「フクシマ2011-2018」
    • FACE展2018 @ 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 → ブログ「FACE展2018 オーディエンス賞
  • 2018/04/02 
    • 沢田教一展-その視線の先に @ 横浜高島屋 (LINK)
  • 2018/04/03
    • グッドデザイン・ロングライフデザイン賞トークイベント「時代を超えるデザインが持つ力」@ 東京ミッドタウン
  • 2018/04/11 
  • 2018/04/18
    • グッドデザイン賞スペシャルトーク「いま、デザインに美しさは求められているのか」@ EDGEof
  • 2018/04/23 
    • 「ターナー 風景の詩」プレス内覧会 @ 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 → ブログ 「ターナーとサブライム
  • 2018/05/04
    • 生誕150年 横山大観展 @ 東京国立近代美術館 (LINK)
  • 2018/05/23
    • 建築の日本展 @ 森美術館 (LINK)
  • 2018/06/17
    • ターナー @ 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
    • メディア芸術祭
  • 2018/06/18
    • ジム・ダイン展 @ Fuji Xerox Art Space (LINK)
  • 2018/06/22
    • ヌード展 @ 横浜美術館
  • 2018/07/07
    • audio architecture展 オープニングトーク @ 21_21 Design Sight
  • 2018/07/14
    • モネ それからの100年 @ 横浜美術館 → ブログ「モネの遺産
  • 2018/07/16
  • 2018/07/21
    • 建築の日本展 @ 森美術館
    • まちと美術館のプログラム「MAMプロジェクト025」関連プログラム トークセッション「アートはどうやってつくられているのか?」(LINK)
    • 久門剛史「トンネル」@ OTA FINE ARTS (LINK)
    • Pieter VERMEERSCH @ Perrotin Tokyo (LINK)
  • 2018/08/14
    • Kevin Jones "Stellar Rays" @ Art Lab TOKYO / AKIBA
  • 2018/09/21 
  • 2018/09/30 
    • 新・今日の作家展 定点なき視点 @ 横浜市民ギャラリー (LINK)
  • 2018/10/16
    • 河野さおり個展 “ Multitude” @ Art Lab TOKYO / AKIBA
    • 「10年1日」高橋菜々個展 @ Art Lab TOKYO / AKIBA
  • 2018/10/21
    • 黄金町バザール
    • ブレイクイク初夜 (牧田恵実×川合喬太の二人展) @ アートライブギャラリーソコソコ (LINK)
  • 2018/10/27
    • DESIGN TOUCH CONFERENCE @ 東京ミッドタウン (LINK)
      • JAGDA新人賞2018デザイナートーク「コミュニケーションのみらい」
      • we+「コンテンポラリーデザインはみらいを夢見ることができるのか?」
      • 東京ミッドタウン・デザイン部 トークセッション 「鹿児島 睦×設計事務所ima(小林恭+マナ)」
      • アルスエレクトロニカ|みらいの働き方
    • Swell @ ミッドタウン・ガーデン
    • Salone in Roppongi vol.6 2018 @ ミッドタウン・ガーデン
    • 深瀬 昌久 写真展「総天然色的遊戯」@ FUJIFILM SQUARE (LINK)
  • 2018/10/29
    • 第一回白鯨会展 (牧田恵実個展) @ Art Lab TOKYO / AKIBA
    • イラストレーション ウェーブ VOL.1 2018 @ (LINK)
  • 2018/11/02
    • 小倉遊亀展 @ 平塚市美術館 (LINK)
  • 2018/11/03
    • GOOD DESIGN EXHIBITION 2018 + 国際デザイン&広告賞 D&AD賞 特別レクチャー (LINK)
    • SHIMURAbros 「Seeing Is Believing 見ることは信じること」@ POLA MUSEUM ANNEX (LINK)
    • ベルトラン・ラヴィエ「Medley」@ エスパス ルイ・ヴィトン東京 (LINK)
  • 2018/11/07
    • NANOOK "MIDDLE SCHOOL" @ Clear Gallery Tokyo
  • 2018/11/15
    • カタストロフと美術のちから展 @ 森美術館 (LINK)
  • 2018/11/21
    • 東京ミッドタウン・デザイン部「ミッドタウン・クリスマス|イルミネーションのクリエイティブを知る」@ 東京ミッドタウン・デザインハブ
  • 2018/11/26
    • 星川菜々美 shoujo展 @ Art Lab TOKYO / AKIBA
  • 2018/11/27
    • トークセッション「これからの『クリエイティブ』な仕事を考える」@ 武蔵野美術大学 デザイン・ラウンジ
  • 2018/12/04
  • 2018/12/14
    • Christmas Art Fair @ フジギャラリー新宿 # 早川剛氏の作品があると聞いて
  • 2018/12/17
    • ピエール・ボナール展 @ 国立新美術館 (LINK)
    • 雪舟国際美術協会展 @ 国立新美術館 (LINK)
    • LONG LIFE DESIGN 1 〜47都道府県の健やかなデザイン展〜 @ d47 Museum
    • 企画展示「南総里見八犬伝」@ 川本喜八郎人形ギャラリー
  • 2018/12/21
    • "WE ARE LOVE photographed by LESLIE KEE" @ POLA MUSEUM ANNEX (LINK)
    • “In Goude we trust!” ジャン=ポール グード 展覧会 @ シャネル・ネクサス・ホール (LINK) # もっと時間があるときに行けばよかった。
  • 2018/12/22
    • リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」@ 原美術館 (LINK)
今年個人的に良かった展覧会
  • レアンドロ・エルリッヒ展: みんなで行くと楽しい。
  • カタストロフと美術のちから展: プレ・ディスカッションシリーズに何回か行ったのでもう新鮮味はないかと思ったが、迫力のある作品群に圧倒される。
  • モネ それからの100年: モネと現代アートの関係という視点での展覧会で興味深かった。
  • 河野さおり個展 “ Multitude”: 女性の本来の強さを意識させる絵画。
  • キュンチョメ #4 ひみつの場所でドーナツを食べる: 沖縄の基地問題に対して賛成反対の立場に偏ることなく真面目に考えて丁寧に作っている。
  • “In Goude we trust!” ジャン=ポール グード 展覧会: 映像作品が多く、短い時間しか確保できなかったのが残念。下の動画は展覧会の観客の間を縫って回り移動する女性。これ何かに乗っている訳ではなく、歩いているんですよ。種明かしにスカートの中を見せてくれたんだけど、写真を撮らせてもらえば良かった  (いやそういう意味じゃない)。


R. Yoshihiro Uedaさん(@ryokan)がシェアした投稿 -

2018/09/25

第12回 shiseido art egg 賞

9月21日、「第12回 shiseido art egg 賞」贈賞式が行われ、抽選で当たって参加の招待をいただきました。

昨年第11回では、公開審査会という形で行われ他のですが (→記事「shiseido art egg 公開審査会」)、今年は審査は非公開で、さらにこの贈賞式で結果発表という形になりました。主催者側も色々模索しているのだと思います。

対象は、入選し (→ 第12回 shiseido art egg/審査結果)、今回6月から8月にそれぞれ資生堂ギャラリーで個展を行った3名です。

冨安由真 ~ くりかえしみるゆめ
佐藤浩一 ~ 半開花の庭
宇多村英恵 ~ 戦争と休日

昨年は審査会の中で作品をスライドで振り返る時間があったのですが、今年はほとんどなく、どういう作品か分からないまま審査結果を聞くことになりました。展示を見に行っておけばよかったと後悔しました。

そういう訳で事後になりますが、作品のことについてアーティストのインタビューを見てみます。


さて結果ですが、この中から、宇多村英恵さんに決まりました。

宇多村英恵さんは、受賞あいさつで以下のようなことを仰っていました。

  • これまで展覧会では毎回新作を出してきて、過去を振り返ることはなかった。今回はそれらを振り返る機会となった。
  • 初期の頃の作品は、人に見せることを意識していないもの。作品に理由を持たせない。今回初めて見た人に新しい解釈をしてもらう。

そのあと審査委員の畠山直哉氏から総評がありました。まず「3人選ばれた時点で審査は終わっていると言える。今回観客として向き合ってきた」ということでした。

印象に残ったのは、「昔自分が若い頃は、いい写真を撮る = いい作品を作るだけでよかった。今はそれだけではダメで、作品を作る上でストーリーが求められる」ということでした。畠山氏は、「今回の3名に共通するものとして、霊的なものがある。作品にストーリーが求められるという背景から来ているが、その上でどうプレイするかが勝負になる」というようなことを仰っていました (すみませんメモが正確にできなかったので多分に自分の印象も含まれています)。

冨安さんの作品は直接霊的なものでしょう。佐藤さんの作品も、遺伝子組み換えなど見えないもの、そして見えないゆえに怖いものに取り組んでいます。宇多村さんは、上記インタビューを見ると、戦争の遺産に残る人の思い (という単純な言葉で言い表せませんが) に思いを馳せていることがわかります。

他の記事を見ると冨安さんの展示も行列ができるほどの話題だったそうですね。来年またshiseido art egg 関連のイベントに参加できる機会があるかどうかわかりませんが、その時のために事前にみておきたいと思います。

三人で記念写真。左から佐藤さん、宇多村さん、富安さん。

2018/07/21

静嘉堂文庫美術館 明治からの贈り物

静嘉堂文庫美術館で7月16日から開催されている「ー明治150年記念ー 明治からの贈り物」展。その初日にブロガー内覧会が行なわれ、参加してきました。

昨年くらいに存在を知り、一度行ってみたいと思っていた静嘉堂文庫美術館。住宅地の中の大きな緑地の中にあります。



Google マップを頼りに成城学園前駅からバスと徒歩で行きました。美術館は緑地の北西にあって、このマップだと西側から入れるようになっていると思うじゃないですか。ところがついてから気が付いたのですが、西側には入口はない! ここで初めて静嘉堂文庫美術館のサイトのアクセスのページをみて、東側にしか入口がないことを知りました。入口まで約10分。入口から美術館までまた10分とだいぶ大回りをして、結局トークショーには遅れて行きました。

今回焦っていたので、敷地内をゆっくりみる余裕はありませんでしたが、庭園としても魅力的で、庭園花木ツアーも行なわれるそうです (→ 展覧会情報)。

さて今回の「ー明治150年記念ー 明治からの贈り物」展ですが、静嘉堂文庫美術館が所蔵する作品が中心の展覧会となっています。岩崎彌太郎の弟で三菱第二代社長の岩﨑彌之助と、その子で三菱第四代社長の岩﨑小彌太によって収集されたものです。今回は出品されていませんが、国宝の曜変天目茶碗が有名です。

菅原直之助「羽衣刺繍額」と「鞍馬天狗刺繍額」の説明をする、主任学芸員の長谷川祥子さん。

今回特別に写真撮影の許可をいただきましたので、拡大写真も撮ってみましたが、その細かさが伝わるでしょうか。


河鍋暁斎「地獄極楽めぐり図」は全40図ある画帖。「日本橋大伝馬町の大店、小間物問屋の勝田五兵衛が、14歳で夭折した娘・田鶴  (たつ) を一周忌で供養したいと、暁斎に制作を依頼したもの」ということです。

そのうち物語部分35図を会期中4期に分けて場面替えして展示するとのこと。全部見たい人のために展示スケジュールをお伝えします。最後の極楽往生あたりが特に有名だそうです。

7/16 (月・祝) - 7/26 (木) ・田鶴の臨終と来迎、羅人宮、三途の川の渡し舟に乗る等
7/27 (金) - 8/9 (木) ・賽の河原、旅館はりやま到着、田鶴の身支度等
8/10 (金) - 8/23 (木) ・家族との再会、芝居小屋、盛り場等
8/24 (金) - 9/2 (日) ・地獄見物、閻魔大王、極楽行きの汽車、極楽往生等

以前東京国立近代美術館で行なわれた「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」で、明治時代に初めてヌード絵画が出展された時に、絵画に腰巻がつけられて展示されたという話を知りました。その作品はここにあったんですね。黒田清輝「裸体婦人像」です。

その後、岩﨑家に購入され、高輪本邸のビリヤード・ルームに展示されていたということです。ビリヤード・ルームは当時紳士の社交場で、岩﨑邸を設計したジョサイア・コンドルが、そこに飾る絵は肖像画でも風景画でもダメで、ヌードでなければならないと指示したそうです。

当時のビリヤード・ルームの写真もあわせて展示されていました。

明治37年 (1904) 米国セントルイス万国博覧会の休憩室に飾ってあった若冲「動植綵絵」を刺繍にした壁飾り、これは消失したのですが、その再現作品があります。元の絵の模写、下絵とともに展示されており、制作過程もわかり興味深いです。

展覧会情報
「ー明治150年記念ー 明治からの贈り物」
http://www.seikado.or.jp/exhibition/index.html
会期: 2018年7月16日 (月・祝) ~ 9月2日 (日)
休館日: 月曜日 (ただし7月16日は開館)
サマータイム開館時間: 午前10時~午後5時 (入館は午後4時30分まで)
入館料: 一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料
※ 団体割引は20名以上
※ リピーター割引:2回目以降は200円引き

右は同じ敷地にある静嘉堂文庫で、通常内部は非公開です。

2018/07/16

モネの遺産


つまり、
モネは印象派ではなく、
あらゆる現代美術の
生みの親ではないのか?
(アンドレ・マッソン)
これは、7月14日から横浜美術館で開催されている「モネ それからの100年」の冒頭に示されているメッセージ。写真は初日の14日閉館後に行われた夜間特別鑑賞会で特別に許可がおりたものです (以降も同様)。

鑑賞に先立って、学芸員の坂本恭子氏からミニレクチャーがありました。

今回の題名にある「それからの100年」は、モネ生誕100年や没後100年という意味ではなく、「画業の集大成となる《睡蓮》大装飾画の制作に着手してから約100年」ということです。今回の展示は、単なるモネの回顧展ではなく、モネとモネ以降のアーティスト26名の作品を合わせて展示し、モネと現代美術の繋がりを探るものになっています。

関連性を分類して章立てにして、モネと後世のアーティストの作品を合わせて展示しています (3章以外)。

  • 1章 新しい絵画へ—立ち上がる色彩と筆触
  • 2章 形なきものへの眼差し—光、大気、水
  • 3章 モネへのオマージュ—まざまな『引用』のかたち
  • 4章 フレームを越えて—拡張するイメージと空間
1章の前に冒頭のメッセージとともに「睡蓮」があります。それぞれ対象はきちんと描写されていますが、全体を見るとまるで抽象絵画のように感じられるということです。これまでそういう視点で見たことがなかったのですが、言われてみればなるほどと思います。

「1章 新しい絵画へ—立ち上がる色彩と筆触」。ここで「色彩」は、印象派の特徴である「筆触分割」を指します。絵の具を混ぜず、配分させて絵の上に置いてき、鑑賞者の目に入った時に元の色が再現されます。

右はルイ・カーヌの作品。なんと金網の上に樹脂絵の具で描かれており、純粋に色だけで作品を構成しようとしたものだと思います。

「筆触」は、筆の速さと力強さ。それまでの絵が筆跡が残ってはいけないとされていたのに対して、「筆触分割」のためでもありますが、大胆に筆跡を残す手法を採ります。
参考: あき @sugokuaki さん (2018/03/08)


5分でわかれ!!印象派!! pic.twitter.com/WrZsv7RXVj

「2章 形なきものへの眼差し—光、大気、水」では、形のないもの  = 通常は絵に残せないものをいかに伝えるかということがテーマになります。モネ作品では《セーヌ川の日没、冬》(1880) (右写真左)、《霧の中の太陽》(1904)などが出展されています。

チャリング・クロス鉄橋の上を走る蒸気機関車はほとんど霧の中で見えませんが、霧の中にかすかにわかるその煙から、機関車の存在もわかります。



後世の作品では、マーク・ロスコ、ゲルハルト・リヒター、モーリス・ルイス、松本陽子などが挙げられています。

右はモーリス・ルイス。絵の具を耐え流して画布に染み込ませる手法を用いて、色を何層にも重ねています。とはいえどのように製作したか詳細は不明だそうです。

松本陽子は以前私は酷評しましたが (あえてリンクは示しません)、こういう位置付けで出されるのは理解できます。

この中で気になったのが、水野勝規のビデオ作品。下写真の左が《photon》、右が《reflection》。水に映る光の反射が心地よく、8分とか9分の作品なのですが、時間があればずっと見ていたいと思いました。


「3章 モネへのオマージュ—まざまな『引用』のかたち」ではモネの作品はなく、各アーティストの「睡蓮」などをモチーフにしたオマージュ作品が並びます。モネ要素を探しながら見ると楽しいと思います。

「4章 フレームを越えて—拡張するイメージと空間」の「フレーム」は額縁のこと。通常広い視界の中から「絵にする部分」、「絵になる部分」を決めます。しかし《睡蓮》はどこを切り出しても良い部分を描いています。このために無限に続くイメージが自然に想起されます。

小野耕石の《波絵》は、アルミに貼った紙にシルクスクリーンで油性インクを載せたものを組み合わせて並べて作品にしています。組み合わせ方により形を変えられるそうです。無限に続くイメージを想起させるという点で「フレームを越えて」という章に位置付けられているのですね。

美術の窓  2018年6月号 (小野耕石 Official site 2018/05/21 「美術の窓 モネ特集です」より) によると、小野自身は、「モネから直接影響を受けて制作したことはない」と語っているそうです。ただ、モネの絵に対して「眺めている窓のサイズが違っているだけで何らイメージが変わらなかったんです」と語っていて、まさにその点で自分とモネの共通点を見出されるとは思ってもいなかったんじゃないでしょうか。

オマージュのところでも出ていた福田美蘭の作品、《睡蓮の池》(下写真左) の発想に感心しました。描いているのは、レストランから見た都会の夜景。暗いレストランの室内と遠くの夜景が繋がって池を形成し、レストランの各テーブルを睡蓮の葉に見立てているのです。そして右が新たに制作され今回横浜展から加えられた《睡蓮の池 朝》。モネの「連作」のように、同じ対象を時間を変えて見るということでした。


「モネ? もうね、十分見たから」という人も、新しい見方が得られると思います。

展示会情報
https://monet2018yokohama.jp/
展覧会名: モネ それからの100年
会期: 2018年7月14日(土) ~ 9月24日(月・休)
休館日: 木曜日(8月16日は開館)
会場: 横浜美術館
開館時間: 午前10時~午後6時
 ※ただし9月14日(金)、15日(土)は午後8時30分まで
 ※入館は閉館の30分前まで

2018/05/12

FACE展2018 オーディエンス賞

今年2月から 3月まで東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で行われていた FACE展2018では、観覧者の投票による「オーディエンス賞」という企画がありました。

私は蜂谷真須美さんの《歩》に投票しました。



歩いている人が少し透明になって、夢のような雰囲気。

選ばれるとしても最初に並んでいた受賞作のうちどれかだろうなと思っていました。

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 ニュース より
2018年04月04日 FACE展2018の「オーディエンス賞」が決定しました。(PDF)

蜂谷真須美さん2位でオーディエンス賞受賞です。おめでとうございます。

そしてオーディエンス賞投票とは別に、「オーディエンス賞」予想キンペーンというのがありまして、予想を当てた人のうち抽選で1名に複製画をプレゼントされます。それにあたり、複製画をいただきました。額入りです。


ありがとうございます。

その他気に入った作品をあげておきます。

ササキ永利子さん 《ナラダッタ》
佐藤 凱さん《網》(審査委員特別賞)
山内晃世さん 《実の現象》
内藤範子さん 《浮月》

2018/04/25

ターナーとサブライム

4月24日から東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催される「ターナー 風景の詩」展。その前日にプレス・ブロガー内覧会が行われ、参加してきました。

毎日新聞 2018/4/23 ターナー展「風景の詩」新宿で24日開幕

スコットランド国立美術館群のジョン・レイトン総館長。「レイトン卿」と呼ばれていました。

最初に大きな風景画の説明があります。これらは大金持ちのパトロンの依頼で描いたもの。そういう絵は通常はつまらない絵になるが、ターナーは違い、一つの「作品」になるのです。この写真で右の絵 «ソマーヒル、トンブリッジ» のなかで所有者の邸宅は中心として描かれているのではなく、風景の一つとして、前景の水面から視線を移動させていくと現れるように描いています。

ターナーは日本では水彩画で有名です。夏目漱石の小説にも出てきますね。しかし、それだけではなく、様々な手法を使った作品があることがわかりました。左の写真は、ヴィニエットと呼ばれる挿絵です。また、版画作品も多く出しています。19世紀はじめ複製技術が発展し、その中でターナーは、自分の絵を買えないような一般市民にも親しんでもらうため、そしてまた版画も表現は違うが芸術作品として認識しており、積極的に取り組みます。そういえばロートレックも同じような考えで版画に取り組んでいたのでした (→ パリ・グラフィック展)。

版画も、ライン・エングレーヴィング、メゾティント、エッチングなど様々な方法を使います。描き方も、ハイライトを出すため一旦塗ったところを削るスクレイピングアウトやスクラッチングアウト (違いはよくわかりませんでした) など様々な技法を用いています。作品で使っている技法や画材の解説がキャプションの横に掲示してあります。それを読んでいくのも楽しいと思います。

イタリアの風景の章では、当時イギリスの上流階級の子弟の卒業時の卒業旅行としてイタリアへ行くことが流行し、これをというと言っていました。スコットランドやウェールズの風景の章では、厳しい自然を目の前にした時に感じる「崇高」(サブライム) という概念が出てきます。

そう、グランド・ツアー、崇高 (サブライム)、そしてピクチャレスクは、一昨年受けていたオンライン講座「今だからこその江戸美術」で学んだキーワードだったのです (→ ブログ 『「今だからこその江戸美術」受講修了』。受講時PCの画面では具体的な作品をじっくりと見ることができなかったので、今初めて知識が繋がった感じです。

このあたりのことを、内覧会でレイトン卿と交互に解説された福島県・郡山市立美術館の富岡進一氏 (右写真) が語っておられます。

毎日新聞 2018/4/23 「ターナー 風景の詩」展 あす開幕 自然の崇高さ、畏敬の念込め 福島・郡山市立美術館主任学芸員 富岡進一さん

郡山市立美術館は、この巡回展がこのあと最後に行くのですね。

ストーンヘンジを描いた作品もありました。右はターナーが描いた作品。左はそれを版画にしたものです。

なお、写真は美術館の特別の許可を得て撮影したものです。

以下、美術展の情報です。

「ターナー 風景の詩」展
https://turner2018.com/
<会期> 4月24日(火)~7月1日(日)月曜休館(ただし4月30日は開館)
<会場> 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 http://www.sjnk-museum.org/
    (東京都新宿区西新宿1の26の1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
<開館時間> 午前10時~午後6時
    (ただし5月9、16日、6月26~30日は午後7時まで)
<入館料> 一般1300円▽高大生900円▽65歳以上1100円▽中学生以下無料


2018/04/15

蓮沼執太: 〜 ing

" 〜 ing" は「カライング」と読むそうです。"〜”が「カラ」

銀座資生堂ギャラリーで行われている「蓮沼執太: 〜 ing」展のブロガー内覧会が 4月11日に行われたので行ってきました。

"〜" は関係性の象徴。様々な関係性を表したいとのことです。そういえばRで学習するとき、説明変数群Xと目的変数yの関係を  "y~X" で定義しますね。

そして "ing" は進行形であることはもちろんですが、その他に  "Thing" や "Being" などと繋がります。

内覧会前に会場に入ってまず驚くのが、床に敷き詰められた金属のパーツ。何も置かれていない、いわば通路のようなところもあるのですが、金属のパーツの上を歩いても良いそうです。

そして壁は凹凸の鏡面。写真をとるときに対象だけに焦点を当てて周辺はボケにするテクニックがあるのですが、テクニックがなくてもそんな感じになります。

この作品は «Thing~Being»。人が歩くことで音がなります。これは人が存在する (Being) の証明です。鏡面に映る自分、そして他の観客の姿も、そこに人がいる証明になります。

この金属は、ヤマハの楽器工場で出た廃材だそうです。音楽のメタファを壊す「リモデル」というシリーズの最新作になります。楽器でないものを使うことがフロンティアだと語ります。なるほど、元々は楽器でなかったものを楽器にしたスティールパンなどのような例もあることを思い出しました。

内覧会の間は人が多くてやっていませんでしたが、資生堂ギャラリーの人が、時々散らばった楽器部品を整えます。

«Ginza Vibration» は、この部屋の天井から床に映し出される映像と、天井に設置されたスピーカーからの音を組み合わせた作品。その映像と音は、すぐ近くの資生堂銀座ビルの屋上ガーデンに設置されているカメラとマイクから拾っていて、特に昼間は工事の音が拾われるとのこと。変わっていくもののメタファということです。

«Tree with Background Music» はスピーカーから出る音で木の枝が揺れることで、音の可視化を試みた作品です。時折大きな音がなり、大きく揺れます。

蓮沼氏は、楽譜も可視化だし、波形も可視化だと語ります。展覧会の入り口にある「ごあいさつ」には、その右に単語それぞれを波形で表現したものが示されていました。

そのそばにある作品 «We are Cardboard Boxes» (僕達は段ボール箱) は、重ねた段ボール箱から時折音がなるもの。蓮沼氏は、「ただ箱から音が出るだけ。真剣に見るような作品じゃない。僕なりのユーモア。」と語っていました。

入り口の階段の天井に投影されている作品は «Walking Score in Giza»。銀座の街で歩きながらマイクを転がして音を録ったもの。街でマイクを転がしている様は、パフォーマンスをしているとも言える。蓮沼氏によると、この原点はフィールドレコーディングで、「環境を観察する。聞くことは意識すること」とのことでした。

このように蓮沼の作品は、いずれも音を使ったものです。というよりも私は、蓮沼はミュージシャンだと認識していました。最初に蓮沼を知ったのは、ヨコハマトリエンナーレ2011のピーター・コフィンの «Music for Plants» で、植物のための音楽を奏でるイベント (shutahasunuma.comより) としてでした。残念ながらそれはテニスコーツの回にしか参加できなかったのですが、その後も蓮沼執太という名前は気になっていました。時々アート系のニュースなどで名前が出てくるので、ヒットチャートに出てくるような音楽家ではなく、アーティストとしての音楽なんだと理解していました。今回の展示会では、音楽以外の仕事を知ることができ、また本人とも直接話ができて良かったと思います。

展示会情報
蓮沼執太: 〜 ing
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/
会期:2018年4月6日(金)~6月3日(日)(毎週月曜日は休館)
会場:資生堂ギャラリー (東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階)
料金:無料