「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語—夢の楽園」展(TAB - Tokyo Art Beatの紹介)、17日最終日に行ってきました。ヘンリー・ダーガーとう作家は知らなかったのですが、展覧会の表題と、TABの案内文(下記)と、原美術館に惹かれて。
両親との早すぎる死別、知的障害という診断と施設への収容などを経て、青年期から81歳で亡くなるまでの間、完全な孤独の中で、膨大な量の物語と絵画を制作しました。人目に触れることもなく描きためられた作品群は、家主であり、自身も芸術家としてシカゴにおけるニュー バウハウスの中心的存在の一人であったネイサンラーナーに託され、その慧眼により、没後の損失を免れることになります。膨大な量の物語って、どれくらい膨大かというと15,145ページ。19歳頃から11年以上かけて書いたそうだ。タイトルは、『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子ども奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』 (長いよ)。普通には「非現実の王国で」というそうだ。
Wikipedia: 非現実の王国で
その後この物語を題材とした絵を描き始める。今回の展覧会はそれを中心としたものだが、それ以外の作品や、アトリエ (アパート) の写真などが展示されている。作品が、雑誌の写真、マンガをコラージュして作られているものが多いため、アトリエにはその材料となる新聞や雑誌が束になっておかれている。
さて、感想なんですが、ちょっと言い表すのが難しいですね。膨大な量に圧倒されるというのもあるし、独特の世界観というのもある。でも作品自体はどうなの?というのが正直なところです。
知的障害 (感情障害) でまともな教育 (もちろん美術教育も) を受けていないという背景も私の評価に影を落としているかもしれません。美術教育を受けていないからダメと思っている訳ではありません。特に抽象画を見て、これはさすがに美術教育を受けた人が描いた作品とか分る訳じゃないので。じゃあなにかというと、評価されてきているっていうのは、「美術教育を受けていないのに」とか、「引きこもりなのに」という修飾がついた上での評価ではないかと思うからです。
最終日からなのかもしれませんが、多くの入場者がありました。若い人と外国人が目立ったように思います。私もその中に含まれるのですが、「ヘンリー・ダーガー知ってるんだぜ」というために来ている人達という印象を持ちました。若冲みたいな感じ?
ミュージアムショップも混雑していたので、美術手帳の「ヘンリー・ダーガー特集号」を手に取ったのですが、買わずに帰ってきました。後で大手書店でバックナンバーを探して買えばいいかと思って。でも最近のバックナンバーでは、その号だけ売り切れてましたよ。やっぱりブームなのかな。
住宅街の中の美術館。この美術館自体ももとは個人邸宅として作られたもの。ルーフバルコニーに出ることもできます。一室丸ごと作品 (現代美術ね) になっているところや、奈良美智のアトリエになっている部屋もあります。
次は家族で行けるインカ・マヤ・アステカ展かな。
追記: 最初に行きたいと思った理由を並べていたのですが、最初は、All Tomorrow's Girls (fumi_oさん)の「ヘンリー・ダーガー展」で知って、これ行ってみたいと思っていたのでした。すっかり忘れており、失礼しました。今日のエントリ「the Vivian Girls」でやっと思い出しました。という訳で慌ててトラックバック送ります。
上記 fumi_oさんの記事にあった、ヘンリー・ダーガー作品集へのリンク → CARL HAMMER GALLERY。
ART TOUCH 美術展評 (安積 桂さん) 「ヘンリー・ダーガー」
-- 「挿絵画家」として「一流」と評価されていますが、「芸術家」としては低い評価。絵を作品そのものでなく背景情報から評価する風潮を批判しています。